2016シーズン ニワカと学ぶUCIワールドチーム・プレビュウ vol.1

◆オリカ・グリーンエッジ Orica GreenEDGE

 

若くて明るい、スプリントとTTTのチームという印象。2015年の主な勝利は、インピーがダウンアンダーのポイント賞、パリ~ニース第3でマシューズ。
あとジロ、スイスでも1勝ずつ、アルバジーニがロマンディで2勝、チャべスがブエルタで2勝。途中までリーダー。

イェーツ兄弟がドーフィネの新人賞とサンセバスチャン1勝。どっちがどっちかはよくわからない。そしてユワンがブエルタ1勝にアジアで勝ちまくり。

まあまあの成績だったのではないでしょうか。とくにチャべスとユワン、イェーツ兄弟が成長。ゲランスが怪我ばっかしてたのは残念。

  

 

今年は上れるおっさん、チュルカとプラサを補強。プラサは去年カムバック賞的な活躍。あとジャイアントでトレイン要因をしていたメズゲッツ。
今年の目標はイェーツ兄弟とチャべスの総合順位を上げつつ、スプリント系でステージ勝利を重ねていく感じかな・・・と思ったところで、早々にダウンアンダーで大爆発。
ゲランスがステージ2つと総合優勝、ユワンも2勝。ぶりぶりマシューズくんもパリ~ニースで2勝にポイント賞もゲットで幸先は宜しい。 

http://media.gettyimages.com/photos/australian-cyclist-caleb-ewan-of-orica-greenedge-celebrates-on-stage-picture-id505590850

マシューズは登れるので、サガンがいなけりゃグランツールのポイント賞も狙えるかも。いなけりゃだが。ユワンにはかつてのカヴェンディッシュのように爆発してほしいところ。

 

マイケル・マシューズ オーストラリア パンチャー 

若手のポップシンガーっぽい(バカっぽい)笑顔が特徴。いつ見ても歯が輝いている。あだ名は「Bling(キラ☆キラ)」。親父に付けられたらしい。親父、毒あるな。

スプリントのあるパンチャーといった風情で、アルデンヌ系クラシックでは優勝候補の一人。グランツールでも結構ステージを勝っている。

 

サイモン・ゲランス オーストラリア パンチャー 

ジルベールらと並ぶパンチャー界の第一人者。リエージュ~バストーニュ~リエージュ、ミラノ~サンレモという二つのモニュメント制覇に加え、2014年には世界選手権でも2位に入った。坂にも強いしスプリントもできる。謎の落車癖が惜しいところ。ジャガイモみたいな頭をしている。

 

サイモン・イェーツ イギリス オールラウンダー 

双子のイェーツ兄弟の片っぽ。もう一人のアダムとともにイギリスの次代を担う選手として期待されているが、どっちがどっちなのかは全く判らない。トラック競技ではすでに世界チャンピオンになっているが、今年はロードでもバスク1周で5位、ツール・ド・ロマンディで6位、クリテリウム・ド・ドーフィネで5位と、ステージレースでの才能を開花させている。双子なのでどうしてもスカイラブハリケーン的な技を期待してしまうのだが、来年は何か編み出してくれないだろうか。

 

  

◆イアム IAM

http://media.gettyimages.com/photos/cycling-cross-the-finish-line-during-stage-nine-of-the-2015-tour-de-picture-id480509108

地味。あんまり書くことが無い・・・。まあワールドツアー1年目だから仕方ないが。ワールドツアー勝利はペルッキの2回のみ。マティアス・フランクは頑張っていた。


今年はティンコフのツァウクが加入。なんとロンバルディアを勝ったことがあるらしい。一方でシャヴァネルライヒェンバッハが離脱。戦力的には後者の方が痛い気がするが、シャヴァネル離脱で露出は減ってしまいそうだ。

 

 

 

あとオリカから来たハワードはスプリンターらしい。Ciclissimoの名鑑によるとペルッキは「今年はグライペルやキッテルにも勝てる」との意気込み。

まじですか。まあハウッスラーはいるが・・・

あとブレンドレ、コッペルの2人は、TT強い。目標はフランクのグランツールトップ10入り・・・を狙いつつ、ペルッキで何回か、と言う感じか。

 

