2020/21 マンチェスター・シティ 個人レビュウ
指導部
リージョ含めてみんなでムニャムニャッと会議した結果、
『よし、基本に帰ろう』
『だな』
で改善したという話が舐めていてよい。
リーグを奪還し、ここ5年で3回目の優勝。すごいけど、ちょっと勝ちすぎ。バランスが取られた方が世界のためだ。
あと途中でグアルディオラがアリゴ・サッキに電話したら「キミィ、最近プレスをしとらんじゃないか、プレスを」と言われたエピソードも良すぎる。この調子で、ちょっと調子が悪くなったらイタコを呼んでロバノフスキーの亡霊に相談するとか、クライフに憑依してもらうとか、そういう方向で新境地を開拓していく、両利きの経営を実現していってほしい。イタコの連絡先はグレン・ホドルが知っている。
GK
エデルソン・モライス
1人目をすげーどうでもいい話から始めて申し訳ないけど、この人ちゃんとしてれば結構男前というか、チャニング・テイタムを洗濯機に入れて乾かしたくらいの器量はしてるはずなのに、マンチェスターに来てから年々身だしなみに無頓着になってきている気がする。
謎のファール判定で助かったドルトムント戦のポカは思わず叫んでしまったが、それ以外は本当に言うことない。ただエデルソンがいる毎日に感謝して過ごすしかない。人類は無力だ。
ザック・ステッフェン
「IBMを買ってクビになったやつはいません」とは昔のIBMの宣伝文句だが、アメリカ人GKを買ってクビになったやつはいない。ザックも例に漏れず、限界はあるが安定した良いGKだった。
細かいことを言い出すと、そんな足元が達者ってわけでもないな?とか、FAカップのあれはやっぱり飛び出しに失敗しましたね?とか色々あるが、もうそんなことはいい。
私は個人的に、自分が応援するサッカーチームだろうと、自分の職場だろうと、チームにやる気のあるアメリカ人を入れるのが好きなので(テキサス人だともっといい)ザックのちょっとした瑕疵はもう全然許してしまう。
スコット・カーソン
FFPが施行されてから、若手の売却はビッグクラブにとって体の良い資金源になった。育成分の費用はFFPの計算から控除されるので、育てて売れば利ざやがでかいからだ。
そういうわけで第3GKに若手を遊ばせておくのは勿体なくなり、グリーン、グラント、ライト、ロナガンと、ビッグクラブがこぞって実績があるおじさんGKを雇い始めた。その最新作がこのカーソンであり、カーソンは今年も黙ってスタンドに座っているという役目を果たすことで週に2万5千ポンド貰っているのである。
CB
ルベン・ディアス
やっぱりルベンがナンバーワン!
やっぱりルベンがナンバーワン!
やっぱりルベンがナンバーワン!
はい。まあ、たまにこういうの入れないと、眠くなっちゃうんで。
でもナンバーワンなのよ。前に出てもネイマールやムバッペを潰せる、後ろに下がってもカウンターを捌ける。守備だけで言えば体調がいいときのストーンズも負けず劣らずだが、ルベンは稼働率が違いすぎるのだ。連戦で使っても全然疲れない。そして精神力も強い。プレーが切れるたびにスッと味方に寄っていって精神を整えてくれるキメの細かさ。
昔、Numberで塩野七生の婆さんが欧州サッカーと古代ローマをくっつけて語るというコラムがあった。趣旨としては「リーダーになる男ってのは違うのよね~ジダンなんて古代ローマなら絶対百人隊長だわ。醜男でも絶対モテるもの」というどうでもいい話だったんだけど、でも今となっては婆さんの言うこともわかる。加入1年目で23歳なのに、もう4,5年いて20代後半のウォーカーやストーンズやラポルトより遥かにリーダーシップあるし。もう一目瞭然。残酷な真実ですよね。
ジョン・ストーンズ
CBのレギュラー格として、ルベンとのブロマンスを育んだ1年。とにかく身体が動いた。ほぼ戦力外の状態から完全に持ち直したのはそれが全てだ。速いし強いし跳べるし潰せた。縦横に無理が効きすぎ。
ストーンズの運用における最重要点は、本人も使う方もとにかく、「調子こかない」ということにある。疲れるとすぐ判断が怪しくなってドボンで、3試合連続で使ったら絶対ダメ。
それが分かってないサウスゲイトが3月に代表で使いまくってまたちょっとダメにしたが、その後は慎重に慎重を重ねて運用したのでシーズン末まで何とかなった。結局守備の局面でどれだけ相手を潰せるか、守れるか次第で選手としての評価が決まるというのは、「組み立てが上手い」「足元が上手い」という俗説がありつつ、最大の長所は対人戦の強さだったリオ・ファーディナンドを思い出させる。
