2022/23 マンチェスター・シティ 展望&選手別プレビュウ

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全宇宙がバルセロナのために点滅していたお陰でプレミアリーグもすっかり霞んでしまったこの夏であるが、シーズンの始めに展望をしておきたい。

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シーズン展望

昨シーズン終わりまでの10年で、マンチェスター・シティは幸運なことに5回も優勝さしてもらった。直近5年は4回勝ってる。シティが勝てば私は嬉しい。ファンなので。一方で、競争のバランスを考えたときに4/5って、実際どう?という思いもなくはない。今年勝ったら5/6。いや、どうでしょうね・・・。まあ勝ったらもちろん喜ぶには喜ぶんですが。

 

そんな煮え切らない今シーズンであるが、CLはもとより、リーグ戦も結構苦労すると見ている。競合に比べて経験のある主力を放出しすぎて、短期的には戦力が落ちているので。

 

リヴァプールが出場時間ベースで去年の8.3%しか戦力を失ってない(ほぼマネ)のに対し、シティは実に17%を失った。放出はジェズス、スターリング、フェルナンジーニョ、ジンチェンコ、ステッフェンで、採ったのはホーラン、アルバレス、K. フィリップス、セルヒオ・ゴメス、オルテガ、アカンジ。緊急補強のアカンジを除けばほぼ全員同じポジションの入れ替えだが、プレミアの経験があるのはフィリップスしかおらず、現時点で明確にアップグレードと言えるのもジェズス→ホーランの得点部分くらいで、補強としての不確実性は結構高い。

 

ホーランはすごいが、去年の時点で既に99点取ってるチームでどれだけ純粋に上乗せできるのかはよくわからない。開幕6試合の時点では昨年の13得点に対して19点と増えているが、最終的にそんなに増えるか?という気もする。99点ってほぼアルティメットでしょう。だとすると99点取って無得点試合が4回だけだった去年と比べて、増分は数%程度にしかならない。

アルバレススターリングやジェズスより見るからにシュートは上手そうだが、スターリングはグアルディオラ政権下でPK除いてシーズン平均15.0点、直近3年だけで見ても平均13.7点取っており、20点くらい採らないと大きな違いはない。ただかつてのロナウド然り、ベイル然り、サラー然り、この辺りの常識を越えてくるのがスーパースターなので、もしかしたらシーズン終わってみたら120点取ってたとかいうことがあるのかも知れん。

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・・・などと言ってはみたものの。他のチームはもっと苦労しているようにも見える。アリソンとエデルソン、ヴァン・ダイクとルベン、マティプストーンズ・・・と1人1人比べていったらわかるが、リヴァプールはGK, CB, WGの質でシティを上回っている。でもカウンターに弱く、怪我人が毎年ほぼ必ず多数出る編成の割には個人への依存度が高すぎる、という問題がずっと解決していない。

サラー、チアゴ、TAA、ヴァン・ダイク、アリソンのスーパーパワーと団結力で、ハマれば世界最強だが、主力が年を食って露骨に走れなくなっており、リーグ戦でシティの上に行くかというとキツそうな気もする。

ちょっとヤヤ・トゥレ、シルバ、アグエロで無理やり点をもぎ取っていたペレグリーニ時代のシティに似ており、コレは勘だが、サラー、ディアス辺りは彼らのキャリアハイと言えるようなスーパースーパースーパーゴールを今シーズン決めるのではないかと思う。まあそれは置いといて、CLではリヴァプールの方が強そうだとは思う。戦力と戦術の特徴上。

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移籍市場

ちなみに、シティの移籍方針自体は概ね間違っておらず、1,2年後には大きな戦力アップが期待できる、よい夏だったと思う。実力はあるけど得意分野とサッカーの方向性がズレていたスターリング、ジェズス、ジンチェンコに良い買い手を見つけることができ、約1億2,500万ポンド近い移籍金を得て、ホーラン、アルバレス、フィリップスなどが買えた。また、若手もよく売れた。全員足してもプレミア出場経験17分の若手9人で、売りに売ったり6,550万ポンドだ。合計約2億ポンドの移籍金収入になった。

 

これだけ売れたのはいくつか理由があり、まずグアルディオラ就任が見えた段階から、Exitが計算できる若い選手しか買わなくなった。GKを除けばどんなに高くても26~7歳の選手しか買っておらず、平均年齢も下がっている。ので、スターリングやジェズスといった、既にひと仕事した選手でも買い手がついた*1

