レスター戦。あるいは競争による超過リターンの収束

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こいつはやばいぜ!

 

いや本当に。昨シーズンからそうだったが、ボールを失う→サイドチェンジ。これだけでかなりの高確率でクリティカルなピンチにつながる、というのは何かがおかしい。いくらなんでも、間に合ってなさすぎる(なぜサイドチェンジだけでそうなるのだ?SBが両方上がっているからか?)。いくらなんでも、再現されすぎてる。昨シーズンから、最終ラインがあまりにも暴露されすぎており、CBだけ変えても解決しないんじゃないかと思っていたが、確信に変わった。

 

ところで、シティが5点以上失点したというのはここ最近記憶にない。あったっけ?記憶にある最後の5失点は、2007/08シーズンにチェルシーに6点食らったやつだ。ハビエル・ガリードが面白いように裏を取られていた。あとは、リバプールにCLで5点決められたんでしたっけ。見れなかったんですよね。

 

 

 

 

 

ところで思い返してみると、シティは多分、この10年で、プレミアリーグのほぼ全てのチームに5点以上決めている(こういうときは、良いことだけ思い出して精神の安定を図りたい。)

マンUは「Why always me?」のとき。

www.youtube.comアーセナルはペレグリーニ時代の6-3。

www.youtube.comリヴァプールはマネキックのとき。

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スパーズは向こうがヴィラス=ボアスのとき(景気が良くて楽しくなる試合だった。日本代表はヴィラス=ボアスを雇ったほうが良い)。

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チェルシーは2018/19シーズン。

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シティもやられる側になっちまったと思うと非常に残念で、インターネットを開く気もしなくなるが(しかも失礼ながら、相手はレスターだ。シティに5点取られるのと、レスターに5点取られるのでは再現性がぜんぜん違うというのはレスターファンでも同意するところだろう)、一方でちょっと目線を変えてみると、1つのチームが持つピッチ内での優位性は、中長期的には競争によって縮小するという原則がしっかりと働いているのは興味深い。

 

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上記はマッキンゼーが米国企業(金融機関除く)の成長率を集計したもので、当初は「超高成長グループ」と「縮小~横ばいグループ」で30%強もの差があったのに、わずか5年でほぼ同水準まで縮小している。ちなみにROEでも同じような結果が出ている。

 

これはすなわち、一時的に競争相手を大きく上回る成績を上げていても新規参入や競合による模倣、新たなビジネスモデルの登場、顧客やサプライヤーとのパワーバランスの変化、成長を維持するコストの増大などによって、優位性は徐々に失われてしまうということだ。

 

で、これはFFPが加速させる、すでに規模が大きいクラブの寡占化に反するような動きに見える。もちろん業界も違えば、売上高/資本リターンと、競技上のテクニカルな優位性の違いもある。競争を避けることが超過リターンにつながる一般企業、と異なり、サッカークラブは競争すること自体がレゾンデートルで、それが故に取りうる戦略の幅も狭い。よって、一概に同様の力学が働くとは言えないが、アナロジーが成立するようにも見えるのである。強いクラブは下位クラブよりも主に放映権料の面で大きな収入を得て、さらに選手に投資することでますます強くなり、差が開く・・・というのが基本的なメカニズムだが、一方でその優位性には、中長期的には消失していく力学も働くのだ。

 

 

まあ、「この力学は主に同じサイズのクラブの中だけで働く」とか、「今回のレスターのように中位~下位のクラブが1試合単位で優位に立つことはあっても、シーズンを通した成績で見ればリーグの構造は固定されて変わらないまま」というのも十分ありえることだが。例えばエヴァートンのオーナーはかなりの投資を行っており、P/L上も人件費をかなり危険な水準まで積み上げてビッグ6入りを狙っているが、功を奏していないのは結果を見るとおりだ。エヴァートンは今やカウントダウン中の爆弾を抱えているに等しい。

 

というようなことを、週末は考えていたのでした。