プレミアが終わったので全チームの感想を言おう(1~3月編)

(基本、各試合の直後に書いたものです)

 

 

 

1/23 FAカップ チェルテナム ○3-1 (A)


4部のチェルテナムと対戦。キャプテンのベン・トーザーだけ知ってた。昔ニューカッスルにいたよね。

固い5-4-1、荒れた芝、狭いピッチの三重苦で80分過ぎまで負けてた。3バックで臨んだことが批判の的になっていたが、いつもの並びだってボール持ってるときは結局ほぼ3バックになるわけだから、大した違いではない。

問題は、ポジションを交換しながらプレーできる選手と、相手を引き付けてリリースできるDFが11人の中に何人いるかということで、この日はそれがフォーデンだけだったということだ(あとギリギリ、ジェズスとマレズ)。

交代で出てきたのがインサイドでプレーできるギュンドアンとカンセロ、後ろから運んで時間を作れるルベンだったのはそういうことだと思う。ともあれ、とにかく主力を休ませることが最優先だと思っていたので、個人的にはクオリティはどうでも良かった。

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1/26 WBA ○5-0 (A)

引き分けに持ち込まれてビリッチやるなあ、とか言ってたらクビにされていたWBA

意外にも、1月の9連勝の中で、内容で圧倒したのはこの試合だけだった。あとは、ブライトン戦の前半くらいだろうか。この試合はもうギュンドアンが点は取るわ、流れて組み立ての仕上げはするわ、ポケットに抜けてアシストはするわ、もはやギュンドアンさんとしか呼びようがない縦横無尽の活躍だった。さんをつけろよ、デコ助野郎。

この試合のシティは一番旋回力が高いメンバーだった。忍法ポジションチェンジの術。これを初見でやられたらキツイだろうなとは思う。ただこのメンバーは割と小粒で、「弱者のサッカーを高価なメンツでめっちゃ頑張ってやってる」という感じなので、CLで同格の相手に通用するかどうかはよくわからない。

 

気になった人:ロメイン・ソウヤーズ

プレーがどうこうではないが、地元生まれでWBA育ち、放出されたあと10年のときを経てWBAに帰還して昇格に貢献、という経歴が熱い。それだけでカムバック賞を与えてしまいそうだ。

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1/30 シェフィールド・ユナイテッド ○1-0 (H)

この日も煮え切らない内容で、xGも1.53。でも相手のxGも0.15に抑えてたからまあ良いかみたいな。全然ハマってないのに試合に出すと不思議に得点に絡むフェラン・トーレスが粘ったボールを、ジェズスが押し込んで1点ゲット。後半のロングボールをなんとか耐えきって勝点を稼いだ。

ブレイズの5-3-2はかなり強度が高く、何回左右に回してもスペースが全然空かなかった。なんとか中央に入れたいが、後ろの左右がウォーカーとラポルトだとまたこれが今ひとつ入らんのよね。

こういう試合で勝ちが拾えるから今シーズンは首位に立てているが、これは微妙なバランスで、CB陣に故障が起きたり、インサイドチーム(ギュンドアン、ベルナルド、カンセロ、フォーデン)がいなくなったりすると引き分けや負けに転んだりする可能性も全然あると思う

 

気になった人:オリー・マクバーニー&デイヴィッド・マクゴールドリック

最終盤に放り込み要員として登場し、きっちり仕事を果たしてシティファンを冷や冷やさせていた。マクゴールドリックは10年以上前にセインツで得点を量産しだした頃に一度見たことがあったが、まだいたんかい!という感じだ。相変わらずガタイの割にそこそこ足技がうまい。

ブレイズはマクゴールドリックに限らず、フィル・ジャギエルカとか、ビリー・シャープとか、ロドウェルとか、おっさんを雇用し続けているところが熱い。そしてロドウェルは相変わらずジムで「いや~まだ無理」とか言っているんだろうか。

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コンディションが整った試しがないロドウェル先生

 

2/7 リヴァプール ○4-1 (A)

