選手名カタカナ表記審議会の歴史

承前。

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古代。そこには混沌があった。

山々は火を噴き、恐竜たちが原野を闊歩し、アクセンチュアは世界選抜vs日韓選抜なる謎の親善試合をスポンサードしていた。

youtu.be

 

その頃海外サッカー同好の士が集っていたのが、最大手のウイニングイレブンファンサイト、WE HOLICであった。人々は日韓W杯で日本と戦うロシアのエース、Yegor Titovをどう表記すべきかについて、果てなき論争を繰り広げていた。「チトフ」「いや、ティトフ」「ていうか、イェゴールだよね(笑)」「いや、イ”ー”ゴリと聞きましたよ?」。それはさながら、己の排泄物を投げ合う類人猿であった。

 

やがてその中にも、モノリスに触れて知恵を持つものが現れた。彼らは言った―「カタカナ表記で外国語を正確に表すのは無理であり、伝わりすれば何でもよいのである」。ある意味では正論ではあり、糞の雪合戦は一定の鎮静を見たが、これもまた不完全な答えに過ぎず、むしろ問題を「正しさ」の土俵に持ち込んでいるという意味では議論を後退させていると言えなくもなかった。

 

より生産的に、より気持ち悪さを感じないように、カタカナ表記で遊びたい。人々のさして切ならざる願いから、「現地語の発音をなるべく尊重したもの」「一般に膾炙した日本語表記に一定の配慮を払ったもの」「日本語としての社会的風俗に配慮したもの」の3つを原則として、ここ、麻布十番の雑居ビルにおいて、選手名カタカナ表記審議会は生まれたのであった。その2年後には英国支部が開設され、バウンダリ・ロードのイタリア料理店「モルソ」の二階に本拠を構えた。

 

 

早すぎたドゥサイイ革命

マルセル・デサイーであった。彼の名は。

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CL制覇2回、W杯制覇1回。歴史にその名を残すCBであるが、完全に定着しつつあったその表記に真っ向から挑戦状を叩きつけたのが、当時ワールドサッカーダイジェスト、ワールドサッカーグラフィックとともに一時代を築いたサッカー誌、ワールドサッカーマガジン(WSM)であった。

 

WSMは書いた。「ドゥサイイー」と。ドゥ・サ・イ・イー。イが2回でしかも伸ばす。あまりにも素っ頓狂すぎ、当時のサッカーキッズたちは困惑するばかりであった。デサイーだけではない。「ネドビェド(ネドベド)」「シフィエチェフスキ(スビエルチェウスキ)」「バウデベイン(ボウデヴィン)・ゼンデン」と、WSMの挑戦は留まるところを知らなかった。今となっては、WSMは自らの原則―より現地語発音に近いカタカナ表記を追求する―にストイックであったことが分かっているが、2000年代前半の日本のサッカーファンの多くにとって、そのスピードについていくことは困難であった。

 

2008年、ライターユニット・いとうやまね氏の国歌連載を後世に残し、WSMはその歴史的役割を終えたのであった。2022年の今「デサイー」を採るものは、その原則に沿う限り、マンチェスターUからマルセイユに移籍したコートジボワール人DFのことを「エリック・バイー」と表記するのか否か、というジレンマに苦しめられている。「ミニモニ。ジャンケンぴょん!」の効果音っぽくなるためである。

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WSGの乱

海外サッカー誌3強の一角であり、最大のイロモノ。それがワールドサッカーグラフィック、通称WSGであった。WSGは様々な面で競合誌と差別化を図った―カートゥーンの多用、Jリーグとの接点の掘り起こし(『菊とフットボーラー』)、インターネットのいち早い活用。しかし彼らはカタカナ表記でも差別化を図るという暴挙に出たのである。まず「v」は全部「ヴ」。基本的にはvとbが同じ音のスペイン語でも「ヴ」。ヴィセンテ、ヴァレロン、ヴァルヴェルデ。カシージャスも「カシーリャス」で、ジダンは「ジダヌ」であった。98年W杯で完全に世界のスーパースターとしてお茶の間に定着したジダンの表記をひっくり返そうというその蛮勇はサッカーファンを戦慄せしめた。

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*1

 

そして何より、WSGは原則というものを持たなかった。いや、原則がないことを原則としていたというべきか。WSGにとって、2回めの「v」は「ブ」なのである。よってWSGにとってアタランタを率いていた監督は、「ジョヴァンニ・ヴァバッソーリ」であり、ビエルサ政権のアルゼンチン代表で3バックの右を担ったDFは「ネルソン・ヴィーバス」なのであった。

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2003年に出版元がビクターエンタテインメントからぴあに移ると、WSGの暴走は更に加速した。「ヨーロピアン・フットボール 選手名鑑」の刊行である。主要国については一部はおろか、二部の全クラブ全選手を網羅するという暴挙。インターネットでもろくに情報が収集できない時代、そして国籍と言語に対するおそらくは多分に無知、あるいは掘り下げるにはあまりにも多忙な編集部事情を反映したと思しき伝説的カタカナ表記が生まれた怪作として、選手名カタカナ表記審議会員からの評価は高い一作である。

honto.jp

 

現代を生きる我々にとって、WSGがどのような考えをもって原則なき原則を貫いていたかを知る術は、もはやない。さらばWSG。時代の徒花として生き、そして散ったWSG。あなたがホルヘ・ミムーラに会うことはもうない。

 

閑話休題

ここで我々は、選手名カタカナ表記審議会のもう一つの原則に触れなければならない。我々は会話における発音を取り扱わない。あくまで表記されたものを問題とするのである。オーラルに発音されるものには個々人の訛り、その場を構成する人々の関係性、雰囲気、その他様々なものが入り混じっており、かつ何よりも、口で言う分にはちょっと「ん・・・?」と思われてもゴリ押しできるのである。我々は表記されたものを扱い、遊ぶ。クチはしない、手だけ。これが選手名カタカナ表記審議会、第4の原則である。

 

 

最強の刺客■■■

選手名カタカナ表記審議会3原則の1つ、「日本語としての社会的風俗に配慮したもの」。これを根本から崩壊せしめんとした最強の刺客こそが、レイモンド・■■■であった。

ja.wikipedia.org

 

あまりにも直球。

佐々木朗希も真っ青の剛速球に対して、サッカー界は様々な対策を講じてきた。米IMGが制作し、かつてNHKBSで放送されていた「世界のサッカー」ことFIFDAフットボール・ムンディアルは、「名字を読まない」という道を選んだ。「レイモンド」と呼び続ける倉敷保雄氏の姿は、さながら放送コードの守護神として多くのサッカーファンの記憶に残っている。

一方Goal.comは「マヌコ」を選んだ。多少無理があろうことは承知の上での力技であった。■■■自身のキャリアがPSV移籍以降は上向かず、国内を転々とすることになったためある種の事なきを得たものの、国際的なスターとなっていた場合に耐えられたかどうかは定かではない。

 

 

 

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ペルーからの暗殺者、レイモンドの脅威をやり過ごすことには成功したカ表審。しかし我々の行く先には、歴史の亡霊ドログバ=バマン問題、通俗との戦争ロシア語問題、そして最大の強敵ラシュフッdが待ち構えている。より面白い選手名カタカナ表記を目指して、選手名カタカナ表記審議会は今日も日陰をひっそりと歩き続けるのだ。

*1:画像提供よーへい氏

2022/23 マンチェスター・シティ 展望&選手別プレビュウ

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全宇宙がバルセロナのために点滅していたお陰でプレミアリーグもすっかり霞んでしまったこの夏であるが、シーズンの始めに展望をしておきたい。

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シーズン展望

昨シーズン終わりまでの10年で、マンチェスター・シティは幸運なことに5回も優勝さしてもらった。直近5年は4回勝ってる。シティが勝てば私は嬉しい。ファンなので。一方で、競争のバランスを考えたときに4/5って、実際どう?という思いもなくはない。今年勝ったら5/6。いや、どうでしょうね・・・。まあ勝ったらもちろん喜ぶには喜ぶんですが。

 

そんな煮え切らない今シーズンであるが、CLはもとより、リーグ戦も結構苦労すると見ている。競合に比べて経験のある主力を放出しすぎて、短期的には戦力が落ちているので。

 

リヴァプールが出場時間ベースで去年の8.3%しか戦力を失ってない(ほぼマネ)のに対し、シティは実に17%を失った。放出はジェズス、スターリング、フェルナンジーニョ、ジンチェンコ、ステッフェンで、採ったのはホーラン、アルバレス、K. フィリップス、セルヒオ・ゴメス、オルテガ、アカンジ。緊急補強のアカンジを除けばほぼ全員同じポジションの入れ替えだが、プレミアの経験があるのはフィリップスしかおらず、現時点で明確にアップグレードと言えるのもジェズス→ホーランの得点部分くらいで、補強としての不確実性は結構高い。

 

ホーランはすごいが、去年の時点で既に99点取ってるチームでどれだけ純粋に上乗せできるのかはよくわからない。開幕6試合の時点では昨年の13得点に対して19点と増えているが、最終的にそんなに増えるか?という気もする。99点ってほぼアルティメットでしょう。だとすると99点取って無得点試合が4回だけだった去年と比べて、増分は数%程度にしかならない。

アルバレススターリングやジェズスより見るからにシュートは上手そうだが、スターリングはグアルディオラ政権下でPK除いてシーズン平均15.0点、直近3年だけで見ても平均13.7点取っており、20点くらい採らないと大きな違いはない。ただかつてのロナウド然り、ベイル然り、サラー然り、この辺りの常識を越えてくるのがスーパースターなので、もしかしたらシーズン終わってみたら120点取ってたとかいうことがあるのかも知れん。

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・・・などと言ってはみたものの。他のチームはもっと苦労しているようにも見える。アリソンとエデルソン、ヴァン・ダイクとルベン、マティプストーンズ・・・と1人1人比べていったらわかるが、リヴァプールはGK, CB, WGの質でシティを上回っている。でもカウンターに弱く、怪我人が毎年ほぼ必ず多数出る編成の割には個人への依存度が高すぎる、という問題がずっと解決していない。

サラー、チアゴ、TAA、ヴァン・ダイク、アリソンのスーパーパワーと団結力で、ハマれば世界最強だが、主力が年を食って露骨に走れなくなっており、リーグ戦でシティの上に行くかというとキツそうな気もする。

ちょっとヤヤ・トゥレ、シルバ、アグエロで無理やり点をもぎ取っていたペレグリーニ時代のシティに似ており、コレは勘だが、サラー、ディアス辺りは彼らのキャリアハイと言えるようなスーパースーパースーパーゴールを今シーズン決めるのではないかと思う。まあそれは置いといて、CLではリヴァプールの方が強そうだとは思う。戦力と戦術の特徴上。

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移籍市場

ちなみに、シティの移籍方針自体は概ね間違っておらず、1,2年後には大きな戦力アップが期待できる、よい夏だったと思う。実力はあるけど得意分野とサッカーの方向性がズレていたスターリング、ジェズス、ジンチェンコに良い買い手を見つけることができ、約1億2,500万ポンド近い移籍金を得て、ホーラン、アルバレス、フィリップスなどが買えた。また、若手もよく売れた。全員足してもプレミア出場経験17分の若手9人で、売りに売ったり6,550万ポンドだ。合計約2億ポンドの移籍金収入になった。

 

これだけ売れたのはいくつか理由があり、まずグアルディオラ就任が見えた段階から、Exitが計算できる若い選手しか買わなくなった。GKを除けばどんなに高くても26~7歳の選手しか買っておらず、平均年齢も下がっている。ので、スターリングやジェズスといった、既にひと仕事した選手でも買い手がついた*1

次に、今のCEO(ソリアーノ)は就任したときから育成強化に熱心で、まず地元の獲得競争でマンUに勝てるようになり、10年経った今は世界的にも良い選手が取れるようになってきた。今年これだけ売れたのは、サウサンプトンの新しい採用担当がシティからの転職組で、シティのアカデミーから引き抜くのが大好きだったというのもあるが、まだ手元にはデラップ息子、マカティー、カイキ、オスカル・ボブといった大玉が残っている。加えて、攻撃の選手に比べると値はつきづらいが、ハーウッド=ベリス、カラム・ドイルといった下部で実績がある若手CBも残っているので、あと数千万ポンドは稼げるのではないかと見ている。

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FFPに代わるFSCLRの導入で、各クラブがスカッドに使える額は2023年から段階的に抑えられる。その手前で、アカデミーから選手を売れるようになり、またグローバルスポンサーも増えだして、Covid-19のような特殊要因がなければスポンサーからの資本注入も必要なく経営が回る状態ができたのは有利と言える。

 

クラブへの要望

所有権は構わんが アブダビ以外のスポンサーを増やせ

日産 ソニー 美的にアサヒ ヘイズにシスコにWeWork

もっともっと 積み上げろ

入れるな卵 一つの籠に

 

あゝ 我ら 我ら 

アブダビとの関係を段階的に薄めていけ高校

アブダビとの関係を段階的に薄めていけ高校

 

 

GK

18 シュテファン・オルテガ Stefan ORTEGA 

W杯に備えて出場機会が欲しい第2GKザック・ステッフェンのローン退団に伴い獲得。プレーは全然知らないが、選手名カタカナ表記審議会としては、彼のように「別の言語圏の名前だけど発音は母国に合わせて変わってる」パターンは非常に良いポイントですね。エステバンでなくシュテファン。涎が出ます。似たパターンで言うと、「ターコウスキー」とか、「グロンコウスキー」とか、「プリシック」とかもいいですね。初っ端からシティになんの関係もないが。

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31 エデルソン・モライス EDERSON Moraes

 キックモンスター。最近はCL敗退の痛みに耐えきれないサッカーキッズから、アイツのせいで勝てない的批判を受けることがちょくちょくある。アリソンやクルトワと比べるとセービングでは劣るのは確かで、例えばCLレベルで言えばエデルソンは過去4年の「失点期待値-実際の失点数」*2合計がマイナス、つまり期待値よりも失点してるが、アリソンはそれが+5.0、クルトワに至っては+10.4にもなる。同じようなピンチがあったとしても、1シーズンに2~3点はエデルソンと違ってくるということだ。それが例えばベスト4や決勝で出ると、勝ち負けを分ける差になりうる。

 

 一方でこれを替えるとすると、多分アリソンレベルに何でもできるクラスの選手でないと効果が小さい。というのは、スタッツを見れば一目瞭然だが、エデルソンよりセービングがいい選手(例えばだけど、プレミアビッグ6で言えばメンディ、ヨリス、デ・ヘア)は基本的に守備範囲が狭く、エデルソンの恐らく数倍はキックミスでボールを失う。そうなるとDFラインの人選から全部作り直しなので、それを1シーズンでやるのは難しい。だから替えるにしても、ウォーカーに限界が来て、ストーンズラポルトのどちらかが出ていきたいと言い出したくらいのタイミング、つまり数年後だろうと思う。

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32 スコット・カーソン Scott CARSON

 第3GKを務める朗らかおじさん。朗らかであることが最大の価値。思えば19のときにリヴァプールに買われたんでしたね。しかも75万ポンドで。この「イェジ・ドゥデクやペペ・レイナがいる状況で、20歳手前の一番伸び盛りのGKを控えで、しかも安値で買う」という行動が現代ではあり得なさすぎ、20年の時の経過に驚く。

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DF

3 ルベン・ディアス RÚBEN Dias

YouTubeアルゴリズムって頭悪いんじゃないかと思っていて、お前は何回俺に“Plastic Love”のカバーを聞かせるつもりなんだという感じだが、The Chainsmokersの“Closer”が流れるたびに私はなぜかルベンを思い出してしまう。広い肩幅、厚い胸板、長い腕、とっぽい顔。2010年代のあの、男女の性欲をInstagramのフィルターでおしゃれに加工した、映えるMVの楽曲に出てきそうな感じがめっちゃする。要するにアルファオスっぽい。

