CL グループリーグ シャフタール・ドネツク戦に関するメモ

www.mcfcwatch.com

www.theguardian.com

www.tacticas-magicas.com

 

  • 4-1-4-1でジェズスとアグエロを併用。
  • 基本的なゲームプランは、シャフタールにボールを保持させないこと。そのために、GKまでを射程にした前線からのプレッシングと、高い位置でのネガトラ刈り取り。
  • 一方で、こちらがボールを持った際にはスピードを落とさず攻めることを重視し、テンポを落とすことには拘らない。
  • そして、シャフタールは後ろから前まで割とボールが持てる。とくにブラジル人を揃えた前線は、1人2人交わしてボールを保持できる力がある。

 

  • 然るに、ボールを奪われた場合に周囲が間に合わず、クロスカウンターを決められる場面が目立つ。
  • また、GKまでプレスをかけると当然蹴るので、相手の攻撃のスイッチが入る。GKピャートフは正確に長いボールを蹴ることができ、前線のフェレイラも空中戦やポストである程度は優位を示す。
  • となるとDFと中盤の間が空き、相手の2列目が前を向いてボールを受けられる。

 

  • また、シャフタールの中盤はインサイドが堅く、なかなかシルバ、アグエロ、デブライネにボールが入れられない。ザネー、ジェズスはライン際で受けたときに中央に向かってドリブルしながら相手をひきつけるのがスターリングほど巧くないので、外-外循環もWGで閉塞される。
  • という形で苦戦した前半。

 

  • 後半は開始3分で相手中盤のミスパスからデ・ブライネのミドルで先制。これでシャフタールはある程度前に出ざるを得なくなったが、シティのビルドアップを大して規制できない。
  • とくにSHが前に出るようになったので、こちらのWGへの対応が一枚になったが、そのSHはウォーカー、落ちてきたデ・ブライネ、デルフからの外ー外ラインを止められない。
  • スターリングの決定機、得点はその形から。また、サイドチェンジからのザネーのアイソレーションも、そこそこ機能していた。

 

  • 試合を通して素晴らしかったのは、こちらの前プレ。頑なにGKからつなぎに行ったシャフタールだったが、後半はカウンターで数回サイドを走らせた以外はほぼ全て中盤でボールを回収されており、シティは安定して試合を進めることができた。(いくつか緊張するシーンはあったが)

 

 

 

2017/18 マンチェスター・シティ 選手名鑑(ローン放出組編)

GK

ジョー・ハート Joe HART

ゴールデングラブ賞4回、かつての正GKはウェストハムへ。未だ完全移籍化しないのは、給料に折り合いがつかないからかも知れない。彼ほどシティに貢献した選手でも、理不尽な誹謗中傷を受けたりするというのは、残念の極み。

 

アンガス・ガン Angus GUNN

父親の縁があり、本人も15歳まで在籍していたノリッジにレンタル。今のところレギュラー。控えではあったものの、U21代表でツーロンに出ている。

 

ヘロニモ・ルリ Geronimo RULLI

厳密にはシティが買い戻し条項を付けているだけで、本所属はソシエダだが、近年活躍著しいというアルゼンチン人。日本では「スペイン語ではルジと読むからルジ」と信じられているが、スペイン語でもルリ。今年、シティはエデルソンより先にルリを買い戻そうとしていたらしいが、W杯に出たいからとか何とかいう理由で断られた。

 

DF

ジェイソン・デナイエル Jason DENAYER

セルティックで最優秀若手賞を取ってから丸2年。末はバルサかマドリーか、と沸き上がっていた界隈もすっかり落ち着き、株は下がりっぱなしである。セルティックは良いとして、次に行ったのがガラタサライとサンダランドというのは、申し訳ないけど、間違えたでしょう。どう見ても。サンダランドでは多少才能を見せてはいたが、全体的にはかったるそうな態度で、ローン終了後には街ごと引っ括めて貶めるという暴挙。あれはないわ。さすがに。

sportwitness.co.uk

とはいえ、毎年毎年ローンでたらい回しにされる難しい状況なのも確かで、そろそろ腰を据えて売るなり使うなりした方が良いと思う。今年は再度ガラタへ。

 

パブロ・マフェオ Pablo MAFFEO

あんなに大量に押し付けてちゃんと役に立ってるのか不安になるジローナとNACブレダへのローン組で、恐らく最も重宝されているのではないか。レギュラーとして昇格に貢献し、今シーズンもジローナの右サイドでスタメンを張っている。意外とスピードや突破力もあり、これはまじでモノになるかも知れん。直近のバルサ戦ではメッシのマンマークを任され、「ボクいくつ?」「どっから来たん?」と、おばちゃんのような尋問を受けた模様。

http://media.gettyimages.com/photos/pablo-maffeo-of-girona-competes-for-the-ball-with-paulinho-of-during-picture-id852441450

 

アンヘリーニョ ANGELIÑO

一方、こっちは大分首が涼しくなってきた。攻撃に持ち味がある左サイドバックといえば聞こえはいいが、守備が相当に怪しいのでウィングで起用されることも多々。左バックがメンディしかいないことが分かりきっていながら、一顧だにされずブレダへローン。      

 

アシュリー・スミス=ブラウン Ashley SMITH-BROWN

バルサが欲しがったというサイドバック。多分右利きだが左も使えて、両サイドバックこなせる。昨シーズンはブレダでそこそこ出場機会を得て、今シーズンはハーツにレンタル。シティで未来がある可能性は低そうだが、良いキャリアを築いていけそうな気はする。関係ないけど、ハーツ、アーロン・ヒューズとベラがいるのね。あとラファティーもいる。 

 

 

MF

アレイシュ・ガルシア ALEIX GARCÍA

ビジャレアル育ちのCMF/DMF。でもカタルーニャ人。昨シーズンじっくり手元に置いていたが、今年は一点ジローナへ。脇役としてなら今の状態でもそこそこトップで使えそうな気がするが、大きく育てたいのかもしれない。

http://media.gettyimages.com/photos/aleix-garcia-of-girona-looks-on-prior-to-the-preseason-friendly-match-picture-id832395882

 

マヌ・ガルシア MANU GARCÍA

2人目のガルシア。こっちはアストゥリアス人。アレイシュより前目のポジションで力を発揮するタイプで、仕掛けて良し出して良し。昨シーズンはアラベスでリーガに挑戦したものの、ほとんど戦力にならず途中でNACブレダにスイッチ。レギュラーとして昇格に貢献し、今期もそのままエールディビジ挑戦。

 

ドウグラス・ルイス DOUGLAS LUIZ

ヴァスコ・ダ・ガマから£10mの大金で獲得したCMF。さして精度は高くないが、パワーのある右足が武器の8番タイプ、らしい。中盤のセンターなんだけど、ボールの触り方が点じゃなくて線と言うか、ヌメヌメっとしたボール運びと機敏な動きが特徴的。今期はジローナ組の1人としてリーガ挑戦。

http://media.gettyimages.com/photos/douglas-luiz-of-girona-fc-competes-for-the-ball-with-iker-muniain-of-picture-id845383722

 

ベルサント・ツェリーナ Bersant CELINA

コソボ代表。でもアルバニア語は苦手らしい。昨シーズンはトゥウェンテでエネス、イエボアとシティローントリオを組んでいた。今年はイングランドに慣れる名目なのか、2部のイプスウィッチにレンタルだが、監督ミック・マッカーシーだからな。どうかと思うよ、私は。ツェリーナのような、量より質のアタッカーを使いこなせる人には見えないが。

案の定、ツェリーナは「なんで使われないのか理解できない」と早々に不満を漏らし、監督は監督で「サイドで使おうと思ったけどFWでしか使えねーよ、あれは」との見解。不安が募る。

 

パトリック・ロバーツ Patrick ROBERTS

セルティックファンの歓待を受けて頑張っていたまでは良かったが、歓待を受けすぎて里心がついてしまったイングリッシュ・メッシ。今年はプレシーズンも帯同し、ギリギリまで残留の可能性があったものの、結局再度グラスゴーへ。

まあセルティックが偉大なクラブなのは間違いない。CL出れるし。一方、近年はファン・デイクとかワニャマとかいるとは言え、過去の実績から考えれば、SPL出身の選手がどこまでEPLにフィットするかというのは怪しいところ。だったら貸すなよという話ではあるが。僕このうちの子になる、と言い出しそうな気もする、そんな20歳のウィンガー。

 

ブランドン・バーカー Brandon BARKER

Made in Manchesterの左ウィングは、ヒバーニアンへローン。U20代表からも遠ざかり、同年代のW杯優勝メンバーにも加われず、キャリア確立のためには勝負の1年になりそう。

http://media.gettyimages.com/photos/brandon-barker-of-nac-breda-giovanni-korte-of-nac-breda-cyriel-of-picture-id627206362

 

アーロン・ネマネ Aaron NAMANE

右利きの小柄な左ウィング。ユースチームではUEFAユースリーグでも大活躍していたとかしていないとか。とりあえずスピードはあるらしい。1部に復活したレンジャーズへ。

 

 

FW

マルロス・モレーノ Marlos MORENO

デポルティボには馴染めなかったコロンビア代表。今年はジローナ大量ローン組の1人。ブレダもそうだが、こんなに押し付けて大丈夫か。

http://media.gettyimages.com/photos/martin-montoya-of-valencia-competes-for-the-ball-with-marlos-moreno-picture-id663792590

 

トーマス・アジェポン Thomas AGYEPONG

ミツカンっぽい響きのガーナ代表。実は2015/16シーズンからトゥウェンテに出されていたが、去年からリーグを下げてブレダでプレー。ドリブルが面白いことはわかった。

http://media.gettyimages.com/photos/thomas-agyepong-of-nac-breda-cyriel-dessers-of-nac-breda-shane-o-of-picture-id684993566

 