次に、今のCEO(ソリアーノ)は就任したときから育成強化に熱心で、まず地元の獲得競争でマンUに勝てるようになり、10年経った今は世界的にも良い選手が取れるようになってきた。今年これだけ売れたのは、サウサンプトンの新しい採用担当がシティからの転職組で、シティのアカデミーから引き抜くのが大好きだったというのもあるが、まだ手元にはデラップ息子、マカティー、カイキ、オスカル・ボブといった大玉が残っている。加えて、攻撃の選手に比べると値はつきづらいが、ハーウッド=ベリス、カラム・ドイルといった下部で実績がある若手CBも残っているので、あと数千万ポンドは稼げるのではないかと見ている。

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FFPに代わるFSCLRの導入で、各クラブがスカッドに使える額は2023年から段階的に抑えられる。その手前で、アカデミーから選手を売れるようになり、またグローバルスポンサーも増えだして、Covid-19のような特殊要因がなければスポンサーからの資本注入も必要なく経営が回る状態ができたのは有利と言える。

 

クラブへの要望

所有権は構わんが アブダビ以外のスポンサーを増やせ

日産 ソニー 美的にアサヒ ヘイズにシスコにWeWork

もっともっと 積み上げろ

入れるな卵 一つの籠に

 

あゝ 我ら 我ら 

アブダビとの関係を段階的に薄めていけ高校

アブダビとの関係を段階的に薄めていけ高校

 

 

GK

18 シュテファン・オルテガ Stefan ORTEGA 

W杯に備えて出場機会が欲しい第2GKザック・ステッフェンのローン退団に伴い獲得。プレーは全然知らないが、選手名カタカナ表記審議会としては、彼のように「別の言語圏の名前だけど発音は母国に合わせて変わってる」パターンは非常に良いポイントですね。エステバンでなくシュテファン。涎が出ます。似たパターンで言うと、「ターコウスキー」とか、「グロンコウスキー」とか、「プリシック」とかもいいですね。初っ端からシティになんの関係もないが。

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31 エデルソン・モライス EDERSON Moraes

 キックモンスター。最近はCL敗退の痛みに耐えきれないサッカーキッズから、アイツのせいで勝てない的批判を受けることがちょくちょくある。アリソンやクルトワと比べるとセービングでは劣るのは確かで、例えばCLレベルで言えばエデルソンは過去4年の「失点期待値-実際の失点数」*2合計がマイナス、つまり期待値よりも失点してるが、アリソンはそれが+5.0、クルトワに至っては+10.4にもなる。同じようなピンチがあったとしても、1シーズンに2~3点はエデルソンと違ってくるということだ。それが例えばベスト4や決勝で出ると、勝ち負けを分ける差になりうる。

 

 一方でこれを替えるとすると、多分アリソンレベルに何でもできるクラスの選手でないと効果が小さい。というのは、スタッツを見れば一目瞭然だが、エデルソンよりセービングがいい選手(例えばだけど、プレミアビッグ6で言えばメンディ、ヨリス、デ・ヘア)は基本的に守備範囲が狭く、エデルソンの恐らく数倍はキックミスでボールを失う。そうなるとDFラインの人選から全部作り直しなので、それを1シーズンでやるのは難しい。だから替えるにしても、ウォーカーに限界が来て、ストーンズラポルトのどちらかが出ていきたいと言い出したくらいのタイミング、つまり数年後だろうと思う。

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32 スコット・カーソン Scott CARSON

 第3GKを務める朗らかおじさん。朗らかであることが最大の価値。思えば19のときにリヴァプールに買われたんでしたね。しかも75万ポンドで。この「イェジ・ドゥデクやペペ・レイナがいる状況で、20歳手前の一番伸び盛りのGKを控えで、しかも安値で買う」という行動が現代ではあり得なさすぎ、20年の時の経過に驚く。

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DF

3 ルベン・ディアス RÚBEN Dias

YouTubeアルゴリズムって頭悪いんじゃないかと思っていて、お前は何回俺に“Plastic Love”のカバーを聞かせるつもりなんだという感じだが、The Chainsmokersの“Closer”が流れるたびに私はなぜかルベンを思い出してしまう。広い肩幅、厚い胸板、長い腕、とっぽい顔。2010年代のあの、男女の性欲をInstagramのフィルターでおしゃれに加工した、映えるMVの楽曲に出てきそうな感じがめっちゃする。要するにアルファオスっぽい。