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という話はどうでもいいですが。2年前に加入して、いきなりリーグMVP、チームMVP、リーグベストイレブン、ESMベストイレブンFIFAベストイレブン、CL最優秀DF賞を取って瞬く間にシティファンの心を掴んだ。コンパニ以降、ようやく全幅の信頼がおけるCBと言えよう。と考えると結局はデュエルの強さなのだ。

 

ちなみにデュエルという意味では、やはりリヴァプールのCB陣はいい選手を揃えており、ヴァン・ダイクが193cm92kg、マティプが195cm90kg、コナテが194cm95kg、ゴメスが188cm77kgと見事と言うしかない体躯だ。それであれだけ走れてボールも扱えるし。そのままだとかなり高額になりそうだが、ヴァン・ダイク以外はほぼ全員スペということで給与のバランスが保たれている。戦力的にはバランス取れてないけど。一方シティは、組み立て貢献度が高いやつを優先した結果、ルベンが186cm76kg、ラポルトが191cm86kg、ストーンズが188cm70kg、アケに至っては180cm75kgで、身体が言えばいかにも見劣りがする。デュエルが一番強いルベンですら、アイヴァン・トニーやウェストハムのアントニオレベルだとかなりきつい・・・まあさすがにストーンズのは古い記録を更新してないだけだと思うが。

 

昨シーズンは2-3-5でやってみっか!の結果、管理するスペースが増えて苦労していたが、CB陣では一番頼れた。今期は副キャプテン*3にも就任。

 

5 ジョン・ストーンズ John STONES

こうからの


こう来て

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こう。

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で、これ。 

www.si.com

いやー知ってたわ。完全に知ってた。EUROでレギュラー張ってそのままシーズンとか、耐えられるわけないもんな。加入して6年、一度も「フル稼働」できたことがないのに、ヴァン・ダイクより高い給料をもらうというのは如何なものか。

リヴァプールマティプストーンズによく似た選手で、怪我さえしてなけりゃ強くて上手くてそこそこ速い好選手なのだが、もう怪我なしの状態を想定するのが非現実的なキャリアに来ている(過去5年の出場分数、試合数もそっくりだ)。あと6年目の28歳のイングランド人の割には、リーダーシップを取ってる感がないのもちょっと残念。コンディションが良ければ、守備範囲とデュエルとビルドアップの三角形の面積がプレミア有数に大きい傑物なんだけど。

 

6 ネイサン・アケ Nathan AKÉ

シティのDFは基本ポゼッション能力メインの守備が怪しい奴かスペで、デュエルがCLベスト4レベルで見劣りしないのはルベンとウォーカーくらいなんだが、唯一どっちもそれなりなのがアケ。難点は本当にどっちもそれなりなことだろうか。

ただ去年は、「ワイドレシーバー的な瞬発力がある」「垂直跳びが高い」という特性がセットピースコーチのカルロス・ビセンスとハマって、攻めるときのCKだと頼りになった。あとはそうね、色付きスポーツゴーグルをすると世間的な評価が2割増になると思う。

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14 エメリック・ラポルト Aymeric LAPORTE

女々しくて!女々しくて!!女々しくて!!!

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辛いのよ。実際スペインかイタリア辺りに行けばもっと女々しいふりが上手いCBはたくさんいると思うが、ラポルトはいっつも審判にモゴモゴ不満そうにしている。というのもハチャメチャにアジリティがなく身体の向きも悪いので、ちょっと速い奴にデュエルを仕掛けられるとファールするかされるかオフサイドに逃げるかしかないのだ。しかも左足オンリーなのでドリブル中に絡みつかれるとかなり怪しい。そして性格的には瞬間湯沸かし器と来ている。

と書くとよくそれでやっていけるな感があるが、ラポルトは現実の大惨事を劇場での芝居程度に納める能力もかなり高い。まず、ファールもらって有耶無耶にするのが上手い。体感、3回に1回はどっちらけになって誤魔化せている印象がある。そして自分で点も取る。とくに自らやらかしたときほど取るのだ。シティが世界に誇る劇場型CBと言えよう。

 

総体としては、グアルディオラの戦術に守られていれば、ベストイレブンくらい取る力はある。2018/19に大活躍してからは燻っていたが、昨シーズンはストーンズの怪我に乗じてレギュラーに復帰。最終盤は怪我を押して出場し続け、優勝に大きく貢献。ストーンズがいない間にインスタに「ルベンとラポルト・・・“壁と門”、ってか・・・いや~最強コンビだな俺たち・・・」みたいな既成事実化を狙うポストを上げるセコさも良かった。

 

25 マヌエル・アカンジ Manuel AKANJI

 ラポルトとアケが怪我したので急遽補強したスイス代表。契約残り1年で安売りしてもらえる、控えを受け入れる、CL経験ある、それなりに組み立てができる・・・という条件に引っかかった。CLで対戦したときはいいプレーをしていた気もする。いちばん大事なのは、英語がちゃんと喋れて社交的なことだ。

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79 ルーク・ムベテ Luke MBETE

 イカれた若手CBメンバーを紹介するぜ!

 

 トップチームでデビューもしてる左利きのムベテ!

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 同じくデビュー済みで196cmの長身、バーンズ!

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 サンダランドでレギュラーを張って昇格したカラム・ドイル!

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 3年後に多分全員売っぱらうマンチェスター・シティ!!!

 

まあそんな感じ。ムベテは高さも強さも上手さもそれなりにあって、上手く育てば2部で長く活躍できるくらいの選手にはなると思うが、プレミアの上位でやるには現状ちょっと厳しいと思う。

 

残酷なようだが、いいタイミングでトップチームに空きがなければ、手放すのが社会にとっての最善手だ。経済的な価値が出なくてスポーツ的にも一番勿体ないのは、プロのリアルな試合で経験を積むべきタイミングで練習試合を続けさせ、選手の大成を阻むことだからである。

 

だから18歳から23歳までの選手開発コストを負担できる中堅クラブに売却し、セルオンと買い戻しを挿し込んでアップサイドを取る・・・ということをセコセコやることになる。ロメオ・ラヴィアをサウサンプトンに売ったのがいい例だ。しかもスカウティングと育成関連費用はFFPのブレークイーブンルールから除外されるし、シティの場合はCFGのスカウティング網を使うことができるので、オーナーの資金力をより効果的に使うことができる(ただ、当事者であるシティジャパン代表の利重氏がFootballistaで語っていたように、グループ全体でグローバルなスカウティング / 育成網を整備する、なんてことは、よほど上手く賢くしつこく執念を持ってやらない限り、コストが容易にベネフィットを上回るだろうとは思うが)。

 

今後、人件費にはキャップがかかるが、シティはその前にアカデミーを選手売却工場に仕立て上げた。最高の選手をスカウトして、最高の教育を受ける(選手はクラブの負担で私立高にも通える)。で、19か20になったら売る。ジェイソン・デナイエルだったかが言っていたように、「毎年4,000万ポンドのやつが外から来るとこに割って入るとか、無理」だからだ。何が言いたいかというと、今後もアカデミーの選手は9割以上そういう扱いだし、多分選手もそのつもりだろう。

 

2 カイル・ウォーカー Kyle WALKER

実は出場試合数、分数ともに毎年ゴリゴリと減少しており、終わりが近づいている感もある。最近は加速に時間がかかるようになってきて、ウィロックとかエゼに置き去りにされることも増えてきた。スーパーなSBだが、確率的な最善手を粛々と取り続けるのが苦手で、どうしても派手に行こうとして失敗するのが勿体ない。もう32なのに。



昨シーズンから2-3-5の3で、アンカー横を担当することが増えた。今はちょっとその前、デ・ブライネ、フォーデン、ベルナルド辺りのバランスが良くないので今ひとつプレスがはまっておらず、ウォーカーも後追いの対応を余儀なくされている。でも衰えてきたとはいえ中央の選手としては異常に速いので面白いコンバートだと思う。あとは咄嗟にファールしないことだが、これも身体が硬いからタックルが下手なのが原因な気がする。その辺りを鍛えてもらって、3年後には35歳のウォーカーロールが見たい。フォアリベロアンカー脇締め右SBカバーだ。

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7 ジョアン・カンセロ João CANCELO

 2年連続プレミアベストイレブン受賞。これはもう完全に、少なくともこの20年のシティでは最高の左サイドバックと言わざるを得まい。近代のシティは本当に左サイドバックだけ固まらなくて、カンセロの次を選ぶとしたらコラロフかひょっとしたらデルフになるくらいなので。

 

 どうでもいいけど、カンセロロールというのは戦術上の発明というよりは、人事評価制度上の発明なんですね。あの役割、すなわちSBの位置から始まって、閉塞したらドリブルで突破するし、逆サイ大外へのクロスでチャンスは作るし、ラストパスは出すし、必要なら裏に飛び出して点を取る、というのは、グアルディオラの改造手術を受けたMFなら結構できる。デ・ブライネやフォーデンは完璧にこなすだろう。ベルナルドも、流石にちょっと身体が小さすぎて厳しいけど、やれないことはないはずだ。別にカンセロである必要はない。

 

 ただし、それができるMFは、普通カンセロの3倍位人件費がかかるのですね。あとSBに置いておくと絶対不満を貯める。だから実質、「できない」に等しい。運用できないから。SBの給料でボランチとトップ下とウィングとセカンドトップの仕事を全部やらせる、という点に、カンセロロールの新しさがある。

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21 セルヒオ・ゴメス Sergio GOMEZ

ベルギーから1,000万€で買える170cmそこそこの21歳で問題が解決するわけないだろ。

 

と思ってしまうんですけど、どうですかね。ポジティブな点を探すとすれば、縦の突破ができる左利きであることか・・・と思ったけど、別にカンセロもグリーリッシュも、幅を取ったり縦を突破したりしようと思えばできるんだよね。ゴメスになったからってそこに差分がどれだけあるのだろうか。グアルディオラの褒め言葉が「U17ワールドカップで準MVP取った」というのも、いやそれはちょっと、どうなんだ・・・という。ちなみに2008年のU17W杯で準MVP取ったのが、今サンフレッチェにいるベン・カリファ。安心と信頼の実績。

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ちなみにそのククレジャ買えなかった事件は、選手本人とも話がついてる、ということで余裕ぶっこいていたらチェルシーと天秤にかけられ、もともとの想定3,000万ポンドから6,200万ポンドまで価格を釣り上げられて怒りの撤退という顛末であった。報道を見ると、昨シーズン終わりの時点でククレジャのシティ移籍は既定路線化しており、最終戦後のロッカールームでは「俺もシティに連れてってくださいよ~」と冗談を言うチームメートもいたと言う。絡み方が完全に日本企業のボンクラサラリーマンで良い。トロサール辺りが言っていてほしい。

想定額の2倍まで来ちゃうとククレジャ自体については正直できることは限られる。でも交渉前にジンチェンコを放出して自ら手を縛るところ、ククレジャ撤退後のオルタナティブが殆どなく結局ジローナにそのままレンタルに出す想定だったセルヒオ・ゴメスで満足したところは、シティのナイーブさ、傲慢さが招いた失敗といえよう。

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 一方で、一度決めたら絶対にそれ以上は出さない財務規律は、ファンとしては信頼がおけるところではある。ビッグクラブが没落するのはバランスシートが腐ったときなので、給料は上げて主力選手の契約は伸ばすが、移籍金を投じるのは、数ヶ月から数年追い続け、戦力・性格・年齢の全てで絶対にほしい選手だけに絞る。コンペにはなるべく参加しない。1stチームの選手は最小限に納める・・・という運営をしていれば、個別の選手レベルで外すことはあっても、窮地に陥るリスクは減らすことができる。短期に個人の名声を追ってもおかしくない環境なのに、CEOのフェラン・ソリアーノとFDのチキ、あとCOOのオマール・ベラダはその点真面目によくやっていると思う。まあ、CL取るには時間がかかるだろうが。

 

82 リコ・ルイス Rico LEWIS

去年のU18のキャプテンで、今年ようやくEDS(リザーブ)に昇格した17歳。RB・LB・ホールディングMFができるミニカンセロ。まだ子供なので、なんとも。

 

97 ジョシュ・ウィルスン=エスブランド Josh WILSON-ESBRAND

ロンドン生まれの若手左SB。まだ18歳。それなりにサイズと筋力があって足も速そう、前向いてボール持つのも怖がらない、といい感じのスキルを実装しているが、如何せん育てながら勝つようなリーグでもないので、今季もほとんど出番はなさそうな気がする。

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MF

4 カルヴィン・フィリップス Kalvin PHILLIPS

 また扱いやすそうなヨークシャー男取ったな・・・と思った。デルフ、ウォーカー、ストーンズ。みんなヨークシャー男。そりゃ馴染むだろうよ。直接的にはフェルナンジーニョの後釜としてロドリを支えつつ、0.5列前のCMFもやるという名目で雇われたと思われる。

個人的には、最近ネットで見た「近代のサッカーにおいてイングランド的Box-to-Boxで世界的名選手になることはほぼ無いのではないか」という説が気に入っており、確かにモドリッチやデ・ブライネを見たあとで、長所は上から下までよく走ることです、とか言われてもな。その意味で、ビエルサにアンカー/CBにコンバートされたのはフィリップスにとっては良かったと思う。13/14の優勝を地味に支えたハビ・ガルシア程度には貢献して欲しい。笑顔がかわいい。

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8 イルカイ・ギュンドアン İlkay GÜNDOĞAN

 数年前まで7番で打率2割5分だけどホームランは16本くらい打つみたいな感じだったのに、すっかり必殺仕事人的シャドーストライカーになった。

 そして今シーズンからはキャプテンにも就任。私だけかもしれんけど、ギュンドアンの精神の強さには、プレーの質と関係ない謎の信頼がある。全然周りのこと気にしなさそう。多分ギュンドアンスターリングの二人が近年のシティで一番精神が強かったのではなかろうか。まあ繰り返しだけど、だから良いプレーができるってわけでもないんですが。

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16 ロドリ RODRIGO Hernández

去年は45試合3,900分出て7得点(7得点!)。いつの間にか色んな局面に間に合うようになってるし、パスも遅くなくなったし、ミドルも入るし、いざとなったらドリブルで崩したり空中戦で点も取ったりもできるし、怪しすぎるハンドも見逃してもらえるスーパーアンカーになった。

結局ロドリの遅さは如何ともし難いのではないか、という話を2年くらい前に話していたのだけど、間に合うようになりましたね。プレスがよく掛かるようになったこともあるが、ロドリ本人の引っ掛け性能が上がったのかもしれない。股関節周りの可動域と筋肉がめちゃんこ強化された気がする。パスも走るし回転もできるのでボールが引っ掛けられないし突かれない…そして元より背は高いし腕も長い。買ってよかったロドリ。「アトレティコがロドリの代役にジャカをリストアップ」というニュースを聞いて不安になったのも遠い昔だ。

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17 ケヴィン・デ・ブライネ Kevin De BRUYNE

結局、デ・ブライネの足は速いのか。

 

20代後半から30代前半の日本人男性はサッカー選手を見ると瞬時にウイイレの能力値に変換できる、というのは有名な話だが、デ・ブライネの足回りは7年経ってもイメージがつかない。なんとなくだが、

  • トップスピード =そうでもない
  • 加速力 =結構ある
  • アジリティ =ない
  • ドリブルスピード =あるっちゃあ、ある

という曖昧な評価に落ち着いているような気がする。

 

でもドリブルしてるとき、めっちゃ速くないだろうか?。静止状態からヨーイドンは大したことないが、スピードに乗ったあとのドリブル、追いつけた人間がそんなにいないくらい速い気がする。つまり

  • トップスピード =かなり速い
  • 加速力 =ない(時間がかかる)
  • アジリティ =そこそこある
  • ドリブルスピード =世界屈指にある(ボールコントロールが上手いので)

ということなのではあるまいか。ちなみに昨シーズンのチャンピオンズリーグで、デ・ブライネは計測史上最速の39.1km/hを記録したそうです。比較のために言うとカイル・ウォーカースターリングで大体34~5km/hくらい。遅い例としてはミルナーで29km/h。39・・・・?