エメリック・ラポルト
ヴァン・ダイクの次にすごいCBとか言ってたら、気づいたらシティでも3番手になっていた。やっぱり裏抜けに弱すぎるのが辛くて、オフサイド取りに行くか、ファール貰ったふりするか、ファールするかしか対処法がない。
得意なはずのポゼッションも、①シティ対策の進歩(横幅占拠)でサイドチェンジの有効性がガタ落ちする、②パスは出せるけどインサイドでプレーはできない(ボールキープ下手だから)ことが明らかになる、という二連パンチで大分辛いことになっている。レベルは高いんだが。
今のやり方にピッタリ合ってはいないし、代わり(アケ)もいるし、何より本人が控えで満足する性格には思えないので、早めに移るのも前向きな選択肢だろう。
ネイサン・アケ
聞いてたんと違う!と思ったかどうかは知らんが、移籍してきた頃はラポルトしかまともなCB/LBがいなかったのに、ストーンズは残留するわ、ルベンは即ハマるわ、ジンチェンコは成長するわ、自分は数ヶ月怪我してるわで、シーズン終盤にやっと戻ってきた頃にはすっかり4番手になっていた。
スピードはあるし組み立てにも貢献できるが、試合に出すと何となく点を取られる非力さが、ちょっとベン=ハイム味がある。ラポルトとアケを両方抱えるというのは無理があるので、左SB一枚削るか、どっちか売るかした方が健康的だ。
エリック・ガルシア
5番手CB。契約延長を断ってバルサに復帰ということで、その話が出た1年半くらい前はちょっと残念だったが、ルベンとストーンズが台頭したのでめっちゃどうでもよくなった。
今年はヴァーディに根性焼きされた以外はほとんど出番もなかったが、いつもニコニコしてるし、不満も口にしないし、20そこそこでかなり人間が出来ている。ピッチの外では。
ともするとある種の傲慢さすら感じるくらい堂々としているが、多分バルサとレアルはそれくらい確信持ってないとやっていけないところなので、このままでいいと思う。
プレーのレベルは今一つ、二つ・・・うん・・・という感じだが、ピケもマンUにいたときはしょうもないDFだったので可能性はあるだろう。地元で頑張ってください。
フィリップ・サンドラー
足首の手術でシーズンアウト。もう24なのに、この3年で11試合しか出場できていない。来年の夏で契約切れなので、もうこの夏で売るしかないだろう。本人的には1年ローンでプロモーションかけてからフリーで出たいのかも知れんけど。
テイラー・ハーウッド=ベリス
地元生まれ、アカデミー育ちの通称THB。デビュー当時はTwitterで検索するとお姉ちゃん(素人)のアカウントが出ていたが、本人はアカウント作ったんだろうか。
今年はカップ戦でちょこっと出場したあと、ブラックバーンのモウブレイ道場で修業。レギュラーに収まり、本人も「もう1年いたいかも」みたいなことを言っている。
経営側としては17か18くらいで5年契約でロックアップしちゃってローンで放牧するのが理想的だが、選手側もそれがわかってるから自信があるやつは17歳の段階で逃げる(例:サンチョ)。THBについてはもう24まで契約結んじゃったので、しばらくローン修行だろう。チャンスがあるといいけどね。
SB
カイル・ウォーカー
細かいことはできないんですよね。身体が重いから。それでカンセロとジンチェンコに取って代わられたが、CLが大詰めになるに従い、やっぱりウォーカー1人置いておくとカウンター対策の安心感が違いすぎるっつって、RB兼CBとしてレギュラーに復帰した。
ウォーカーがいいのは、シティの中で恐らくほぼ唯一、「競う場所が広くなればなるほど強くなる」選手なことだ。他は皆(KDBは例外かもしれない)、狭ければ狭いほど強くなる人で、みみっちくやってる分には良いんだけど、相手を常に制御できるとは限らない。
そういうときにウォーカーを一人置いておくと、とにかく何とかしてくれる。ムバッペでもネイマールでも相手ができてしまうウォーカー。ペドロ・ネト程度なら秒殺だ。画面外からうおおおーっつって走ってくる姿も東京駅ののぞみ感があって良い。たとえその後のクロスは残念でも。
ちなみに、相手の変化だけでレギュラーに戻ってきたわけではなく、どっかの試合でスタンディング状態からまともな曲げるクロスを入れてきたときは驚いた。ウォーカーがインフロントでクロス?まともな?