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という話はどうでもいいですが。2年前に加入して、いきなりリーグMVP、チームMVP、リーグベストイレブン、ESMベストイレブンFIFAベストイレブン、CL最優秀DF賞を取って瞬く間にシティファンの心を掴んだ。コンパニ以降、ようやく全幅の信頼がおけるCBと言えよう。と考えると結局はデュエルの強さなのだ。

 

ちなみにデュエルという意味では、やはりリヴァプールのCB陣はいい選手を揃えており、ヴァン・ダイクが193cm92kg、マティプが195cm90kg、コナテが194cm95kg、ゴメスが188cm77kgと見事と言うしかない体躯だ。それであれだけ走れてボールも扱えるし。そのままだとかなり高額になりそうだが、ヴァン・ダイク以外はほぼ全員スペということで給与のバランスが保たれている。戦力的にはバランス取れてないけど。一方シティは、組み立て貢献度が高いやつを優先した結果、ルベンが186cm76kg、ラポルトが191cm86kg、ストーンズが188cm70kg、アケに至っては180cm75kgで、身体が言えばいかにも見劣りがする。デュエルが一番強いルベンですら、アイヴァン・トニーやウェストハムのアントニオレベルだとかなりきつい・・・まあさすがにストーンズのは古い記録を更新してないだけだと思うが。

 

昨シーズンは2-3-5でやってみっか!の結果、管理するスペースが増えて苦労していたが、CB陣では一番頼れた。今期は副キャプテン*3にも就任。

 

5 ジョン・ストーンズ John STONES

こうからの


こう来て

www.footballista.jp

 

こう。

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で、これ。 

www.si.com

いやー知ってたわ。完全に知ってた。EUROでレギュラー張ってそのままシーズンとか、耐えられるわけないもんな。加入して6年、一度も「フル稼働」できたことがないのに、ヴァン・ダイクより高い給料をもらうというのは如何なものか。

リヴァプールマティプストーンズによく似た選手で、怪我さえしてなけりゃ強くて上手くてそこそこ速い好選手なのだが、もう怪我なしの状態を想定するのが非現実的なキャリアに来ている(過去5年の出場分数、試合数もそっくりだ)。あと6年目の28歳のイングランド人の割には、リーダーシップを取ってる感がないのもちょっと残念。コンディションが良ければ、守備範囲とデュエルとビルドアップの三角形の面積がプレミア有数に大きい傑物なんだけど。

 

6 ネイサン・アケ Nathan AKÉ

シティのDFは基本ポゼッション能力メインの守備が怪しい奴かスペで、デュエルがCLベスト4レベルで見劣りしないのはルベンとウォーカーくらいなんだが、唯一どっちもそれなりなのがアケ。難点は本当にどっちもそれなりなことだろうか。

ただ去年は、「ワイドレシーバー的な瞬発力がある」「垂直跳びが高い」という特性がセットピースコーチのカルロス・ビセンスとハマって、攻めるときのCKだと頼りになった。あとはそうね、色付きスポーツゴーグルをすると世間的な評価が2割増になると思う。

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14 エメリック・ラポルト Aymeric LAPORTE

女々しくて!女々しくて!!女々しくて!!!

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辛いのよ。実際スペインかイタリア辺りに行けばもっと女々しいふりが上手いCBはたくさんいると思うが、ラポルトはいっつも審判にモゴモゴ不満そうにしている。というのもハチャメチャにアジリティがなく身体の向きも悪いので、ちょっと速い奴にデュエルを仕掛けられるとファールするかされるかオフサイドに逃げるかしかないのだ。しかも左足オンリーなのでドリブル中に絡みつかれるとかなり怪しい。そして性格的には瞬間湯沸かし器と来ている。

と書くとよくそれでやっていけるな感があるが、ラポルトは現実の大惨事を劇場での芝居程度に納める能力もかなり高い。まず、ファールもらって有耶無耶にするのが上手い。体感、3回に1回はどっちらけになって誤魔化せている印象がある。そして自分で点も取る。とくに自らやらかしたときほど取るのだ。シティが世界に誇る劇場型CBと言えよう。

 

総体としては、グアルディオラの戦術に守られていれば、ベストイレブンくらい取る力はある。2018/19に大活躍してからは燻っていたが、昨シーズンはストーンズの怪我に乗じてレギュラーに復帰。最終盤は怪我を押して出場し続け、優勝に大きく貢献。ストーンズがいない間にインスタに「ルベンとラポルト・・・“壁と門”、ってか・・・いや~最強コンビだな俺たち・・・」みたいな既成事実化を狙うポストを上げるセコさも良かった。