ティエリ・アンブローズ Thierry AMBROSE

ペレグリーニ時代から才能が注目されてはいたフランス人。大怪我で1年ほど棒に振り、再起をかけて今年はブレダへ。お前もブレダかい!しかし一応エース格に収まっているようだし、当たれば儲けものという気持ちで見守りたい。

http://media.gettyimages.com/photos/thierry-ambrose-of-nac-breda-during-the-dutch-eredivisie-match-and-picture-id852469542

 

エネス・ユナル Enes ÜNAL

昨シーズン、トゥウェンテでリーグ戦18得点とブレイク。ロングショットとエリア内の強さが際立っており、如何にオランダとはいえこれは将来が期待できるかも、と思っていたら労働許可が降りなかったのでビジャレアルに売ってしまいました。まあ買い戻し条項ついてるけど。

ビジャレアルはバッカ、サンソーネ、ソルダード、バカンブとトップリーグで二桁獲ってきた代表クラスが揃っているので、厳しい競争が待っている。ちなみに「ウナル」でも「ユナル」でも良いんだけど、Gündoğanを「ギュンドアン」と読むなら、こっちは「ユナル」じゃないと筋が通らないのではなかろうか。

http://media.gettyimages.com/photos/enes-unal-of-villarreal-looks-on-during-the-la-liga-match-between-picture-id851239732

2017/18 マンチェスター・シティ 選手名鑑(トップチーム+α編その2)

MF

8 イルカイ・ギュンドアン İlkay GÜNDOĞAN

派手にやられたって心は折れないの。例えクラウディオ・ヤコブだって俺から勝利は奪えないの。そんな視野の広さ インテンシティ ボディバランス フットワークばっちりなサッカーグラップラー。昨年12月の大怪我から、心折れずに最近復帰。基本的にはインサイドハーフおよびCMF。ファンの間では、ボールの引き出しに難を残すジーニョや身体がついていかないヤヤに変わってアンカーで起用されるという説も絶えない。ドイツ人らしいバランスの良いMF。

http://media.gettyimages.com/photos/phile-foden-of-manchester-city-comes-off-for-ilkay-gundogan-of-city-picture-id831957646

 

18 ファビアン・デルフ Fabian DELPH***

DELPH ! I need somebody
DELPH ! Home grown preferably
DELPH ! You know I need someone
DEEEELPH !!!!

 

というビートルズダジャレとともに加入したMFも早3年目。当時は代表のレギュラー格に定着しキャリアの絶頂にあったが、シティで控え生活を送るうちにすっかり招集されなくなってしまった。如何せん怪我が多いのと、決して守備が上手いわけではないのが痛かった。今シーズンはストーク移籍が決まりそうになっていたが、結局残留。早速手薄な左サイドバックをやらされていて、イングランド代表がこういう立場になるからシティは割と叩かれるという典型例である。奇妙なキープ力、体力とスピード、左足のミドルが武器。年1で世界一すごいゴールを決める。

http://media.gettyimages.com/photos/fabian-delph-of-manchester-city-scores-his-sides-fifth-goal-during-picture-id852320588

 

 

25 フェルナンジーニョ FERNANDINHO

消去法で言えば一番器用そう、と思われたのか知らないが、去年はアンカーどころか左右のSBまでやらされたブラジル代表のMF。本職はもうちょっと前目のボランチ。結果として、アンカーまではよかったがSBはさすがに苦しくパフォーマンスは低下。ファウルトラブルも嵩むという、運のない役回りを引き受けた感があった。今シーズンはウォーカーらの加入でアンカーに固定。表立って賞賛されることは少ないが、プレミアのCMFとしては相当に高い水準でバランスが取れている方。フェルナンジーニョなんかも、やっぱ相当上手いしね、って、川勝良一っつぁんはいつも言ってる。

 

42 ヤヤ・トゥレ Yaya TOURÉ

近年の「強いシティ」はヤヤ・トゥレとシルバの到来によるところが大きい。34歳、さすがに衰えが激しいが、それでも凡百な相手なら片手で片付ける超人的な肉体。それでいて、無理めなパスコースも余裕で通す技巧派。基本はアンカー。

昨シーズン序盤は純粋に戦力面の問題で干されていたが、代理人グアルディオラを誹謗中傷するパワープレーで「謝るか謝らないか」の問題に転換。さらに、本来は「代理人が」謝るかどうかの問題だったのに、「ヤヤ・トゥレがビデオで謝る」ことでグアルディオラの関門も突破。有耶無耶のうちにレギュラーまで取り戻してしまった。もうヤヤの我儘で揉めるほど戦力的な重要性が高いわけでもないし、本人もある程度走るようにはなったから、このまま一芸職人的立ち位置で晩年を迎えるというのも悪くないのではないか。

あと、私の記憶が正しければ、ヤヤはシティに来てからの約8か9年間で、去年の1本を除けば、2013/14シーズンしかFKを決めていない。でもそのシーズンは4本決めてる。何なんだそれ。

 

47 フィル・フォーデン Phil FODEN*

夏のプレシーズンでデビューした左利きのCMF。若いときのウィルシャーをもう少しシンプルにしたような選手で、細身の割にキックが強いのが頼もしい。地元育ちのシティファン、U-17代表の主力、今年のU-17 EUROではTeam of the Tournamentに選出、プレシーズンのまんゆ戦ではエレーラを翻弄、そしてグアルディオラが絶賛。祭りである。まあ最後のは、いつものことだが。

ところでせっかくの門出に演技の悪いことを言いたくはないが、10年やそこら見ていると、悲しいこともあるものだ。00年代のシティには、スティーヴン・アイルランドマイケル・ジョンソンという輝く2人の才能があった。アイルランドはベルコヴィッチのように軽やかで、ジョンソンはランパード2世になるように見えた。だから若い才能に期待することに、正直言って私はびびっている。

それでも、フォデンには明るい未来が待っていると信じたい。すぐ人を褒めたがる監督のことは置いといても、フォデンは地元生まれで、シティファンで、本物の才能あるMFなのだ。そんな選手が出てくるのは20年に1回もないのだから。

http://media.gettyimages.com/photos/manchester-citys-phil-foden-and-manchester-uniteds-paul-pogba-in-at-picture-id849731754

 

17 ケヴィン・デ・ブライネ Kevin DE BRUYNE

私はシティのファンで、チェルシーも結構(シティが弱い頃は第2のチームとして)好きだったので、どうしても大富豪による買収即是強豪のシュガーダディ・モデルに甘いところがあるが、シティが叩かれるのもそれはそれでわかる。

シティがリーグ優勝やCL出場を狙えるくらい強くなったのは、何と言ってもADUGが買収したからだし、大富豪が買ってくれたので強くなりました、というのは、スポーツとはまた別の話いう気がするのは至極当然だからだ。金だけあっても適切な人材を揃え、組織を構築しないと強くなれないとか、投資対象として魅力的だと思ったという意味ならグレイザーやFSGも同じではないかとか、色々反論もできないことはないが、どうしてもシティの躍進は、結局のところADUGが買収したから、という一点に帰着してしまうのだ。これはどうしようもない。

一方でファンとしては、応援しているクラブが強くなり、タイトルの快感を味わえる喜びを否定し難いのも確かである。そういう意味で、私が「強くなってよかったな」と心底思うのはデ・ブライネのような選手が自分のチームにいて、毎週プレーを観ることができる、そのときである。そのくらい、今のデ・ブライネは凄い。本当に凄い。Worth pay to watchである。ねえ、サヴェージ先生。

www.manchestereveningnews.co.uk

今シーズンもインサイドハーフとして攻守に八面六臂。中央突破、ネガトラでのボール回収、右に張ってのクロス、左に流れてクロス、SBの場所に落ちてロングフィードと、あらゆることに精度が高くて効果的。いつかはバロンドールも夢じゃない。だからあなたも祈りましょう。「レアルに買われませんように」と。 

 

21 ダビド・シルバ David SILVA

みんな大好きダビシルバ。プレミアリーグのファンが身近にいたら、訪ねてみられるとよい。「シルバってどんな選手?」と。賭けてもいいが、100人いたら99人は「上手」と言うはずである。そういう人。

一方で、スペイン代表の主軸としてEURO2回にW杯1回を制した超大物のはずなのに、少々影が薄い人でもある。チャビ先生のようにアンチ・アンチフットボール教の大司教となるわけでもなければ、イニエスタのように容姿とプレーのギャップが激しすぎるわけでもなく、最高に上手いが1人で試合を決める力があるというタイプでもないので、いつもお座なりな賞賛が寄せられているところはちょっとかわいそう。シティ史上最高の選手と言われることも多いのだが。今シーズンもCMFの一角兼第3キャプテンとして、序盤から稼働率は上々。シュートはめっちゃ下手。

http://media.gettyimages.com/photos/manchester-city-player-david-silva-in-action-during-the-premier-picture-id845237322

 

35 オレクサンドル・ジンチェンコ Oleksandr ZINCHENKO*

昨シーズンはPSVに貸し出されるも、控えから抜け出せず。なんでリザーブでプレーしなくちゃいけないか分からないよ、と漏らしていた金髪のウクライナ人。シティではまだ公式戦でプレーしていないので良いんだか悪いんだかよくわからないが、PSVドルトムントナポリも欲しいというのだから、さぞ良い選手なのだろうよ。今シーズンは労働許可が降り、晴れてシティに残留。CMFやWBの控えでチャンスがあるかもしれない。

http://media.gettyimages.com/photos/oleksandr-zinchenko-of-manchester-city-and-lucas-vazquez-of-real-picture-id823343928

 

55 ブラヒム・ディアス Brahim DÍAZ*

2016年のU-17 EUROで準優勝したスペイン代表の主力。右寄りの攻撃的MFかFWで、今シーズンからトップに昇格。14歳の頃にマラガから引き抜いたのだが、まあそういうことしてればUEFAに怒られるのも無理はない。プレシーズンではレアル・マドリー相手にドリブルからミドルを決めたが、如何せん身体が小さすぎるので、トップレベルで通用するかどうかはまだ微妙なところ。しかし何と言っても「レアル・マドリーが欲しがっているらしい」とのことだから、きっと大物には間違いないよ(断言)。