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これまでに選手間投票で2回、スポンサー投票で2回の計4回、プレミアのシーズンMVP受賞。去年はアシストが一桁に減った代わりに裏に飛び出すようになり、シーズン15点も取った。xGが6.4しかない中で15点取るのは相当スーパーゴール決めないとできない。例えば6ヤードボックスの横は普通の選手だと普通入らないが、デ・ブライネは結構入るようになった。これができると、カットインとの2択ができるので強い・・・が、今年はホーランが来たので、またアシスト屋に戻るかもしれない。

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20 ベルナルド・シルバ BERNARDO SILVA

ベルナルド泣く。

 

3年連続3回目の移籍希望はまたも失敗。スペインのジャーナリストにはすごいヤツがいて、「4,500万€で合意した」「ベルナルドの移籍、マ~ジでHOTです!!友達呼んできてッ!!!」「アイアイアイアイアイッ!」みたいなことを毎日書く(最後のはグアルディオラが8/31に「移籍はもう終わりか?さあ、どうだろうね」と答えたことに対してだったが、蓋を開けたらアカンジを取る話だった。)。流石に4,500万なわけあるかい。

 

で、ベルナルドは毎年泣くのである。開幕2試合目くらいの、移籍の噂が盛り上がったくらいの段階で、ファンの前で思わせぶりに泣く。シャツあげたりとかして。そして残留する。いや残るんかい!心臓に悪いからやめてくれやその習性。

 

グアルディオラのシティにおいて、ベルナルドは1番か2番めくらいに重要で、代えが効かない選手であり続けてきた。ボールを失わないからスピードが落とせてハメ技に移行できるし、FWのポジションからDFラインまでの戻りが90分間ずっと間に合うので、ハイプレスとリトリートの組み合わせもできる。そしてボールも運べる。

ので来年失うと大変なんだけど、まあ6年いたらそろそろいいかという気もする。やっぱり誰しもバルセロナ住みたいし。少なくとも私は住みたい。朝起きたらチュロスをホットチョコに浸して食べて、夜はセルべセリア・デ・カタラナでピンチョスを食べて寝たい。

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FW

9 アーリン・ホーラン Erling HÅLAND

 移籍金がおもったより安くてマスメディア的には面白くなかったので、代理人への手数料や今後の契約期間中の給与を全部合計して移籍金っぽく報道する、というホーラン算が急遽発明されたのが面白かった。

 

 ここでホーランがいかに凄いか嬉しそうに喋っても鬱陶しいだけだろうから止めておくが、点を取ったあとのアクションが派手なのは、爽快感があってよい。やはりあのデカい体、べらぼうな跳躍力でジャンプしながらガッツポーズ決めてカメラも揺らしてくれるとテンションが上がる。そういうカタルシスを生んでほしい。そのための投資だ。

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10 ジャック・グリーリッシュ Jack GREALISH

 「ナスリはアーセナルを出ていってから大成しなかった」派と、「いやリーグ優勝2回もしてるし」派の論争、いわゆるナスリ問題の当事者。ナスリの場合は正直どっちの陣営もそこまでナスリに思い入れがないため、さして盛り上がらずどっちらけになるのであるが、グリーリッシュも期待外れ派といや良い働きしてるよ派で論争の的になっている。Twitterは尖ったこと言って人気者になりたい人の巣なので、「パウンドフォーパウンドで言えば歴史上最悪の移籍」とか突っ走ってしまう自己顕示欲モンスターも出てくる。

 

 ボールキープしてハメ技移行を支援できるのがグアルディオラには好かれていたり、90分当たりのアシスト数で見ればプレミア1位だったりと良いとこもあるし、正直悪いプレーは一つもしてないが、流石にもうちょっと点かアシストかしないと、「半額で買えるやつ買って、残り左サイドバックに回した方が良かったじゃん」と言われるのは避けられないと思う。

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19 フリアン・アルバレス Julián ÁLVAREZ

 リーベルから買ってきた、ウイングもできる若手FW。めちゃ運動量がある。パレス戦では左ウイングから右のサイド際まで流れてまた左に戻る、という動きを20秒くらいの間に一度も止まらずにやっており、なんかそういう虫いるよねと思った。多分今のシティで、ウォーカーの次に真っ当なSBの素質がある。

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 実はあんまりアルバレスについてする話がないので、アルバレスアグエロの前のアルゼンチン人FWの話をしたい。そう、人呼んで永遠のゼロ。ビセンテ・マティアス・ブオソである。

 

シティの最悪補強はマンガラとかボニーではない。だってブオソなんて、試合に出てないもん。1試合、1分たりとも。350万ポンドもかけて買ったのに。その頃のシティの事業規模は今の1/11くらいだから、今の価値で言えば4,000万ポンドくらいにはなる。その額で取った選手がシティでの出場試合数ゼロで消えるなどありえない・・・今やったらチキの首が飛ぶ話だ(この写真も、一体誰がいつ撮ったんだって感じだ)。

VIcente Matías Vuoso Archives | Sopitas.com

 

シティが最後にプレミアに昇格したのは2002年の夏だったが、そのとき取ったFWの1人がこのブオソだった。シティのFWはアネルカを筆頭に昇格チームとしては破格の陣容で、そこに重ねて取ってきたもんだからさぞかしやるんだろうなと思っていただけに「1秒たりとも見たことがない」ということがめちゃめちゃ記憶に残っている。*4

 

26 リヤド・マレズ Riyad MAHREZ

右ウイング。ポジショナル教団の洗脳で人の心を失った。もうシーズン17得点11アシストもしないし、カウンターで自由にドリブルもしないが、守備もするし、そこそこ点も取るし、良いところで点は取る。17/18以降のCL決勝ラウンドの得点数で見るとマレズはジェズス、スターリングには劣っているが、ベスト8以降に絞れば1位だ(というか、ベスト8以降でしか点を取ってない)。実はNPG-xG*5で見るとマイナスなので、マレズがもっと決めてればって試合があったってコト・・・・?と思わなくもないが、まあ逆足WGでこれだけ点が取れるやつを探すのも難しいだろう。

最近、3年後の34歳まで契約を延長。ベテランをさっさと切るシティにおいて、同い年のデ・ブライネと並んで、シルバ、ヤヤ・トゥレ並の高待遇を受けている。

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47 フィル・フォーデン Phil FODEN

もう2030年でしたっけ。早いですね。試合には出たり出なかったりです。出たら一生懸命走ります。ドリブルは、今でも結構自信ありますしね(笑)。

 

Young Player of the Seasonをもらっていた頃は、いずれ自分もケヴィンのようになると思ってました。ローテーションされない選手。特別な選手。週に3,800万もらう選手。でも1年が過ぎ、3年が過ぎ、5年が過ぎても、僕は試合に出たり出なかったりする選手でした。もう長いこと、個人賞ももらっていません。代表には去年の夏以来呼ばれなくなりました。

 

ファンからは相変わらず応援してもらえます。地元ですから。でも最近、僕を見るファンの目に、ためらいがあるのを感じます。そういうのって、選手はわかるんです。この間、エージェントから「ウェストハムが欲しがってる」と言われました。今年で30歳になります。

 

 

 

―――――――――ってなったらどうしよう、と思って夜中にちいかわのように目が覚めました。ワッワッワアッ。

いや、そんなことにはならないと思ってはいるし、昨シーズンも最優秀若手選手賞取ってはいる。偽9番で頑張ってもいた。とはいえ1年前の今日と比べて、明確にステージ上がったか?という気もする。若手の寿命はセミより短い。振り向けばデレ・アリだ。

 

 試合を見てれば、CLベスト8クラスの相手に膠着した試合で、一番気合で打開出来そうなのがフォーデンなのは自明だ。それでもなお、フォーデンには押しも押されぬスーパーパワー、毎試合格の違いを見せる選手になってほしいのだ。頼む、なってくれや。あと契約更新してくれや。

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80 コール・パーマー Cole PALMER

身長189cm、ヒョロヒョロの右ウイング。8歳からシティ所属。ストックポートのフォーデン、サルフォードのマカティー、ウィゼンショウのパーマーで、ブルーなヤツは大体トモダチ、マンチェスター近郊育ちトリオ。

気に入った選手は手元・・・というのはつまりベンチに置きたがるグアルディオラのせいでトップチームに去年から帯同、CL含めてカップ戦全部で点を決めて前途洋々だったが、怪我で後半戦を棒に振った。同い年のカルヴァーリョリヴァプール)と比べてもプレミア2での成績はパーマーの方が上なくらいだったんだけど、去年1年は非常に勿体ないことをしたと言える。ちなみにカルヴァーリョは2部でレギュラーになって二桁取ってフラムの昇格に貢献している。

 

 この20年でシティのアカデミーからレギュラークラスに定着したのはマイカ・リチャーズアイルランド、フォーデンの3人しかいない*6のでもう期待もしなくなったが、パーマーは良すぎる。とくに、細身の割にはストライドが長いので、軽く振っても強いシュートが撃てるのが素晴らしい。足は遅いけどアジリティはあるし。プレミア下位・CLのGL4位相手ならもう通用するレベルなので、マレズを跳ね除けてワールドクラスになって欲しい。かなり難しいが。

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*1:厳密には、現場のグアルディオラはそんなの関係なく、アレクシスやケインを欲しがっている。フロントは一応承諾したが、グアルディオラとは温度差があったと報道されている

*2:PSxG-GA

*3:シティは副キャプテンが4人いる

*4:ブオソの名誉のために言えば、リザーブでは得点を量産していたのに使われなかったので、ブオソ自身も憤慨していたらしい。メキシコに逃げてからは立派なストライカーとして大成していた。

*5:PKを除いた、ゴール期待値に対する実際の得点数

*6:短期間でいいなら、マイケル・ジョンソンとか、スティーヴン・ジョーダンとかも居なくはないが・・・・

雑談:2021/22シーズンのマンチェスター・シティ プレビュウ

いきなり何言ってんだと思うだろうけど、今年リーグで優勝しないくらいが良いと思うんですよね。もう。この5年で3回優勝でしょ。で今年も勝ったら4回でしょ?ちょっとバランス悪くないですか。

 

スーパーリーグ構想のときに最後まで荒れて実力に訴えていたのはマンユナイテッドのファンだったが、言うちゃなんだけど結局結果が出てるか出てないかの影響が大きいと思っている。シティにせよリヴァプールにせよチェルシーにせよ、今の経営体制でいい思いさしてもらっているが、マンUのファンは(ほとんど)していない。ドイツは今のところ国に金があるので何とかなっているが、競争のバランスが崩れたところに金がなくなるともうスーパーリーグ自爆スイッチを押すしかなくなるのはイタリアやスペインの通りだ。だから色んなところがある程度順繰りで勝つようになってた方が良いんだよな。

www.wsj.com

 

と、去年勝つとまあこんな調子ぶっこいたことも言えるということでもありますが。そういう意味では、今年はチェルシーマンUの補強が豪華すぎ、またケイン獲得失敗の顛末もあって、どうも「シティは移籍市場で失敗した」というナラティブが巷に感じられる。

 

私の記憶が正しければこんなナラティブがあったのは2012年の夏が最後だが、CL優勝しなければ失敗、優勝したら「国家プレイ不公平だと思います。人権侵害。」という袋小路に追い込まれてしまっている(自業自得だが)シティにとっては決して悪い状態ではないなとか思ったりする。

 

 

ひと夏のハリケーン

シティが試合に負けるときは構造的に必ず決定力不足が原因になるようになっていて、というのは誰が相手でもチャンスは作るのだから、負けるとしたら決定力不足か撃ち負けるかしかない。CL決勝のチェルシーくらいか、例外は。

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昨年末の段階で、ケインは移籍できないだろうなと思っていた。案の定そうなったわけだが、別にそれは難しい予想ではない。今時珍しい売却条項なしの長期契約を結んでしまった時点で、移籍したい選手、つまりケインにとっては取れるオプションが実質「色んなやり方でゴネる」しかない。ケインが移籍したがっているのは誰の目にも明らかだったが、ダニエル・レヴィにとって生え抜きでエースで主将の選手を手放すハードルは高く、当たり前だがシティも価値に見合った額だと思っている額しか出す気はなく、ケインにとっては初手からほぼほぼ詰んでいた。

 

気になった人:ハリー・ケイン

さてケイン。

ケインのことだけに限って言えば、本当に移籍したいのかどうかは置いといて(したいようにしか見えんが)、もう長期契約しちゃったから逃げられない。

ケインにできることといえば「このままじゃやる気なくなるかも・・・」とかってソフトに脅すくらいしかない。多分移籍はできないだろうと見ている*1。

wegottadigitupsomehow.hatenablog.com

 

ゴネるためには同僚や上司やファンに白い目をされながらも突き通す根性が必要になるが、ケインにそれだけの根性はなかっただろうことは、EURO明けで練習をサボってはみたものの、数週間もしないうちに「練習をサボったわけではない!それだけはわかっていただきたい!」みたいな声明(じゃあ一体何なんだよ、と世界中が思っただろう)を出して保身を図っていたことからも明らかであった。根性ないと言うと聞こえが悪いが、それだけスパーズを愛していたのかもしれないし、倫理観があるとも言える。スパーズファンの一部が「まだ移籍したいのかどうかは確かじゃない」みたいなピンクユニコーン探しをしていて切なくなったが、例えば明日フォーデンがチェルシーに行きたいと言い出したらシティファンもそうなるだろう。サッカーファンダムは切ない。

 

まあどっちにせよ、今の職場が一番良いんだと自分に言い聞かせて頑張るしかない。頑張ってほしい。

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換えが効かないベルナルド

昨シーズン中盤の連勝を支えたギュンドアン=ベルナルド=カンセロのポジションローテーションは既にシーズン終盤には対策が編み出されており、CLの最後の方はセットプレー以外には「フォーデンが気合でなんとかする」しかソリューションがない状況であった。で、結局他チーム比でそんなに決定的なセンターフォワードが来なかったので、色々やるけどイマイチ点が入らんな症候群は続くだろう。

 

ただ、守備が機能していれば寄り切り寄り切りで勝ち点は拾える。一つの条件はルベン、ストーンズ、ウォーカーが故障なく出場することで、これは一応3人揃っているのであとは怪我しないように祈りたい。サウスゲイトのアホがストーンズを使いすぎないように、タイロン・ミングスアゲ↑アゲ↑運動を展開していく仲間を募集しています。

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でもう一つは「明神智和界のメッシ」「水を運ぶ人スーパーDX」ことベルナルド・シルバがコンディションを保って試合に出続けることで、ベルナルドがいるとひとまずプレスが形になる。そういう意味で今のシティで一番換えが効かないのはルベンでもデ・ブライネでもなくベルナルドかエデルソンなので、本人は出ていきたくても後1年2年頑張って働いてほしい。

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スターリング再覚醒どうかね

去年はできないことをやらされすぎて出来ることもさっぱり出来なくなったスターリングだが、やっぱり色々考えるとこいつオモロすぎか?って思った。120分間ずっとあのスピードで走り続けられるの超人すぎる。どんだけチャンスに間に合っとんねんと。EUROでスターリングに対応し続けたヴェスターゴーアが最後足に来てヘロヘロになっていたのはいいシーンだった。

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しかもコンディションと使い方が整えば強烈に得点力がある。グアルディオラがグリーリッシュについて「スターリングのように点が取れるようになるよ」と言ってみんな嘲笑していたが、じゃあどこのウィングが3年で80点取れんねんと。モー・サラーくらいのもんで、例えばサンチョは上手いけどまずそんなに点は取れないだろう。

 

ただ基本ボール扱いが下手だし、おそらくは身体の構造上の問題で強いシュートが(条件が揃わないと)打てないので、注意して使わないとすぐイライラ製造機になってしまう。見てないけど開幕戦もなんかそんな感じだったんでしょ?タンガンガにせよ、ワン=ビサカにせよ、左ウィングで狭いところに入れて勝負さしたらいかんのよね。やっぱりCFか右のウィング、あるいは何ならインサイドハーフで使うのがカッコいい。