 

25 マヌエル・アカンジ Manuel AKANJI

 ラポルトとアケが怪我したので急遽補強したスイス代表。契約残り1年で安売りしてもらえる、控えを受け入れる、CL経験ある、それなりに組み立てができる・・・という条件に引っかかった。CLで対戦したときはいいプレーをしていた気もする。いちばん大事なのは、英語がちゃんと喋れて社交的なことだ。

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79 ルーク・ムベテ Luke MBETE

 イカれた若手CBメンバーを紹介するぜ!

 

 トップチームでデビューもしてる左利きのムベテ!

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 同じくデビュー済みで196cmの長身、バーンズ!

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 サンダランドでレギュラーを張って昇格したカラム・ドイル!

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 3年後に多分全員売っぱらうマンチェスター・シティ!!!

 

まあそんな感じ。ムベテは高さも強さも上手さもそれなりにあって、上手く育てば2部で長く活躍できるくらいの選手にはなると思うが、プレミアの上位でやるには現状ちょっと厳しいと思う。

 

残酷なようだが、いいタイミングでトップチームに空きがなければ、手放すのが社会にとっての最善手だ。経済的な価値が出なくてスポーツ的にも一番勿体ないのは、プロのリアルな試合で経験を積むべきタイミングで練習試合を続けさせ、選手の大成を阻むことだからである。

 

だから18歳から23歳までの選手開発コストを負担できる中堅クラブに売却し、セルオンと買い戻しを挿し込んでアップサイドを取る・・・ということをセコセコやることになる。ロメオ・ラヴィアをサウサンプトンに売ったのがいい例だ。しかもスカウティングと育成関連費用はFFPのブレークイーブンルールから除外されるし、シティの場合はCFGのスカウティング網を使うことができるので、オーナーの資金力をより効果的に使うことができる(ただ、当事者であるシティジャパン代表の利重氏がFootballistaで語っていたように、グループ全体でグローバルなスカウティング / 育成網を整備する、なんてことは、よほど上手く賢くしつこく執念を持ってやらない限り、コストが容易にベネフィットを上回るだろうとは思うが)。

 

今後、人件費にはキャップがかかるが、シティはその前にアカデミーを選手売却工場に仕立て上げた。最高の選手をスカウトして、最高の教育を受ける(選手はクラブの負担で私立高にも通える)。で、19か20になったら売る。ジェイソン・デナイエルだったかが言っていたように、「毎年4,000万ポンドのやつが外から来るとこに割って入るとか、無理」だからだ。何が言いたいかというと、今後もアカデミーの選手は9割以上そういう扱いだし、多分選手もそのつもりだろう。

 

2 カイル・ウォーカー Kyle WALKER

実は出場試合数、分数ともに毎年ゴリゴリと減少しており、終わりが近づいている感もある。最近は加速に時間がかかるようになってきて、ウィロックとかエゼに置き去りにされることも増えてきた。スーパーなSBだが、確率的な最善手を粛々と取り続けるのが苦手で、どうしても派手に行こうとして失敗するのが勿体ない。もう32なのに。



昨シーズンから2-3-5の3で、アンカー横を担当することが増えた。今はちょっとその前、デ・ブライネ、フォーデン、ベルナルド辺りのバランスが良くないので今ひとつプレスがはまっておらず、ウォーカーも後追いの対応を余儀なくされている。でも衰えてきたとはいえ中央の選手としては異常に速いので面白いコンバートだと思う。あとは咄嗟にファールしないことだが、これも身体が硬いからタックルが下手なのが原因な気がする。その辺りを鍛えてもらって、3年後には35歳のウォーカーロールが見たい。フォアリベロアンカー脇締め右SBカバーだ。

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7 ジョアン・カンセロ João CANCELO

 2年連続プレミアベストイレブン受賞。これはもう完全に、少なくともこの20年のシティでは最高の左サイドバックと言わざるを得まい。近代のシティは本当に左サイドバックだけ固まらなくて、カンセロの次を選ぶとしたらコラロフかひょっとしたらデルフになるくらいなので。

 