しかしU-17のEUROって毎年やってるとは知らんかった。まあ育成年代だから理屈は分かるが、有り難み無いな。

http://media.gettyimages.com/photos/brahim-diaz-of-manchester-city-celebrates-after-scoring-a-goal-to-it-picture-id823291044

 

 

 

FW

7 ラヒーム・スターリング Raheem STERLING***

身贔屓だと思わず聞いてほしいが、私が思うに、シティに来て以降のスターリングをどう評価するかで、その人がどの程度シティの試合を見ているかが判る。「どの程度」というのは、別に試合を見れば見るほど偉いというわけではないが*1

最初のシーズンは尻すぼみに終わったものの、グアルディオラが来て以降のスターリングは調子の波も少ないし、チャンス創出の質、量ともに高い。アーセナルスウォンジーボーンマスのようにスターリングに痛い目に会わされているチームも多い。はずなのだが、その割には本当に評価されない人である。見ているとイライラする、という意見も多い。まあその気持ちは判らないでもない。多分、チャンスをホイホイ外す(強く、正確にシュートが打てない)、すぐ倒れる(体重が軽いうえにハンドオフが下手)、すぐボールを下げがち(キープすることにあまり自信がない)辺りが原因なのではないかと思われる*2

 

一方で、名が売れたのが早かったから、今の水準で完成形ですと言われると期待外れだという感覚も理解は出来る。そんな中で、万が一(どころでは済まない確率だが)私がスターリングにアドバイスを送るとすれば、成長余地は点。得点である。クロスとかアシストとか、もうどうでもいいから。とにかく点を取るしか無い。点が取れるようになれば、MSNやロッベンとは言わなくとも、ペドロくらいの評価は得られること間違い無し。そういうものだ。

 

19 リロイ・ザネー Leroy SANÉ*

昨シーズン後半、4-3-3の左ウィングでブレイク。1on1の突破力はチーム1。しかし今シーズンはメンディたちの加入で横幅確保業務がSBに移管されてしまい、控え降格。

何試合か試された左WBは見るからにもたついていたが、2トップの一角では点が取れるところを見せているので、今年は主にそちらで売っていくかもしれない。個人的には、カットインお化けにはなってほしくないところ。

http://media.gettyimages.com/photos/sergio-aguero-of-manchester-city-celebrates-scoring-his-sides-first-picture-id852287614

 

20 ベルナルド・シルバ BERNARDO SILVA

服屋って好きですか。私は嫌いです。選択肢が多すぎて、店中見て回った上で他の店とも比較して、何ならZOZOTOWNもチェックしておかねば損をするようで、気疲れする。

なんの話だと思われるかもしれないが、ポルトガルやフランスの若手選手というのは、その「チェックしておかなければならない対象が多すぎて疲れる」という点で服屋に似ている。ああ、また上手い選手が出てきたのね。なにゴメス?ゴメス何号?みたいな。然るに、移籍が発表されるまであえて情報を仕入れなかった2人目のシルバことベルナルドだが、モナコでCLベスト4に入っただけあってさすがにクオリティは高かった。だろうと思った。知ってた知ってた。ライン際に張ってもいいし、ハーフスペースを使ってもいいし、状況に応じて多様な機能が果たせるところが喜ばしい。右のWGとCMFを担当。

http://media.gettyimages.com/photos/bernardo-silva-of-manchester-city-is-instructed-by-josep-guardiola-picture-id852380642

 

10 セルヒオ・アグエロ Sergio AGÜERO

怪我をしようがしまいが、出していればシーズン30点*3は獲ってくれる大エース。その割にグアルディオラから特別扱いされているわけではないため、昨シーズンから移籍の噂が耐えない。

アグエロに注文がつくのも別に変な話ではない。監督の要求は選手のエゴと排他でもないし。肝心のゴール前も、まあ正直なところ、MSNほど凄いとは言い難い訳だし。最近腰の回転が鈍かったり。一方でアグエロがプレミア最高の偉大なゴールゲッターなのも両立する事実なのだから、誰もが3人称でしか語れない不要論なんてほっといて、アグエロがどう成長するかを楽しみに見てたら良いと思うんですね。私はね。

といいつつ、まあこの辺で選手としてはピークかなと思っていたら、今シーズンはプレスを繰り返す体力は付いてるわ、ポストプレーも少しずつ上達しているわ、3,4人まとめて片付けるドリブルも復活しているわ、よりオールアラウンドで怖いストライカーに成長していた。恐れ入りました。体調が良いとドリブルで持ちすぎて深いタックルを呼び込んで大怪我、というのが今までのパターンなので、そこだけ気をつけてほしい。

http://media.gettyimages.com/photos/sergio-aguero-celebrates-during-the-premier-league-match-between-and-picture-id847961432

 

33 ガブリエウ・ジェズス Gabriel JESUS*

昨シーズン中盤に加入した20歳。どうせ“スピードとドリブルが武器”のハイプに違いないと怯えていたが、モノホンは違った。これはリアルですわ。何をやらしても卒なくどころの話でないレベルでこなしてしまうし、細身の割にほとんど当たり負けしないし、過去10年のブラジルの9番日照りもついに解決なのではあるまいか。ただ、1人で何人も抜き去って点を獲るとか、ものすごいミドルがあるとかいう訳ではないので、アグエロと組ませるのは得策だと思う。

 

*1:「見てないのに語るな教」の蔓延もそれはそれで鬱陶しい

*2:パーソナリティの話はしない

*3:コンペティション合わせて

2017/18 マンチェスター・シティ 選手名鑑(トップチーム+α編その1)

GK

1 クラウディオ・ブラボ Claudio BRAVO 

ほら、イップスって言ったでしょ?というのはコパ・アメリカ限りの印象で、未だシティでは汚名を返上する機会を得ていない、昨シーズンの歩く大災害。今年はエデルソンの獲得で控え降格。W杯の準備としては大変そうだが、重圧が減って良いのではないか。途中から改善傾向にはあったので、復活が期待されるところ。

 

31 エデルソン・モライス EDERSON Moraes ブラジル代表

とかく欧州に生息するブラジル人GKというのは当たるんだか当たらないんだか、良い選手なんだかそうじゃないんだか、よくわからない生き物だということになっていて、例外なのはインテルにいた頃のジュリオ・セーザルぐらいだという噂もある。何せエデルソンの前にプレミアでレギュラーを張ったブラジル人GKというのは、“バターハンド“ゴメス先生しかいないわけだから。

そう思って大した期待もかけていなかったエデルソンだが、組み立てられるし、セーブができるし、何より守備範囲が広い。あと5年はスタメンを任せられそうな風格が漂う。

http://media.gettyimages.com/photos/ederson-moraes-of-manchester-city-during-the-premier-league-match-picture-id852332554

 

32 ダニエル・グリムショウ Daniel GRIMSHAW*1

昨シーズンの昨シーズンのユースチームでは正GKを努めていた19歳。アンガス・ガンのレンタル移籍に伴い、夏のツアーに招集。シティの育成は割とGKが弱くて、過去15年見てもシュマイケル息子程度しかトップリーグで活躍していると言える選手はいないのだが、その歴史を断ち切ってもらいたいもの。

 

49 アリヤネト”アロ”・ムリッチ Arijanet MURIC*

GK不足で夏のツアーに招集されたモンテネグロ系スイス人。18歳にして196cmの巨漢。足元は「苦手です!」と潔く宣言。まあ、ユーゴ系は大体そう。

http://media.gettyimages.com/photos/manchester-citys-aro-muric-in-training-picture-id826102146

 

 

DF

4 ヴァンサン・コンパニ Vincent KOMPANY

塩野七生は言いました。理想的な主将とは、古代ローマの百人隊長が務まるような人間でなくてはならないと。またあるイギリス人は言いました。理想的な主将とは、保険のセールスマンであり、外交官であり、教師であり、その他諸々。Numberに書いてありました。

そういう意味で、フィットさえしていれば、コンパニ以上の主将はいない。フィットさえしていればな。今シーズンはついに怪我を克服したとの触れ込みで開幕からスタメン出場。そして大方の予想通り、1ヶ月ほどして負傷離脱。私の試算では、今やイギリスに行ってコンパニが出場している試合を見るより、志賀高原に行ってオコジョを見つけるほうが簡単である。

http://media.gettyimages.com/photos/vincent-kompany-of-manchester-city-during-the-premier-league-match-picture-id836964166

 

5 ジョン・ストーンズ John STONES***

20年前に1シーズンだけプレミアにいたというバーンズリーで育った若手CB。最終ラインから組み立てられる貴重なDFとして昨シーズン加入。チャンスに直結するパスを連発したが、ボール扱いに自信を持ちすぎてちょくちょくえらい目にあったり、大事な場面であっさり交わされたりしていた上、シティのイングランド人なので叩きに叩かれた。今シーズンは4バックでも3バックでも現時点では安定したパフォーマンスを見せている。ロングフィードが多少正確なくらいで組み立ては別に上手くも何とも無かったリオ・ファーディナンドが「足技に長けた現代的なCB」と呼ばれていたように、結局CBは守れている限り他の評価がくっついてくるのだ。

15 エリアキム・マンガラ Eliaquim MANGALA

まさかのときのジョニー・エヴァンズ!(バァアアアン!!!)。彼の武器はただ一つ!冷静なカバーリング。それと両足が使えること。二つ。武器は二つ!。冷静なカバーリング、両足が使える、経験が豊富。違う、三つだ。武器は三つ!冷静なカバーリング、両足が使える、経験が豊富。それにすてきな笑顔。もう!!