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じゃあ現実的にはやっぱり右なのか、という話になるが、ノリッジ戦・アーセナル戦でガブリエウ・ジェズスが右ウィングとして3アシストを叩き出してきた。いや、たしかにウィングの方がいい選手だと思うよって言いました。言ったけど、更に右ウィング増やしてどうすんじゃい。しかもフェラン・トーレスを今年は中で使うという。いや、面白いは面白いが。

 

 

グリーリッシュ、あるいは巨人の石井浩郎

そのヴィラから来た人だが、きっと活躍することでしょう。もうハマってるし、基本めちゃくちゃ上手だからな。ドリブルが上手くて複数のエリアを横断しながらプレイできたらもうあとはグアルディオラに改造されるのは目に見えている。

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それは良いけど、「ウィングにマレズ、スターリング、フォーデン、グリーリッシュが揃っています」って、ぶっちゃけどう?あんまりクールじゃなくない?いや4人揃って豪華だなとは思うが。トップトップのシニアな選手が4人て。これはどういう意味かと言うと、シティはコール・パーマーとか、トミー・ドイルとか、ジェイムズ・マカティーとか地元生まれ地元育ちのアンダー代表、しかも肉体的にもトップレベルでそこそこやれそうな選手が結構いるが、彼らは基本3番手以下だということだ。3番手て、基本計算には入ってないっつーことですからね。育てて売って原資が入るねやったーモデルはもうわかったのよ。

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そういう意味では、メンディがまさかの起訴されてしまった左サイドバック / ボランチはいいチャンスなのだが、流石にあのポジションで要求を満たせる肉体的技術的素質を満たせる選手がいると思えないので、カンセロを騙し騙し使っていくしかないのだろう。

 

まあ今年はそんな感じで、書いている人が最近疲れているのでこの辺で。

プレミアが終わったので全チームの感想を言おう(4月~5月編)

 

4/4 レスター ○2-0 (A) | 🦊

鬼門の5-3-2が相手、しかもこちらは代表戦明けでギュンドアン、カンセロ、ベルナルド、フォーデン、スターリング、ストーンズ、ジンチェンコを使わないという構成。これまでならハメられていたこと間違いないが、今回はそうでもなかった。

これは結構えらいことで、このメンバーでもレスター相手に2-0相撲ができたら、国内で勝点を落とす余地は更に少なくなる。例えば1月末のシェフィールドU戦では、この日のようにウォーカーとラポルトフェルナンジーニョを使って、攻撃が詰まりまくっていた。

 

変わった点としては、

  1. ロドリがデ・ブライネ、マレズと一緒に相当広範囲を動いて流動性を提供していた。ロドリはドリブルが上手い上に、周りに人が居さえすれば、CMFとしてもちゃんと役割が果たせる。この二人が3枚の相手MFの横に流れてプレーするので、アヨセは大分面倒くさそうにしていた。
  2. ジェズスとアグエロ縦に動いて相手のDFラインを上下に動かしていた。
  3. こちらの密集度も下げてしまうサイドチェンジを減らして、攻撃を横に狭くしていた。一時期使いまくっていたサイドチェンジだが、どうせすぐ寄せられるから多用すると損、という結論になったようだ。
  4. 硬直型メンバー(具体的にはメンディ)もサーキュレーションがちょっとうまくなっていた。57:32のシーンはいい例だ。

という感じで、5-3-2の泣き所(WBの前、DFラインの裏)にパンチを繰り返して、DFラインとMF3枚の間が空いたらその隙間にデ・ブライネを突っ込む、ということを繰り返していたら、レスターのバイタルエリアがメロメロになった。あとカウンタープレスがむちゃ効いてた。

 

気になった人:ケレチ・イヘアナチョ

皆さんご存知、人を呪わばイヘ穴チョ。2015/16シーズンにはシティ最大の希望だったストライカー。

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速くもないし強くもないけど点は取れるという選手だったが、2年目に点すら取れなくなってどうするべこいつみたいになったところでレスターに2,500万ポンドの高値で売りつけてしまったので、めっちゃ罪悪感があった。リーグ月間MVPを取るところまで仕上げてきてくれて、心の底からホッとしている。

ナチョの良いところは体勢が悪くても強いシュートを枠に収めてくる技術と、ファンタジスタっぽい雰囲気だ。あとシュートを撃つのに時間が要らない。

昔はそれにかまけてあんまり走らない選手だったが、最近はヴァーディーを見習ってか、ちゃんとゴール前に飛び込むようになっているので成長が伺える。ただこの試合では、受けに降りてくるんだけど別に振り切る速さも強さもない、というナチョらしい微妙なところを見せてくれてシティ的には助かった。

 

4/6 CLベスト8 ドルトムント ○2-1(H)

CLってトーナメントだからリーグ戦よりも後先考えずにリソース割けるし、作戦も立てやすいし、そもそも相手が強い(給料の違いは、国が違えば比較できない。例えばあなたの仕事はアメリカでやれば給料2倍だが、だからってアメリカに行けとか言われても困るだろみたいなもんだ)。だからCLで当たる相手が今リーグ5位とか6位といってもあまり参考にならない。それが見事に表れた好ゲームであった。

ドルトムント

  1. シティのDFラインは基本放置する
  2. 中盤に強い選手を5枚並べて圧縮し、必要ならDFラインにも入ってスペースを空けない
  3. でもバイタルも空けないよう、逆サイドはある程度捨てる

をバッチリ決めて、シティが最も流動性を発揮できる面子で揃えてもいつもの流暢さは発揮できなかった。シティもピンチがそんなにあるわけではなかったが、エデルソンがミスって炎上しそうになった。ルールは知らんが、ベリンガムは可哀想というしかない。あとルベンがホーランにぶっ飛ばされた件か。決められなくて良かったねって感じだ。

 

気になった人:マッツ・フメルス

もともと速くないCBが年取って完全についていけなくなっているが、組み立てはべらぼうに上手い。そして対面する選手は不在か、たまに戻ってくるベルナルドだ。ドルトムントはこの賭けに勝った(2失点に目を瞑れば)。多分ジェズスかスターリングを当てた方がフメルス的には嫌だっただろうが、ビッグゲームはベルナルドで手堅く行きたいというグアルディオラの気持ちはよく分かる。

単体ではあまり勝負できないベルナルドを尻目に、ダフード、ゲレイロの激ウマトリオでビルドアップを成功させまくり、マレズにシャトルランを強制していた。その結果が、マレズがスペースを埋めきれなかった同点シーンだと思う。

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4/10 リーズ ●2-1 (H) | 🎸

後半開始のマンチェスター。1-0でリーズがリードも、主将クーパーが一発退場で数的不利。リーズは自陣への後退を選び、ピッチ中央には広大なスペースが残された。ここには誰もいない。ここには誰もいない、から?

そう、ストーンズ大感謝祭の開幕である。

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かくして全世界は、45分に渡ってストーンズの果敢なドリブルとバイタルエリアでのタコ踊りを目撃するになったのだった。もう、ドリブルするする。引かれたらCBがドリブルで運ぶというのはセオリーの一つだろうが、途中からお前完全に好きでやってるやろ感があった。試合は終了間際にカウンターを食らって撃沈。

 

気になった人:マルセロ・ビエルサ

本題はここからで、そのストーンズ大感謝祭、決定的なチャンスになったかというと別になってないのである。

ストーンズは何回仕掛けてもボールを奪われることはなく、何度も相手のゴール前まで迫ってはいたが、いくらドリブルが上手いと言っても所詮CBだし(本当に上手かったらそもそもCBやってない)、ストーンズはミドルが撃てるタイプのCBではない。結局点が取れたのはフェルナンジーニョが代わって運んだときだけだ。

 

じゃあなんでストーンズが一人ロックフェスやってたかというと、多分意識してフェルナンジーニョだけマークして、ストーンズを空けてた。戦力的に劣るチームが勝とうと思ったらどこかを捨てるしかない。数的不利なら尚更だ。

その意味で、「ストーンズにやりたい放題させるのが恐らく一番有利な賭け」と見込んでベットしたビエルサの慧眼と勇気、指導力には脱帽なのだった。ここに救いはない。

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4/14 CLベスト8 ドルトムント ○2-1 (A) 

花火騒動で萎えたので言いたいことも特に無いが、この辺りから大分ギュンドアン=ベルナルドを中心とした全員CMFみみっちサーキュレーションが通用しなくなり始め、かと言ってジェズスもアグエロもフェランも点を取るという意味ではほとんど戦力化できてないので、「フォーデンがなんとかする」というソリューションに頼り始めた。

 

4/17 FAカップ決勝 チェルシー ●1-0

外出していたので見れず。かなり景気の悪い試合だったようで、英語Twitterが荒れていた。でも世の中思い通りに行くことばかりではないので、2年前に勝った大会の決勝で負けた程度で荒れていたら人生どんどん苦しくなるばかりだ。受け入れて酒を飲むしかない。

 

4/21 アストン・ヴィラ ○2-1 (A) 

序盤押せ押せのヴィラだったが、シティが焦りだしてからは押し返せず前半のうちに逆転。ストーンズの退場も、かえって丁寧に行こうとしすぎて上手く行かなかった。ワトキンズは縦横無尽に優位を作れていたので、ワトキンズ一本足打法でもうちょっと行ってみても良かったような気がしなくもない。ドウグラス・ルイスの髪は湘南にいそうで良かった。

 

気になった人:マーベラス・ナカンバ

名前が強い。ジンバブエ代表には他にもタレント・チャワピワ、エルビス・チペゼゼ、ティーンエイジ・ハデベ、ナレッジ・ムソナ、ハードライフ・ズヴィレクウィ、パッション・エンドロなど、ファーストネームがかっこいい選手が揃っている。

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4/24 カラバオカップ決勝 トッテナム ○1-0 | 🐔

既に明らかになったシティ対策を実装できていないところから見て、スパーズは内情かなりドタバタしているのだろうと思った。モウリーニョがつい1週間前に解雇されたのだから無理もない。

シティで一番弱いギュンドアン=カンセロ=ラポルトの三角形(というかもう、ラポルト)をルーカスで突進しまくる作戦は理にかなっていたと思うが、そこまで繋げないのが痛かった。あと左サイドのBTSガメラ2レギオン襲来がウォーカー1人に完全にシメられていたのも辛かった。ウォーカーは結構うっかりが多いというか、変則的な相手には弱いのだが、真正面から当たると厳しい。

 

気になった人:ハリー・ケイン

さてケイン。

ケインのことだけに限って言えば、本当に移籍したいのかどうかは置いといて(したいようにしか見えんが)、もう長期契約しちゃったから逃げられない。

ケインにできることといえば「このままじゃやる気なくなるかも・・・」とかってソフトに脅すくらいしかない。多分移籍はできないだろうと見ている*1

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それはそれとして、アザールなりケインなりコウチーニョなりサネなり、プレミアのメガクラブから主力がどうしても移籍したがっているときは、なるべくプレミアの中で移籍さした方がいい。IPとしてのクラブやリーグの価値に恐らく最も効くのはスター選手の有無なので、プレミアの中に留めておいてリーガやブンデス、セリエへの選手供給を干上がらせ、プレミアとしての放映権料契約を高めるという戦略のほうが、CLに出るか出ないかで収入が大きく変わるというリスクを抑えられる。また売る側にしても、シニアな選手2,3人交換で貰えばかなりの戦力を削ぐことができる。

 

ですけど、ファン感情が難しいわな。私は個人事業主の転職なんだから別にいいじゃんと思ってる方だが、それでも例えば「フォーデンがチェルシーに行きます」とか言われたら嬉しい気持ちにはならないし。

 

5/1 クリスタル・パレス ○2-0(A)

電車の中で途切れ途切れにしか見れなかったが、完全ターンオーバーのサブ組で2-0勝利。こういうやりくりで勝つと嬉しくなるが、パレスの元気の無さがちょっと気になった。もう残留も決まったし、やる気が出しづらかったのだろうか。

シティは中盤をスカスカにして前線を厚くし、WBのクロスか降りてくるアグエロからのコンビネーションで点を取る、というサッカーをしていて、これアレじゃね?日本人にはお馴染み「ミシャ式」じゃね?と思った。

victorysportsnews.com


まあミシャ式は4-1-5で、これは3-1-2(WB)-4だが。ただ、ミシャ式はその変形にかかる時間の長さ、距離の遠さ、途中で関節に挟まってしまう鈴木啓太が最大の(そして負の)特徴であり、そこはトランジション分けたがらない人間のグアルディオラとは設計思想が違うのかも知れない。

 

4/28  CL準決勝 パリSG ○2-1(A) & 5/4 CL準決勝 パリSG ○2-0(H)| 🛢

FIFAアンセムの代わりにUEFAクラブ財務管理機関審査室を称える歌で始まったスポーツウォッシングダービー。「スポンサーフィー」と書かれた飛行機型の風船がパンパンに膨らんで観客席を漂うシーンには、思わずボリス・ジョンソン首相もダウニング街でニッコリ。

というのは置いといて。

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1stレグの前半はシティのプレスがパリに巧みに回避され押し込まれる、苦しい展開。でもデ・ブライネのクロスが直接入って同点になったらパリのメンタルがトロトロ♥になってしまった。とろけるおパリ。

2ndレグも開始直後からこれはちょっとやばいなあと思ってたが、案の定アピールとファールに忙しく、我を忘れて自分たちでどんどん空気を悪くしていった。来年からクラブ名をパリ❤サンジェルマンにしてはどうか。かわいいし。とか言うとじゃあシティは「マンチェスター$シティ」にしろとかって揉めるのでやめましょうね。

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シティは2試合通して(1stレグの後半除いて)「パリのCBからこちらの中盤裏にボールを通される」というまずい状態が継続していたが、ルベンと覚醒ストーンズがいて、中盤も早めに戻ってくるようになった今は耐えられた。あとはお得意のみみっちいサッカーと、ジンチェンコ起点のカウンターでなんとか点を取って勝ち抜け。あの二人には悪いが、今のスターリングとジェズスではカウンターは決められなかったかもしれない。フォーデンとマレズで良かった・・・。

 

ところで、NYTとか色んなメディアで「シティはついに究極の目標に王手をかけた」という趣旨の表現がされていて気持ち悪い。現オーナーの目標はそうかも知れんが、一つのコンペティションで優勝するかしないかということをプロサッカーチームの「究極の目標」になんかしないほうがいい。

そもそも「優勝する、しない」ということはほとんどのクラブにとっては重要なイシューではなく、たった十数個のメガクラブの幸せふわふわワンダーランドの中でしか通用しない極めて特殊な条件だ。存続し続けること、コンペティティブな試合をし続けることの方がよほど重要だろう(もちろん、適度に勝ってないとファンの不満が溜まってしまうが、これはコンペティションの競争バランスと期待値コントロールの問題だ)。スーパーリーグ構想や海外資本の参入にもっともらしく眉をひそめてみる割には、大手メディアはその原動力の方には無頓着である。

長くなったが、要するにこっちが喜ぶのはこっちの勝手だけど、それを他人から「究極の目標だよね笑」とか言われると、知らんしサステナビリティがねえんだよこの野郎って感じだ。

 

気になった人:マルキーニョス

高くて速くて強くて上手い。世界最高のCBの一人だと思う。プレスを物ともせず、ネイマールディ・マリアに縦パスをビシバシ通しまくっていたのは痺れた。惜しむらくはもう少し前に出て潰せるとパリ全体がもっと楽になるんだろうと思ったが、それは能力と言うより戦術上の問題なのかも知れない。

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気になった人:レアンドロ・パレデス

パラグアイにいた別のパレデスと行動原理が全く一緒。

ameblo.jp

 

5/8 チェルシー ●1-2(H)