リヴァプールは「お前ら、ボール持たれたらどうなんじゃい?」という問題を突きつけてきた。特に前半は、プレスを物ともせずヘンダーソンファビーニョサイドバックにビシバシ長いパスを通しており、さすがリヴァプールというクオリティだった。

近年のリヴァプール戦が苦しかったのは、こちらのプレスは効かないがあちらのプレスは効く、こちらは引いて守れないがあちらは引いて守れる、という不均衡で戦わなければなかったからだ。この試合ではそれが逆だった。サイドバックに通されても、中央を割られるシーンがなかったので耐えることができ、後半はハイプレスからミスを誘って立て続けにゲット。みみっちい戦い方だが、勝ったので良いとしよう。

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ところで、今年のリヴァプールは怪我人が多すぎてコメントが難しい(シニアなCBが3人全員シーズン絶望、なんて聞いたことないでしょう)のだが、投資ファンドが買収した場合のケーススタディとしては興味深い。

例えば、やはりクラブが変革期にあるときはプロ投資家とファンの利害が一致しやすいが、一度安定期に入ると足並みを合わせるのが難しくなるなとか。

リヴァプールがCLに常時出場できるまで強くなること、そしてリーグで優勝することはFSGにとっても重要な命題だっただろう。しかし、連覇するとか、王朝を築くとかになってくると、投資対効果が著しく下がる。

なんとなれば、マンチェスターUは「クラブの価値を上げるためにタイトルを獲る必要なんかない」ということを証明してしまってすらいる。ロヴレンを放出して代わりを買わないというところにもそういう姿勢は表れているように思われる。

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そもそもFSGはそのビジネスモデル上、手金を突っ込むということがダイレクトにリターンの減少につながってしまう。だから今後も、よほどのことがない限り、あっても貸付という形でしか金は入れてこないだろう。

と、考えていたが、今期はそのよほどのこと、つまりCL権を逃すという自体が起こりかけた。こうなると投資家としても普通に美味しくなさすぎるので、ファンにとっては多少心配事が減るかもしれない。皮肉なことだが。(→とか言ってたらスーパーリーグに飛び込みましたね。ヘンリー氏の濡れた子犬のような顔での謝罪ビデオは面白かったが、謝るだけならタダだからな。次はぜひ世界のヘイポーメソッドで謝罪してほしい)

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気になった人:ジョーダン・ヘンダーソン

本職じゃない「のに」なのか「だから」なのか分からんが、ベルナルドのプレスを物ともせずDFラインからSBにビシバシ浮きパスを通していた。しかも左CBから左SBという、かなり難しめのやつだ。さすが。

 

気になった人:モー・サラー

今シーズンのサラーを評するのは難しい。

 

まず結果は出しているわけだ。とっても。

サラーの素晴らしいところは、技術がシームレスにつながっているところだと思う。まずボールをしっかり収められる。そしてエリア内、あるいはペナルティアークやいわゆるデルピエロゾーン(右版)から、小さいモーションで強く正確なショットが撃てる。これを嫌がって厳しくマークしようとすると、プレミア1の敏感BODYで即イキボンバーしてしまう。一連の技術、あるいは体質がゴールに直結する形でつながっているので、守る方からすると、あっちを止めるとこっちが止められなくなる。技術の高さは、GKとの1on1の安心感にも表れている(シティのFWと比べると雲泥の差だ)。

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一方で今シーズンの試合を見ると、そもそもプレーする位置がゴールから離れてしまって、ドリブルとかクロスとか、そもそもサラーがあんまり上手じゃないことをやっていた印象が強い。端的に言うとサラーが本来持っているはずの姿より怖くなかった。このタイミングで売ってしまうというのはファンの思い入れからすれば難しい選択肢かもしれないが、売らないだろうと皆が思うタイミングで売ってこそ美味しい、と投資家のFSGが考えてもおかしくはないと思う。

あと皆言ってるがカーティス・ジョーンズは素晴らしい選手で、こういうのをちゃんと起用して一人前にするリヴァプールは偉い。

 

2/10 FAカップ スウォンジー ○3-1 (A)

ウォーカーのクロスが直接入っちゃって気まずかった思い出があるが、それ以外はほとんど覚えていない。相手の攻撃的MF、インド系のヤン・ダンダはかなりいいプレーをしていた。

