2016 ジロ・ディタリア チーム別レビュウ
またの名をジロ・デ・イタリア。
採点基準
5:期待を大きく超える好成績
4:期待通りの成績
3:可もなく不可もなく。期待通りと言うほど良くも無い
2:期待にそぐわない。不満
1:評価ポイントに乏しい。明確な失望。
■AG2R La Mondiale アージェードゥーゼル:1
全く印象無し。ポッツォヴィーヴォとペローの総合2枚看板に、クライマーとルーラー勢を揃えて総合トップ5辺りを狙っていたと思うのだが、ペローは第3ステージで早々にリタイアするわ、ポッツォヴィーヴォも早い段階で遅れるわで良いところが無かった。むしろアシストのユベール・デュポンの方が順位が良かった(デュポン11位、トッポジージョ20位)という。
■Astana アスタナ:5
やったぜニバリ大先生。ほんとラスト3日までは良いとこ2点くらいの苦戦が続いていたが、最後まで勝負を諦めなかった恐怖のアタック精神と、盤石のアシスト陣が最終盤で効き、最近の何やっても上手くいかない流れをひっくり返した。
フルームのTT、キンタナの山と比べると、ニバリはどの面でも1位とは言い難いのかと思っていたが(下りを除けば)、少しでも隙を見せると喉元喰いつかれる獰猛さと判断力は抜けているかも。ていうか、あれ「リーダージャージが落車で遅れる」って事態だったけど、待たなくてよかったんですかね。
山岳で敵チームのアシストをズタズタにしたスカルポーニおじさん、傍でニバリを支えたフールサン、山岳前待ち作戦で猛威をふるったカンゲルトと自慢のアシスト陣も強さを見せた。見てないけど、多分コージャタイエフとかゼイツとかその辺も頑張ったんだよね。多分ね。ていうか、この2人って一応アジア人だけど、アスタナのアシストを普通に努めてるって、めっちゃ強くね?
■BMC Racing team ビーエムシー:3
エースがセンニ。誰だ。調べたらまだ24歳のイタリア人クライマーとのことで、一応エースには立ったものの目立つ活躍は特になし。
「とりあえずダニエル・オスがめっちゃ逃げる」という作戦だったと思われるが、そのオスが中間スプリント賞と逃げ賞、なるジロ特有の賞を2つゲット。まあジルベールもGVAもポートもTJもサムエル・サンチェスもいない中では、及第点ではなかろうか。あとアタプマが最後の山の日にマッドマックス怒りの山登りを見せていた。あんなにインターバル走みたいなペースの上げ方、大丈夫なんだろうか。
■Cannondale キャノンデール:2
移籍してきたウランがエースで臨んだが、ちょっと残念。まあ戦力的にもやっぱり厳しいんだが・・・。
ウランは11分遅れの7位に沈み、ステージ勝利も無し。モゼールが勝利目前でブランビッラ&トレンティンのエティックスコンビにしてやられたのが悔やまれる。期待されながら伸び悩んでいたモゼールが復調気味っぽいのは好材料だが。あとドンブロウスキーも山で逃げて、惜しいところまでは行った。
■Dimension Data ディメンション・データ:3
ワールドチームに昇格して初のグランツール、しかもカヴ一家は揃って不在であったとはいえ、存在感は薄く、これは落第・・・と思ったけど、シウツォウが10位には入ったのか。元スカイのベラルーシ人。キリエンカと同じく、地味だが大体何でも出来る人。
あとは、南ア人のファン・ジルが序盤のステージであわやの逃げを打って奮闘。フライレも第5ステージで離脱はしたが、1日山岳賞着たので、まあ3としておこう。
■Etixx-Quick Step エティックス・クイックステップ:5
クラシックとスプリントのチームだと思っていたが、総合も山岳も大暴れ。やりたい放題の楽しいジロとなった。
まずはキッテルが圧倒的な力で2連勝してマリアローザ。ゴリラ以下他のスプリンターを子供扱い。キッテルが疲れたとか何とかで帰った後は、ユンゲルス、ブランビッラとマリアローザをリレーし、ユンゲルスが若手賞(マリアビアンカ)、ブランビッラとトレンティンが1勝ずつの計4勝。これ以上望むことありませんぜ。
ユンゲルスは山岳でいくばくか遅れたものの、短い山なら十分にやれることを証明。キッテル列車のラスト10km牽引エンジンとしても素晴らしかった。
ブランビッラは総合エースこそ厳しいが、アップダウンへの対応に高速ダウンヒルを持ち合わせる便利な男。同じく便利なトレンティンも、キッテルの発射台に、無賃乗車からの安定したスプリント上位顔出しに、ブランビッラ救出隊にと大活躍した。