パリ戦からエデルソンとルベンを残して9人を替えて完全ターンオーバー、先方もチアゴ・シウバジョルジーニョ、マウント、ハヴァーツなどお休み。

密かにプレミアを席巻しているトゥヘルの5-4-・・・2・・・3・・・まあなんだかよくわからんがあの5バックフォーメーションを、同じ5バックを使って機能不全に追い込んだグアルディオラの差配、放り込みの中で躍動する控え連中、インサイドハーフとWGを同時にこなしているスターリングとフェラン、そしてそこから尚も切り返して後半はチャンスを量産したトゥヘル、シティとチェルシーがお互い5バックで刺し合ってるという10年前に聞いたら頭おかしくなったのかと思われそうな事実・・・など全てが「!!!!!!?????」という感じでハイになってしまい、めちゃめちゃ楽しい試合だった。あるいは僕がシャブやってたからかもしれないね。

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こういう感じ

 

中身は後半からプレスが掛からなくなり、チェルシーの裏抜けに対応しきれなくなって最後は決壊。チェルシーにとっては、リース・ジェイムズがメンディを圧倒できていたところが突破口になった。

 

ギュンドアン、フォーデンといった主力を使って勝ちに行ったように見えたシティだったが、やっぱり普段のみみっちいサッカーとこの日の放り込みは活きる選手の特性が結構違うので試合中に方針転換するのが難しい。例えばウォーカーとストーンズはこのフォーメーションだと多分共存できないし、フォーデンとデ・ブライネは裏にスプリントを繰り返すのが上手い選手ではない。でも代わりに今のスターリングとジェズスを出すかと言われるとかなり勇気がいる。

また今日泣き所になった左ウィングバックのポジションはシティのアキレス腱で、ジンチェンコも前後に広いスペースに出ていって潰し合う、走り勝つというのは得意にしていない(多分、カンセロを使うのが一番マシだが、あいにく最近のカンセロは完全に精神が弱っている)。よってCLの決勝でどっちをベースにするのかはかなり難しい判断になりそうだ。いずれにせよ、良いもの見せてもらいました。

 

気になった人:ティモ・ヴェルナー

100エーカーはありそうなオフサイドの森に暮らしているクマちゃん。寝ても覚めてもオフサイド。その姿はあの元シティのFW、そしてノリッジのレジェンド、ダレン・ハッカビーを彷彿とさせたという。

しかしラポルトは裏抜けにほとんどついていけないので、ヴェルナーのしつこい飛び出しはかなり有効打になっていた。決勝点もヴェルナーのアシストだったし。

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5/14 ニューカッスル ○4-3(A)| 🐧

第3GKカーソンのおっさんを筆頭とした控え選手への福利厚生的なメンバー。レスターに5点取られた頃のサイドブレーキかけっぱなしシティが戻ってきており、直線的なパス回しが引っかかってはカウンターを食らっていた。

 

ニューカッスルはサン=マクシマン、アルミロン、ウィロックの突撃が楽しすぎるチームで、前半戦で「日本経済のようにしょぼくれている」とか言ってごめんなさい。ウィロックのパワーと突貫力は、右ウィングとしては最近中々見られないタイプだ。戻ってウーデゴール、サカと組んだらアーセナルの弱点が埋められそう。

 

後半から1トップに入ってハットトリックしたフェランは、1点取るごとに目に見えてあらゆるプレーに自信が溢れまくっていったのが面白かった。何が良いんだか相変わらずよくわからないが、あえて列挙してみるとこんな感じだろうか。

  1. シュートの前のトラップが結構上手い
  2. 強いシュートを撃つのに準備時間があまりかからない
  3. 体勢を崩してもミートするのが上手い
  4. 点が取れそうなところにしっかり走る目と体力がある
  5. WGなのにCFで使っても全然窮屈そうにしてない

5は要するに学習力で、プロダクトとしての能力というより、自分というプロダクトをマネジメントしていく能力だ。で多分グアルディオラが欲しがったのなら、ここが高い選手なんだろう。

 

気になった人:アラン・サン=マクシマン

イソギンチャクっぽい髪型、バカでかいリストバンド、白いスパイク、キレキレのスピンなど、いっぱしのドリブラーが備えているべき要件をしっかり兼ね備えた模範的好青年。縦だけじゃなく斜めにも速いというのが強い(例えばシティのウォーカーやスターリングは斜めにはあんまり速くない)。

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vsブライトン ●2-3 & vs エヴァートン ○5-0

消化試合なので割愛。でもブライトン戦はいい試合になったし、エヴァートン戦はアグエロが記念の点を取れたので良かった。昔、シティがアブダビ資本に買収される前もそうだったが、強豪相手に一発勝つとめっちゃ思い出になるんですよね。トッテナムに4-3で勝ったやつとか、マンチェスターユナイテッドに4-1で勝ったやつとか。

*1:ちなみに、私はシティファンだけどシティには全然来てほしくない。競争バランスがひどく崩れそうだから

プレミアが終わったので全チームの感想を言おう(1~3月編)

(基本、各試合の直後に書いたものです)

 

 

 

1/23 FAカップ チェルテナム ○3-1 (A)


4部のチェルテナムと対戦。キャプテンのベン・トーザーだけ知ってた。昔ニューカッスルにいたよね。

固い5-4-1、荒れた芝、狭いピッチの三重苦で80分過ぎまで負けてた。3バックで臨んだことが批判の的になっていたが、いつもの並びだってボール持ってるときは結局ほぼ3バックになるわけだから、大した違いではない。

問題は、ポジションを交換しながらプレーできる選手と、相手を引き付けてリリースできるDFが11人の中に何人いるかということで、この日はそれがフォーデンだけだったということだ(あとギリギリ、ジェズスとマレズ)。

交代で出てきたのがインサイドでプレーできるギュンドアンとカンセロ、後ろから運んで時間を作れるルベンだったのはそういうことだと思う。ともあれ、とにかく主力を休ませることが最優先だと思っていたので、個人的にはクオリティはどうでも良かった。

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1/26 WBA ○5-0 (A)

引き分けに持ち込まれてビリッチやるなあ、とか言ってたらクビにされていたWBA

意外にも、1月の9連勝の中で、内容で圧倒したのはこの試合だけだった。あとは、ブライトン戦の前半くらいだろうか。この試合はもうギュンドアンが点は取るわ、流れて組み立ての仕上げはするわ、ポケットに抜けてアシストはするわ、もはやギュンドアンさんとしか呼びようがない縦横無尽の活躍だった。さんをつけろよ、デコ助野郎。

この試合のシティは一番旋回力が高いメンバーだった。忍法ポジションチェンジの術。これを初見でやられたらキツイだろうなとは思う。ただこのメンバーは割と小粒で、「弱者のサッカーを高価なメンツでめっちゃ頑張ってやってる」という感じなので、CLで同格の相手に通用するかどうかはよくわからない。

 

気になった人:ロメイン・ソウヤーズ

プレーがどうこうではないが、地元生まれでWBA育ち、放出されたあと10年のときを経てWBAに帰還して昇格に貢献、という経歴が熱い。それだけでカムバック賞を与えてしまいそうだ。

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1/30 シェフィールド・ユナイテッド ○1-0 (H)

この日も煮え切らない内容で、xGも1.53。でも相手のxGも0.15に抑えてたからまあ良いかみたいな。全然ハマってないのに試合に出すと不思議に得点に絡むフェラン・トーレスが粘ったボールを、ジェズスが押し込んで1点ゲット。後半のロングボールをなんとか耐えきって勝点を稼いだ。

ブレイズの5-3-2はかなり強度が高く、何回左右に回してもスペースが全然空かなかった。なんとか中央に入れたいが、後ろの左右がウォーカーとラポルトだとまたこれが今ひとつ入らんのよね。

こういう試合で勝ちが拾えるから今シーズンは首位に立てているが、これは微妙なバランスで、CB陣に故障が起きたり、インサイドチーム(ギュンドアン、ベルナルド、カンセロ、フォーデン)がいなくなったりすると引き分けや負けに転んだりする可能性も全然あると思う

 

気になった人:オリー・マクバーニー&デイヴィッド・マクゴールドリック

最終盤に放り込み要員として登場し、きっちり仕事を果たしてシティファンを冷や冷やさせていた。マクゴールドリックは10年以上前にセインツで得点を量産しだした頃に一度見たことがあったが、まだいたんかい!という感じだ。相変わらずガタイの割にそこそこ足技がうまい。

ブレイズはマクゴールドリックに限らず、フィル・ジャギエルカとか、ビリー・シャープとか、ロドウェルとか、おっさんを雇用し続けているところが熱い。そしてロドウェルは相変わらずジムで「いや~まだ無理」とか言っているんだろうか。

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コンディションが整った試しがないロドウェル先生

 

2/7 リヴァプール ○4-1 (A)

リヴァプールは「お前ら、ボール持たれたらどうなんじゃい?」という問題を突きつけてきた。特に前半は、プレスを物ともせずヘンダーソンファビーニョサイドバックにビシバシ長いパスを通しており、さすがリヴァプールというクオリティだった。

近年のリヴァプール戦が苦しかったのは、こちらのプレスは効かないがあちらのプレスは効く、こちらは引いて守れないがあちらは引いて守れる、という不均衡で戦わなければなかったからだ。この試合ではそれが逆だった。サイドバックに通されても、中央を割られるシーンがなかったので耐えることができ、後半はハイプレスからミスを誘って立て続けにゲット。みみっちい戦い方だが、勝ったので良いとしよう。

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ところで、今年のリヴァプールは怪我人が多すぎてコメントが難しい(シニアなCBが3人全員シーズン絶望、なんて聞いたことないでしょう)のだが、投資ファンドが買収した場合のケーススタディとしては興味深い。

例えば、やはりクラブが変革期にあるときはプロ投資家とファンの利害が一致しやすいが、一度安定期に入ると足並みを合わせるのが難しくなるなとか。

リヴァプールがCLに常時出場できるまで強くなること、そしてリーグで優勝することはFSGにとっても重要な命題だっただろう。しかし、連覇するとか、王朝を築くとかになってくると、投資対効果が著しく下がる。

なんとなれば、マンチェスターUは「クラブの価値を上げるためにタイトルを獲る必要なんかない」ということを証明してしまってすらいる。ロヴレンを放出して代わりを買わないというところにもそういう姿勢は表れているように思われる。

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そもそもFSGはそのビジネスモデル上、手金を突っ込むということがダイレクトにリターンの減少につながってしまう。だから今後も、よほどのことがない限り、あっても貸付という形でしか金は入れてこないだろう。

と、考えていたが、今期はそのよほどのこと、つまりCL権を逃すという自体が起こりかけた。こうなると投資家としても普通に美味しくなさすぎるので、ファンにとっては多少心配事が減るかもしれない。皮肉なことだが。(→とか言ってたらスーパーリーグに飛び込みましたね。ヘンリー氏の濡れた子犬のような顔での謝罪ビデオは面白かったが、謝るだけならタダだからな。次はぜひ世界のヘイポーメソッドで謝罪してほしい)

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気になった人:ジョーダン・ヘンダーソン

本職じゃない「のに」なのか「だから」なのか分からんが、ベルナルドのプレスを物ともせずDFラインからSBにビシバシ浮きパスを通していた。しかも左CBから左SBという、かなり難しめのやつだ。さすが。

 

気になった人:モー・サラー

今シーズンのサラーを評するのは難しい。

 

まず結果は出しているわけだ。とっても。

サラーの素晴らしいところは、技術がシームレスにつながっているところだと思う。まずボールをしっかり収められる。そしてエリア内、あるいはペナルティアークやいわゆるデルピエロゾーン(右版)から、小さいモーションで強く正確なショットが撃てる。これを嫌がって厳しくマークしようとすると、プレミア1の敏感BODYで即イキボンバーしてしまう。一連の技術、あるいは体質がゴールに直結する形でつながっているので、守る方からすると、あっちを止めるとこっちが止められなくなる。技術の高さは、GKとの1on1の安心感にも表れている(シティのFWと比べると雲泥の差だ)。

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一方で今シーズンの試合を見ると、そもそもプレーする位置がゴールから離れてしまって、ドリブルとかクロスとか、そもそもサラーがあんまり上手じゃないことをやっていた印象が強い。端的に言うとサラーが本来持っているはずの姿より怖くなかった。このタイミングで売ってしまうというのはファンの思い入れからすれば難しい選択肢かもしれないが、売らないだろうと皆が思うタイミングで売ってこそ美味しい、と投資家のFSGが考えてもおかしくはないと思う。

あと皆言ってるがカーティス・ジョーンズは素晴らしい選手で、こういうのをちゃんと起用して一人前にするリヴァプールは偉い。

 

2/10 FAカップ スウォンジー ○3-1 (A)

ウォーカーのクロスが直接入っちゃって気まずかった思い出があるが、それ以外はほとんど覚えていない。相手の攻撃的MF、インド系のヤン・ダンダはかなりいいプレーをしていた。

 

気になった人:ジョエル・ラティボディエール

イカした名前のシティ育ち。フォーデンが最優秀選手賞とったU17W杯でキャプテンをやっていたが、シティでは未来がなさそうなので移籍した。

この日は5バックの右CBで出場したが、隣のWBロバーツがかなりおっちょこちょいだったこともあり、正直辛いパフォーマンスだった。でも顔がかっこいいし名前もイケてるので将来に期待したい。

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2/13 トッテナム ○3-0 (A)

前半戦はケインとBTSダイナマイト打線に一蹴されたトッテナム戦。

今回は、エンドンベレとホイビェアのボランチ2枚を裏抜けでしっかり引っぱって、カウンターの窓口になる2列目の3枚はしっかり潰す、というやり口が機能した。多分、WBA戦かこの試合が、一番「圧倒」できて、常に相手を後手に回らせていた試合ではないだろうか?

1月はずっと苦しんでたし、この試合のあとはもうエヴァートンアーセナルウェストハムと研究されてまた苦しくなっている。そう思うと、優位を確立しても追いつかれるのは一瞬ですね。

 

気になった人:エリック・ラメラ

たまにあるカウンターのチャンスを潰す潰す。TWICEどころの回数ではない。

放っといてもボールロストするので、シティの守備は大分助かっていた感がある。とくに脚が速いわけでもないし、カウンターのチームでこのロストっぷりはキツすぎる。でも普段はもっといいところがあるんだろうとは思う。パッションもあるしね。
あと、どうでもいいところで激しすぎるタックルを決めて、案の定イエローもらったのに何が悪いか全くわかりませんみたいな顔で驚いていて、もうすぐ三十路なのにこいつ全然変わってねえなと思った。

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気になった人:ギャレス・ベイル

かつて一斉を風靡した大型遊撃手も、度重なる怪我と不摂生ですっかり一塁専の実質代打屋になってしまった。パワプロの能力値もCAAADからEBDCFくらいになって寂しい限り。

と思ったらこの試合の後は往年の打棒を部分的に取り戻し、打率.315のホームラン12本くらいでシーズンをまとめた。でもまあ、スパーズの経営としては週給30万ポンド出して雇う選手ではない。エモーショナルな価値があることは認めるが。

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2/17 エヴァートン ○3-1 (A)

この試合だけしこたま飲んでて観ていない。観てないが、シティお得意の旋回作戦を人ビッタリ貼り付けてエヴァートンが消す。そうなるとペナルティアークが空くのでマレズとベルナルドがミドルで打開、という流れだったという話は街角の靴磨き屋から聞いた。

この辺から地味にマレズ無双が始まるのだが、なんかマレズ、ギュンドアンにゴール近くで打たせる、という形から逆算してチームを作った方が強い気がしてきた。ジェズスやスターリングは頑張っているし、それぞれ全コンペティション含めてシーズン20点強取る力はあるが、一方で取れる形が狭すぎる。例えば、左のハーフスペースに抜けてもこの二人はまず取れない。ステップサイドもできないし。

 

気になった人:ギルヴィ・シグルズソン

若いときから決して運動能力は高くなかったのが、年取って余計に固定砲台っぽくなってきた気がする。でもそれなりに身体は強いし、やはり良いボールは蹴るし、PKも上手い。代打制があったらそれだけのためにシティが雇ってしまうかもしれない。

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2/21 アーセナル ○1-0 (A)