 

気になった人:ジョエル・ラティボディエール

イカした名前のシティ育ち。フォーデンが最優秀選手賞とったU17W杯でキャプテンをやっていたが、シティでは未来がなさそうなので移籍した。

この日は5バックの右CBで出場したが、隣のWBロバーツがかなりおっちょこちょいだったこともあり、正直辛いパフォーマンスだった。でも顔がかっこいいし名前もイケてるので将来に期待したい。

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2/13 トッテナム ○3-0 (A)

前半戦はケインとBTSダイナマイト打線に一蹴されたトッテナム戦。

今回は、エンドンベレとホイビェアのボランチ2枚を裏抜けでしっかり引っぱって、カウンターの窓口になる2列目の3枚はしっかり潰す、というやり口が機能した。多分、WBA戦かこの試合が、一番「圧倒」できて、常に相手を後手に回らせていた試合ではないだろうか?

1月はずっと苦しんでたし、この試合のあとはもうエヴァートンアーセナルウェストハムと研究されてまた苦しくなっている。そう思うと、優位を確立しても追いつかれるのは一瞬ですね。

 

気になった人:エリック・ラメラ

たまにあるカウンターのチャンスを潰す潰す。TWICEどころの回数ではない。

放っといてもボールロストするので、シティの守備は大分助かっていた感がある。とくに脚が速いわけでもないし、カウンターのチームでこのロストっぷりはキツすぎる。でも普段はもっといいところがあるんだろうとは思う。パッションもあるしね。
あと、どうでもいいところで激しすぎるタックルを決めて、案の定イエローもらったのに何が悪いか全くわかりませんみたいな顔で驚いていて、もうすぐ三十路なのにこいつ全然変わってねえなと思った。

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気になった人:ギャレス・ベイル

かつて一斉を風靡した大型遊撃手も、度重なる怪我と不摂生ですっかり一塁専の実質代打屋になってしまった。パワプロの能力値もCAAADからEBDCFくらいになって寂しい限り。

と思ったらこの試合の後は往年の打棒を部分的に取り戻し、打率.315のホームラン12本くらいでシーズンをまとめた。でもまあ、スパーズの経営としては週給30万ポンド出して雇う選手ではない。エモーショナルな価値があることは認めるが。

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2/17 エヴァートン ○3-1 (A)

この試合だけしこたま飲んでて観ていない。観てないが、シティお得意の旋回作戦を人ビッタリ貼り付けてエヴァートンが消す。そうなるとペナルティアークが空くのでマレズとベルナルドがミドルで打開、という流れだったという話は街角の靴磨き屋から聞いた。

この辺から地味にマレズ無双が始まるのだが、なんかマレズ、ギュンドアンにゴール近くで打たせる、という形から逆算してチームを作った方が強い気がしてきた。ジェズスやスターリングは頑張っているし、それぞれ全コンペティション含めてシーズン20点強取る力はあるが、一方で取れる形が狭すぎる。例えば、左のハーフスペースに抜けてもこの二人はまず取れない。ステップサイドもできないし。

 

気になった人:ギルヴィ・シグルズソン

若いときから決して運動能力は高くなかったのが、年取って余計に固定砲台っぽくなってきた気がする。でもそれなりに身体は強いし、やはり良いボールは蹴るし、PKも上手い。代打制があったらそれだけのためにシティが雇ってしまうかもしれない。

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2/21 アーセナル ○1-0 (A)

開始2分で先制したときはどうなることかと思ったが、その後は双方の守備が機能した。シティの選手に全員マンツーでひっつけて、DFラインが空いたら中盤が降りてカバーする、中央が空かないように逆サイドは捨てる、というアーセナルのやり方は機能していて、この試合とその後のウェストハム戦、そして約1ヶ月後のドルトムント戦をもって、今シーズンのシティは完全にネタがバレた感があった。やっぱりアルテタは相手を分析し、それを練習を通して対策に落とし込むという手腕は確かだと思う。

