5分で知るマン・シティ / 2020/21 マンチェスター・シティ選手別プレビュウ
私が選手名鑑を書くとき、私は自分が読みたい文章を書いている。それが目的。
選手名鑑というのはかなりフォーマット化されていて、プレースタイルと、去年の調子と、ちょっと笑える(と書き手が信じる)アネクドートと、ネットジャーゴンを混ぜてぐるぐるっとするとできる。当然文章とか、ネタの選び方に個人の好みがあって、なかなか自分の好みに合うものがないので自分で書いてたんだけど、最近いろんな方が素晴らしいシティの名鑑を書かれるようになって、もう自分で書くことはないなと思うようになった。
ただ、各選手に感じている現時点での感慨を書き留めておくことには意味はあるだろうから、今年はそれを書く。
GK エデルソン・モライス
足元が上手すぎるとショットストッピングについて過小評価されるという好例。飛び出しが中途半端になりがちだという点を除けば、最高級のGK。でも最近パンチングが怪しくなったり、少しずつガタが来ている気配もある。
GK ザック・ステッフェン
Nobody Gets Fired For Buying an American Goalie. 安心と信頼の米国GKブランド。アドリアンを見ても分かるが、スタメンが強すぎると第2GKに良い選手が取れなくなるわけだが、ステッフェンのことは信頼している。
GK スコット・カーソン
実はまだダービーからローンしてるって知ってた?この、「ある程度の力があって第3GKでも文句言わないホームグロウン」枠、まさかジョー・ハートがこの歳で入っちゃうとは。
CB ルベン・ディアス
惚れた。
まず体格が良い。筋肉質で胸板が厚く、脚が短く手が長い。オタメンディはちょっと小さかったからな。そして強力なインサイドキック。FKもなんかうまそうな気がする(知らんけど)。その昔、多々良学園に田村さんというDFがいて、その後レノファ山口とかでもちょっとプレーしていたが、この人のパスやFKがまた上手で憧れてたのよ。その田村さんに似た、非常に安定感のあるボールの持ち方をしている。ルベンは田村さんです。
CB ジョン・ストーンズ
私は「ストーンズ、またもパワー負け」みたいなこと言っときゃ済むやろという風潮には全く与してなくて、彼がシティ移籍後に失望ばっかり残してきたというのも明確な事実誤認だと考えている。お前、2018年のレスター戦で怪我するまでのスーパーストーンズ知っとんか、と。しかしこの2年は悪い方にローリングストーンズだというのもまた事実だ。何ぼ何でも、怪我しすぎやね。アーセナル移籍のうわさもあったが、こういうタイプは絶対順位を下げる移籍をしない方がいい。多分そのまま格がずるずる落ちて行って終わりだ。
CB エメリック・ラポルト
ヴァンダイクの次にすごいCB。復帰直後のリーズ戦でいきなり縦パス一発で相手を崩した(その後先制点につながった)のを見て、やはりレベルが違うなと思った。怪我しないでほしいということ以外には特に要求はない。デシャンは一体何が気に入らんのだろうか?