 どうでもいいけど、カンセロロールというのは戦術上の発明というよりは、人事評価制度上の発明なんですね。あの役割、すなわちSBの位置から始まって、閉塞したらドリブルで突破するし、逆サイ大外へのクロスでチャンスは作るし、ラストパスは出すし、必要なら裏に飛び出して点を取る、というのは、グアルディオラの改造手術を受けたMFなら結構できる。デ・ブライネやフォーデンは完璧にこなすだろう。ベルナルドも、流石にちょっと身体が小さすぎて厳しいけど、やれないことはないはずだ。別にカンセロである必要はない。

 

 ただし、それができるMFは、普通カンセロの3倍位人件費がかかるのですね。あとSBに置いておくと絶対不満を貯める。だから実質、「できない」に等しい。運用できないから。SBの給料でボランチとトップ下とウィングとセカンドトップの仕事を全部やらせる、という点に、カンセロロールの新しさがある。

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21 セルヒオ・ゴメス Sergio GOMEZ

ベルギーから1,000万€で買える170cmそこそこの21歳で問題が解決するわけないだろ。

 

と思ってしまうんですけど、どうですかね。ポジティブな点を探すとすれば、縦の突破ができる左利きであることか・・・と思ったけど、別にカンセロもグリーリッシュも、幅を取ったり縦を突破したりしようと思えばできるんだよね。ゴメスになったからってそこに差分がどれだけあるのだろうか。グアルディオラの褒め言葉が「U17ワールドカップで準MVP取った」というのも、いやそれはちょっと、どうなんだ・・・という。ちなみに2008年のU17W杯で準MVP取ったのが、今サンフレッチェにいるベン・カリファ。安心と信頼の実績。

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ちなみにそのククレジャ買えなかった事件は、選手本人とも話がついてる、ということで余裕ぶっこいていたらチェルシーと天秤にかけられ、もともとの想定3,000万ポンドから6,200万ポンドまで価格を釣り上げられて怒りの撤退という顛末であった。報道を見ると、昨シーズン終わりの時点でククレジャのシティ移籍は既定路線化しており、最終戦後のロッカールームでは「俺もシティに連れてってくださいよ~」と冗談を言うチームメートもいたと言う。絡み方が完全に日本企業のボンクラサラリーマンで良い。トロサール辺りが言っていてほしい。

想定額の2倍まで来ちゃうとククレジャ自体については正直できることは限られる。でも交渉前にジンチェンコを放出して自ら手を縛るところ、ククレジャ撤退後のオルタナティブが殆どなく結局ジローナにそのままレンタルに出す想定だったセルヒオ・ゴメスで満足したところは、シティのナイーブさ、傲慢さが招いた失敗といえよう。

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 一方で、一度決めたら絶対にそれ以上は出さない財務規律は、ファンとしては信頼がおけるところではある。ビッグクラブが没落するのはバランスシートが腐ったときなので、給料は上げて主力選手の契約は伸ばすが、移籍金を投じるのは、数ヶ月から数年追い続け、戦力・性格・年齢の全てで絶対にほしい選手だけに絞る。コンペにはなるべく参加しない。1stチームの選手は最小限に納める・・・という運営をしていれば、個別の選手レベルで外すことはあっても、窮地に陥るリスクは減らすことができる。短期に個人の名声を追ってもおかしくない環境なのに、CEOのフェラン・ソリアーノとFDのチキ、あとCOOのオマール・ベラダはその点真面目によくやっていると思う。まあ、CL取るには時間がかかるだろうが。

 

82 リコ・ルイス Rico LEWIS

去年のU18のキャプテンで、今年ようやくEDS(リザーブ)に昇格した17歳。RB・LB・ホールディングMFができるミニカンセロ。まだ子供なので、なんとも。

 

97 ジョシュ・ウィルスン=エスブランド Josh WILSON-ESBRAND

ロンドン生まれの若手左SB。まだ18歳。それなりにサイズと筋力があって足も速そう、前向いてボール持つのも怖がらない、といい感じのスキルを実装しているが、如何せん育てながら勝つようなリーグでもないので、今季もほとんど出番はなさそうな気がする。

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MF

4 カルヴィン・フィリップス Kalvin PHILLIPS

 また扱いやすそうなヨークシャー男取ったな・・・と思った。デルフ、ウォーカー、ストーンズ。みんなヨークシャー男。そりゃ馴染むだろうよ。直接的にはフェルナンジーニョの後釜としてロドリを支えつつ、0.5列前のCMFもやるという名目で雇われたと思われる。