 

という話をしようと思っていたら、結局エヴァンズが来なかったので残留したフランス代表。数年前に「コンパニ相方問題の最終的解決」として加入したが、とくに信頼を得られないまま4シーズン目。力はあるんだけどねえ。ペップ政権下では苦手な組み立ても要求されるとあって逆風甚だしいが、CBの4番手かつCB陣唯一の左利きとして頑張って欲しいところ。すこぶる真面目。

http://media.gettyimages.com/photos/eliaquim-mangala-of-manchester-city-in-action-during-the-preseason-picture-id831895676

 

24 トーシン・アダラバイヨ Tosin ADARABIOYO*

5歳からシティにいる196cmのCB。在籍年数だけで言えばチームの最古参。5歳て。

まだ19歳ではあるものの、序列は5番目だし、さして怪物感を感じさせるシーンもないし、正直に言って多少将来が心配になるが、今年新たに2021年まで契約を延長したということで、信じて待ちたい。

 

30 ニコラス・オタメンディ Nicolás OTAMENDI

2010年南アW杯、マラドーナ率いるスチャラカアルゼンチンで、何故かサネッティに代わって右サイドバックをやらされていたクソ芋青年が、シティ随一のファイターに成長。まあ成長したのは主にバレンシアでだが。まずタトゥー増えすぎ。

シティではグアルディオラの指導のもと、ビルドアップの上達が著しい。ポストプレー潰しも上手く、なるべく高い位置でボールを回収したいシティにとってはありがたい存在。

http://media.gettyimages.com/photos/nicolas-otamendi-of-manchester-city-celebrates-victroy-after-the-picture-id852323098

 

2 カイル・ウォーカー Kyle WALKER***

10代の少年少女は知らないかもしれないが、間の抜けた補強と言えばトッテナムという時代があったのだよ。クラブ最高額で買ったFWを腐り切るまで干したり、同じポジションの若手を4人揃えて全員モノにならなかったり、下部クラブの期待の若手を引っこ抜いてそのライバルクラブに速攻で貸したり。その中でも「英国系の優秀な選手がいたらとりあえず引き抜く」というのがあったのだが、失敗を重ねた上に今の才気あふれる若きスパーズがあるのであって、石の上にも3年の精神は素晴らしいと思う。3年どころではなかったが。

 

話が長くなったが、その象徴の1人がウォーカーだと私は思っている。カイル・ノートンと一緒にスパーズに引き抜かれたときは身体が強い以外の取り柄がよくわからんやつだなと思っていたが、イングランド1の右バックに成長して今期加入。昨季、解法を露わにされたペップ戦術を立て直す鍵として期待がかかるが、加入早々性能の違いを見せつけて右サイドに安定をもたらしている。チャームポイントは右腕のにゃーん。

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3   ダニーロ DANILO

転職するなら、アービトラージ効くところ。給料や格は下がりやすいが。だからレアル・マドリーでカルバハルと比較されていると中途半端な器用貧乏でしかないダニーロも、プレミアに来るとRB / RWBとしての攻撃力はあるわ、LWBとしても無難にこなせるわ、DMFやCBにも対応するわ、高性能のSBに生まれ変わるわけよ。ミスも多いが。ただ、一番レアルっぽいのは読唇術を警戒して口元を隠して話すところ。イギリスはその心配ないから。

全世界でダニ・アウベスの株が下がりまくっている今、アウベスを獲り逃した結果ダニーロが獲れて良かったと言えるのではないか。万事塞翁が馬である。

 

45   デミーコ・ドゥヘイニー Demeaco DUHANEY*

夏のアメリカツアーに途中招集されたティーンエイジャー。読み方はドゥハーニーともドゥアニーとも。両サイドバックできるが、右が本職らしい。とりあえず活きは良かった。タイロン・ミアーズ、オヌオハ、リチャーズ、トリッピア、シャルーム・ローガン、リース・ウォバラ、エラブデラウィと、そこそこの右バックを排出することにかけてはそこそこ定評があるシティ物件なので、期待してほしい。そこそこ。

http://media.gettyimages.com/photos/manchester-citys-demeaco-duhaney-ahead-of-the-fa-youth-cup-final-picture-id826116814

 

22 バンジャマン・メンディ Benjamin MENDY

インスタグラム担当大臣が来たと思っていたら、今度はツイッター天皇だった。TL上にてシティファンの心を弄ぶこと数週間、ハードルを上げに上げて加入した元モナコの左サイドバック。もともとシティの左バックというのはこの15年安定しなかったポジションで、コラロフやクリシが一番成功した例と言ってもいいぐらいなので、この先5,6年を担う選手として期待は大きい。プレーの破壊力は以下に引用する通り圧倒的。懸念は度々受け渡しやラインを間違える守備面と、健康。なんつっても、左バック1人しかいないし。

http://media.gettyimages.com/photos/benjamin-mendy-of-manchester-city-arrives-at-the-stadium-prior-to-the-picture-id852249288

 

欧州201617シーズンの気になった選手イレブンを決めよう。 - サッカーの面白い戦術分析を心がけます

ベンジャミン・メンディーは、モナコの左サイドバック。たぶん、右サイドバックもできる。とにかく速い。超特急。味方のフォローがないと、クロスを上げるだけマシーンになりがちなサイドバックとは一線を画します。突破のドリブルも使いこなし、超攻撃的な左サイドバックとして、世界屈指になる日は近いです。 

 

*1:*

*はU-21対象、***はホームグロウン対象選手

シティの財務状況、あるいはFFPとの再会について

そんなに使って大丈夫か。

 

という指摘が、この夏のマンチェスター・シティに寄せられている主な指摘の一つであるが、それも致し方あるまい。何せひと夏で£200m使ったのは、プレミアリーグ(以下EPL)のクラブでは史上初である。一部で報道された「2009年のレアル・マドリーを更新して史上最高額」というのは実はまだなのだが、この後何とかッペを買ったりしたら、まあ間違いなく更新するわな。

 

 

実際のところ、シティの財務状況はどうなのか。財務というからには、損益計算書(以下P/L)に載っている売上と利益だけでなく、貸借対照表(以下B/S)とキャッシュフロー計算書(以下C/S)にも焦点を当てる必要がある。実際、最近のEPL上位クラブはどこも景気が良すぎて、B/SとC/Fを見ない限り、面白い差異もない。

 

結論としては、数字から見れば、シティは世界でも上位の安定したポジションに(つい最近だが)到達している。石油王には買われてみるものだ。

 

マンチェスター・シティのP/L推移

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出所)The Swiss Ramble

 

まず事業の規模。1)試合のチケット販売、2)放映権料、3)その他ユニフォームやグッズ等のマーチャンダイズから得る収入を合わせたものが売上高だが、2015/16シーズン終了時点で、シティは世界第5位の€524.9m(£391.8m)。ビッグ4には届かないものの、マンチェスター・ユナイテッドを除くEPLのライバルクラブには、1.2億~5,000万€ほどの差を付けている。

 

2015/16 売上高上位20クラブの売上高(€m)

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出所)Deloitte Football Money League 2017

 

次に成長性。直近5年間の成長率は、欧州トップ10の中で2番目に高い。2008年以前が比較的小さかったという理由はあるにせよ、5年前の11/12シーズン時点ですでにリヴァプールユヴェントス等の名門より売上高は大きかったので、その時点から見ても高い成長率を維持しているのは喜ばしい。

2015/16 売上高上位10クラブの売上高成長率(2011/12を1とした場合)

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出所)Deloitte Football Money League 2017

 

一方で弱点でもあり、今後の拡大余地とも言えるのが、他クラブに比べて極端に小さいマッチデー収入である。“Emptyhad(ガラガラのエティハド)”と呼ばれる割には、少なくとも記録上客は入っているようだが、まずシティはチケットが安い。シーズンチケット価格の上位はアーセナルトッテナムチェルシーリヴァプールと上位クラブが占めているが、シティはプレミア全体でも3番目に安い。逆に言えば、安くないと来てもらえないから仕方なくしているという可能性もある。ここ2年で、シティはシーズンチケットの値上げ、プレミアムシートや会員制サービスの導入を進めて批判を浴びているが、今年始まるスタジアムの第2期拡張(約6,000席の追加)も含め、拡大施策は暫く続くのではないかと思われる。

2015/16 売上高上位10クラブのマッチデー収入(€m)

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出所)Deloitte Football Money League 2017

 

Ranking the Cost of Every Premier League Team's Season Ticket Prices for 2016/17

www.90min.com

出所)90Min.com

 

 

収益性については、EBITDAの絶対額、対売上比率の両方で、EPL上位クラブの中ではマンチェスター・ユナイテッドに次ぐ2位に付けている。選手の売却益が小さいので最終利益額は高くないが、サッカー事業の収益性としては、比較的高い水準にあると言える。また、選手獲得の費用は利益額の多さには直接的に縛られないから、絶対的な水準として少なすぎるということもない。

2015/16 プレミアリーグ主要6チームのEBITDAおよび対売上高EBITDA比率(金額単位:£m)

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出所)The Swiss Ramble

 

 

また、2015/16シーズンは、財務的には記念すべきシーズンであった。というのも、ADUGの買収以降初めて、オーナーからのいかなる資金注入もなかったからである。営業活動から安定してキャッシュを創出できるようになったことに加え、売るのが下手と言われながらも一定の売却額を確保したことで、シティはようやく、財務的に自立したクラブとなった。とはいえ、前述のように今年は£200mも費やしたから、オーナーからの増資を資金源の一部にしている可能性は高いが。

 

マンチェスター・シティキャッシュフローの推移(£m)

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出所)The Swiss Ramble

 

 

ちなみに、The Swiss Rambleのキャッシュフロー分析を見ると、各クラブの財務状況と、戦略上の優先順位がよく分かる。シティが買収された2009年以降、シティはキャッシュを全面的にオーナーに依存していた。使い先は、約6割が選手の補強、約3割弱がインフラ投資である。売上高を拡大し、ブランドを向上させ、育成組織を確立するために、まずはトッププレイヤーの獲得と、CFAに代表されるインフラの構築が必要だったということだ。