CB ネイサン・アケ
有能なことはわかっているんだけど、こういう「良い選手であることには誰もが同意するんだけど、スーパーな選手とは誰も言わない」補強ってあんまり上手くいかんのよね。右のウォーカー的にCB/SBとして使えるというのもわかるが、ちょっと貧乏臭くてどうかと思う。
なんでそんなに嫌かというと、チェルシーがブラルーズとかベン=ハイム買ってお茶濁してたときと被るんだよね。良い選手なんだが。
CB エリック・ガルシア
そんなにバルサに帰りたいか!まあ良いけどさ。しかし、この「契約残り1年で延長せず残留」というのは、試合に全く出してもらえないかもしれないリスクをクラブに預けているわけで、個人事業主としてはかなり大胆なリスクテイクではないだろうか。ボハルデ状態になっても知らんぞ。
CB フィリップ・サンドラー
いるんだかいないんだか。スケールはでかいんだが。
RB カイル・ウォーカー
対面の相手を殺すということにかけては多分人類史上でも屈指の能力を持っているが、如何せん状況を侮りすぎるという資質が、世界的名声を得ることを妨げている。あと三次元になると対応が下手なんですね。もうちょっとDFとして洗練されていたら、多分世界最強のリベロになっただろうが。
RB ジョアン・カンセロ
狭い空間でも前を向ける自信と技術、多彩なクロス、デュエルの脆さ、スカスカな対地戦という特徴から、「左サイドバックでメンディと比較されてる」ときが一番輝いているという、訳わからん状態になってしまっている。まあ左サイドバックとしては第一選択肢でいいと思う。
関係ないが、カンセロとダニーロの交換も、双方で移籍金額を釣り上げて短期的な会計上の利益を高めに行っていたのではないか(アルトゥールとピャニッチでやったやつだ)という説を聞き、やはり移籍金の額をもって戦力をどうこう語るのはナンセンスだという思いを新たにした。選手の能力と差が生じ易すぎるのだ。
LB バンジャマン・メンディ
「生み出した決定機-生み出した決定的ピンチ」で考えたら実はかなりプラスなんじゃないか?という気もちょっとしている。少なくとも、自分の真横、またはやや後ろから来たボールをインサイドで叩いて内側に曲げながらゴール前に入れる、という芸当は世界広しといえどメンディ以外になかなか出来ないわけで、エリア内に叩ける人間がいないことで損している気配もある。
とはいえ、やはり決定的なミスが多すぎるのである。前任者のコラロフも正直守備はできなかったが、コラロフは「決定的にやられたときにその場にいないことで責任から逃れる」という能力がべらぼうに高かった。あんまり仕事しないのに謎に怒られない先輩みたいな。メンディにはそれがない。そして我々がアルバイトから学ぶように、この種の能力を後天的に身に着けることはまずできないのだ。
LB オレクサンドル・ジンチェンコ
やっぱりこのままサイドでやっていくには、もう少し強さか速さが欲しいよね。かわいいやつだよ、本当に。でもここにいるべきじゃないかもしれない。
DMF フェルナンジーニョ
昔マスチェラーノ、今フェルナンジーニョ。35になっても元気だが、最近ちょっと中盤で突っ込んでターンされる場面が目立ってきた。なぜか。ジーニョはプログラム次第でどうにでもプレーできる天才で、ファールマシーンとしても使えるし(@2014WC)、万能型のボランチにもなるし(@ペレグリーニ期)、マケレレとブスケッツを足して2で割ったみたいなアンカーにもなる。多分最近のガタは、やってるサッカーが過渡期で固まってなくて、ジーニョに入れるプログラムが曖昧になってるのを反映しているのだろう。あんまりアドリブは利かない人なのだ。
DMF ロドリ
マイボールにする能力とか、キープ力とか、縦パスの鋭さはさすがなんだが、ちょっと遅すぎて苦しんでいる。彼が遅いから前のプレシングが嵌らないのか、プレシングが嵌らないから彼の遅さが目立つのかはわからない。
CMF イルカイ・ギュンドアン
人類で5番目くらいにサッカーがうまい。デ・ブライネやシルバと違って一人で相手を崩せないし、チャレンジしないし、ということでファンからはすこぶる人気がなかったが、18/19、19/20とチームの競争力が落ちていく中で、安定したパフォーマンスを見せ続けるギュンドアンの価値が上がり続けている気がする。
CMF ケヴィン・デ・ブライネ
メッシとロナウドの次に来る人間。つまり、人類最高のサッカー選手ということだ。レヴァンドフスキとヴァンダイクも良い線行ってるが。もう攻撃から守備から、あらゆる局面で上手すぎて、特に言うことがない。ボールを絡めとる力も圧倒的で、多分今アンカーに据えたらサッカー史上に残る革命が起きると思う。まあKDB以上のアタッキングMFがいないからやれないが。
CMF トミー・ドイル