まあ強いて言えば、グランツール対応しようと思うと(マルティンを除けば)今回のメンバーが恐らくほぼベストで、ツールやブエルタの連戦になると、さすがに力が落ちてきそう。シュティバルはともかく、ボーネンやテルプストラを連れて行っても、さして何かしてくれそうな気がしないんだが。まあさすがにそこら辺は仕方あるまい。
■FDJ エフデジ:1
デマールがエースながらいろんなタイプをバラバラと散りばめて臨んだ結果、とくに何もできず。デマールは2位こそ2回ながら、キッテルとグライペルに歯が立たず、フィッシャーとクルテイユが1回逃げていたような、それくらい。昨年総合9位のジェニエスも早々にリタイア。切ない。
■IAM Cycling イアム・サイクリング:4
大会中にチーム解散が決定するという苦境に立たされるも、クルーゲが意地の1勝。ハウッスラーか誰かを牽いてたら思わず前空いちゃいましたのラッキーパンチだが、勝てば官軍だからな。あとは、TTステージでブレンドレとラエンゲンが2位・3位。戦力を考えれば満足といってよいのではなかろうか。
■Lampre-Merida ランプレ・メリダ:4
イタリア最強のパンチャー・・・・と言っていいんだと思うけど、ウリッシがステージ2勝。モドロは昨年の再現こそならなかったが、ポイント賞3位。全体的に昨期ほどの大成功ではなかったものの、地元のレースでしっかり結果を残すのは偉い。期待の若手モホリッチは、何回か逃げていた。
■Lotto-Soudal ロット・スーダル:5
ゴリラが3つでゴリラ・ゴリラ・ゴリラ。ニシローランドゴリラの学名ではない。グライペルは貫録のステージ3勝。さらにウェレンスも1勝と山岳賞ジャージ3日。大成功。
ゴリラはポイント賞ジャージを捨ててさっさと帰ってしまってやや顰蹙を買ったが、チーム力含め、ド平地でさえ無ければ最強であることを見せつけた。ニッツォーロ、本当に立場ないよな。
ゴリラを支えるアシストも、ルーランツ、ヴァネンデール、リヒトハートとかきちんと列車が組めるし、ドゥビーとかアタックできるし、層が厚い。
■Movistar Team モビスター・チーム:4
お、バルベルデは力を温存か・・・まあユンゲルス辺りは山で遅れるだろうしな・・・あれ、2分差?大丈夫・・・?あれ?クイーンステージ、あれ?あの、3分差。あの、マリアローザ、厳しくないですか。あれ?
と思ったら「いや~今回の目標はステージ勝利と総合3位以内だからね~順調だわ~順調順調~」でずっこけた。いや、まあ、偉業だし、それでいいなら良いんだが。ああそうですかみたいな。ということで、バルベルデさんが3位にアマドールが8位、1日マリアローザ着用という成功ながら、4としておく。それにしても、最終日でささっとクライシュヴァイクを交わして3位に滑り込むバルベルデさんはさすがだよな。あとヴィスコンティは相変わらず色々と仕掛けていた。
■Orica-GreenEDGE オリカ・グリーンエッジ:5
チャベスが総合2位。最後にニバリに置いて行かれなかったら優勝だったが、さすがにそこまでは苦しいか。元々がクライシュヴァイクの失速によって得た1位だったので、そこまで失望も無かった。
チャベスをエースに立てつつ、平坦ステージではユワンとメズゲツで勝利を狙うという体制は、後者2人が1勝も出来ないままリタイアしたことで半分は失敗。それでもチュルカ、プラサのおっさん2人以外にまともに登れる選手がいない中、2位に食い込んだチャベスは偉い。来年辺り、一回イェーツ兄弟と一緒に出してみたらジロかブエルタの優勝は射程距離内かもしれない。
■Giant-Alpecin ジャイアント・アルペシン:3
「優勝狙ってないよ」「いや嘘つけ」のやり取りがうっとうしかったドゥムランのTTステージ勝利とマリアローザ着用(6日間)、予想外の最終日スプリント勝利(ニキアス・アルント)となれば、まあ3点以下を付けるわけにはいくまい。ドゥムラン以外の印象はほとんどなかったが。ルドヴィクソンが序盤若手賞争いで頑張っていたくらいか。
■Team Katusha チーム・カチューシャ:3
ザカーリンをエースに据え、ロシア人8人とエストニア人1人の旧ソ組で総合に挑んだ今回。落車さえなければザカーリンのトップ5は固かったのだが・・・。雨中のTTでの落車に続き、雪積もるチマコッピで大事故からのリタイア。ほとんど死にかけていた。
それでもターラマエが逃げから意地の一勝。ダニ・モレーノとトロフィモフが抜けて山岳アシストが弱体化したカチューシャだが、ターラマエはやはり頼りになった。