ただ、この日のアーセナルは守れてもいざ出ていくときにはポジションがメタメタになっていて、辛うじて「サカのポストからティアニー」の左フックだけを繰り出せる感じだった。ワンパンチで戦うのは結構キツい。

 

気になった人:パブロ・マリ

シティが昔ツバつけてジローナやNACブレダに貸し出してた左利きのセンターバック。鋭い楔をたびたび打ち込んでおり、組み立てに貢献できる選手であることが明らかになった。失礼な言い方だけど、左利きで楔が上手くて、ちょっと機動力には欠ける感じ、廉価版ラポルトという趣もある。

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気になった人:エクトル・ベジェリン

こ、こんなんだったっけ?ボールはまるで持てないわ、パスはズレるわ、守備も後手後手だわ、失礼ながら全方位的にかなりキチぃことになっていて衝撃を受けた。やはり怪我の影響なのか。これでもパリが数千万出して買うというなら、売ってしまった方がお互いのためになるかもしれない。

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2/27 ウェストハム・ユナイテッド ○2-1 (H)

戦術的優位、終~了~。モイーズの研究成果がバッチリハマって、ウェストハムに終始優位に立たれる苦しい試合だった。具体的にはxGで負けた。

ウェストハムは、行くぞ!というときの決断力、前に出る人数の掛け方、確信の強さが素晴らしい。恐らく指導部に対しての選手からの信頼も厚いのではないか。モイーズをケヴィン・ノーランとスチュアート・ピアースが支える指導部、戦術指導力はわからんがとりあえずパン焼くのとかは上手そうだ。

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ペップシティは、かなり「インサイドで細かくプレーできる連中がどのくらいいるか」が内容に直結している感が出てきた。具体的には

そういう意味でこの日のメンバーはそんなに悪くはなかったが、右のウォーカー、左のフェラン柔軟性がなかったのと、戻ってきたデ・ブライネのネジがかなり狂っていたことで苦しんだ。失点シーンも、デ・ブライネとジンチェンコのダブルデブライネが盛大に対応を間違えたことからきている。

とはいえ、細かいことが上手い連中は概して無理が効かない。プレスがかかってないときのギュンドアンはただの遅いおじさんだし、自ゴール前のベルナルドは非力なハゲだ。カウンターに強いウォーカー、3mスプリントの勝負なら絶対勝てるスターリング、周りと合って無くても一撃で点が取れるデ・ブライネのような選手は、前提条件が変わってきたときにかならず役に立つ。

 

一方で、一芸派は高く売れそうなので、売っちゃっていっそ細かい派に振り切ってみるという手もある。つまり、セントラルMFができそうな面子ばかりを揃えてみるのだ(どうせ試合中はみんなCMFをやっている)。さて、来季の編成はどうなるだろうか。

 

気になった人:ヴラジーミル・ツォウファル

チェコ版のサバレタという雰囲気の右WB。爆裂に根性がありそうだった。ちなみにウェストハムは昔からラバントとか、コヴァーチとか、チェコスロバキアの選手がちょくちょくいるが、やっぱり「世界一激怒してるサッカー選手」「デビュー戦と2戦目で連続退場した世界初の男」ことトマーシュ・ジェプカ師匠のせいなんでしょうか。

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3/2 ウォルヴァーハンプトン ○4-1 (H)

前半何もさせずに押し込みまくったが、1点しか取れずにセットプレーで追いつかれたときはやばかった。泡食って5トップ化の悪癖が出たところでカウンターを食らって死ぬところだった。

そこでルベンかストーンズが対応できるところが今年と去年の違いで、やはりどうしてもコントロールできないカオスのことを考えると、後ろには極限状態で守れる人間がいたほうが良いのだ。多少組み立てが下手でも(ルベンは全然下手じゃないけど)。

 

気になった人:キ=ジャナ・フーヴァー

多分リヴァプールから借りてるDFだったと思うが、プレミア史上こんなにジェダイマスターっぽい名前の選手はいなかったのではないか。絶対頭超長いやつですよね。

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3/7 マンチェスター・ユナイテッド ●0-2 (H)