開始2分で先制したときはどうなることかと思ったが、その後は双方の守備が機能した。シティの選手に全員マンツーでひっつけて、DFラインが空いたら中盤が降りてカバーする、中央が空かないように逆サイドは捨てる、というアーセナルのやり方は機能していて、この試合とその後のウェストハム戦、そして約1ヶ月後のドルトムント戦をもって、今シーズンのシティは完全にネタがバレた感があった。やっぱりアルテタは相手を分析し、それを練習を通して対策に落とし込むという手腕は確かだと思う。

ただ、この日のアーセナルは守れてもいざ出ていくときにはポジションがメタメタになっていて、辛うじて「サカのポストからティアニー」の左フックだけを繰り出せる感じだった。ワンパンチで戦うのは結構キツい。

 

気になった人:パブロ・マリ

シティが昔ツバつけてジローナやNACブレダに貸し出してた左利きのセンターバック。鋭い楔をたびたび打ち込んでおり、組み立てに貢献できる選手であることが明らかになった。失礼な言い方だけど、左利きで楔が上手くて、ちょっと機動力には欠ける感じ、廉価版ラポルトという趣もある。

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気になった人:エクトル・ベジェリン

こ、こんなんだったっけ?ボールはまるで持てないわ、パスはズレるわ、守備も後手後手だわ、失礼ながら全方位的にかなりキチぃことになっていて衝撃を受けた。やはり怪我の影響なのか。これでもパリが数千万出して買うというなら、売ってしまった方がお互いのためになるかもしれない。

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2/27 ウェストハム・ユナイテッド ○2-1 (H)

戦術的優位、終~了~。モイーズの研究成果がバッチリハマって、ウェストハムに終始優位に立たれる苦しい試合だった。具体的にはxGで負けた。

ウェストハムは、行くぞ!というときの決断力、前に出る人数の掛け方、確信の強さが素晴らしい。恐らく指導部に対しての選手からの信頼も厚いのではないか。モイーズをケヴィン・ノーランとスチュアート・ピアースが支える指導部、戦術指導力はわからんがとりあえずパン焼くのとかは上手そうだ。

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ペップシティは、かなり「インサイドで細かくプレーできる連中がどのくらいいるか」が内容に直結している感が出てきた。具体的には

そういう意味でこの日のメンバーはそんなに悪くはなかったが、右のウォーカー、左のフェラン柔軟性がなかったのと、戻ってきたデ・ブライネのネジがかなり狂っていたことで苦しんだ。失点シーンも、デ・ブライネとジンチェンコのダブルデブライネが盛大に対応を間違えたことからきている。

とはいえ、細かいことが上手い連中は概して無理が効かない。プレスがかかってないときのギュンドアンはただの遅いおじさんだし、自ゴール前のベルナルドは非力なハゲだ。カウンターに強いウォーカー、3mスプリントの勝負なら絶対勝てるスターリング、周りと合って無くても一撃で点が取れるデ・ブライネのような選手は、前提条件が変わってきたときにかならず役に立つ。

 

一方で、一芸派は高く売れそうなので、売っちゃっていっそ細かい派に振り切ってみるという手もある。つまり、セントラルMFができそうな面子ばかりを揃えてみるのだ(どうせ試合中はみんなCMFをやっている)。さて、来季の編成はどうなるだろうか。

 

気になった人:ヴラジーミル・ツォウファル

チェコ版のサバレタという雰囲気の右WB。爆裂に根性がありそうだった。ちなみにウェストハムは昔からラバントとか、コヴァーチとか、チェコスロバキアの選手がちょくちょくいるが、やっぱり「世界一激怒してるサッカー選手」「デビュー戦と2戦目で連続退場した世界初の男」ことトマーシュ・ジェプカ師匠のせいなんでしょうか。

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3/2 ウォルヴァーハンプトン ○4-1 (H)

前半何もさせずに押し込みまくったが、1点しか取れずにセットプレーで追いつかれたときはやばかった。泡食って5トップ化の悪癖が出たところでカウンターを食らって死ぬところだった。

そこでルベンかストーンズが対応できるところが今年と去年の違いで、やはりどうしてもコントロールできないカオスのことを考えると、後ろには極限状態で守れる人間がいたほうが良いのだ。多少組み立てが下手でも(ルベンは全然下手じゃないけど)。

 

気になった人:キ=ジャナ・フーヴァー

多分リヴァプールから借りてるDFだったと思うが、プレミア史上こんなにジェダイマスターっぽい名前の選手はいなかったのではないか。絶対頭超長いやつですよね。

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3/7 マンチェスター・ユナイテッド ●0-2 (H)

緊張感溢れる勝ち点差12で迎えたマンチェスターダービー

試合は開始30秒でのPKと、疑似カウンターで2発食らって完封負け。マンUは事故以外には中々点が取れなさそうな雰囲気で、下位相手に引き分け連発しているのもさもありなんだったが、点が入ってさえしまえば非常に強かった。後半はかなりシティが泡を食ってバランスを崩しており、マーシャルさえまともなら3-0になっていたはずの試合だった。

 

個人的に驚いたのは、英語圏Twitterで、「結局このチームはいつもこう」「チームセレクションの時点でおかしかった」という失望と批判がかなり激しめに寄せられていたことだ。

確かに、カンセロやジンチェンコを使って正面から主導権を握りに行くより、ウォーカーや、ひょっとしたらラポルトを使ってガチガチに引きまくった方がスールシャールは嫌だろうなとは思ったが、そういう意地の悪いやり方はグアルディオラはやってくれない。それでもここまで連勝を続けていたら、とことんボールを握りに行って勝つことを志向してみてもおかしくはないし、21回連勝もしていたらそれくらいの冒険は許されるだろう。そう思っていたが、自分はマイノリティだったようだ(Twitterの意見をマジョリティとみなすかどうかというのはまた議論があるところだが)。

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別にそういう反応があること自体が悪いとは全く思わない。思っちゃったこと、そういう感情が多くの人に生まれたことは事実なわけで、それを隠してもしょうがないし、そういうエモーションもスポーツ観戦の醍醐味の1つだろう。過去にCLで似たような展開から破れてきたという経緯も拍車をかけたのも間違いない。ただ、あれだけ支配的なサッカーができて、あれだけ連勝を重ねても、このチームはファンから信頼を勝ち得ていないのかもしれない、という可能性には面食らった。

どんな負け方であれ、1試合でもう見放されてしまうのだ。ということはきっとこれからも無理だろう。チャンピオンズリーグに勝てば信頼が築けるのかもしれないが、運の要素が大きくて競争も極度に厳しいあのコンペティションで勝てないと信頼されないチームというのは、あまりにも脆い。自分はグアルディオラを解任したほうが良いと思ったことは一度もないが、今回ばかりはもう潮時かもしれんなという思いがちらと頭をよぎった。関係性として、もう袋小路に入ってしまっているからだ。なんかちょっと悲しくなった試合であった。

 

気になった人:ダニエル・ジェイムズ

多分、最終成果物はなかなか出ない人なんだろうなと思った。格下相手だとフラストレーションが溜まりそうだ。逆にこの日のように、リードを守ろう!カウンターを撃とう!という試合だと良さがとても活きる。多分、15年前のシティに来てたらかなり人気が出ただろう。右のジェームズ左のムサンパだ。アイドルになったかも知れん。

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気になった人:ハリー・マグワイア

守備の中心として効きまくっていた。マグワイアといえば「俺じゃダメか?」と言いながらのあすなろ抱きで相手FWをトゥンク・・・♥とさせることで有名だが、これが全然ファールにならない。多分「え、これがファールなわけなくないですか・・・?意味わからない・・・」みたいなスッ・・・とした顔ができるのが良いんだと思う。先日ブライトン戦でウェルベックを倒したときもめちゃめちゃスッ・・・とした顔でやっていた。

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気になった人:アントニー・マーシャル

「マルシャル」とカタカナ表記するのは別に良いんだけど、マ「ル」をどこから持ってこようか悩んでいる。英語読みに近づけるならマーシャルだし、フランス語読みに近づけるならマシアル、あるいはマハシアルだ。最悪でも「マルシアル」だろう。つまり「マルシャル」というのは前後分断されたキメラで、そこがちょっと気持ち悪いのである。

別に日本語読みなんだから元の言語の読みと違っていいじゃん、つーのはまあそうなんだけど、日本語にするにしても一貫性がほしい。「ファンダイク」も同じ問題があって、オランダ語だと「ファンデイク」に近いし、英語読みなら「ヴァンダイク」だ。

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というどうでもいい話は置いといて。プレーは良かった。これまで批判され続けてきたマーシャルだが、敵と戦うのではなく、笛と戦うという割り切りをしてきたのは潔かった。打開するのではない、ファールを稼ぐのだ。泥にまみれろよ・・・。ベンチの田岡先生も涙ぐんでらっしゃいましたね。

 

3/10 サウサンプトン ○5-2(H)

セインツは強い!

シティは中々ボールを奪回させてもらえず、奪っても一番柔軟性のないメンバー、つまりウォーカーとラポルトに持たされて、狭いところに追い込まれてカット。

1失点目なんかモロにそれで、ウォーカーはフェイクがかけられないので、中央にボールが入れられない。追い詰められて困って困って、その場でクライフターン!して案の定引っかかってCKから取られた。

という感じでかなりシティも研究されてしまっていたが、この状態を保つためにサウサンプトンもかなり無理筋の圧縮をかけており、普通にロングパスで裏取られたり(1点目)、ドリブルでまとめて捌かれると脆かったり(3点目)、パスカットから即死もののクロスカウンターを食ったり(4点目)、出入りが激しすぎた。10回やったら2,3回は負けるかもしれんが、トータルの得失点差50-15とかになりそう。

 

気になった人:イブライマ・ディアッロ

途中から出てきたボランチ。かなり上手かった。ヌメヌメっとしたドリブル、ギリギリまで我慢できるパスフェイクが嫌らしい。エンドンベレとカンテを足して3で割った感じだ。

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3/13 フラム ○3-0 (A)

7人休ませての3-4-3。まあ機能しないだろうなと思って、案の定ぎこちなかった。

シティが3-x-x系で組むと、まず中盤センターがガチガチにマークされ、ウィングバックがトップに吸収されて5トップになる。そうなるとこちらのCBがドリブルで運ぶ形になり、極端に前後の距離が近い、うっすーくて平べったい形ができる。そうなると隙間がなくなってもう手詰まりだ。3バックが問題と言うよりは、ウィングバックに旋回できる選手がいないということの方が大きいが。

で、この日のように複数のタスクをこなすのが比較的苦手なメンバーで組むと、旋回ができないから余計滞る。結果、ストーンズがスルーパスを出したり、ジェズスが左サイドから切れ込んだり、得意じゃないことばっかりやらざるを得なくなるというのも難点だ。

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これははんぺん

とあれこれ言ったが、私は全然ネガティブじゃないので、色々好きに試してもらったら良いと思う。本当にやってほしいのは、「ボールを放棄してみる」というチーム構成だけど、この日の3バックもある種それに近いのかもしれない。ただチームビルディングにかかる時間を考えると、素人が言うほど簡単にはできないだろうなと言う気もする。

フラムは中盤をマンマークしてシティのCBがドリブルで出てきたところをひっくり返す、しっかり繋いでシティの保持時間を削るという作戦はセンス良いと思ったが、カヴァレイロとルックマンが中々押し返しが効かず、最終的にアンデルセンとアダラバイヨがビルドアップをミスって撃沈したのが惜しかった。こういうときのためにリーグアンの身体能力高めのウィンガーを買っとくと良いんだが、安いやつ買うと概して稼働率が低いんだよな。あの手のやつ。

 

気になった人:アルフォンス・アレオラ

フィリピン系なんだとは知らなかった。このクオリティでケパの半分しか給料をもらってないとは信じられない。ちなみに、トップGKたちの給料は、デ・ヘア>>>>>ケパ=アリソン>>>ヨリス=レノ>>>エデルソン=メンディ=アレオラという感じだ。良いところに就職できれば、給料1.5倍は狙えるだろう。ていうかデ・ヘアのもらい方よ。

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3/16 CLベスト16 ボルシアMG ○2-0 (H)

内容では今シーズン一番かも。3週間でデ・ブライネが完全にチューンナップされており、ウォーカー以外全員がポジションチェンジできる大旋回ロボが完成した。あっちもこっちもぐるぐる回る。

ポジションチェンジをしていると当然それ自体がひっくり返される種になる(例えばボール奪われたときにロドリが前線にいて、ベルナルドがアンカーにいたり)。それは全員が別のポジションもそこそこ対応できるように改造されていることで、それでもダメならカウンター対応が上手いルベン、キレキレに仕上がったストーンズ、そしてウォーカーの筋肉でなんとかするという設計だ。

前回対戦は中盤で奪ってカウンターがいい感じだったBMGも、4トップがまるでハマらないのでかなり後手を踏まされていた。テュラムとエンボロのコンビはかなり良い線行ってたが。

 

気になった人:ヨナス・ホフマン

ハイデルベルク出身というところが熱い。シュトゥットガルトから近いし、ハイデルベルク城はきれいだし、ワインは旨いし、地味に良い観光地だからだ。何の話だろうね。でもおすすめです。

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3/20 FAカップ準決勝 エヴァートン ○2-0 (A)

ローテーションでスターリング、ジェズス、フェルナンジーニョラポルト、ウォーカー、ステッフェンが先発。当然流動性は落ちるし、エヴァートンはよく練られた5-3-2でかなりタイトに試合を運べていた。惜しむらくはリシャーリソンにもっと突破力があれば、シグルズソンがもっと縦に間に合えば、あるいはWBから良いクロスが飛べばというところ。

シグルズソンのところは本来ドゥクレがいるが、リシャーリソンは難しい。8,000万ポンドくらいでマンUに押し付けたらサン=マクシマンとサン=マクシマン廉価版みたいなやつを買えると思うが、多分そいつらはリシャーリソンよりフィニッシュができない。

 

そう考えると、エヴァートンは頑張って戦力を揃えたが、市場で高値が付きやすいポジション・機能がボトルネックになって詰まっている。でもFFPの壁があって、もう買えない。すでに人件費は売上の8割程度まで来ていて、あっぷあっぷだ。このままだと4位以内に入っても、FFPに引っかかって結局出れないだろう。今年CLに出れなかった時点で、1つのプロジェクトとしては残念タイムアップである。

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でも別にそれでクラブが無くなるわけでも現体制が崩れるわけでもない。やるべきことは更に人を積んで積んでの倍プッシュではなく、若手の育成と売却、営業・マーケ強化で収支構造を漸進的に改善し、2024年の新スタジアム完成を待つこと、そしてそのためにファンに長期ビジョンを示し、アンチェロッティなり次なりの監督を守ることだと思われる。

っていうことになるとですね。必然的に、今CL圏内にいない、売上規模も歴史的に大きくないクラブをCL常連まで押し上げようとすると、5年では効かない時間がかかる。そんな長い投資ホライズンを持った投資家が西欧にいるのかというとかなり怪しい。ダニエル・エクもね。

最近の米国のスポーツファンドは10年程度見る準備があると聞くが、やっぱりロシアなり中東なりのストラテジックな投資家の存在感は高まるだろう。そうなると何か怪しい取引があった際にやれUEFAは無能だ取り締まれ論が出てくるだろうが、いや予算ないんだから無茶言うなと。

そうなったときに、自チームの短期の成績を捨てて、この欧州サッカーという知財全体の長期利益を提示できるメガクラブのオーナー、経営陣が出てきたら、サッカー界の次の20年を引っ張る存在になれそうだ。

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それにしてもシティの話に戻ると、25試合やって24勝というのは異常だ。それでもハーフタイムにゼロゼロだと、Twitterの公式アカには、「Fuck」「替えろ」「ひでえ」というリプがつく。高級紙の記者が必死になって「シティが勝つのは当然、国内三冠も当たり前」なんてやっているのには呆れるが、そんなリプがファンベースから出るようならどっちもどっちやなという気もする。試合やって自動で勝つマシンだと捉えてるという意味では一緒だからだ。フラストレーションが溜まる気持ちはわかるが。