チェルシーも同様で、アブラモビッチによる買収以降、毎年彼からの増資、または貸付によってキャッシュを賄っている。対象的に、マンチェスター・ユナイテッドアーセナルは全て、営業活動から創出したキャッシュで充足している。リヴァプールはその中間にいて、営業キャッシュフローだけでは選手獲得等に不足が生じるため、銀行やFenway Sports Groupからの借入も受け続けている。

 

マンチェスター・シティアーセナルの資金源と使途の比較(2009年から2016年)(£m)

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出所)The Swiss Ramble

 

安全性、すなわち事業を安定的に行っていく上での余裕度は、シティが最も強力な分野である。自己資本比率はEPL上位クラブの中で最も高く、有利子負債(ここでは下表のBank Loans and Over Drafts)はない。といっても、めっちゃ金出してくれる上に、貸付でなく株式で入れてくれる素晴らしいオーナーがいるというだけの話だが。

オーナーのおかげでシティは金融機関からの借入を行う必要がなく、そのため利息支払も小さい。ただし、懸念があるとすれば偶発債務(Contingent Liabilities、現実にはまだ発生していないが、将来一定の条件が成立した場合に発生する債務)が£123mと大きいことで、これは移籍金と、選手への賞与支払についてボーナスを付けまくっているためだ。出場試合数や成績によって発動するボーナスを増やす代わりに通常の給与を抑えるという方針と、ここ3年ほどリーグで勝てていない幸運のために、シティの人件費は一旦落ち着いているが、もし3冠でもしてしまったらそれなりに大変なことになると思われる。一度に発動される可能性は低いとは言え、£123mはひと夏の移籍金支払額に相当する水準だからだ。

 

マンチェスター・シティの負債状況(£m)

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出所)The Swiss Ramble

 

 

 

 

Financial Fair Playとは何か

 

みんなちがって、みんないい。

 

いい詩ですね。FFPも然りである。みんな心のなかに、それぞれのFFPを育てている。きらめくときの中で。そして日々、茶番だとか、死んだとか、終わったとか言われている。大川隆法総裁が「スゥ・・・FFPです」と言い出す日も遠くないのではないか。

 

UEFAのFinancial Fair Play自体は、給与支払いの遅滞や税金の支払い等にも及ぶ巨大なルールの集まりだが、一般的にFFPと呼称されているものは、Break-Even規定のことを指す。毎年、直近3期分の損益を合計し、Break-evenに失敗していれば、すなわちマイナスになっていれば、FFPに抵触したと見なされ、罰則が課せられる。極端にざっくりと言えば。ただし、育成に関する費用等、特定の費用は計算から除外される。

 

そんなもともと特別なオンリーワンであるUEFAFFPは、巷でイメージされている“FFP”と結構違う。

Financial fair play: all you need to know

www.uefa.com

出所)UEFA

 

Financial Fair Play Explained

FFP Explained

出所)Financial Fair Play (Ed Thompson)

 

 

 

例えば、噂その1:“あるクラブに所属する選手が別のクラブから高額の移籍金で引き抜かれそうになった場合、FFPで訴えることで、移籍を阻止できる。”という説がある。

できない。”FFPで訴える”ということは難しい。Break-Even testは事後の裁きでしか無く、その時点で抵触しておらず、罰則(例えば一頃のシティのような、ネットの移籍金支払額上限とか)を受けていないクラブを止める力はない

 

噂その2:FFPでは、オーナーの関係会社からのスポンサーフィーという名目で資金を注入することは認められていない“

いる。というか、上の文章自体がP/LとB/SとC/Sがごっちゃになっている。

まず、資本注入、あるいは借入によって資金を得ることは、少なくともBreak-Even test上は問題ない。それができなかったら何のためのオーナーだろうか。一方で、単にオーナーが注入した資金を収入に数えることはできないから、費用に見合うだけの売上が立てられなければ当然損失が発生してしまうので、シティもPSGもエティハド航空エミレーツ航空からスポンサーシップを受けている。

 

また、オーナーないしオーナーの関連団体からのスポンサー収入も全てが除外されるわけではない。例えば、エティハド航空はシャツスポンサーとして年間£20mを支払う代わりに、ユニフォームの全面に「エティハド航空」のロゴを掲載させている。金額も、その扱われ方も、例えばエミレーツ航空アーセナルに対してするように航空会社が一般的にサッカークラブに対して行うスポンサーシップと大差がない。エティハド航空の創設者はシティのオーナーであるシェイク・マンスールの異母兄だが、エティハド航空のことがFFPのBreak-even testにおいて特に咎められたことがないのはそのためだと思われる。

 

噂その3:“シティがFFPの処罰対象にならないのは、ルールが緩和されたためである”

残念ながら関係ない。Break-Even testの緩和は、新たなオーナーによる新規投資の場合を対象にしており、シティには関係なかった。

 

噂その4:FFPは弱小クラブとビッグクラブの格差を解消するためにある”

ない。UEFAがわざわざ言い訳しているように、どっちかというと逆に働くルールである。

 

噂その5:ネイマールのような多額の移籍金を支払うと、必ずFFPに抵触する”

しない。さっきも言ったが収入とその他の費用次第である。

前提として、移籍金は当期に全て計上されない。というのは、移籍金とか契約解除金とかいうのは選手と契約する権利の取得費用であって、選手は無形固定資産としてB/Sに載り、契約期間に渡って償却されるからである。そして、P/LとC/Fは違う。移籍金の支払は一括だったり分割だったりするが、P/L上は前述のように契約期間に渡って按分され、費用として計上される。つまり、ネイマールの€200mだか€250mだかも、P/L上に載るのは€40mから50mに留まると思われる。

 

(ただしネイマールのケースについては、クラブ間の取引ではないので、一括してP/Lに計上されるのではないかという見方もある。ただし、この場合も、移籍金ではなく契約金解除金だからとか、支払が一括だからという理由で当期に全て計上されるのではない。)

Neymar's PSG Transfer and the Break-Even test

Neymar's PSG Transfer and the Break-Even test

出所)Financial Fair Play (Ed Thompson)

 

(また、PSGではなくQatar Tourism Authorityがネイマール本人に支払うことでPSGの帳簿上に計上されないという話があるが、疑わしいと思っている。PSGは明らかに無形固定資産としてのネイマールを取得しているのだし、QTAはPSGのスポンサーだし。)

 

Paris St. Germain Renews Qatar Tourism Authority Partnership With $197M Deal

www.sportsbusinessdaily.com

出所)Sports Business Daily

 

 

 

シティとFFP

話が逸れたが、本題は、シティがFFPに抵触するリスクについてだ。

直接的なリスクは、今期のような高額の移籍金支払によって損失が発生するケースだが、売上高、とくに放映権料収入の拡大によってカバーできる可能性は高い。2016/17から2018/19のプレミアリーグの放映権料は、その前の3年間に比べて単年で約£50m増加しており、£200mから250m分の移籍金支払いによって増加する費用をカバーできることになる。また、放映契約は更に増加する可能性が高い。2019年以降の契約、特に海外での放映は、高いもので14倍にもなるという話もあれば、中国での3年契約だけで$700mに達するという噂もある。

 

Premier League may earn 14-fold increase in TV rights money as new foreign broadcaster deals promise more cash

www.dailymail.co.uk

出所)Daily Mail

 

English Premier League sells Chinese TV rights for $700 million

www.cnbc.com

出所)CNBC

加えて、シティは今夏すでに約£70mの売却を決めており、まだナスリ、マンガラ、ボニー、デルフという大玉も残っている(大玉だから売れ残ってるんだけど)。彼らの売却益と、削減できる給与を考えれば、むしろ合計の費用としては昨季より抑えられるかも知れない。

 

 

ただ、この成長がどこまで継続するかについては、懐疑的な見方も生まれ始めている。

  • 上昇する放映権料をカバーするために、プレミアリーグの視聴料が上昇している。

Who is paying for the Premier League's bumper TV deal? Your local pub

www.theguardian.com

出所)The Guardian

 

  • EPLやNFLにおいて、局地的には視聴率の低下、視聴契約者数の減少が起こっている

ESPN Loses 621,000 Subscribers; Worst Month In Company History

www.outkickthecoverage.com

出所)Outkick the Coverage

 

Goodell on dip in ratings: We don't make excuses

www.nfl.com

出所)NFL.com

 

  • TwitterInstagramのようなSNS上でゴールハイライトだけ見て、1試合丸ごとは見ないというファンが、特に若い層で増えている

Modern technology is in danger of leaving the Premier League behind - football must fight back or viewers will keep turning off

www.telegraph.co.uk

出所)The Telegraph

 

  • 違法ストリーミングが蔓延している

'Even my 78-year-old father streams' – why football fans are switching off

www.theguardian.com

出所)The Guardian

 

 

一方で、視聴率の低下は一時的な要因によるものという反論もある。例えばマンチェスター・ユナイテッドがプレーするかしないかだけでも、CLの視聴率は変わってくる。サッカー界は20年位ずっと「放映権料バブル」と言われ続けているが、実際のところ、長期的には成長し続けている。

Is the unthinkable happening – are people finally switching the football off?

www.theguardian.com

出所)The Guardian

 

いずれにせよ、短期的にFFPのBreak-Even規約に抵触するリスクはさほど高くない。可能性があるとすれば、さらにムバッペ等の購入を積み増した上で、主要スポンサー、あるいはSkyやBTが倒産して支払が遅滞するとか、戦力外の高給取りがいずれも売却できないとか、CL出場権を逃すとかいったような、比較的極端なケースだと思われる。