緊張感溢れる勝ち点差12で迎えたマンチェスターダービー

試合は開始30秒でのPKと、疑似カウンターで2発食らって完封負け。マンUは事故以外には中々点が取れなさそうな雰囲気で、下位相手に引き分け連発しているのもさもありなんだったが、点が入ってさえしまえば非常に強かった。後半はかなりシティが泡を食ってバランスを崩しており、マーシャルさえまともなら3-0になっていたはずの試合だった。

 

個人的に驚いたのは、英語圏Twitterで、「結局このチームはいつもこう」「チームセレクションの時点でおかしかった」という失望と批判がかなり激しめに寄せられていたことだ。

確かに、カンセロやジンチェンコを使って正面から主導権を握りに行くより、ウォーカーや、ひょっとしたらラポルトを使ってガチガチに引きまくった方がスールシャールは嫌だろうなとは思ったが、そういう意地の悪いやり方はグアルディオラはやってくれない。それでもここまで連勝を続けていたら、とことんボールを握りに行って勝つことを志向してみてもおかしくはないし、21回連勝もしていたらそれくらいの冒険は許されるだろう。そう思っていたが、自分はマイノリティだったようだ(Twitterの意見をマジョリティとみなすかどうかというのはまた議論があるところだが)。

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別にそういう反応があること自体が悪いとは全く思わない。思っちゃったこと、そういう感情が多くの人に生まれたことは事実なわけで、それを隠してもしょうがないし、そういうエモーションもスポーツ観戦の醍醐味の1つだろう。過去にCLで似たような展開から破れてきたという経緯も拍車をかけたのも間違いない。ただ、あれだけ支配的なサッカーができて、あれだけ連勝を重ねても、このチームはファンから信頼を勝ち得ていないのかもしれない、という可能性には面食らった。

どんな負け方であれ、1試合でもう見放されてしまうのだ。ということはきっとこれからも無理だろう。チャンピオンズリーグに勝てば信頼が築けるのかもしれないが、運の要素が大きくて競争も極度に厳しいあのコンペティションで勝てないと信頼されないチームというのは、あまりにも脆い。自分はグアルディオラを解任したほうが良いと思ったことは一度もないが、今回ばかりはもう潮時かもしれんなという思いがちらと頭をよぎった。関係性として、もう袋小路に入ってしまっているからだ。なんかちょっと悲しくなった試合であった。

 

気になった人:ダニエル・ジェイムズ

多分、最終成果物はなかなか出ない人なんだろうなと思った。格下相手だとフラストレーションが溜まりそうだ。逆にこの日のように、リードを守ろう!カウンターを撃とう!という試合だと良さがとても活きる。多分、15年前のシティに来てたらかなり人気が出ただろう。右のジェームズ左のムサンパだ。アイドルになったかも知れん。

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気になった人:ハリー・マグワイア

守備の中心として効きまくっていた。マグワイアといえば「俺じゃダメか?」と言いながらのあすなろ抱きで相手FWをトゥンク・・・♥とさせることで有名だが、これが全然ファールにならない。多分「え、これがファールなわけなくないですか・・・?意味わからない・・・」みたいなスッ・・・とした顔ができるのが良いんだと思う。先日ブライトン戦でウェルベックを倒したときもめちゃめちゃスッ・・・とした顔でやっていた。

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気になった人:アントニー・マーシャル

「マルシャル」とカタカナ表記するのは別に良いんだけど、マ「ル」をどこから持ってこようか悩んでいる。英語読みに近づけるならマーシャルだし、フランス語読みに近づけるならマシアル、あるいはマハシアルだ。最悪でも「マルシアル」だろう。つまり「マルシャル」というのは前後分断されたキメラで、そこがちょっと気持ち悪いのである。

別に日本語読みなんだから元の言語の読みと違っていいじゃん、つーのはまあそうなんだけど、日本語にするにしても一貫性がほしい。「ファンダイク」も同じ問題があって、オランダ語だと「ファンデイク」に近いし、英語読みなら「ヴァンダイク」だ。

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というどうでもいい話は置いといて。プレーは良かった。これまで批判され続けてきたマーシャルだが、敵と戦うのではなく、笛と戦うという割り切りをしてきたのは潔かった。打開するのではない、ファールを稼ぐのだ。泥にまみれろよ・・・。ベンチの田岡先生も涙ぐんでらっしゃいましたね。

 

3/10 サウサンプトン ○5-2(H)

セインツは強い!