アカデミー上がりの若い子。キュッキュキュッキュターンして、上手いし周りが見えてるのはわかったが、もう少し意味のあるプレー選択をしてほしいなと思っている。まあ中盤の枚数足りないから、使わざるを得ないんだろう。今のチームの非力を感じさせる。
FW コール・パーマー
ひょろっとした身体に空いた口でテレンコテレンコ走る左利きの攻撃的MF。うん、いる!いるね!こういうタイプの選手!!この10年くらいあんまり見ないけど!少なくともシティでは初めて見たわ。現代的なドメニコ・モルフェオという趣もちょっとある。まあカップ戦で頑張ってほしい。
FW ベルナルド・シルバ
めちゃめちゃ疲れてましたね。去年は。いろいろさせたいのはわかるが、やっぱり、インサイドで使ってボール運搬とカウンタープレスに従事させた方がいいと思う。あれをやっているときのベルナルドは、今のシティに欠けているプレミアム感というか、一流感が出ているから(ほかの選手からは、悲しいかなあんまり出ていない)。
FW フィル・フォーデン
実は足が速くて体力がある、ということが分かってすっかりウィングになった。まあ上手いし、良い選手だけど、正直ウィングとしては平凡だと思う。これでバイエルンに勝つとか言ってても、みみっちくて悲しくなる。やはりダビ・シルバ路線を突き詰めるべきだと思う。
あくまでウィング路線で行くなら、突破力があるわけでもなし、とにかく点。点。点を取ることだけでしか評価されないと思う。点だ。不祥事は別にいいから(でもどんな顔して実家帰るんでしょうね)。
FW ラヒーム・スターリング
シーズン20点(リーグ)取ってもベストイレブンに入れないというのは、スターリングのある種の行き詰まりを示していて、いろんなことができるようになった結果、ちょっとインパクトが薄くなったかもしれない。ただのスーパーなアタッカー。ただのシーズン20点取れる人。次はもう一回、「カットインからの対角線ショット」と「抜け出してのフィニッシュ」を鍛えてみますか。とりあえずアーセナル戦のような、KDBかシルバの真似事のようなタスクはさせない方がいい。あれはいくらなんでも辛い。別にキープが上手いわけでもないし。
そういえばついでに書いておくが、こういうライバルクラブファンのアカウントを見た。シティに移籍した当初はひたすらスターリングを嘲笑していたのが、スターリングがシーズン15点から20点量産するようになり、ピッチ外でも黒人差別の打破に立ち上がり、1つのアイコンになっていくのにつれ、「スターリングはもっとチームの中心選手として輝ける素材だったのに、今はただグアルディオラのチームの部品の1つになった。僕はスターリングをずっと見てきて愛しているからわかる」と言うようになった。
圧倒的な姑息さである。「昔から知ってる」と「愛してるから苦言を呈してもいい」の重ね掛けだ。まあそっちに逃げたくなる気持ちはわからんでもない。でもやるのは道義に悖る。人として安い。だからやめましょうね、そういうの。あなたも私も。
FW リヤド・マレズ
あんまり言うことがない。普通に上手くて役に立ってると思います。シーズン二桁取るしね。でも競争を考えると、マネ&サラーに勝てるか?という点は問われてしかるべきだとは思う。 多分今サッカーファン1万人に聞いたら、1万人が負けてると言うだろう。二桁得点くらい、今のチームならナスリだって多分取る。
FW フェラン・トーレス
「バレンシアを出ていきたい3か条」、言ってる内容は別に良いんだけど、シティのようなメトロポリタンな職場では絶対に公言されてはならない(たとえ内容が妥当でもだ)タイプの発言なのでそれが不安だという話はした。要はマインドが少々田舎者なのではないかということだ。ノリートもちょっとそういうタイプだったと思うが。あと、ザネーと比べてのスケールの小ささを心配している。
FW セルヒオ・アグエロ
審判に触っちゃダメ、絶対。
やっぱり、KDB不在かつシルバ退団後のチームに戻ってくると、格が違うね。この10年でアグエロが歩んできた道のりを感じる。でもジェズス不在の中で、フィルミノ、オバメヤンといった他クラブのエースと本当に張った張ったで行けるか?というと、ちょっと衰えが来てるところもある。
FW ガブリエウ・ジェズス
怪我だとコメントのしようがない。早く戻ってきてほしい。左ウィングで使ったらプレミアでマネの次にすごい選手になれると思う。
FW リアム・デラップ
サイズの割にスピードがあるのが良いが、若すぎてまだカウントできない。頼るようになったら終わりだ。
ちなみにお父さんはロングスローを投げ始める前は、「怪我ばっかりしてるが、スキルがあって数年に一回超スーパーゴールを決める人」だったんだけど、その血は遺伝していないだろうか。
父ロリーのスーパーゴール
父ロリーのスーパーゴールその2(2:37から)