 

気になった人:アラン

シャツをパンツに入れて口ヒゲを生やした短髪のおじさん。アテネでもマルセイユでも兵庫県たつの市でも、こういうおじさんには絶対に近づいてはいけない。倫理観という概念は知っているし、何ならしっかりとした思想も持っているが、一旦脇に置いておくことを何とも思わなさそう。これとリシャーリソンを扱えるのはさすがパパ・カルロだ。

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2020/21 マンチェスター・シティ 個人レビュウ

 

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みたいな。

 

指導部

リージョ含めてみんなでムニャムニャッと会議した結果、

『よし、基本に帰ろう』

『だな』

で改善したという話が舐めていてよい。

www.goal.com

リーグを奪還し、ここ5年で3回目の優勝。すごいけど、ちょっと勝ちすぎ。バランスが取られた方が世界のためだ。

 

あと途中でグアルディオラアリゴ・サッキに電話したら「キミィ、最近プレスをしとらんじゃないか、プレスを」と言われたエピソードも良すぎる。この調子で、ちょっと調子が悪くなったらイタコを呼んでロバノフスキーの亡霊に相談するとか、クライフに憑依してもらうとか、そういう方向で新境地を開拓していく、両利きの経営を実現していってほしい。イタコの連絡先はグレン・ホドルが知っている。

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GK

エデルソン・モライス

1人目をすげーどうでもいい話から始めて申し訳ないけど、この人ちゃんとしてれば結構男前というか、チャニング・テイタムを洗濯機に入れて乾かしたくらいの器量はしてるはずなのに、マンチェスターに来てから年々身だしなみに無頓着になってきている気がする。

 

謎のファール判定で助かったドルトムント戦のポカは思わず叫んでしまったが、それ以外は本当に言うことない。ただエデルソンがいる毎日に感謝して過ごすしかない。人類は無力だ。

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ザック・ステッフェン

IBMを買ってクビになったやつはいません」とは昔のIBMの宣伝文句だが、アメリカ人GKを買ってクビになったやつはいない。ザックも例に漏れず、限界はあるが安定した良いGKだった。

細かいことを言い出すと、そんな足元が達者ってわけでもないな?とか、FAカップのあれはやっぱり飛び出しに失敗しましたね?とか色々あるが、もうそんなことはいい。

私は個人的に、自分が応援するサッカーチームだろうと、自分の職場だろうと、チームにやる気のあるアメリカ人を入れるのが好きなので(テキサス人だともっといい)ザックのちょっとした瑕疵はもう全然許してしまう。

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スコット・カーソン

FFPが施行されてから、若手の売却はビッグクラブにとって体の良い資金源になった。育成分の費用はFFPの計算から控除されるので、育てて売れば利ざやがでかいからだ。

そういうわけで第3GKに若手を遊ばせておくのは勿体なくなり、グリーン、グラント、ライト、ロナガンと、ビッグクラブがこぞって実績があるおじさんGKを雇い始めた。その最新作がこのカーソンであり、カーソンは今年も黙ってスタンドに座っているという役目を果たすことで週に2万5千ポンド貰っているのである。

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CB

ルベン・ディアス

やっぱりルベンがナンバーワン!

やっぱりルベンがナンバーワン!

やっぱりルベンがナンバーワン!

 

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はい。まあ、たまにこういうの入れないと、眠くなっちゃうんで。

でもナンバーワンなのよ。前に出てもネイマールやムバッペを潰せる、後ろに下がってもカウンターを捌ける。守備だけで言えば体調がいいときのストーンズも負けず劣らずだが、ルベンは稼働率が違いすぎるのだ。連戦で使っても全然疲れない。そして精神力も強い。プレーが切れるたびにスッと味方に寄っていって精神を整えてくれるキメの細かさ。

 

昔、Numberで塩野七生の婆さんが欧州サッカーと古代ローマをくっつけて語るというコラムがあった。趣旨としては「リーダーになる男ってのは違うのよね~ジダンなんて古代ローマなら絶対百人隊長だわ。醜男でも絶対モテるもの」というどうでもいい話だったんだけど、でも今となっては婆さんの言うこともわかる。加入1年目で23歳なのに、もう4,5年いて20代後半のウォーカーやストーンズラポルトより遥かにリーダーシップあるし。もう一目瞭然。残酷な真実ですよね。

 

ジョン・ストーンズ

CBのレギュラー格として、ルベンとのブロマンスを育んだ1年。とにかく身体が動いた。ほぼ戦力外の状態から完全に持ち直したのはそれが全てだ。速いし強いし跳べるし潰せた。縦横に無理が効きすぎ。

 

ストーンズの運用における最重要点は、本人も使う方もとにかく、「調子こかない」ということにある。疲れるとすぐ判断が怪しくなってドボンで、3試合連続で使ったら絶対ダメ。

それが分かってないサウスゲイトが3月に代表で使いまくってまたちょっとダメにしたが、その後は慎重に慎重を重ねて運用したのでシーズン末まで何とかなった。結局守備の局面でどれだけ相手を潰せるか、守れるか次第で選手としての評価が決まるというのは、「組み立てが上手い」「足元が上手い」という俗説がありつつ、最大の長所は対人戦の強さだったリオ・ファーディナンドを思い出させる。

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エメリック・ラポルト

ヴァン・ダイクの次にすごいCBとか言ってたら、気づいたらシティでも3番手になっていた。やっぱり裏抜けに弱すぎるのが辛くて、オフサイド取りに行くか、ファール貰ったふりするか、ファールするかしか対処法がない。

得意なはずのポゼッションも、①シティ対策の進歩(横幅占拠)でサイドチェンジの有効性がガタ落ちする、②パスは出せるけどインサイドでプレーはできない(ボールキープ下手だから)ことが明らかになる、という二連パンチで大分辛いことになっている。レベルは高いんだが。

 

今のやり方にピッタリ合ってはいないし、代わり(アケ)もいるし、何より本人が控えで満足する性格には思えないので、早めに移るのも前向きな選択肢だろう。

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ネイサン・アケ

聞いてたんと違う!と思ったかどうかは知らんが、移籍してきた頃はラポルトしかまともなCB/LBがいなかったのに、ストーンズは残留するわ、ルベンは即ハマるわ、ジンチェンコは成長するわ、自分は数ヶ月怪我してるわで、シーズン終盤にやっと戻ってきた頃にはすっかり4番手になっていた。

 

スピードはあるし組み立てにも貢献できるが、試合に出すと何となく点を取られる非力さが、ちょっとベン=ハイム味がある。ラポルトとアケを両方抱えるというのは無理があるので、左SB一枚削るか、どっちか売るかした方が健康的だ。

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エリック・ガルシア

5番手CB。契約延長を断ってバルサに復帰ということで、その話が出た1年半くらい前はちょっと残念だったが、ルベンとストーンズが台頭したのでめっちゃどうでもよくなった。

今年はヴァーディに根性焼きされた以外はほとんど出番もなかったが、いつもニコニコしてるし、不満も口にしないし、20そこそこでかなり人間が出来ている。ピッチの外では。

ともするとある種の傲慢さすら感じるくらい堂々としているが、多分バルサとレアルはそれくらい確信持ってないとやっていけないところなので、このままでいいと思う。

 

プレーのレベルは今一つ、二つ・・・うん・・・という感じだが、ピケもマンUにいたときはしょうもないDFだったので可能性はあるだろう。地元で頑張ってください。

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フィリップ・サンドラー

足首の手術でシーズンアウト。もう24なのに、この3年で11試合しか出場できていない。来年の夏で契約切れなので、もうこの夏で売るしかないだろう。本人的には1年ローンでプロモーションかけてからフリーで出たいのかも知れんけど。

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テイラー・ハーウッド=ベリス

地元生まれ、アカデミー育ちの通称THB。デビュー当時はTwitterで検索するとお姉ちゃん(素人)のアカウントが出ていたが、本人はアカウント作ったんだろうか。

 

今年はカップ戦でちょこっと出場したあと、ブラックバーンのモウブレイ道場で修業。レギュラーに収まり、本人も「もう1年いたいかも」みたいなことを言っている。

経営側としては17か18くらいで5年契約でロックアップしちゃってローンで放牧するのが理想的だが、選手側もそれがわかってるから自信があるやつは17歳の段階で逃げる(例:サンチョ)。THBについてはもう24まで契約結んじゃったので、しばらくローン修行だろう。チャンスがあるといいけどね。

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SB

カイル・ウォーカー

細かいことはできないんですよね。身体が重いから。それでカンセロとジンチェンコに取って代わられたが、CLが大詰めになるに従い、やっぱりウォーカー1人置いておくとカウンター対策の安心感が違いすぎるっつって、RB兼CBとしてレギュラーに復帰した。

 

ウォーカーがいいのは、シティの中で恐らくほぼ唯一、「競う場所が広くなればなるほど強くなる」選手なことだ。他は皆(KDBは例外かもしれない)、狭ければ狭いほど強くなる人で、みみっちくやってる分には良いんだけど、相手を常に制御できるとは限らない。

そういうときにウォーカーを一人置いておくと、とにかく何とかしてくれる。ムバッペでもネイマールでも相手ができてしまうウォーカー。ペドロ・ネト程度なら秒殺だ。画面外からうおおおーっつって走ってくる姿も東京駅ののぞみ感があって良い。たとえその後のクロスは残念でも。

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ちなみに、相手の変化だけでレギュラーに戻ってきたわけではなく、どっかの試合でスタンディング状態からまともな曲げるクロスを入れてきたときは驚いた。ウォーカーがインフロントでクロス?まともな?

そう、30になっても、人は進化できるものなのである。

 

ジョアン・カンセロ

「私大文系」しかあるまい。四文字熟語で言うなら。

 

カンセロといえば攻守にとにかくリスクを取ることで知られているが、特に守備でのリスクの取り方が「状況が全部、自分に都合が良い方に転がることに全ベットする」という感じなのである。見逃してくれたらいいな~みたいな。

そのくせ、失敗したときに自分が悪いということを認識する程度の常識はある。過去のシティにも何人か無責任男、あるいはリスクテイカーがいたが、例えばコラロフのように完全に俺関係ありません的態度を取るのでもなし、デミチェリスのように周囲にキレてみせるわけでもなし、失敗したときにはかなり気まずそうな顔で目線は逸らしている。

 

私文大生カンセロ、多分趣味はパチンコとウイイレ。「俺、パチンカスやから」が口癖だろう。煙草は無論吸う。SBのくせに巧すぎるのでサッカーサークルでは「キング」と半笑いで呼ばれていることは間違いない。その辺の女子大から来た後輩のマネと付き合っているが、卒業してすぐ別れてそうだ。

 

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下らない話をしたが、今シーズンは年末から3月頃にかけてビルドアップお化け兼アシスト提供機として猛威を奮った。「上手いSB」ったってせいぜいドリブルとクロスでしょと思ってたんだけど、インサイドレジスタ役が完璧にできちゃうんかい!という感じだ。その上手いカンセロに、インサイドハーフサイドバック、ウィングを試合の中で全部担当させるというアイディアには感心した。

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終盤、ウォーカーが再覚醒するのに合わせて加速度的にしょんぼり。控えに再降格したのには笑ってしまったが、イジりようが色々あって面白いので、来年も新しい戦術の開発にフル活用されてほしい。「縦クロス」とかな。知らんけど。

 

バンジャマン・メンディ

たぶん、右サイドバックもできる。とにかく速い。超特急。味方のフォローがないと、クロスを上げるだけマシーンになりがちなサイドバックとは一線を画します。突破のドリブルも使いこなし、超攻撃的な左サイドバックとして、世界屈指になる日は近いです。マンチェスター・シティに移籍に噂があるようで。アウベスのようになるのか、アラバロールをやらされて脳みそがパンクするのか楽しみにしておきます。

building-up.com

 

彼こそ真のコアUT選手と呼べる選手です。メンディーは左サイドバックとしてもプレー出来るだけでなく左ウイングバックとして左全域をカバー出来る選手でもあり(中略)偽サイドバックとしてDMFの位置で潰し屋にもなれLCBとして受け止めることも可能、また通常のサイドバックとして左全域をカバーしながらの偽サイドバックも可能な稀有な左サイドバックなのです。

lilin18thangel.hatenablog.com

 

そうなのよ。左足に戦術兵器がついてるカイル・ウォーカーに、革命的なSBになる素地はあったのよ、確かに。膝の靭帯を2回もやってしまって夢と消えたが。モナコのことも夢のまた夢。

スピードは大きく失われてしまい、出場機会もない中で複雑なタスクを消化しきることもできず、今シーズンは完全に控えの控え化。もう少しシンプルなタスクのチームに行ってやり直したほうが本人のためにもなるだろう。例えばエヴァートンとか、ターゲットはいるのにクロスが弱いチームなんか良いと思う。面白いやつではあった。

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オレクサンドル・ジンチェンコ

ロジが上手い人といった風情。

特別頭が切れるとか言うわけではないが、目的や論点は理解してて、打ち合わせのセッティングなりQAリストの取りまとめなりが卒なくできるので、彼がいるとチームのパフォーマンスが上がる。そういう人。

 

と思ってたら、マッチョになって左センターバックサイドバックとして普通に良い選手に成長したので嬉しい。もはやダブルデブライネ。昔からジンチェンコには中盤に戻るかDFに振り切るかどっちかにせい!と言ってたが、後者で、しかもCBっぽいSBとしてやっていくというのはかなり良い線行っていると思う。

SB/WBとしてみると広範囲をカバーするのが苦手だが、相手を待ち構えて対応できるCBは彼にぴったりだ。しかも状況が許せば相手DFラインの裏まで出ていくこともできると来ている。あとパスカットを即座にカウンターに繋げられるのも良い。失礼な言い方だが、身体のどこを切っても便利な選手なのである。

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MF

フェルナンジーニョ

ちびまる子ちゃん』の作者さくらももこが、実際の祖父のことを「ズルくてイジワルで怠け者で、嫁イビリはするし、母も私も姉も散々な目に遭った。」と評しており、あの友蔵じいさんは彼女の理想像だというのは有名な話だが、人は歳を取ると無意味に意地悪をしたくなる。

フェルナンジーニョもレスター戦でマディソンか誰かに、な~~~~~~~~んも意味ないところで蹴りを入れて詰め寄られ、ニタニタ笑うというキモいジジイプレイをかましていた。ま~~~じでどうでもいい場面だった。でも人間30超えると無意味に若人をからかってやりたくなるという現象はちょっとわからんでもない。

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CLパリ戦でディ・マリアを退場に追い込んだ挑発もバカバカしすぎて笑わせてもらった。あんなのに引っかかるディ・マリアもどうかと思うが。どうでもいい話を散々したが、ロドリが一本立ちしたので、フェルナンジーニョは控えアンカーとして十分に休息を得て良い働きをしていた。

 

ロドリ

アンカーとしての地位を確立。ロドリは足が遅くて、戦術的齟齬を一人で解決したりできない人なので、ロドリを見るとその日のシティがどの程度上手く行ってるかがよくわかる。彼が相手を追っかけていたら大概苦しい試合だ。あとはラポルトとウォーカーがサイドチェンジしてるとき。

 

周りに人が居さえいれば、自分含めて誰がどう動けばどこにどうスペースができるかわかってる人で、かつデカくて強い。しかもボールをほじくり出すのもキープするのも上手いので、今季はカウンターの出どころをしっかり抑えて回収しまくっていた(逆に、人が周りにいないと絶望的にスペース管理ができない)。加えて、ドリブルで小細工ができるので崩しにも参加できる。困ったときの空中戦もある。そして頑丈だ。めちゃいいとこあるやん。ヒュー。

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イルカイ・ギュンドアン

とか言ってたら、途中で冗談にならないくらい爆発した。

www.theworldmagazine.jp

www.youtube.com

 