シティは中々ボールを奪回させてもらえず、奪っても一番柔軟性のないメンバー、つまりウォーカーとラポルトに持たされて、狭いところに追い込まれてカット。

1失点目なんかモロにそれで、ウォーカーはフェイクがかけられないので、中央にボールが入れられない。追い詰められて困って困って、その場でクライフターン!して案の定引っかかってCKから取られた。

という感じでかなりシティも研究されてしまっていたが、この状態を保つためにサウサンプトンもかなり無理筋の圧縮をかけており、普通にロングパスで裏取られたり(1点目)、ドリブルでまとめて捌かれると脆かったり(3点目)、パスカットから即死もののクロスカウンターを食ったり(4点目)、出入りが激しすぎた。10回やったら2,3回は負けるかもしれんが、トータルの得失点差50-15とかになりそう。

 

気になった人:イブライマ・ディアッロ

途中から出てきたボランチ。かなり上手かった。ヌメヌメっとしたドリブル、ギリギリまで我慢できるパスフェイクが嫌らしい。エンドンベレとカンテを足して3で割った感じだ。

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3/13 フラム ○3-0 (A)

7人休ませての3-4-3。まあ機能しないだろうなと思って、案の定ぎこちなかった。

シティが3-x-x系で組むと、まず中盤センターがガチガチにマークされ、ウィングバックがトップに吸収されて5トップになる。そうなるとこちらのCBがドリブルで運ぶ形になり、極端に前後の距離が近い、うっすーくて平べったい形ができる。そうなると隙間がなくなってもう手詰まりだ。3バックが問題と言うよりは、ウィングバックに旋回できる選手がいないということの方が大きいが。

で、この日のように複数のタスクをこなすのが比較的苦手なメンバーで組むと、旋回ができないから余計滞る。結果、ストーンズがスルーパスを出したり、ジェズスが左サイドから切れ込んだり、得意じゃないことばっかりやらざるを得なくなるというのも難点だ。

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これははんぺん

とあれこれ言ったが、私は全然ネガティブじゃないので、色々好きに試してもらったら良いと思う。本当にやってほしいのは、「ボールを放棄してみる」というチーム構成だけど、この日の3バックもある種それに近いのかもしれない。ただチームビルディングにかかる時間を考えると、素人が言うほど簡単にはできないだろうなと言う気もする。

フラムは中盤をマンマークしてシティのCBがドリブルで出てきたところをひっくり返す、しっかり繋いでシティの保持時間を削るという作戦はセンス良いと思ったが、カヴァレイロとルックマンが中々押し返しが効かず、最終的にアンデルセンとアダラバイヨがビルドアップをミスって撃沈したのが惜しかった。こういうときのためにリーグアンの身体能力高めのウィンガーを買っとくと良いんだが、安いやつ買うと概して稼働率が低いんだよな。あの手のやつ。

 

気になった人:アルフォンス・アレオラ

フィリピン系なんだとは知らなかった。このクオリティでケパの半分しか給料をもらってないとは信じられない。ちなみに、トップGKたちの給料は、デ・ヘア>>>>>ケパ=アリソン>>>ヨリス=レノ>>>エデルソン=メンディ=アレオラという感じだ。良いところに就職できれば、給料1.5倍は狙えるだろう。ていうかデ・ヘアのもらい方よ。

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3/16 CLベスト16 ボルシアMG ○2-0 (H)

内容では今シーズン一番かも。3週間でデ・ブライネが完全にチューンナップされており、ウォーカー以外全員がポジションチェンジできる大旋回ロボが完成した。あっちもこっちもぐるぐる回る。

ポジションチェンジをしていると当然それ自体がひっくり返される種になる(例えばボール奪われたときにロドリが前線にいて、ベルナルドがアンカーにいたり)。それは全員が別のポジションもそこそこ対応できるように改造されていることで、それでもダメならカウンター対応が上手いルベン、キレキレに仕上がったストーンズ、そしてウォーカーの筋肉でなんとかするという設計だ。

