スター去る:リロイ・ザネー移籍に関する雑感
バイエルン移籍、ついに決定。この件は、色々な角度から振り返ることができる。
第一に、首脳陣・選手・OBが総出で「来てほしいね。来ると思うよ。え、ペップが何か言ってる?彼は自分が何言ってるかわかってないんじゃないの笑」みたいな態度を取り続けるバイエルン戦法が奏功してしまったというのが悔しいですよね。ドイツだとあの態度でも誰も怒らないんでしょうけど。
それでなくても、キープしておきたい主力選手を引き抜かれてしまったというのは、この10年間のシティでほぼ初めての事態なのだ*1。でも成功してしまったのだから黙るしか無い。ミッキーマウスリーグで頑張ってねとか言ってはいけない(揉めるから・・・そしてバイエルンのファンに「チャンピオンズリーグ獲ってから言え」とか言われて終わりだ。30連覇に向けて頑張ってください)
ザネー名場面集①対WBA左腕剛速球編
第二に、この移籍は残り契約期間によって移籍金がどう変わるかについてのわかりやすいベンチマークを与えてくれる。1年前の時点ではシティがザネーに要求する額は9,000万ポンドだと言われていたので、契約期間が残り2年から1年になる間に値段が2/3になったわけだ。
またこの移籍は、FFP違反疑惑への裁定に対するヒントかも知れない。シティが最近になって急に移籍を急いだように見えるのは、CAS裁定でCL出場停止になり、より足元を見られてしまうリスクを嫌ったのかもしれないからだ。
ザネー名場面集②対リバプールニアワンツー編
第三に、この取引、つまり2016年の夏に4,650万ポンドで獲得し、4年プレーして、6,000万ポンド*2で売却するという一連のプロセスでシティはベネフィットを得られたのかという点である。価格の適正さについての議論に入るのは避けるが、2017年から2019年にかけて、ザネーはすこぶる活躍したという点は強調しておきたい。特に2017年の秋から年末にかけてはもう止まりませんみたいな感じだった。(ただ、ザネーは1試合ごと、1プレーごとにムラがあるタイプなので、やることなすこと全部すごいという感じではなかった。たまにハマるプレーがあって、そのときは世界中の誰が向かっても止められないみたいな感じだ。)
この2シーズンはどちらもリーグ戦二桁得点二桁アシスト。後半戦かなり不貞腐れていた2018/19シーズンでさえそうなのだ。かなり元は取ったほうだろう。
ザネー名場面集③対リバプール居合斬り編
しかもザネーは、試合を決定づけるゴールをよく決める。Game deciderだ。加えて、かっこいい。これは顔が良いというだけではない。手足が長くてスタイルがいいし、ドリブルの姿勢も良い。ショットモーションも良い。シュートの軌道も美しい。フリーキックの落ち方は感動ものだ。スターリングやベルナルドのドリブルは一生バタバタしているだろうが(それでも有効だから何の問題もないけど)、ザネーは見た目が美しい。そしてウィングという職業は、そういう飾って眺めて楽しめる美しさが大事なのだ。
ザネー名場面集④対シャルケFK編
ちなみに、シティのザネーが素晴らしかった瞬間はいくつもあるが、一番私が好きなのは2017/18シーズンの何戦だったか、確かトッテナムかWBAか?。まあとにかくエリア外正面、やや右でボールをもらって、無造作にワンステップで左足を振って、ものすごい軌道でボールが飛んだやつ。全盛期のギャレス・ベイルしか蹴れないような軌道だった。
ポストに当たったから結局点にはなっていないのだが、もうその一振りだけでスター性がありすぎてどうでも良かった。J.Y.Park氏的に言えば「あなたは完璧にスターだ・・・」というやつだ。動画すら見つけられないが。
一方で、ザネーは更に成長してくれるはずだったという残念さが残ることも、また然りではある。スターリング、ベルナルド、マフレズが90分安定的に何でもできるマンになっていくのとは反対に、ザネーはどんどんピーキーな飛び道具になっていった。グアルディオラのシティの試合の半分くらいは、各チームが練りに練った5-5-0を攻略する詰将棋だが、手を変え品を変え相手が対応できなくなるまでグーチョキパーを出し続ける根気強さを、ザネーはついに手にしなかった。返す返すも残念だが、グアルディオラのチームよりこの能力を求められるところはないだろうから、バイエルンではもっと素直に活躍できる気がする。
といったところで、今後の活躍を祈って終わりとしたい。もう7月だ。