 

 

◆ランプレ・メリダ Lampre Merida

 

予算規模最小、と言いながら、去年はジロでポランツ、ウリッシ、モドロで4勝。プラサおじさんがツールブエルタで逃げて1勝ずつ、オリヴェイラブエルタで1勝。ルイ・コスタUCIポイントトップ10に入っており、大成功だったのでは。

 今年はプラサがオリカ、オリヴェイラがモビスターに去ったが、ルイ・マインティースとモホリッチ、新城が加入。

 

 マインティースは去年ろくなアシストがいないクベカでブエルタ10位、まだ24歳なので将来有望な総合ライダーである。あとベラルーシ人のコシェヴォイはどっかで頑張ってた気がする。カリフォルニアか?ブエルタかもしれない。

 

今年もポランツウリッシのパンチャーコンビに、モドロのスプリントでそこそこ勝利が狙えるのではと思うけど、一応のエースであるルイ・コスタがどうにも煮え切らない。

グランツール狙いは大失敗に終わったので、クラシックなりステージレースなりを狙う方が良いと思うのだが、エースの目標がそこというのは、ちょっとどうなん、みたいな。

マインティースの成長待ちか。グランツールではかき回してくれるだろう。あと新城は可哀想だった。早期回復を祈る。

 

 

◆エティックス・クイックステップ Etixx Quick-Step

豪華タレント揃えて4年連続ワールドチーム最多勝。なのだけど、なのだけど、なんか失敗感。3vs1でスタナードに一蹴されたりとか。テルプストラの2位ハンターぶりとか。存在感激薄なカヴェンディッシュとか。ボーネン何しにジロに来たん事件とか。
要するに、本来のフィールドであるべき北のクラシックで「数的優位いけるやん!」→「あぁ~」を繰り返しているからである。

 

結局大きな勝利はアムステルのクフャトコフスキ、ジロのケイセ、TDFの3勝くらいでしょうか。まあ3勝って凄いことなんだけど。ちなみにシュティバル、マルティン、カヴェンディッシュ
今までボーネンというスーパーパワーがいたからこその精鋭軍団だったのだが、北のクラシックは何ぼ良い選手を揃えても最後はエースの力次第なところが大きいので、ボーネンが衰えてしまうと一気に烏合の衆状態ちゅうことであろう。


今年はカヴェンディッシュ、クフャトコフスキ、ウランと、スプリント、アルデンヌ、総合のエースがそれぞれ抜けた一方で、スプリントは元世界最強キッテルと、神童ガビリアに、ランプレのリケーゼ、アルデンヌはダン・マーティンを補強。あとはルクセンブルクのユンゲルス。

 ということで、総合はやる気なしで思いっきりクラシックとスプリントに振った編成だと思われる。さすがにマーティンで総合はきつかろう。

カヴェンディッシュは明らかに衰えが来ていたので、多分スプリントは戦力アップ。良くも悪くも個人で頑張れのチームなので、誰が列車を組んでくれるのか定かではないが。ガビリア、メールスマン、トレンティンでやるんだろうか。

 

 

また、ミラノ~サンレモは転んでしまったが、ガビリアには期待。すでにカヴ、サガン、ヴィヴィアーニにも勝っている。30近くが全盛期のロードレースで、20代そこそこで勝ちまくるところが観たい。

中東で態度悪すぎ!と怒られたテルプストラと、シュティバルはそれなりに自由にやるんだろう・・・と思っていたら、実は一番組織的に動くのがエティックスだった。シュティバルはそろそろクラシックで大きいタイトルが欲しい。男前だし。マーティンとアラフィリップを揃えたアルデンヌ組も強力。

えー、それであとは、ボーネン大将。衰えに加えて、去年の大怪我もあってさらに苦しくなりそう。本人も辞め時を見失っているような気がするが、やっぱりカッコいいので、最後にもうひと花欲しい。

 

と言ってるそばから、E3ハーレルベーケ、ヘント~ウェヴェルヘムと連続して「数的優位いけるやん」→「ああ~」をやらかした模様。ロンデも勝てず・・・→パリルーベでは失敗し続けていた王道の試合運びがハマり、ボーネン復活の2位。