前回対戦は中盤で奪ってカウンターがいい感じだったBMGも、4トップがまるでハマらないのでかなり後手を踏まされていた。テュラムとエンボロのコンビはかなり良い線行ってたが。

 

気になった人:ヨナス・ホフマン

ハイデルベルク出身というところが熱い。シュトゥットガルトから近いし、ハイデルベルク城はきれいだし、ワインは旨いし、地味に良い観光地だからだ。何の話だろうね。でもおすすめです。

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3/20 FAカップ準決勝 エヴァートン ○2-0 (A)

ローテーションでスターリング、ジェズス、フェルナンジーニョラポルト、ウォーカー、ステッフェンが先発。当然流動性は落ちるし、エヴァートンはよく練られた5-3-2でかなりタイトに試合を運べていた。惜しむらくはリシャーリソンにもっと突破力があれば、シグルズソンがもっと縦に間に合えば、あるいはWBから良いクロスが飛べばというところ。

シグルズソンのところは本来ドゥクレがいるが、リシャーリソンは難しい。8,000万ポンドくらいでマンUに押し付けたらサン=マクシマンとサン=マクシマン廉価版みたいなやつを買えると思うが、多分そいつらはリシャーリソンよりフィニッシュができない。

 

そう考えると、エヴァートンは頑張って戦力を揃えたが、市場で高値が付きやすいポジション・機能がボトルネックになって詰まっている。でもFFPの壁があって、もう買えない。すでに人件費は売上の8割程度まで来ていて、あっぷあっぷだ。このままだと4位以内に入っても、FFPに引っかかって結局出れないだろう。今年CLに出れなかった時点で、1つのプロジェクトとしては残念タイムアップである。

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でも別にそれでクラブが無くなるわけでも現体制が崩れるわけでもない。やるべきことは更に人を積んで積んでの倍プッシュではなく、若手の育成と売却、営業・マーケ強化で収支構造を漸進的に改善し、2024年の新スタジアム完成を待つこと、そしてそのためにファンに長期ビジョンを示し、アンチェロッティなり次なりの監督を守ることだと思われる。

っていうことになるとですね。必然的に、今CL圏内にいない、売上規模も歴史的に大きくないクラブをCL常連まで押し上げようとすると、5年では効かない時間がかかる。そんな長い投資ホライズンを持った投資家が西欧にいるのかというとかなり怪しい。ダニエル・エクもね。

最近の米国のスポーツファンドは10年程度見る準備があると聞くが、やっぱりロシアなり中東なりのストラテジックな投資家の存在感は高まるだろう。そうなると何か怪しい取引があった際にやれUEFAは無能だ取り締まれ論が出てくるだろうが、いや予算ないんだから無茶言うなと。

そうなったときに、自チームの短期の成績を捨てて、この欧州サッカーという知財全体の長期利益を提示できるメガクラブのオーナー、経営陣が出てきたら、サッカー界の次の20年を引っ張る存在になれそうだ。

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それにしてもシティの話に戻ると、25試合やって24勝というのは異常だ。それでもハーフタイムにゼロゼロだと、Twitterの公式アカには、「Fuck」「替えろ」「ひでえ」というリプがつく。高級紙の記者が必死になって「シティが勝つのは当然、国内三冠も当たり前」なんてやっているのには呆れるが、そんなリプがファンベースから出るようならどっちもどっちやなという気もする。試合やって自動で勝つマシンだと捉えてるという意味では一緒だからだ。フラストレーションが溜まる気持ちはわかるが。

 

気になった人:アラン

シャツをパンツに入れて口ヒゲを生やした短髪のおじさん。アテネでもマルセイユでも兵庫県たつの市でも、こういうおじさんには絶対に近づいてはいけない。倫理観という概念は知っているし、何ならしっかりとした思想も持っているが、一旦脇に置いておくことを何とも思わなさそう。これとリシャーリソンを扱えるのはさすがパパ・カルロだ。

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