そう、30になっても、人は進化できるものなのである。
ジョアン・カンセロ
「私大文系」しかあるまい。四文字熟語で言うなら。
カンセロといえば攻守にとにかくリスクを取ることで知られているが、特に守備でのリスクの取り方が「状況が全部、自分に都合が良い方に転がることに全ベットする」という感じなのである。見逃してくれたらいいな~みたいな。
そのくせ、失敗したときに自分が悪いということを認識する程度の常識はある。過去のシティにも何人か無責任男、あるいはリスクテイカーがいたが、例えばコラロフのように完全に俺関係ありません的態度を取るのでもなし、デミチェリスのように周囲にキレてみせるわけでもなし、失敗したときにはかなり気まずそうな顔で目線は逸らしている。
私文大生カンセロ、多分趣味はパチンコとウイイレ。「俺、パチンカスやから」が口癖だろう。煙草は無論吸う。SBのくせに巧すぎるのでサッカーサークルでは「キング」と半笑いで呼ばれていることは間違いない。その辺の女子大から来た後輩のマネと付き合っているが、卒業してすぐ別れてそうだ。
下らない話をしたが、今シーズンは年末から3月頃にかけてビルドアップお化け兼アシスト提供機として猛威を奮った。「上手いSB」ったってせいぜいドリブルとクロスでしょと思ってたんだけど、インサイドでレジスタ役が完璧にできちゃうんかい!という感じだ。その上手いカンセロに、インサイドハーフとサイドバック、ウィングを試合の中で全部担当させるというアイディアには感心した。
終盤、ウォーカーが再覚醒するのに合わせて加速度的にしょんぼり。控えに再降格したのには笑ってしまったが、イジりようが色々あって面白いので、来年も新しい戦術の開発にフル活用されてほしい。「縦クロス」とかな。知らんけど。
バンジャマン・メンディ
たぶん、右サイドバックもできる。とにかく速い。超特急。味方のフォローがないと、クロスを上げるだけマシーンになりがちなサイドバックとは一線を画します。突破のドリブルも使いこなし、超攻撃的な左サイドバックとして、世界屈指になる日は近いです。マンチェスター・シティに移籍に噂があるようで。アウベスのようになるのか、アラバロールをやらされて脳みそがパンクするのか楽しみにしておきます。
彼こそ真のコアUT選手と呼べる選手です。メンディーは左サイドバックとしてもプレー出来るだけでなく左ウイングバックとして左全域をカバー出来る選手でもあり(中略)偽サイドバックとしてDMFの位置で潰し屋にもなれLCBとして受け止めることも可能、また通常のサイドバックとして左全域をカバーしながらの偽サイドバックも可能な稀有な左サイドバックなのです。
そうなのよ。左足に戦術兵器がついてるカイル・ウォーカーに、革命的なSBになる素地はあったのよ、確かに。膝の靭帯を2回もやってしまって夢と消えたが。モナコのことも夢のまた夢。
スピードは大きく失われてしまい、出場機会もない中で複雑なタスクを消化しきることもできず、今シーズンは完全に控えの控え化。もう少しシンプルなタスクのチームに行ってやり直したほうが本人のためにもなるだろう。例えばエヴァートンとか、ターゲットはいるのにクロスが弱いチームなんか良いと思う。面白いやつではあった。
オレクサンドル・ジンチェンコ
ロジが上手い人といった風情。
特別頭が切れるとか言うわけではないが、目的や論点は理解してて、打ち合わせのセッティングなりQAリストの取りまとめなりが卒なくできるので、彼がいるとチームのパフォーマンスが上がる。そういう人。
と思ってたら、マッチョになって左センターバック的サイドバックとして普通に良い選手に成長したので嬉しい。もはやダブルデブライネ。昔からジンチェンコには中盤に戻るかDFに振り切るかどっちかにせい!と言ってたが、後者で、しかもCBっぽいSBとしてやっていくというのはかなり良い線行っていると思う。
SB/WBとしてみると広範囲をカバーするのが苦手だが、相手を待ち構えて対応できるCBは彼にぴったりだ。しかも状況が許せば相手DFラインの裏まで出ていくこともできると来ている。あとパスカットを即座にカウンターに繋げられるのも良い。失礼な言い方だが、身体のどこを切っても便利な選手なのである。
MF
フェルナンジーニョ