2016/17 マンチェスター・シティ 選手別レビュウ vol.2

GK

ウィリー・カバジェロ

「物乞いだったこともあれば 王様だったこともある 俺は最高じゃあないが 決して最悪というわけじゃない」とはAviciiの歌にあった気がするが、去年のリーグカップ決勝でPKに目覚めてからのウィリーは、だいたいいつもそんな感じなのだった。上手くはないが、ハートほど無頓着に蹴っ飛ばすわけでもなく、無難に組み立てをこなし、違いをもたらすほどではないが、ブラボよりよっぽど頼れる守備だった。

マラガに帰る(らしい)とのことで、まあもう30代も半ばだから、スタメンで出られるチームに行きたくなるのはしょうがない。シティのファンからも中傷を受ける中、PKを3本叩き落として感涙にむせぶウィリーの勇姿は、全然活躍してないのに一番カメラに映るポジションを確保したボニーとともに、我々の記憶に残り続けるのである。

http://media.gettyimages.com/photos/wilfred-bony-lifts-goalkeeping-hero-willy-caballero-of-manchester-in-picture-id512857492?s=594x594

 

クラウディオ・ブラボ

ボール支配による試合のコントロール、高いDFラインを実現するために獲得されたはずだったが、説得力のあるパフォーマンスを見せられないまま終了。すでにGoal.comではそうだったが、どのメディアが選んでも今期の「ワーストイレブン」には入るだろう活躍を見せてしまった。

私は「シュートどころかタクシーさえ止められない」というセービングの部分よりも、守備範囲がやたらと狭いところが、より深い問題だと思っている。というのも彼はリーガを制したバルセロナの正GKで、チリ代表史上最高のGKの一人であるわけだから、いくらなんでも今シーズンの止められないっぷりはさすがに何かの間違いというか、イップス的なものだと思うんですね。希望的な推測も含めてだが。

一方で守備範囲が狭い、DFラインの裏に放り込まれたボールに対応できないというのは、過去のシティのGKどころかプレミア全体を見てもちょっとまずいレベルにある。都合の悪いことに、おそらくこれは一過性のものではない。となると、守備が破られるケースが減れば必然的に機会も減るはずの「止められない」問題より、守備レベルに関わりなく試合の中で発生し、かつ飛び出せないことでDFの責任範囲をより広げる「守備範囲激セマ」問題の方が深刻ではなかろうか。

ということで、来年もブラボが正GKのようでは苦しいと判断せざるを得ないクオリティだった。組み立てへの貢献度はさすがに高かったので、第2GKとしている分には別に文句もないんだが。

Everton v Manchester City - Premier League : ニュース写真

 

アンガス・ガン

若手GK。プレシーズンマッチドルトムント戦でPKを止めた以外は全く出番なく終了。新しいGKも来るという噂が絶えず、早めにレンタルなりで出してあげた方がクラブにとっても良いと思う。母親がデザイナーなだけあって、カメラ映えしそうな見た目はしている。

http://media.gettyimages.com/photos/angus-gunn-of-manchester-city-warms-up-prior-to-the-premier-league-picture-id679573722?s=594x594

 

 

CB

ヴァンサン・コンパニ

50→42→37→37→33→22→14。

2010/11シーズン以降の、コンパニの出場試合数の推移である。要するに我々のキャプテンは、段々と、しかし着実に、使えない選手になってきているのであった。切ない事実だが、受け入れなくてはならない。

シーズン序盤に出てきたときはあからさまに組み立てに途惑っていたが、いつもの怪我を経て最終盤に復帰してからは、組み立ても含めて安定したパフォーマンスを披露。オタメンディストーンズはやはり軽量級なので、サロモン・ロンドンWBA)のようなでかい選手も弾き飛ばして胸トラップしてしまえるコンパニが使えるというのは、非常に大きい。来シーズンは契約最終年だが、延長目指してがんばってほしいところ。

http://media.gettyimages.com/photos/david-silva-of-manchester-city-and-vincent-kompany-of-manchester-city-picture-id668919078?s=594x594

 

ニコラス・オタメンディ

やらせてみると伸びるもんだな、というのが、率直な感想。CBが持ち上がって組み立てに参加するというのは、やってみるとわかるが相当怖い。足元に自信がなければ尚更である。それでもシーズンを通して果敢にチャレンジし続けたオタメンディは偉いと思う。厳しいプレッシャーを交わす技術は流石にないが、去年まで自信なさげに隣のサニャに押し付けて仕事は終わりだった男が、プレッシャーさえ弱ければそこそこ立派に、前線へのパス供給源としてプレーしていた。

一方でCLモナコ戦の1stレグのように、本職の守備で簡単に裏を取られたりするシーンも多かったので、総合的に見て監督の信頼を得られたかというと微妙なところかも知れない。CBの補強をするのかは定かではないが、対人の強さというコアコンピタンスは失わずにいてほしいところ。

VfL Borussia Moenchengladbach v Manchester City FC - UEFA Champions League : ニュース写真

 

ジョン・ストーンズ

見るからに足技に自信がありそうで、若くて、上位クラブが大枚はたいて獲得して、軽率なミスが目立つ、といえば私のような茶化し系サッカーファンの大好物だが、不思議なことに、これが応援するチームに来ると色々エクスキューズが見つかるんですね。経験が足りないのだからとか、成長は見せているからとか、パートナーが頼りないからとか。ポジショントークの世界を生きる私たち。(ちなみに、去年取りたかったらしいラポルトも、同じような愛すべきドジっ子だと思う。この手の若いのは大体そうなんだよ。俺にはわかる。見たことないけど)

世間の評価はGoal.comの欧州ワーストイレブン選出が物語っているが、さすがにそんなに悪くはなかった。無論レスター戦やセインツ戦のバックパスとか、モナコ戦のファルカオ一刀両断事件とか、CBとしてどうなのというミスはあったが、FWやCMFへの決定的なパスを連発していたのも事実だし、アンカーと相方のCBと柔軟にポジションを入れ替えつつ組み立てる方式での活躍*1は明るい未来を感じさせた。たとえ、終盤はコンパニにレギュラーを奪われていたとしても。

というわけで、来年も私はストーンズを甘やかすと思う。これが世に言う、若手の魔力。マルコヴィッチの穴ならぬ、ウォルコットの沼。もう腰までずぶずぶさ。

http://media.gettyimages.com/photos/john-stones-of-manchester-city-shrugs-his-shoulders-at-vincent-of-picture-id664971070?s=594x594

 

トーシン・アダラバイヨ

5歳からシティにいる196cmのCB。プレシーズンはグアルディオラが熱心に個人指導しているシーンが目撃されており、その甲斐あってか昨シーズンは辿々しかったボール運びにえらく自信が伴っていた。が、まともな出場は結局CL予選の2ndレグくらいでシーズン終了。プレーよりも、契約延長するだのしないだの、エヴァートンに行くだの行かないだのというニュースの方で目立っていた。久しくイングランドの年代別代表にも選ばれていないから、毎年4,000万£もするシニアな選手が入ってくる状況では移籍を考えても致し方ないところはある。

http://media.gettyimages.com/photos/yaya-sanogo-of-arsenal-challenges-tosin-adarabioyo-of-man-city-during-picture-id653015914?s=594x594

 

 

SB

パブロ・サバレタ

足だけ速いやつもうグッナイ、クロスだけ良い奴もうグッナイ。トップスピードが速いわけでもなく、いわゆるクロスらしいクロスが上手いわけでもなかったが、サバレタ以上に攻撃で威力を発揮したSBは、2012年から15年頃のプレミアにはいなかった。先日U20W杯の日本代表を見て、ボールホルダーの内側を走るとか、斜めに走るとか、預けて走るとか、一回スピード緩めるとか、SBにも色々あるのよ、外を一本調子で走るだけじゃなくて。と思ったが、それもサバレタとシルバという、サイド攻略のバリエーションを我々に教えてくれる生きた教科書がいたからであった。

今シーズンについて言えば、昔やっていた割にはインサイドの役割にもさほど馴染めず、SBでは相手のドリブルに付いていけなくなるケースが増え、誰しも衰えは来るものなのだと感じた1年だった。ウェストハムでも愛されることを祈りたい。真面目でキレやすい孫さん、強くて速くて面白いマイカ、情熱あふれるサバときて、次の右サイドバックに対するハードルは、私の中で上がりまくっている。

http://media.gettyimages.com/photos/pablo-zabaleta-of-manchester-city-is-thrown-into-the-air-by-his-city-picture-id684258890?s=594x594

 

バカリ・サニャ

他人の尻拭いをするのは得意なんだが、攻守両面で中心となることには長けていないというのが、このおじさんの特徴。インサイドでのいわゆるアラバロールにも一番苦しんでいたし、被カウンターの局面でちょくちょく捕まえる相手を間違えたり、これまで「そこそこの知性と足技を持った肉体派」として築いてきたポジションが、「要求が厳しくなる中で目立つほど強くも速くもないし、MFとしての役割も難しい」という立場に逆転してしまい、かわいそうなシーズンだったように思われる。今年で退団だが、選手人生の黄昏を楽しんでほしいところ。

Paris Saint-Germain v Olympique de Marseille - Ligue 1 : ニュース写真

 

パブロ・マフェオ

若いスペイン人。CL予選とリーグカップで1試合ずつ出場し、前者の試合ではボール持ったらビビリだけど守備は勤勉で硬そう、という印象を受けた。リーグカップは負けたけど大分良かったらしいというような話を伺っております。シーズン後半は提携先のスペイン2部、ジローナに貸し出され、右WBのレギュラーに定着。5月末現在まで昇格の可能性を残している。来年リーガを経験してから戻ってきてもいいが、サバとサニャがどちらもいなくなったら戻らせるのも選択肢のうち。(→5/26、両方いなくなりました)

http://media.gettyimages.com/photos/emilio-izaguirre-of-celtic-and-pablo-maffeo-of-manchester-city-in-picture-id629598838?s=594x594

 