 

トニー・マルティン ドイツ TTスペシャリスト 

世界選手権のTT部門を3回制している、現代ロードレース界におけるTT第一人者の1人。カンチェラーラがよりクラシック寄りにシフトした後は、実質的に世界最強のクロノマンとして君臨している。元々総合系の選手だったらしくそこそこ登れる上、逃げ切りに加えてアタックも可能。TDFでは殆ど1人TTのような超長距離逃げや、終盤でのアタックなど、TT以外のステージでも勝っている。エラの張った顔とデカイ口が特徴。陸に上がった鯉みたいな顔で爆裂に牽く。 

 

ズデニェク・シュティバル チェコ クラシックスペシャリスト 

シクロクロスの世界チャンピオンに3度輝いた、エティックスの主力の1人。膠着した終盤での鋭いアタックが持ち味で、スプリント力もそこそこある。もう30間近だが、今年はパリ~ルーベで2位、ストラーデ・ビアンケで優勝、ツールでもステージ優勝と勝てるところを見せており、ボーネンカンチェラーラ後の新たなクラシック王になれる存在ではなかろうか・・・と思っていたけど厳しそう。

 

 

ニキ・テルプストラ オランダ クラシック・スペシャリスト 

オランダの逃げ番長。パリ~ルーベで優勝1回、3位1回、ロンド・ファン・フラーンデレンでも2位1回と、北のクラシックにはめっぽう強い、クラシックの第一人者。スプリント力は無いが、とにかく終盤での長めのアタックに強い。一方で逃げたはいいけどその後の判断が煮え切らず、結局優勝を逃すシーンもあったりして、この辺は長年トム・ボーネンという絶対的エースを奉じてきた影響かもしれない。

http://media.gettyimages.com/photos/race-winner-niki-terpstra-of-the-netherlands-and-etixx-quickstep-to-picture-id463348180

 

ダニエル・マーティン アイルランド パンチャー 

すっごい眠たそうな目が特徴。リエージュ~バストーニュ~リエージュジロ・ディ・ロンバルディアという二つのモニュメントを制した名パンチャー。上り坂でのアタックにはめちゃめちゃ強い。グランツールでも1回7位に入ったことはあるのだが、どっちかというとステージ優勝を狙うタイプ。今年はエティックスに移籍ということで、アルデンヌ系クラシックでエースを担うことが期待される。

 

トム・ボーネン ベルギー クラシック・スペシャリスト

世界一自転車好きな国ベルギーのスーパースターであり、北のクラシックの王。それがボーネンである。若い頃から石畳系のクラシックを中心に勝ちまくり、25歳にしてパリ~ルーベ、ロンデ・ファン・フラーンデレン、世界選手権を制覇。その後もTDFのポイント賞、パリ~ルーベ3回、ロンデ2回を筆頭に輝かしい戦績を誇る。一方でコカイン吸ったりスポーツカーで盛大に事故ったり私生活も破天荒なのだが、そこがまたベルギー人の琴線にはビンビン来るらしい。

見た目は192cmの長身に長い手足、ゴツい身体の男前。手袋してても手の皮がずるむけるという石畳を素手で乗りこなす変態でもある。終生のライバル、カンチェッラーラより早く衰えが来てしまい、ここ3年はクラシックでは不発気味、グランツールでは何しに来たかよくわからんまま途中リタイアが続いているので、2016年はもうひと花咲かせてほしいところ・・・だが、2016年も、ロンデまではやはり厳しい戦いが続いている。2015年の秋に頭蓋骨骨折の大怪我を負ってしまったのも響いているのだろうか。男36歳、華やかな死に場所を見つけてほしいところ。

 

マッテオ・トレンティン イタリア スプリンター

ロードレース界で最もジブリの脇役キャラっぽい顔の男。マンマユート団にいそう。スプリンターだが、そこそこ坂も登れてアタック上手。エティックスの中では脇役だが、これまでTDFでステージ2勝を挙げている。ボーネン大将の衰えでめっぽう勝負弱くなってしまった最近のエティックスでは、実は一番頼れる気がするというか、気が付くと一番良い順位で入っていたりする。

 