あとあのー、スカパーもチクリッシモも、「ツァテヴィック」はまだ許しても、「ツァテヴィツク」はねえだろ。何だよ「ツク」って。カタカナの国から来たのか。
■LottNL-Jumbo ロットNL・ユンボ:4
実際、弱小ロットからしたら大成功だ。チャリンギのおっさんが地元で山岳賞を着用し、クライシュヴァイクは優勝目前まで迫る大躍進で最終的に4位。さらに無名のログリッチが2つのTTステージで1位と2位。去年ワールドツアー2勝のチームからしたら大成功で間違いは無い。クライシュヴァイクにしても、ヘーシンクとケルデルマン不在の状況でこれだ。
相当頑張った・・・・にも拘らず5点がつけ難いのは、名門復活への最大最高のチャンスを逃してしまったから。VeloNewsの妄想記事にもあったが、今回のジロはオランダ自転車界の歴史を変え得るチャンスだった。妄想に付き合いすぎるのもなんだが、今回優勝していれば、スポンサーの拡大に、ドゥムランをはじめとする戦力補強もしちゃったり何かして、オランダ自転車界も相当に盛り上がったかも。せめて、ヘーシンクかケルデルマン、どちらかだけでもメンバーにいればねえ・・・もともとはホフラントのスプリントメインで来ていただろうが、少々悔やまれる結果となった。
■Team Sky チーム・スカイ:2
ランダの総合とヴィヴィアーニのスプリント、両翼で臨んだらランダは腹痛いとか言いだすし、ヴィヴィアーニはタイムアウトになるし。ロッシュやエナオ弟もぱっとせず、大失敗かと思われたが、ニエベがステージ勝利+逆転で山岳賞を勝ち取り、何とか格好は付けた。
今回休んだメンバーだけでもフルーム、トーマス、エナオ兄、スタナード、ロウ、ケノー、クフャトコフスキ、ケーニッヒ、キリエンカ、プールス・・・とほとんどオールスターなので、今回は大してやる気だして無かったのかもしれんが、それでも悪の軍団にしては最低限とも言えない結果と言わざるを得まい。
■Tinkoff ティンコフ:3
マイカだけだもんな。ロヴニーとか、ポリャンスキとか、ボアーロとか、当然頑張ってはいたんだが、他の総合上位クラスと比べるとアシスト陣が少々見劣りするのは否めない状況で、マイカはよく頑張っての5位。
ヘシェダルで総合、ニッツォーロでスプリントの2正面作戦だったが、ヘシェダルは胃腸炎であえなくリタイア。「悪夢だった」とか言ってたね。カンチェラーラも体調不良でリタイアするし、ニッツォーロはキッテルやグライペル、ユワンたちが次々リタイアしたことでの棚ボタポイント賞だし、どうなのよこれ感あるジロであった。
最終ステージ、ついにニッツォーロが勝ったかと思いきや、まさかの斜行で降格。今年も1つも勝てずにポイント賞。百円貯金でTVを買うというか、城の周りでスライム倒してレベル99というか。
(以下プロコンチネンタルチーム)
■Willier Triestina-Southeast ウィリエール・トリエスティーナ=サウスイースト:2
ポッツァートは何回か惜しいところに絡んだものの、1勝もできず。クルーゲに負けたステージが一番惜しかったか。あとズパはちょいちょい逃げで頑張ってはいた。
■Barding CSF バルディアーニ:4
ピラッツィの怪しいアシストを受けた若干21歳のチッコーネがステージ勝利。去年勝ったボエムもいるし、パンチャーとしては相当有能なコルブレッリもいるし、ピラッツィはジロ山岳賞取ったことがあるし、これくらい揃ってないとプロコンチも戦えないとはさすがヨーロッパ。
■Gazprom-RusVelo ガスプロム・ルスヴェロ:4
ロシア人100%。もともとはカチューシャの下部チームだとかなんとか。エースのコロブネフはいまいちだったが、若手のフォリフォロフが山岳TTでニバリもクライシュヴァイクもバルベルデも蹴散らしてのステージ優勝。ロシアはほんと、お前誰?みたいなやつがごっつ強くて侮れない。
■Nippo-Vini Fantini ニッポ=ヴィーニ・ファンティーニ:3
山本元喜のブログで確実にファンが増えたであろう伊日混成チーム。山本はスポンサー絡みの出場なのか、「とにかく頼むから完走だけはしてくれ」と懇願されたらしいが、堂々たる走りっぷりではなかったでしょうか。本人も言うように後半は大して仕事もしていなかったが、まあ逃げは乗ったし。
チームとしては、クネゴの山岳賞を最後の最後で守り切れず。とは言え、クネゴ以外に対して登れる選手がいたわけでもなく、頑張った部類だと思う。グレガ先生はかっこいい。