『ちびまる子ちゃん』の作者さくらももこが、実際の祖父のことを「ズルくてイジワルで怠け者で、嫁イビリはするし、母も私も姉も散々な目に遭った。」と評しており、あの友蔵じいさんは彼女の理想像だというのは有名な話だが、人は歳を取ると無意味に意地悪をしたくなる。
フェルナンジーニョもレスター戦でマディソンか誰かに、な~~~~~~~~んも意味ないところで蹴りを入れて詰め寄られ、ニタニタ笑うというキモいジジイプレイをかましていた。ま~~~じでどうでもいい場面だった。でも人間30超えると無意味に若人をからかってやりたくなるという現象はちょっとわからんでもない。
CLパリ戦でディ・マリアを退場に追い込んだ挑発もバカバカしすぎて笑わせてもらった。あんなのに引っかかるディ・マリアもどうかと思うが。どうでもいい話を散々したが、ロドリが一本立ちしたので、フェルナンジーニョは控えアンカーとして十分に休息を得て良い働きをしていた。
ロドリ
アンカーとしての地位を確立。ロドリは足が遅くて、戦術的齟齬を一人で解決したりできない人なので、ロドリを見るとその日のシティがどの程度上手く行ってるかがよくわかる。彼が相手を追っかけていたら大概苦しい試合だ。あとはラポルトとウォーカーがサイドチェンジしてるとき。
周りに人が居さえいれば、自分含めて誰がどう動けばどこにどうスペースができるかわかってる人で、かつデカくて強い。しかもボールをほじくり出すのもキープするのも上手いので、今季はカウンターの出どころをしっかり抑えて回収しまくっていた(逆に、人が周りにいないと絶望的にスペース管理ができない)。加えて、ドリブルで小細工ができるので崩しにも参加できる。困ったときの空中戦もある。そして頑丈だ。めちゃいいとこあるやん。ヒュー。
イルカイ・ギュンドアン
ギュンドアン世界で5番目くらいにサッカーうまいね
— sake (@szakekovci) 2020年7月3日
とか言ってたら、途中で冗談にならないくらい爆発した。
今シーズンは、英語のカタカナ表記にはうるさいがトルコ語には無頓着なベン・メイブリー氏からずっと「ギュンドヤン」と呼ばれていた。でも大阪弁基準やねんと言われたらまあそうか・・・という感じだ。
ギュンドアンはグアルディオラからの信頼が厚い割にファンからの人気はなく、ずっと愛人起用とか言われていた。実際最初の方は上手いけど試合に入っていけないというか、かなり木偶の坊感はあったと思う。
それが今や、ギュンドアンとベルナルドを中心とするみみっちいパス交換とポジションチェンジが、シティのベースになっている。デ・ブライネが戻ってきてから点を取ることは減ったが、流石に今年はベストイレブンくらい取るでしょう。
ケヴィン・デ・ブライネ
怪我してる間にギュンドアン=ベルナルド体制が確立してしまっており、本人もチューニングズレズレで帰ってきたので最初の1,2試合はかなり苦しくなってたが、1ヶ月程度で完全に戻してきた。迷惑かけてるやんとか言ってすいませんでした。
まあ私はデ・ブライネが移籍してきたときに「ナスリいるし別によくね?」とかほざいてたので、もうこれ以上謝りようもないんですが。
形式上FWで使われてる割にはあんまり点取ってくれないとか、注文がないわけでもないが、やはりシティの中でも一人だけ、自分に課してる要求レベルの高さが全然違うのだ。困ったときはデ・ブライネ。今年もチームが戦術的に厳しくなったタイミングで、力技で解決しまくっていた。引退直前までシティで頑張ってください。
トミー・ドイル
プロジェクトビッグピクチャーに始まり、スーパーリーグ構想で大混乱をきたした欧州サッカー界。その未来はドイルにかかっている。
話がデカい?まあ聞いてくれや。
今の競争の不均衡はいずれ維持できない水準に達するが、スーパーリーグ的な下層切り捨て策に走らないとすれば、ビッグクラブが既得権益を手放すしかない。でもそのためには、端的に言ってもっと負けるのをファンが許容するしかない。どうすれば我慢できるか?というと、1つの緩和策はアカデミー育ちの若手が成長するのを見ることだ。
だからお祖父ちゃんが両方ともシティのレジェンドであり、しかもインサイドハーフが足りてないシティでドイルを育てられなかったらかなり希望は薄い。そういう意味で、今回はきっちり使ってほしいのだ。まあそんな期待をして、デナイエルもロニー・ロペスもデニス・スアレスもあっさり売ったんですが。