個人的には、最近ネットで見た「近代のサッカーにおいてイングランド的Box-to-Boxで世界的名選手になることはほぼ無いのではないか」という説が気に入っており、確かにモドリッチやデ・ブライネを見たあとで、長所は上から下までよく走ることです、とか言われてもな。その意味で、ビエルサにアンカー/CBにコンバートされたのはフィリップスにとっては良かったと思う。13/14の優勝を地味に支えたハビ・ガルシア程度には貢献して欲しい。笑顔がかわいい。

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8 イルカイ・ギュンドアン İlkay GÜNDOĞAN

 数年前まで7番で打率2割5分だけどホームランは16本くらい打つみたいな感じだったのに、すっかり必殺仕事人的シャドーストライカーになった。

 そして今シーズンからはキャプテンにも就任。私だけかもしれんけど、ギュンドアンの精神の強さには、プレーの質と関係ない謎の信頼がある。全然周りのこと気にしなさそう。多分ギュンドアンスターリングの二人が近年のシティで一番精神が強かったのではなかろうか。まあ繰り返しだけど、だから良いプレーができるってわけでもないんですが。

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16 ロドリ RODRIGO Hernández

去年は45試合3,900分出て7得点(7得点!)。いつの間にか色んな局面に間に合うようになってるし、パスも遅くなくなったし、ミドルも入るし、いざとなったらドリブルで崩したり空中戦で点も取ったりもできるし、怪しすぎるハンドも見逃してもらえるスーパーアンカーになった。

結局ロドリの遅さは如何ともし難いのではないか、という話を2年くらい前に話していたのだけど、間に合うようになりましたね。プレスがよく掛かるようになったこともあるが、ロドリ本人の引っ掛け性能が上がったのかもしれない。股関節周りの可動域と筋肉がめちゃんこ強化された気がする。パスも走るし回転もできるのでボールが引っ掛けられないし突かれない…そして元より背は高いし腕も長い。買ってよかったロドリ。「アトレティコがロドリの代役にジャカをリストアップ」というニュースを聞いて不安になったのも遠い昔だ。

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17 ケヴィン・デ・ブライネ Kevin De BRUYNE

結局、デ・ブライネの足は速いのか。

 

20代後半から30代前半の日本人男性はサッカー選手を見ると瞬時にウイイレの能力値に変換できる、というのは有名な話だが、デ・ブライネの足回りは7年経ってもイメージがつかない。なんとなくだが、

  • トップスピード =そうでもない
  • 加速力 =結構ある
  • アジリティ =ない
  • ドリブルスピード =あるっちゃあ、ある

という曖昧な評価に落ち着いているような気がする。

 

でもドリブルしてるとき、めっちゃ速くないだろうか?。静止状態からヨーイドンは大したことないが、スピードに乗ったあとのドリブル、追いつけた人間がそんなにいないくらい速い気がする。つまり

  • トップスピード =かなり速い
  • 加速力 =ない(時間がかかる)
  • アジリティ =そこそこある
  • ドリブルスピード =世界屈指にある(ボールコントロールが上手いので)

ということなのではあるまいか。ちなみに昨シーズンのチャンピオンズリーグで、デ・ブライネは計測史上最速の39.1km/hを記録したそうです。比較のために言うとカイル・ウォーカースターリングで大体34~5km/hくらい。遅い例としてはミルナーで29km/h。39・・・・?

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これまでに選手間投票で2回、スポンサー投票で2回の計4回、プレミアのシーズンMVP受賞。去年はアシストが一桁に減った代わりに裏に飛び出すようになり、シーズン15点も取った。xGが6.4しかない中で15点取るのは相当スーパーゴール決めないとできない。例えば6ヤードボックスの横は普通の選手だと普通入らないが、デ・ブライネは結構入るようになった。これができると、カットインとの2択ができるので強い・・・が、今年はホーランが来たので、またアシスト屋に戻るかもしれない。

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20 ベルナルド・シルバ BERNARDO SILVA

ベルナルド泣く。

 

3年連続3回目の移籍希望はまたも失敗。スペインのジャーナリストにはすごいヤツがいて、「4,500万€で合意した」「ベルナルドの移籍、マ~ジでHOTです!!友達呼んできてッ!!!」「アイアイアイアイアイッ!」みたいなことを毎日書く(最後のはグアルディオラが8/31に「移籍はもう終わりか?さあ、どうだろうね」と答えたことに対してだったが、蓋を開けたらアカンジを取る話だった。)。流石に4,500万なわけあるかい。