フェルナンド・ガビリア コロンビア スプリンター

まだ21歳だが、トラック競技では既に世界の第一人者。オムニアム(6種競技)では2年連続で世界選手権を制し、 あのカヴェンディッシュを子供扱いするレベルだとか。ロードでも既にサンルイで計4勝、ブリテンで1勝、ティレーノ~アドリアティコで1勝。カヴェンディッシュサガン、ヴィヴィアーニといった一流のスプリンターを降して勝ったということで、すでにモニュメントの優勝候補に名前が挙がるレベルである。ボーネン曰く自転車乗ってないときは無口だしそもそもスペイン語しか喋れないしでショボい若造だけど、自転車に乗るとすごい、とのこと。顔はどことなく恐竜っぽい。

 

 

◆モビスター Movistar Team

バルベルデさんとゆかいな仲間達は年間通してフィーバー。見事チームランキング1位を取りましたとさ。
バルベルデさんはカタルーニャで3勝、ワロンヌとLBL連覇、TDF3位にブエルタ1勝とポイント賞。ロンバルディアと世界選でも上位にいたし、いつ見てもいいところに入っている。ほんとタフだなあ。
そして相変わらずセコかった。ブエルタホアキン激おこ。

 

それ以外もキンタナ村長がTDF2位とティレーノ~アドリアティコ優勝、マローリも1勝、ヴィスコンティがジロ山岳賞に、ベニャトがジロ1勝。
ヴィスコンティはクライマーじゃないので後半めっちゃ遅れていたが、コンタとアスタナの駆け引きの結果、すんごい棚ボタで山岳賞を獲った。ユンボのクライシュヴァイク可哀想。
TTが弱い印象があったんだけど、いつの間にかチームTTがすげー強いチームになっていた。マローリ、カストロビエホ、ダウセットと各国のTTチャンプを揃えた甲斐があったというもの。


今年はホアキンと喧嘩別れしたダニ・モレーノ、AG2Rをクビになったベタンクール、ランプレのオリヴェイラが加入。ベニャトがスカイに行ってしまったのは痛いけど、モレーノとベタンクールがきっちり働いてくれれば埋まるだろう。前者はおっさんだし、後者は気まぐれなので不安はあるけど。

 

マローリが大怪我してしまった部分は、ポルトガルTTチャンピオンだというオリヴェイラに期待したいところ。そして今年こそは村長でTDFを獲りたい。スカイのアシストは激つよぷんぷん丸だが、こっちもアナコナとアマドールが成長、イサギーレ兄弟もいて、山岳では十分戦える。横風で遅れなければ何とかなるはず。ていうか毎年横風で遅れすぎなのでは。

 

 あとバルベルデさんがどの程度五輪に力を入れるか。今年はジロにも出るとのことなので、さすがにこの人と言えど、北のクラシック出て、アルデンヌ出て、ジロ出て五輪出てTDFは無理なのではないかと心配してしまうが。

 

 ということでグランツール3つの総合を最大の目標に、アルデンヌ系も狙っていく形になりそう。スプリントチームはロバトとロハス。キャラが良くわからない。ロバトは結構登れるんだっけか。あとは、バルベルデさんの後継だよなあ。いや、村長はまあいるんだが。スペイン的に1人は育てておかないと、コンタとホアキンもそのうちいなくなるし。イサギーレ弟とかフェルナンデスがもう一段突き抜けてほしいところ。

 

ナイロ・キンタナ コロンビア クライマー

「ファンタスティック4」の中でも山岳での登坂力は最強と目されるコロンビア人。見た目の圧倒的村育ち感から、日本語のネット上では「村長」と呼ばれている。またお母さんも村っぽいんだこれが。全然知らないので失礼なのだが、貧困に耐えてプロとして成功し、お母さんに家を買ってあげた感が半端無い。

とにかく山に強く、他の選手がペースを落とすような急坂でもアタックを繰り返せる。ファン何とか4の中でも、山岳最強はキンタナ、というのが世界的な認識のようだ。すでにジロでは優勝1回、TDFでは2位2回、ブエルタでも4位に入っており、アルーとともに次世代のグランツールをリードしていく存在と思われる。

 