ガエル・クリシ

左バックの相対的には無難な方として6シーズンに渡ってシティを支えたフランス人も、今季で退団。シーズン当初はインサイドでの役割にもそれなりに対応する素振りを見せていたので、やったぜアーセンさすがあんたは最高だな、ベジェリンもください、と思ったが、時が経つに連れて組み立てでの自信のなさを露呈していった。考えてみればアーセナルのSBって、基本的には外を走ってなんぼなのだった。とくにクリシの時代は。

コラロフと比べて相対的には無難だった守備も、スピードの衰えで劣勢に回るシーンが増えており、攻守両面で、期待される水準には達しなかったというところ。それでも2回のリーグ優勝に貢献してくれた男として、今後も素晴らしいキャリアを送ることを祈りたい。一気に老け込んでしまったブリッジと、不安定なパフォーマンスに終始していたコラロフしかいなかった左バックのポジションに、それなりの安定性をもたらしてくれた人材だった。

http://media.gettyimages.com/photos/gael-clichy-of-manchester-city-celebrates-after-scoring-a-goal-to-it-picture-id630795776?s=594x594

 

アレクサンダル・コラロフ

左バックの無難じゃない方。まあコラロフの場合はそもそも必要な場所にいないか、追い付いてないか、抵抗しないかのどれかだから、とんでもないミスをするシーンはあんまり記憶にないんだが(褒めてはいない)。

走るスピードが急激に衰えたこともあってSBをやるには少々厳しくなってきたが、左利きと背の高さを買われてCBにコンバート。飛距離だけが持ち味のフィードを武器に、そこそこのパフォーマンスを見せた。キック力はあるからそれなりにボールは通るんだが、精度が高いわけではないのと、モーションの途中でキャンセルができないんよね。だから常に軸足の後ろを通した大仰な切り返しでしか方向転換ができない。ちょっともったいないと思う。

まあ今後もレギュラーを任せたいかと言われるとあなたの顔をまっすぐ見れないが、佇まいはかっこよかったと思う。私が知っているシティの選手の中で一番かっこよかった。剣の腕は立つけど生活力がない素浪人という趣だった。何の話かわからないと思うが、かっこよかった。

Manchester City v Southampton - Premier League : ニュース写真

 

アンヘリーニョ

2017年の元旦にジローナに貸し出されたと思ったら、月末にはマジョルカに移っていた。クーリングオフか何かでしょうか。組み立てができて足も速いサイドバックグアルディオラに気に入られるという私の安直な予想は当たらず。まあ内情としては評価されているのかもしれないが。まだ20だが、そろそろブレイクの兆しが見えないと危ないかもしれない。ちなみに今調べたら、マジョルカには元ソシエダのアンソテギがいました。他は全然知らん。

http://media.gettyimages.com/photos/angelino-tasende-of-manchester-city-in-action-during-the-efl-cup-picture-id609580236?s=594x594

 

2016/17 マンチェスター・シティ 選手別レビュウ vol.1

DMF/CMF

 フェルナンジーニョ

『彼は10のポジションに対応できるね』というグアルディオラの言葉通り、前半戦は主にアンカーとして、後半戦は主に両サイドバックや2センターの片方として稼動。自身の強みを活かすためというよりは、どちらも適任者がいなかったから仕方なくの面が強かったが。

これまでのジーニョには見られなかった中長距離のパス振り分けを披露する姿も見られ、全体的には安定したパフォーマンスだったが、どちらにおいても満足というにはやや不足気味。アンカーではパス精度とカバー時のポジション、SBでは対ドリブルの弱さが目立った。ただしこの2ポジションは異様に要求が高く、適任者を4,5人一気に獲得できるとは思い難い。今のチームでもっとも多様なタスクを担当できる選手であることには間違いないので、このポジションを極めるべく来年もう1年費やしてもらってもいいよね、と思っている。ちなみに、ジーニョの肘が誰かに当たったときは、基本的にわざとだと思っていただいて、差し支えない。

Chelsea v Manchester City - Premier League : ニュース写真

 

フェルナンド

すっかり守備専業の中堅潰し屋と見られているが、それは仮の姿・・・ポルト時代は組み立てにも貢献し、守っては相手の攻撃を尽く刈り取った怪物・・・グアルディオラがどう使うか楽しみよクックック・・・

と思ったら今年もクローザー、という名のベンチの肥やしになっていた。ああそうですか。強いて言えば、WBA戦で身体の強さを買われて右SBを担当したくらいか。プレシーズンはCBも練習していた気がするが、まあ後ろから持ち上がれるタイプでもないからな。ジェズス姫のお付家老としては十分活躍したと思う。

http://media.gettyimages.com/photos/theo-walcott-of-arsenal-challenges-fernando-of-man-city-during-the-picture-id630208248?s=594x594

 

ヤヤ・トゥレ

私、過去2年連続で「さらばだヤヤ、愛してるぜ」みたいなポエムを書いてるんですけど、今年もいるのかよ!すげー恥ずかしいわ。

開幕当初CLのGL登録メンバーから外され、圧倒的多数のシティファンから「しゃーない」との評価を得た(と、私は思う)が、代理人がグアルディオラを痛罵して着火。「いちいち起用法について代理人から口を出されたらたまらんので、代理人がクラブに謝るまで試合には出しません。」とのペップ宣言でシーズン前半は塩漬けになっていた。結局ビデオでヤヤ本人が謝罪し、復帰戦でチンタラしながらいきなり2得点。その後はチームに欠けていた、捌けるアンカーとしての機能を発揮したことで、有耶無耶のままにレギュラーを取り戻した。代理人は結局一言も謝ってないが。

ただ、以前のようなあからさまなジョグはなくなり、強烈なキープ力やパス展開で攻撃の前進にも役立っていたので、これなら来年もいてもらって全く文句はない。スタメンかと言われると苦しいけど。ポエムは書かない。今年はあえて。

 Arsenal v Manchester City - The Emirates FA Cup Semi-Final : ニュース写真

 

ファビアン・デルフ

シティに来てからただの面白いバカだと思われがちなデルフだが、アストンヴィラ時代にあのロイ・キーンに「お前調子こいてんじゃねえぞ」と言い放った勇気の持ち主であることを、我々は忘れてはならない。ちなみにこの話は思い出しただけで、あとの話にはなんの関係もない。

使われるとか使われないとか以前に、およそいつも怪我で休んでいた。たまに出てきては、しっくりこねえなあ、という印象だけが残る感じ。シルバがCMFにコンバートされたので、比べる相手がシルバだったのも運が悪かったと思う。自分のポジショニングで相手を動かすとか、スペースを空けるとかいうことが苦手で、キープ力や左足のロングショットはあっても、どこで使ったら良いやら判明しないままにシーズン終了。

http://media.gettyimages.com/photos/fabian-delph-of-manchester-city-and-gabriel-of-arsenal-argue-during-picture-id671901028?s=594x594

 

イルカイ・ギュンドアン

どうしたそこのインスタグラム担当大臣。イングランド1年目のシーズンは、ワトフォード戦で大怪我を負ったため、12月で終了。センセーショナルではなかったが、今のチームにいないキャラクターとして期待が持てるプレーはしていただけに残念。レジスタというか、中盤の底で捌く感じの選手なんだと勝手に思っていたが、意外とランパードっぽかった。タイミング良く飛び出してきて得点に絡むのが得意そうなので、今年の惨憺たる得点力不足*1解消のために活躍が期待される。

ちなみに、いくら大怪我とはいえ次の試合でチーム全員が「GUNDOGAN 8」と書かれたシャツを着て入場してきて、いや死んだわけじゃないから。そういうジョン・テリー的ノリはやめてもらいたい。

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アレーシュ・ガルシア

世界で一番メンディエタ顔。覚えていますか、メンディエタ

http://media.gettyimages.com/photos/gaizka-mendieta-of-middlesbrough-in-action-during-the-barclays-match-picture-id56955480?s=594x594

背番号が大きい、つまりトップチームでは半人前の若手陣の中では最も重宝され、全コンペ合わせて8試合に出場。点も決めた。いつも丁寧に横パスバックパス横パスバックパスで自軍の位置調整と相手のバランス崩しを狙っているおすまし野郎なので、多分日本代表にいたらめっちゃ叩かれてると思う。プレーはどことなくアルベルト・セラーデスに似ている気がするが、セラーデスくらいのキャリアを送れたら大成功だよな。

Manchester United v Manchester City - EFL Cup Fourth Round : ニュース写真

 

AMF/WG

ダビド・シルバ

最高でしたね。CMFへのコンバートと、高い位置からのプレッシング、5レーン活用型の攻撃*2へのシフトという今シーズンの変革で、①ネガティブトランジションの速さ、②レーン間の移動の的確さ、③狭いところでボールを受けられる技術というシルバの特徴がこれでもかというくらいに際立っていた。テベス、ベラミーのカウンター一辺倒だったシティを1人で変えて以来、私はシルバのそこそこ熱烈な信奉者だが、今シーズンのパフォーマンスは今までで最高だったと思う。私が責任者ならエティハドにシルバを奉る神社が建っていたかもしれない。

一方で、戦術的にスコアラーの役割を担う場所にコンバートされたことで、得点力の無さという、シルバの数少ない弱点が露になったシーズンでもあった。シルバはこのレベルの選手としてはちょっと異常なくらいに得点力がない選手で、シティで50点取るのに295試合もかかっている(5.9試合に1点)が、マタだってアザールだって、あるいはジェラードだってエリクセンだって*3もっと取っている。そういうところが、折に触れて誰かが『シルバはプレミアリーグで最高の選手』とわざわざ言って回らなくてはならない理由だと思う。
「組み立てに関与しているから負担が大きい」か?いやー、それはどうだろう。それは具体的に言えば、一度下がってボールを捌いているが故のゴールまでの遠さ、あるいはタスク量の多さと移動距離による疲労の蓄積、の2つに表れるはずだが、今シーズンのように「相手DFラインとMFラインの中間に陣取ったCMF(シルバとデブライネ)にボールを届けること」が「組み立て」になるような場合には、その指摘は成立し辛いように思われる。