 

で、ベルナルドは毎年泣くのである。開幕2試合目くらいの、移籍の噂が盛り上がったくらいの段階で、ファンの前で思わせぶりに泣く。シャツあげたりとかして。そして残留する。いや残るんかい!心臓に悪いからやめてくれやその習性。

 

グアルディオラのシティにおいて、ベルナルドは1番か2番めくらいに重要で、代えが効かない選手であり続けてきた。ボールを失わないからスピードが落とせてハメ技に移行できるし、FWのポジションからDFラインまでの戻りが90分間ずっと間に合うので、ハイプレスとリトリートの組み合わせもできる。そしてボールも運べる。

ので来年失うと大変なんだけど、まあ6年いたらそろそろいいかという気もする。やっぱり誰しもバルセロナ住みたいし。少なくとも私は住みたい。朝起きたらチュロスをホットチョコに浸して食べて、夜はセルべセリア・デ・カタラナでピンチョスを食べて寝たい。

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FW

9 アーリン・ホーラン Erling HÅLAND

 移籍金がおもったより安くてマスメディア的には面白くなかったので、代理人への手数料や今後の契約期間中の給与を全部合計して移籍金っぽく報道する、というホーラン算が急遽発明されたのが面白かった。

 

 ここでホーランがいかに凄いか嬉しそうに喋っても鬱陶しいだけだろうから止めておくが、点を取ったあとのアクションが派手なのは、爽快感があってよい。やはりあのデカい体、べらぼうな跳躍力でジャンプしながらガッツポーズ決めてカメラも揺らしてくれるとテンションが上がる。そういうカタルシスを生んでほしい。そのための投資だ。

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10 ジャック・グリーリッシュ Jack GREALISH

 「ナスリはアーセナルを出ていってから大成しなかった」派と、「いやリーグ優勝2回もしてるし」派の論争、いわゆるナスリ問題の当事者。ナスリの場合は正直どっちの陣営もそこまでナスリに思い入れがないため、さして盛り上がらずどっちらけになるのであるが、グリーリッシュも期待外れ派といや良い働きしてるよ派で論争の的になっている。Twitterは尖ったこと言って人気者になりたい人の巣なので、「パウンドフォーパウンドで言えば歴史上最悪の移籍」とか突っ走ってしまう自己顕示欲モンスターも出てくる。

 

 ボールキープしてハメ技移行を支援できるのがグアルディオラには好かれていたり、90分当たりのアシスト数で見ればプレミア1位だったりと良いとこもあるし、正直悪いプレーは一つもしてないが、流石にもうちょっと点かアシストかしないと、「半額で買えるやつ買って、残り左サイドバックに回した方が良かったじゃん」と言われるのは避けられないと思う。

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19 フリアン・アルバレス Julián ÁLVAREZ

 リーベルから買ってきた、ウイングもできる若手FW。めちゃ運動量がある。パレス戦では左ウイングから右のサイド際まで流れてまた左に戻る、という動きを20秒くらいの間に一度も止まらずにやっており、なんかそういう虫いるよねと思った。多分今のシティで、ウォーカーの次に真っ当なSBの素質がある。

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 実はあんまりアルバレスについてする話がないので、アルバレスアグエロの前のアルゼンチン人FWの話をしたい。そう、人呼んで永遠のゼロ。ビセンテ・マティアス・ブオソである。

 

シティの最悪補強はマンガラとかボニーではない。だってブオソなんて、試合に出てないもん。1試合、1分たりとも。350万ポンドもかけて買ったのに。その頃のシティの事業規模は今の1/11くらいだから、今の価値で言えば4,000万ポンドくらいにはなる。その額で取った選手がシティでの出場試合数ゼロで消えるなどありえない・・・今やったらチキの首が飛ぶ話だ(この写真も、一体誰がいつ撮ったんだって感じだ)。

VIcente Matías Vuoso Archives | Sopitas.com

 

シティが最後にプレミアに昇格したのは2002年の夏だったが、そのとき取ったFWの1人がこのブオソだった。シティのFWはアネルカを筆頭に昇格チームとしては破格の陣容で、そこに重ねて取ってきたもんだからさぞかしやるんだろうなと思っていただけに「1秒たりとも見たことがない」ということがめちゃめちゃ記憶に残っている。*4

 