アレハンドロ・バルベルデ スペイン オールラウンダー 

人呼んで「エル・インバティド(打倒不可能)」。またの名を「バルベルデさん」「バルベルデ師匠」「バ何とかさん」。このあだ名だけで大体キャラがわかりそうだが、めちゃめちゃ強くて年俸も貰っている割に、ポカミスが多い愛すべき男。これまでの罪状としては、

「レインジャケットをチームカーまで返しに行っている間に集団に置いていかれる」

「終盤ホアキン&自分vsニーバリ(vsルイ・コスタ)の状況でニーバリを警戒し過ぎ、ルイ・コスタのアタックを放置してみすみす惨敗」

「山で『もう俺は限界だ』と言い続け、散々若手のピノに前を牽かせ続けて最後の30mでフル加速して先着」などセコいエピソードが並ぶ。

とはいえクラシックからグランツールまで1年を通して活躍できる引き出しの多さとタフさは群を抜いており、とくに総合系ライダーとしては圧倒的にスプリント力があるため、アルデンヌ系クラシックでは最強に近い存在。御年35歳だが、去年のTDFでもエースのキンタナをアシストしてるんだかしてないんだかよくわからない自由な動きで大会を盛り上げた。チャームポイントは苦しいときのげっ歯類顔。

http://media.gettyimages.com/photos/alejandro-valverde-of-spain-and-the-movistar-team-attends-the-2015-picture-id479258336

 

ヨン・イサギーレ スペイン オールラウンダー

兄のゴルカや、インチャウスティとともにバルベルデさんを支える子分3号。ジロのステージ優勝、ツール・ド・ポローニュ総合優勝に加え、国内選手権も制しており、次世代のオールラウンダーとして期待がかかる・・・が兄と一緒にスカイに行くという噂も。

ちなみにエナオのところで言ったように、ロードレース界ではスペイン人の名前をよく「ファミリーネーム+母方の苗字」で呼んでしまうので、Jsportsなんかでも「イサギレインサウスティ」と訳のわからない歯切れ良さで呼ばれるシーンが多々ある。口に出して言いたいスペイン人、イサギレインサウスティ。よさよいinアイスティー!みたいな。

http://media.gettyimages.com/photos/jon-izaguirre-insausti-of-spain-and-the-movistar-team-rides-in-the-picture-id452556038

 

ダニエル・モレーノ スペイン パンチャー/クライマー

カチューシャのエースであるホアキン・ロドリゲスを長年支えてきた右腕。まあ今は仲悪いらしいけど。脚質もホアキンぽい感じで、長い山岳はちときついが、激坂にはめっぽう強い感じ。昔は山にも強かったのかもしれないが、最近見てる感じだと”ファンタスティック4”辺りと本格的に山で競うのはちときつそうである。それでもブエルタでステージ3勝、フレーシュ・ワロンヌでも優勝1回、アシストとしてはこれ以上ない成績。

 

 

◆ロット・スーダル Lotto-Soudal

“ソウダル”ではないっぽい。http://ja.forvo.com/search/soudal/

 去年は総合が不発だったものの、ゴリラ氏がスプリントで勝ちまくった。キッテル不在の中、TDFではカヴェンディッシュサガン、クリストフ、デーゲンコルプ、ブアニ(途中で帰ったけど)といった面子を圧倒。それ以外のワールドツアーでは、エネコでウェレンスが総合優勝、ギャロパンとデビュッシェールが春に1勝ずつ、デクレルクもポローニュで勝ってた。

 

グライペルだけのチームに思っていたが、アルデンヌで頑張っていたウェレンスとか、アタック鋭いルーランツとか、逃げて登れるデヘントとか、石畳系の新星らしいベノートとか、元ベルギー王者デブッシェールとか、このチームの中堅~若手ベルギー人には実力派がいっぱいいる。ヴェルヴァークもか。ルーランツはサンレモも惜しかったし、この辺が一皮むけてビッグタイトルが獲れると万々歳ですな。 

 

 総合は不発に終わったヴァンデンブルックをカチューシャに放出したので、多分全く狙わないのではないか。さすがにギャロパンで総合は無理。いかに嫁が美人だとはいえ・・・

http://media.gettyimages.com/photos/tony-gallopin-of-france-and-team-lotto-belisol-kissing-his-girlfriend-picture-id452097242