今シーズンはカップ戦で右往左往していたが、その中でも試合を追うごとに進歩は感じられた。身体は強いし、ボールタッチは細かいし、右足インフロントのキックは一級品だ。5年契約を延長した来シーズンは、ギュンドアンの控えとして暴れてほしい。
FW
ベルナルド・シルバ
もし換えの効かなさで選ぶなら、シティのMVPに選ばれるべきはベルナルドだと思う。
シティが他チームに出してるクイズは主に「選手が入れ替わるからマークしづらいのにクオリティが変わらんばい!」と「入れ替わってるはずなのにバランスが崩れないからカウンターしづらいばい!」の2問で、これを成り立たせる上で一番効いてるのが、どこに降りても変わらない質が担保できる、FWからウィングからボランチまで一人で全部プレスに間に合う、というベルナルドの能力だからだ。途中まで全然使われてなかったベルナルドがスタメンに復帰したのと、調子が上向いたのが同じタイミングなのはきっと偶然ではない。
今シーズンはFW兼インサイドハーフとして大車輪。やらしいことを言うと、単体での破壊力がないので監督を選ぶ選手のはずで、その点クラブ側からすると年俸交渉にプラスに働くと思う。
フィル・フォーデン
私の若手を見る目といえばそれはそれはかなりのもので、いちばんひどいのが昔ルーニーがデビューした1週間後くらいに言った「最終的にはマクファデンの方が点取ると思いますよ」なんだが、フォーデンについても「WGで使っててもスケールが小さくて悲しくなる」とか開幕した頃にほざいてたらチームで一番頼れるWGになってた。すいませんでした(2回め)。
シーズン後半はだいぶシティ対策が進んでしまっており、フォーデンが気合でなんとかするの待ちになっていた気配がある。それでまたしっかり応えるんだこれが。リヴァプール戦のこれ↓とか、あるいはブライトン戦のこれ↓とか。
BT Sportの放送とか見ると、解説のキーオンもジーナスも、みんなフォーデンのこと甘やかしまくり。とは言えそれもわかるくらいの爆発で、次は安定してシーズン15点から20点安定して取るレベルになれば、押しも押されぬ欧州トップのFWになれるだろう。そう、つまり去年までのスターリングだ。
あれ?
いやもちろん、7割くらいは冗談だが。
ラヒーム・スターリング
控えに降格。昨シーズン序盤の全能感がさっぱり消え、ボールは全然足につかないわ、チームの崩し方が変わっちゃったから点は取れないわで、観る側からするとかなりスッキリしない選手になっていた。売ってホーランを買う金にしろという意見も根強い。忠誠心とはファンと選手の間でかくも不均衡なものだとも言える。
ちなみに、「スターリング(とラポルト)を売る」というアイディアをちょっと考えてみたことはあったが(以下の連ツイ参照)
スターリングを売って誰かを買うというのは結構面白い思考実験ではある。
— sake (@szakekovci) 2021年3月10日
シティには珍しく高く売れそうだけど、一方でValue for Moneyじゃない原因になりそうな要素がいくつかある(イングランド人、サッカー外で存在感がある)ので。
それも「普通手放さないだろうという人気銘柄を売る」から投資として面白いのであって、最近のスターリングは普通にちょっとバリュー下がってて売ってもあんまり面白くないなとは思う。多分そんなに高く買ってもらえないし。
でも見方を変えると、過去3シーズンで23点、25点、31点取った選手でもレギュラーが保証されていないというのは、競争が正に働いている証拠でもある。
17/18シーズンはザネが鮮烈に活躍し、最優秀若手選手賞を取った。次のシーズンはスターリングの全方位的進化とベルナルドの覚醒がザネをベンチに追いやった。昨シーズンはマレズがそこそこ仕上げてきて、今シーズン地味に爆発した。
と思ってたらいつの間にかフォーデンが「単体のクオリティでは一番上じゃね?」って感じになっている。だからスターリングのことは復調を信じて応援したいし、クラブにはこの激しい競争をテコにして上手いこと昇給を抑えてほしい。デ・ブライネと同額は無茶。
リヤド・マレズ
開幕前に「上手いけどサラーやマネと比べるレベルじゃないよね」とか言ってたら、今シーズンはもうほとんどチームMVPレベルの活躍だった。その二人とどっちが上とか言い出すとキリがないから言わないが。