今シーズンは、英語のカタカナ表記にはうるさいがトルコ語には無頓着なベン・メイブリー氏からずっと「ギュンドヤン」と呼ばれていた。でも大阪弁基準やねんと言われたらまあそうか・・・という感じだ。

 

ギュンドアングアルディオラからの信頼が厚い割にファンからの人気はなく、ずっと愛人起用とか言われていた。実際最初の方は上手いけど試合に入っていけないというか、かなり木偶の坊感はあったと思う。

それが今や、ギュンドアンとベルナルドを中心とするみみっちいパス交換とポジションチェンジが、シティのベースになっている。デ・ブライネが戻ってきてから点を取ることは減ったが、流石に今年はベストイレブンくらい取るでしょう。

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ケヴィン・デ・ブライネ

怪我してる間にギュンドアン=ベルナルド体制が確立してしまっており、本人もチューニングズレズレで帰ってきたので最初の1,2試合はかなり苦しくなってたが、1ヶ月程度で完全に戻してきた。迷惑かけてるやんとか言ってすいませんでした。

まあ私はデ・ブライネが移籍してきたときに「ナスリいるし別によくね?」とかほざいてたので、もうこれ以上謝りようもないんですが。

 

形式上FWで使われてる割にはあんまり点取ってくれないとか、注文がないわけでもないが、やはりシティの中でも一人だけ、自分に課してる要求レベルの高さが全然違うのだ。困ったときはデ・ブライネ。今年もチームが戦術的に厳しくなったタイミングで、力技で解決しまくっていた。引退直前までシティで頑張ってください。

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トミー・ドイル

プロジェクトビッグピクチャーに始まり、スーパーリーグ構想で大混乱をきたした欧州サッカー界。その未来はドイルにかかっている。

 

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話がデカい?まあ聞いてくれや。

 

今の競争の不均衡はいずれ維持できない水準に達するが、スーパーリーグ的な下層切り捨て策に走らないとすれば、ビッグクラブが既得権益を手放すしかない。でもそのためには、端的に言ってもっと負けるのをファンが許容するしかない。どうすれば我慢できるか?というと、1つの緩和策はアカデミー育ちの若手が成長するのを見ることだ。

 

だからお祖父ちゃんが両方ともシティのレジェンドであり、しかもインサイドハーフが足りてないシティでドイルを育てられなかったらかなり希望は薄い。そういう意味で、今回はきっちり使ってほしいのだ。まあそんな期待をして、デナイエルもロニー・ロペスもデニス・スアレスもあっさり売ったんですが。

 

今シーズンはカップ戦で右往左往していたが、その中でも試合を追うごとに進歩は感じられた。身体は強いし、ボールタッチは細かいし、右足インフロントのキックは一級品だ。5年契約を延長した来シーズンは、ギュンドアンの控えとして暴れてほしい。

 

FW 

ベルナルド・シルバ

 

もし換えの効かなさで選ぶなら、シティのMVPに選ばれるべきはベルナルドだと思う。

シティが他チームに出してるクイズは主に「選手が入れ替わるからマークしづらいのにクオリティが変わらんばい!」と「入れ替わってるはずなのにバランスが崩れないからカウンターしづらいばい!」の2問で、これを成り立たせる上で一番効いてるのが、どこに降りても変わらない質が担保できる、FWからウィングからボランチまで一人で全部プレスに間に合う、というベルナルドの能力だからだ。途中まで全然使われてなかったベルナルドがスタメンに復帰したのと、調子が上向いたのが同じタイミングなのはきっと偶然ではない。

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今シーズンはFW兼インサイドハーフとして大車輪。やらしいことを言うと、単体での破壊力がないので監督を選ぶ選手のはずで、その点クラブ側からすると年俸交渉にプラスに働くと思う。

 

フィル・フォーデン

私の若手を見る目といえばそれはそれはかなりのもので、いちばんひどいのが昔ルーニーがデビューした1週間後くらいに言った「最終的にはマクファデンの方が点取ると思いますよ」なんだが、フォーデンについても「WGで使っててもスケールが小さくて悲しくなる」とか開幕した頃にほざいてたらチームで一番頼れるWGになってた。すいませんでした(2回め)。

 

シーズン後半はだいぶシティ対策が進んでしまっており、フォーデンが気合でなんとかするの待ちになっていた気配がある。それでまたしっかり応えるんだこれが。リヴァプール戦のこれ↓とか、あるいはブライトン戦のこれ↓とか。

youtu.be

 

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BT Sportの放送とか見ると、解説のキーオンもジーナスも、みんなフォーデンのこと甘やかしまくり。とは言えそれもわかるくらいの爆発で、次は安定してシーズン15点から20点安定して取るレベルになれば、押しも押されぬ欧州トップのFWになれるだろう。そう、つまり去年までのスターリングだ。

 

 

 

あれ?

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いやもちろん、7割くらいは冗談だが。

 

ラヒーム・スターリング

控えに降格。昨シーズン序盤の全能感がさっぱり消え、ボールは全然足につかないわ、チームの崩し方が変わっちゃったから点は取れないわで、観る側からするとかなりスッキリしない選手になっていた。売ってホーランを買う金にしろという意見も根強い。忠誠心とはファンと選手の間でかくも不均衡なものだとも言える。

 

ちなみに、「スターリング(とラポルト)を売る」というアイディアをちょっと考えてみたことはあったが(以下の連ツイ参照)

それも「普通手放さないだろうという人気銘柄を売る」から投資として面白いのであって、最近のスターリングは普通にちょっとバリュー下がってて売ってもあんまり面白くないなとは思う。多分そんなに高く買ってもらえないし。

 

でも見方を変えると、過去3シーズンで23点、25点、31点取った選手でもレギュラーが保証されていないというのは、競争が正に働いている証拠でもある。

17/18シーズンはザネが鮮烈に活躍し、最優秀若手選手賞を取った。次のシーズンはスターリングの全方位的進化とベルナルドの覚醒がザネをベンチに追いやった。昨シーズンはマレズがそこそこ仕上げてきて、今シーズン地味に爆発した。

と思ってたらいつの間にかフォーデンが「単体のクオリティでは一番上じゃね?」って感じになっている。だからスターリングのことは復調を信じて応援したいし、クラブにはこの激しい競争をテコにして上手いこと昇給を抑えてほしい。デ・ブライネと同額は無茶。

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リヤド・マレズ

開幕前に「上手いけどサラーやマネと比べるレベルじゃないよね」とか言ってたら、今シーズンはもうほとんどチームMVPレベルの活躍だった。その二人とどっちが上とか言い出すとキリがないから言わないが。

 

2月から3月にかけてゴリゴリに調子を上げて得点にアシストに決めまくり、優勝を実質的に決めるのに貢献。実は3年かけて地味にグアルディオラの改造手術が完了していて、5球種を出し入れして後出しジャンケンする、そこそこエグ目の技巧派変化球投手に仕上がった。

  • ペナ角からインスイングのクロス、からの
  • フェイク入れて縦、のフリして
  • 切れ込んでペナルティアークから左でミドル、の全部を見せ球にして
  • ドリブルで斜めに押し込む、というとこまで見せておいてからの
  • カンセロ/ロドリのロングパスで裏に抜ける、

という見合いができるようになったのが強い。もはや、かつての無理筋ミドルマシンの面影はない。また、実は身体が大きい上に走れるようになったので、守備でも効く。かつてレアルでフィーゴソラーリマクマナマンが守備でも良い働きをしていたのと同じだ。

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あと、過去4シーズンでエリア外から決めた点数では実はプレミア1なんですよね。ハリー・ケインより上だというのは凄い。マレズとギュンドアンが一番シュートが上手いので、こいつらにどうやってエリア内から良い体勢でシュートさせるかから逆算してチームを作った方が良い気がしてきた。

 

どうでもいいが旧友を温めたがるタイプで、リヴァプール戦後にマネ、サラーとアフリカトリオで内緒話したり、ウルヴズ戦後にル・アーヴルで同僚だったサイスと内緒話したり、内緒話ばっかりしている。

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フェラン・トーレス

今年バレンシアから来た20歳。ウィングとしての突破力は絶望的にないが、出しとくと得点に絡む。ロビーニョ然り、ヘスス・ナバス然り、リーガ名うてのドリブラーがプレミアに来ると全く脅威じゃなくなるのって何なんでしょうね。みんなキャラ変が必要になる。

まあ自由なドリブラーだったマクマナマンがめちゃめちゃ走るマンとしてしかレアルではやっていけなかったように、逆も然りなのかもしれない。

 

今年のシティは完成度が高まった代償に発展性が全然なくなっており、攻撃のオプションが実質「ジェズスを入れる」か、「ジンチェンコかカンセロを入れる」しかない。

そういう意味ではフェランもオプションにすらなっていないのだが、セカンドセットとしては34試合で13点取ってるから悪くない結果だ。運動神経が良くてエリア内で強い。グアルディオラの選手らしく、ウィングでもワントップでも全く苦にせずやってるので、多分来年にはこいつもグルグル旋回し出すと思う。

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セルヒオ・アグエロ

最後のシーズンは、コロナと怪我でほぼ離脱。攻撃のオプションにすら入らなくなってしまった。離脱してる間はゲーム実況に精を出す本田翼路線を追求していた。

 

でもやっぱり思い出は尽きない。アグエロの良いところはとにかく手が掛からないところで、遠かろうが角度がなかろうが、その加速力と巨大なケツ筋で何とかしてくれるので、最終的にどういう形で持たすかとか考えなくてよかったのだ。アグエロの尻がシティを救ったことは数知れない。

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バルサに行くらしいが、ちょっと心配なのは親友のくせに選手としてはメッシと全然相性が良くないことだ。クーマンがやらなければならない仕事は多い。でも最後に一花、咲かせてほしいですね。

 

では最後に、アグエロのゴールの中で好きなやつを一つ載せておきたい。足が振り回せるところまで行けば、もうこっちのもの。

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ガブリエウ・ジェズス

そろそろ現実に向き合うときが来てしまった。おっそいのだ。ジェズス。ほんとに。チャキチャキ動けるのとバネはあるからごまかせてるだけで、めっちゃ足遅いの。ほんでシュートモーションもデカいから引っかかるのなんの。どんどんブラジリアン柳沢化が進んでいる。あるいはデライアス・ヴァッセル2.0化。結果として言えば、点が入るレンジがめちゃんこ狭いのである。エリア内中心半径5mくらい。たまに例外もあるけど。

 

良いところも勿論いっぱいあるが、なんか「FWなのにインサイドハーフ仕事ができる」とか、「前線で使うとヴァランやクリステンセンみたいに事故が起きる」みたいな、ん?て感じなんすよね。9番の仕事なのかそれは的な。

 

ウィングかインサイドハーフに点が取れる選手が生まれて、ジェズス本人はセッターに専念すれば、それはそれで新しい境地が開けるかもしれない。

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スーパーリーグ1.0の顛末

私の古い友人であり、名門ユヴェントスのチーフ・コマーシャル・ディレクターであるジョージ・コンスタントプロスからの電話が鳴ったのは、ロンドンを約半年に渡って覆っていた雲もようやく晴れ始めた5月初旬の夕方のことであった。

 

theathletic.com

 

 

 

 

「参ったよ、マドリードバルセロナも電話に出ないときた。きっと密かにUEFAと合意に達する算段を練っているに違いない。あの小賢しいアメリカ人やペテン師のシーク共はとっくに逃げ出してしまった。これでは最終的に我々だけがスーパーリーグに残ることになってしまう」

 

「少なくとも1チームだけでリーグを組成した世界初のクラブにはなれそうだが」と私は皮肉を言った。

 

「それも悪くないが、やはりどこかと対戦した方がいい。選手たちが飽きてしまうからね」ジョージの口調からは焦りがはっきり伝わってきた。

 

「それでいったいどうしようというんだね、ジョージ?」

 

「早急に新しいフォーマット案を考えなければならん。最悪でも対戦相手が決まればなんとかなる。アンドレーアとの打ち合わせは明日の9時なんだ」

 

「ふむ」。私はその日3本目のマールボロ・ブライトに火を点け、窓の外を眺めながら思考を巡らせた。庭の大きな楡の木は春の日差しに照らされて網目状の模様を芝生の上に投げかけ、その横をハイイロリスが急いで駆け抜けていくのが見えた。

 

ユヴェントスマングースというのはどうかね」。私はジョージに言った。「何も毎週マングースである必要はない。毒マムシでもいいし、カブトムシでもいい。可愛らしい哺乳類なら女性ファンの取り込みにも困るまい」

 

「悪くない案だが」ジョージが鼻を鳴らした。「誰を噛むかの相談は可能かね?。毒を持っているやつとやるとなると、当然被害が出るからね。我々だってクリスティアーノを失いたくはないし、毒サソリが毎週モラタばかりを刺すとは限らんだろう」

 

「そいつは放映権料の配分次第だな。もう30年も昔のことだが、チャンピオンズカップの放映権料配分に不服だったライオンの組合長が日本の女優を引きずり回したことがあっただろう」

 

「だとすると難しいな。非創設メンバーへの配分は総収入の4.5%までと決めているからね」

 

「対パイプ椅子は?音は派手だし、きっとチャレンジングな試合になる」

 

「それには反対だな。パイプ椅子との1対1だと稼働しない選手が多すぎるし、かといってパイプ椅子との11対11だとあまりにも騒々しすぎてテレビ中継に向いてない」

 

「対モンスタークレーマーはどうだろう。フェデリコ・キエーザが割り箸はきちんと入れたと抗弁するところが見られたら、そこらのe-sportsなんか目じゃないほどティーンエイジャーが興奮するだろう」

 

「ぜひ私も見てみたいがね」

 

「何か問題でも?」

 

「言葉が問題だな。うちの選手たちが理解できる言語を話す国の人間は、恐らく選手たちにクレームをつけようとは思わない。彼らにクレームをつけようと思うような国の人間は、恐らくラテン言語を解さない」

 

「もっともだな」私はすでに5本目の煙草に火をつけんとしていた。「こうなると、もう一度審判控室の鍵を空港に持っていって、世界中からスーパーリーグの記憶を消してしまうしか思いつかんよ」

 

「うちのボスがそうするかは疑問だな。まあいいさ、手を煩わせて悪かったね」電話口からは彼の落胆がはっきり伝わってきたが、彼もこんなところで時間を無駄にしてはいられないと思ったらしかった。

 

その時突然、私の脳裏にこの20年だれも思い付いていないような素晴らしいアイディアが浮かんできた。

 

「おい待てよジョージ、良いことを思いついた。地球温暖化と戦うことにしてリーグを組みたまえ。選手たちは今は食事をエネルギーにして動いているだろうが、電動式にすれば二酸化炭素の排出量はゼロになる。ゼロ・エミッションを達成したサッカークラブは未だない。ESG銘柄ということにすれば投資家を集めるのも難しくはないさ」

 

「しかし、バッテリーの交換にはコストがかかるだろう」

 

「充電ステーションを使うならな。カートリッジ取替式にすれば、充電が切れた選手をわざわざステーションまで持っていく手間が省けるから、大幅にコストを削減できる。バッテリーを一人分交換するたびに試合の無料視聴権かマイレージを付与するようにすれば、審判たちがこぞって交換を買って出るのは間違いないよ。念の為、本拠地をイタリアからオランダかベルギーに移せるかね?ベネルクスならグリーンエネルギーに対して税制優遇が受けられるから、いくらかの経費削減にもなるだろう」

 

「試して見る価値はありそうだな。資料を準備してみよう。恩に着るよ、スーパーリーグが成立した暁には、君に数年分の炭素排出権をプレゼントしよう」

 

「なに、大したことじゃないさ。」

 

 

 

 

 

この原稿を書いている時点でジョージからの続報は届いていないが、恐らく上層部は彼の提案を気に入るに違いない。イングランドのファンの激しい反対によって一度は頓挫したかに見えたスーパーリーグだが、数年も経てば、未来を見通す目を持っていたのが誰なのか、はっきりとすることだろう。天は常に、深い思索を巡らせるものに報いるのである。