ということで、去年と同じくベルギー連中でアルデンヌ中心にクラシックを戦い、グランツールはゴリラのスプリントと、逃げ・アタックでステージ勝利狙い、でしょうね。ヨーロッパツアーならブックマンスもスプリントで勝てるだろう。ステージ勝利なら相当に強力なメンバーが揃っているので、いくつか期待したいところ。

ゴリラのスプリントは、ヘンダーソン、ハンセン、ジーベルクのおっさん3人がきっちり支えてくれるものと思われる。スプリントのトレインが安定していることがこのチームの強み。デブッシェールやバク、リヒトハートも組めるし。

 

アンドレ・グライペル ドイツ スプリンター

カヴェンディッシュ、キッテルらと並ぶ、世界最強のスプリンターの1人。ひたすらにムッキムキなので、あだ名はゴリラ。フレームにもゴリラの絵。TDFの期間中に連載していたブログのタイトルもラ・ガゼット・デュ・ゴリーユ(ゴリラ新聞)。

どっちかというとゴリラと言うよりサイボーグと言うかロボット感があるのだが、その辺はヨーロッパ人との感性の違いだろうか。実績ではカヴェンディッシュに、近年の勢いではキッテルに劣っていたが、2015年のTDFではステージ4勝と大活躍した。その2人と比べるとまだ上りに適応できる方で、春先のクラシックレースにもちょいちょい出てきては謎のアタックを見せたりする。

 

ティム・ウェレンス ベルギー クライマー/パンチャー

1991年生まれとまだまだ若いが、ここ2年で急速に力を伸ばしている坊ちゃん顔。Wikipediaにはクライマーと書いてあるが、ベルギー人らしく逃げやアタック、坂道での抜けだしが得意な印象。去年のフレーシュ・ワロンヌではラスト数キロで抜け出し、あと600mまで粘っていた。 

 

トニー・ギャロパン フランス パンチャー ロット・ソウダル

フランス期待の若手・・・というには大分年齢もいってしまったが、TDFでマイヨ・ジョーヌを1日着たり、世界選手権で6位に入ったりと力はある。総合はきついが、スプリントのチームなので余り求められてはいないようだ。嫁は元フランスチャンピオンだが、めっちゃ美人。ロードレース界の姫。

 

グレッグ・ヘンダーソン NZ ルーラー/アダム・ハンセン オーストラリア ルーラー/マルセル・ジーベルク ドイツ ルーラー/スプリンター

ゴリラことグライペルを支えるおっさんトリオ。今一番安定してトレインを組めるチームな気がする、ロットの大黒柱。全員30代も半ば、ヘンダーソンに至っては今年でもう40歳だが、ひたすらタフに牽いてくれる。しかもまた3人ともデカい(ヘンダーソン181cm、ハンセン186cm、ジーベルク198cm)のが、風除けとしては素晴らしいよな。

http://media.gettyimages.com/photos/adam-hansen-of-australia-and-lottosoudal-crosses-the-finish-line-picture-id481435510

 

ユルヘン・ルーラン ベルギー クラシック・スペシャリスト

タイトルこそ多くないが、RVV(ロンデ・ファン・フラーンデレン)とミラノ~サンレモで3位が一回ずつ、世界選手権でも5位一回。安定して力を発揮できるアタッカー。独走力もあるし、アタックの足も長いし、スプリントもそこそこある。いかにも頼れそうな顔も含めて、グライペルに次ぐ、名門ロットの顔的存在。

http://media.gettyimages.com/photos/jurgen-roelandts-of-belgium-and-lottobelisol-and-andre-greipel-of-picture-id452847534

 

◆アスタナ Astana Pro team

ドーピングの話はうるさいわ、終始内輪でもめているわ、あんまり良い印象が無かった2015年。ジロ2位3位、TDF4位、ブエルタロンバルディア優勝と、グランツール3つ通してみると一番安定して強かったんですけどね。

 