とにかく、転ぶ、滑る、ダフる、フカすと、シルバのトホホフィニッシュを味わいつくした1年でもあった。FWはチャンスを待つだけではなく、スペース作りに参加し、ウィングとCMFはフィニッシュも担うという戦術は来年も続くだろうから、スターリングやザネーの決定力が高まらない限り、シルバの限界がシティの限界になる日々は続くだろう。そうだったとしても、私は一向に構わないが。

http://media.gettyimages.com/photos/david-silva-of-manchester-city-celebrates-scoring-his-sides-first-picture-id679577614?s=594x594

 

ケヴィン・デブライネ

払って良かった100億円。トランジションの王様は、ポジトラでは脅威の反転性能で中央を切り裂き、ネガトラではハーフライン付近でのボール刈り取り機能を発揮。セットオフェンスでは主に右サイドからのクロスでチャンスを量産した。いや、払って良かった100億円。私は毎日巻物に1,000回書き写して中小企業の社長に片っ端から送っています。

ネガトラでも目端が利き、ボールを奪う能力もあるので、実は下記のツイートのようにアンカーを任せるのも有効なのではないかと思われるが、そのためにはもう1人スーパーなCMFが必要なので、実現しない夢かもしれない。

 

 改善点があるとすれば、シーズン15回バーを叩いた決定力か。リーグで5点はいくら何でも少なかった。これで点を取れたら、バロンドールも存外ありえない話ではないと思う。それくらい最大瞬間風速はすごかった。もちろんシーズン通して良かったんだけど、すごいときは本当に、カカーとベッカム足しっ放しのような威力であった。レアルに行きたいとか言い出しませんように。

West Ham United v Manchester City - The Emirates FA Cup Third Round : ニュース写真

 

ヘスス・ナバス

やたらと成長を謳う組織にろくなやつはいないと相場が決まっているが、それでも選手が弱点を克服していく過程を見るのは楽しいものだ。オタメンディはシャチのようにビタンビタン転がらなくなったし、アグエロは守備でもインテンシブな選手になったし、スターリングはラストパスが上手になった。アンダルシアのクロスマシーン、もといCK獲得マシーンも、クロスを相手にぶち当てる機会が減ったと思う。ニアに転がすクロスを覚えて、もはやただのCKを獲る機械ではなくなってきた気がする。気がするだけだが。

一方、ウィングはライン際で1on1を制する専門職と位置付けられているグアルディオラのサッカーにおいて、そもそも相手を抜く能力が高くないナバスは最後まで信頼を得られず。むしろ最初のチェルシー戦のようなWBや、シーズン後半に担当したSBの方が能力には合っていた。SBではかわいそうなくらいバタバタしていたが、鈍足揃いのDF陣の中で1人だけ飛び抜けて足が速いので、起用の収支としてはそんなに悪くなかったと思う。

なお、今年で退団。病気かと思うくらいシュートを打たない人だったが、13/14のフラム戦やカーディフ戦のように、苦しい試合で決めてくれたことを覚えている。アディオス、ジーザス。

http://media.gettyimages.com/photos/ilkay-gundogan-of-manchester-city-is-congratulated-by-teammates-after-picture-id620291490?s=594x594

 

ラヒーム・スターリング

萎れたパイナップルみたいな髪型と頬髭をやめたのが良かったのではないか。縦への仕掛けを覚えて加速力を活かせるようになり、相手の足の隙間をグラウンダーでニアに通すクロスも効果が高かった。チャンスを作る能力は相当に向上していて、シーズン通しての貢献度はシルバとデブライネに次ぐ程度のものがあったように思われる。

あとは、シュートだわな。シルバと並ぶトホホフィニッシュが改善されればもう一段高いレベルの選手になれるのだが、ファーに強いシュートが打てないのが元凶だと思う。蹴球計画の記事にもあるように、ファーがあるからニアも抜けるんだけど、スターリングの場合はGKを抜くか、フェイントで体勢を崩して足元を抜くかしかないんですね。体勢を整えた状態のGKを破れない。横から当たられた際のハンドオフ技術は大分良くなってきた気がするので、シュートがきちんと打てれば鬼に金棒だと思う。アーセナル戦の左足ゴールは、今シーズンのマイベスト候補。

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リロイ・ザネー

父親が元セネガル代表、母親が新体操ロス五輪の銅メダリスト。親父さん、現役のときは100m10秒8で走ったらしいよ。そりゃビリージョーンズやヤンマートがしばき倒されるわけだわ。

年末までは右サイドで出たり出なかったり、抜けたり抜けなかったりでモノになるには相当に時間が掛かりそうだったが、左に移ってからは相手の右サイドをひたすらにしばき倒していた。ただ、強いショットが打てる割には得点力が高くないのが惜しいところで、インサイドでのポジショニングとか、シュート時のバカ正直さとか、改善してもらいたい点も多いのだった。多分その辺が、サンチェスとか欲しがってる理由だと思う。まあ、まだ若いからね。

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ノリート

髭面のノリさん。他人を祝う能力はプレミア随一。やけに賑やかなやつだなと思っていたら、終いにはイアナチョにキスまでし始め、あのまま放っておいたら公衆の面前でBくらいは行ってしまったかもしれない。その辺りが恐らく干された理由ではないか。

というくらい、バルサを蹴ってまで来た割にはえらい干されっぷりだった。まあ、バルサに行っても干されはしただろうが。あとはすぐキレるのも良くなかったのかもしれない。1シーズンだけでスペインに帰ってしまうだろうというもっぱらの噂である。イギリス暮らしにも慣れてなかったみたいだし。面白いやつではあったんだが。

 Manchester United v Manchester City - Premier League : ニュース写真

 

FW

ケレチ・イアナチョ

人を呪わばイヘ穴チョ。2年前から言ってるんだけど、全然流行りませんね。

昨年終わりのレビューで、私は彼について「中堅以上の相手には、どこが通用しているんだかさっぱりわからないが、とりあえず点は取っている」と書いた。点が取れなくなるとどうなるか、というのが、今年のイアナチョだったと言えよう。

出場時間当たりで見ればそこそこ点は取っているのだが、とにかくボールを受けてはミス、パスを出してはミスの繰り返しで、いつ見ても1人だけチームから浮いていた。本人の代理人は「出場時間が短すぎる」と言っていたが、時間増やされても余計浮くだけだったと思う。最初のマンチェスター・ダービーみたいに、降りてきてボールもらうところまではうまいんだけどねえ。もらうまでは。

移籍が噂されているが、それもまあ当然、とくに競争相手がアグエロとジェズスとあっては・・・という気持ちと、一応は生え抜き*4で若いのだから、もう少しありがたみを感じていたいという気持ちと。

Hull City v Manchester City - Premier League : ニュース写真

 

セルヒオ・アグエロ

あえて乱暴に言うと、我々はアグエロにビビっていたのだ。我々というのは、シティのファン、ブロガー、シティ寄りのジャーナリスト*5、クラブ関係者、オーナー、それに監督のマンチョとペレグリーニも含めた、みんな。アグエロがイージーなシチュエーションを割とよく外すとか、守備の局面で集中力が続かないとかいうのは皆薄々わかっていたが、マンチョもペラーズも正面切って指摘はしなかった。なんだかんだ言っても結局シーズン30点近くは取ってくれるわけだし、下手に機嫌を損ねて「レアルに行きたい」とか言われたら困るからである。

それを守備をしろとか、もっとサイドに流れてスペースを作れとか、ライバルになりそうなFWを連れてくるとか、正面切って明確に色々と要求したのはグアルディオラが初めてであったのではないか。結果としては、苦手なタスクが増え、ゴールから遠い位置での仕事も多くなったため、3月以降の好調(17試合14得点)までは今ひとつ煮え切らないシーズンが続いた。ジェズスにスタメンを奪われたりとか。それでも最終的にシーズン33点まで持ってくるのは流石だと思う。戦術的に合う合わないはあれど、33得点取ることの勝ち点への寄与率は相当に高いだろうから。また最後の数試合は弱点だったポストプレーの確実性、持ちすぎ症候群、ボールロスト時の反応といった面でも進歩を見せていたので、来シーズンはより進化したアグエロを見られることを期待したい。

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ガブリエウ・ジェズス

私ほど若手選手を見る目がある人間はいないというのが業界通の間での一致した見解だが、その慧眼はガブリエウ・ジェズスについても如何なく発揮されたと言えよう。まずブラジル人。ブラジル人である。これは大きなハードルですよ。ご案内の通り、南米人がイングランドに順応するのは大変である。寒いし、相手はデカイし、荒っぽいし。それにフォワード。我々はマリオ・ジャルデウやアフォンソ・アウベスがどうなったのかを忘れたわけではない。おまけに、どうやらロビーニョ2世だとか、ロナウド2世だとか、なんだとか。チャカチャカしたドリブルとハーフライン付近での(とくに意味はない)ヒールリフトが得意に決まっている。いかにも失敗しそうな雰囲気が漂っている。ニウマールに毛が生えたようなやつだったらどうしよう。

 

で、結果は9試合で6得点、ほぼ90分に1回ゴール。はい。しかも、得点力自体はアグエロに及ばないかもしれないが、どちらがチーム全体を機能させているかと言えばたぶんジェズスの方。やはり外形情報から先入観を持つのは良くなかったですね。1トップだけではなくウィングにも適応性を見せており、来年への期待は高まるばかりである。怪我には気をつけてほしい。

Manchester City v Swansea City - Premier League : ニュース写真

*1:アグエロの次に点取ったのが、スターリングの10点

*2:先月のFootballista参照

*3:マタは4.1試合に1点、アザールは3.5試合に1点、ジェラードは3.8試合に1点、エリクセンは4.1試合に1点

*4:17歳で引き抜いてきて即デビューさせた選手を「生え抜き」と呼ぶべきなのかどうかは議論があるところだが

*5:基本的には、Manchester Evening Newsの面々