26 リヤド・マレズ Riyad MAHREZ

右ウイング。ポジショナル教団の洗脳で人の心を失った。もうシーズン17得点11アシストもしないし、カウンターで自由にドリブルもしないが、守備もするし、そこそこ点も取るし、良いところで点は取る。17/18以降のCL決勝ラウンドの得点数で見るとマレズはジェズス、スターリングには劣っているが、ベスト8以降に絞れば1位だ(というか、ベスト8以降でしか点を取ってない)。実はNPG-xG*5で見るとマイナスなので、マレズがもっと決めてればって試合があったってコト・・・・?と思わなくもないが、まあ逆足WGでこれだけ点が取れるやつを探すのも難しいだろう。

最近、3年後の34歳まで契約を延長。ベテランをさっさと切るシティにおいて、同い年のデ・ブライネと並んで、シルバ、ヤヤ・トゥレ並の高待遇を受けている。

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47 フィル・フォーデン Phil FODEN

もう2030年でしたっけ。早いですね。試合には出たり出なかったりです。出たら一生懸命走ります。ドリブルは、今でも結構自信ありますしね(笑)。

 

Young Player of the Seasonをもらっていた頃は、いずれ自分もケヴィンのようになると思ってました。ローテーションされない選手。特別な選手。週に3,800万もらう選手。でも1年が過ぎ、3年が過ぎ、5年が過ぎても、僕は試合に出たり出なかったりする選手でした。もう長いこと、個人賞ももらっていません。代表には去年の夏以来呼ばれなくなりました。

 

ファンからは相変わらず応援してもらえます。地元ですから。でも最近、僕を見るファンの目に、ためらいがあるのを感じます。そういうのって、選手はわかるんです。この間、エージェントから「ウェストハムが欲しがってる」と言われました。今年で30歳になります。

 

 

 

―――――――――ってなったらどうしよう、と思って夜中にちいかわのように目が覚めました。ワッワッワアッ。

いや、そんなことにはならないと思ってはいるし、昨シーズンも最優秀若手選手賞取ってはいる。偽9番で頑張ってもいた。とはいえ1年前の今日と比べて、明確にステージ上がったか?という気もする。若手の寿命はセミより短い。振り向けばデレ・アリだ。

 

 試合を見てれば、CLベスト8クラスの相手に膠着した試合で、一番気合で打開出来そうなのがフォーデンなのは自明だ。それでもなお、フォーデンには押しも押されぬスーパーパワー、毎試合格の違いを見せる選手になってほしいのだ。頼む、なってくれや。あと契約更新してくれや。

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80 コール・パーマー Cole PALMER

身長189cm、ヒョロヒョロの右ウイング。8歳からシティ所属。ストックポートのフォーデン、サルフォードのマカティー、ウィゼンショウのパーマーで、ブルーなヤツは大体トモダチ、マンチェスター近郊育ちトリオ。

気に入った選手は手元・・・というのはつまりベンチに置きたがるグアルディオラのせいでトップチームに去年から帯同、CL含めてカップ戦全部で点を決めて前途洋々だったが、怪我で後半戦を棒に振った。同い年のカルヴァーリョリヴァプール)と比べてもプレミア2での成績はパーマーの方が上なくらいだったんだけど、去年1年は非常に勿体ないことをしたと言える。ちなみにカルヴァーリョは2部でレギュラーになって二桁取ってフラムの昇格に貢献している。

 

 この20年でシティのアカデミーからレギュラークラスに定着したのはマイカ・リチャーズアイルランド、フォーデンの3人しかいない*6のでもう期待もしなくなったが、パーマーは良すぎる。とくに、細身の割にはストライドが長いので、軽く振っても強いシュートが撃てるのが素晴らしい。足は遅いけどアジリティはあるし。プレミア下位・CLのGL4位相手ならもう通用するレベルなので、マレズを跳ね除けてワールドクラスになって欲しい。かなり難しいが。

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*1:厳密には、現場のグアルディオラはそんなの関係なく、アレクシスやケインを欲しがっている。フロントは一応承諾したが、グアルディオラとは温度差があったと報道されている

*2:PSxG-GA

*3:シティは副キャプテンが4人いる

*4:ブオソの名誉のために言えば、リザーブでは得点を量産していたのに使われなかったので、ブオソ自身も憤慨していたらしい。メキシコに逃げてからは立派なストライカーとして大成していた。

*5:PKを除いた、ゴール期待値に対する実際の得点数

*6:短期間でいいなら、マイケル・ジョンソンとか、スティーヴン・ジョーダンとかも居なくはないが・・・・