2月から3月にかけてゴリゴリに調子を上げて得点にアシストに決めまくり、優勝を実質的に決めるのに貢献。実は3年かけて地味にグアルディオラの改造手術が完了していて、5球種を出し入れして後出しジャンケンする、そこそこエグ目の技巧派変化球投手に仕上がった。
- ペナ角からインスイングのクロス、からの
- フェイク入れて縦、のフリして
- 切れ込んでペナルティアークから左でミドル、の全部を見せ球にして
- ドリブルで斜めに押し込む、というとこまで見せておいてからの
- カンセロ/ロドリのロングパスで裏に抜ける、
という見合いができるようになったのが強い。もはや、かつての無理筋ミドルマシンの面影はない。また、実は身体が大きい上に走れるようになったので、守備でも効く。かつてレアルでフィーゴやソラーリ、マクマナマンが守備でも良い働きをしていたのと同じだ。
あと、過去4シーズンでエリア外から決めた点数では実はプレミア1なんですよね。ハリー・ケインより上だというのは凄い。マレズとギュンドアンが一番シュートが上手いので、こいつらにどうやってエリア内から良い体勢でシュートさせるかから逆算してチームを作った方が良い気がしてきた。
どうでもいいが旧友を温めたがるタイプで、リヴァプール戦後にマネ、サラーとアフリカトリオで内緒話したり、ウルヴズ戦後にル・アーヴルで同僚だったサイスと内緒話したり、内緒話ばっかりしている。
フェラン・トーレス
今年バレンシアから来た20歳。ウィングとしての突破力は絶望的にないが、出しとくと得点に絡む。ロビーニョ然り、ヘスス・ナバス然り、リーガ名うてのドリブラーがプレミアに来ると全く脅威じゃなくなるのって何なんでしょうね。みんなキャラ変が必要になる。
まあ自由なドリブラーだったマクマナマンがめちゃめちゃ走るマンとしてしかレアルではやっていけなかったように、逆も然りなのかもしれない。
今年のシティは完成度が高まった代償に発展性が全然なくなっており、攻撃のオプションが実質「ジェズスを入れる」か、「ジンチェンコかカンセロを入れる」しかない。
そういう意味ではフェランもオプションにすらなっていないのだが、セカンドセットとしては34試合で13点取ってるから悪くない結果だ。運動神経が良くてエリア内で強い。グアルディオラの選手らしく、ウィングでもワントップでも全く苦にせずやってるので、多分来年にはこいつもグルグル旋回し出すと思う。
セルヒオ・アグエロ
最後のシーズンは、コロナと怪我でほぼ離脱。攻撃のオプションにすら入らなくなってしまった。離脱してる間はゲーム実況に精を出す本田翼路線を追求していた。
でもやっぱり思い出は尽きない。アグエロの良いところはとにかく手が掛からないところで、遠かろうが角度がなかろうが、その加速力と巨大なケツ筋で何とかしてくれるので、最終的にどういう形で持たすかとか考えなくてよかったのだ。アグエロの尻がシティを救ったことは数知れない。
バルサに行くらしいが、ちょっと心配なのは親友のくせに選手としてはメッシと全然相性が良くないことだ。クーマンがやらなければならない仕事は多い。でも最後に一花、咲かせてほしいですね。
では最後に、アグエロのゴールの中で好きなやつを一つ載せておきたい。足が振り回せるところまで行けば、もうこっちのもの。
ガブリエウ・ジェズス
そろそろ現実に向き合うときが来てしまった。おっそいのだ。ジェズス。ほんとに。チャキチャキ動けるのとバネはあるからごまかせてるだけで、めっちゃ足遅いの。ほんでシュートモーションもデカいから引っかかるのなんの。どんどんブラジリアン柳沢化が進んでいる。あるいはデライアス・ヴァッセル2.0化。結果として言えば、点が入るレンジがめちゃんこ狭いのである。エリア内中心半径5mくらい。たまに例外もあるけど。
良いところも勿論いっぱいあるが、なんか「FWなのにインサイドハーフ仕事ができる」とか、「前線で使うとヴァランやクリステンセンみたいに事故が起きる」みたいな、ん?て感じなんすよね。9番の仕事なのかそれは的な。
ウィングかインサイドハーフに点が取れる選手が生まれて、ジェズス本人はセッターに専念すれば、それはそれで新しい境地が開けるかもしれない。