 奇妙なほどに安定して強いアシスト陣と、ニバリ、アル、ランダのトリプルエース、がこのチームの強さだったが、今年はランダがスカイに引っこ抜かれてしまった。もっとも、本人はめちゃめちゃ出たそうにしていたが。ニバリも来期はトレックに移籍するとか。そうなればティラロンゴ爺とか、カタルドとか、アニョーリとか、スカルポーニおじさんとか、あの辺の家臣団もまとめて移籍だろうなあ。若様アルにはローザくんしかいない。

ランダの他にも、地味に頑張っていたターラマエがカチューシャへ。カンゲルトとセットで覚えていたのに。スカイのキリエンカ&シウツォウも、後者がいなくなったり。そういうの、止めてくれませんか。セットで覚えているんです。獲ったのはカペッキ。カペッキ・・・?

 

ニバリとアルをまとめて出せばTDFも獲れそうな気がするが、そうはいかないのが個人競技の難しいところ。ランダが抜けた部分も踏まえて、今年はグランツールタイトル獲れないと予想。ニバリのクラシックと、グアルディーニのスプリントで稼ぐチームになっているかもしれない。上に挙げたアシスト陣は本当に強いのだが。上の面子に加えてフールサン、LLサンチェス@ペドロ・レオンの兄、ボームもいると来たもんだ。

 

ヴィンチェンツォ・ニーバリ イタリア オールラウンダー

TDF、ジロ、ブエルタの全てを制したイタリアのエースであり、「ファンタスティック4」の一人に数えられる男。2014年のTDFではコンタドール、フルームという最大のライバルがリタイアしたこともあるが、2位以下に圧倒的な差をつけて優勝した。登坂力ではフルーム、キンタナに僅かに劣るが、下り坂は速い。

今年のジロでは落車して遅れたところをチームカーに掴まって戻ろうとし、ばれてあえなく失格。その姿はニーバリワープと名が付いたとか。その後もチームが待ってくれなかっただの、そもそもTDFのときからアシストがダメだの、アルが調子こいてるだの、口を開けばしょうもない愚痴ばかり言っている。しかも第2エースであり、子分格だったアルがブエルタで総合優勝。さぞ気まずかろうと思われる。

 

ミケーレ・スカルポーニ イタリア クライマー 

ジロで総合優勝1回、4位3回の実績を持つおっさんクライマー。まあジロの優勝はコンタドールが失格になったからだが。頭髪が物悲しさを感じさせる。ミラノ~サンレモで6位に入ったこともあり、アタックの力もそこそこ。現在はアスタナでニバリの家臣を務めつつ、若手の育成も期待されているようだ。

 

ヤコブ・フールサン デンマーク オールラウンダー アスタナ

TDFで一回7位に入ったことがある実力派。ドーフィネやパリ~ニースのようなステージレースでも大体上位に入ってくる。TTも結構速い。グランツールは厳しいが、アシストとしてはいてくれると大分嬉しい存在。というか、若い頃は総合リーダーとして期待されていた選手だったらしいのだが、シュレック兄弟のアシストをしたり、ニバリのアシストをしたり、、、としているうちに三十路に入ってしまった。日本では「フグルサング」と呼ばれている。

 

ファビオ・アル イタリア オールラウンダー

今年のブエルタで総合優勝。花の90年世代ではキンタナに次ぐグランツール制覇を成し遂げ、ロードレース界の未来を担うと期待される若手。既にジロでも表彰台に2回上っており、来年以降はツールでも見られるかも。アホみたいに動きがダイナミックなのが特徴で、好調時は飛び跳ねるようなフォームで山岳をクリアしていく。外見上のポイントはかつてのロビー・ファウラーを思い出させる鼻孔拡張テープと、死ぬほどデカい口。苦しい時は口がかまぼこ型になるのですぐばれる。

 

タネル・カンゲルト エストニア クライマー 

スカイにはキリエンカ、シウツォウのベラルーシ人アシストコンビがいるが、こちらはエストニア人コンビ。同胞ターラマエとともにニバリ、アルを支える有能アシスト。グランツールで10位近辺に何度か入っており、相当に登れる。コンビで覚えていたのに、もう一人のターラマエはカチューシャへの移籍が決まってしまった。(スカイの方も、シウツォウがディメンションデータへ・・・)

 

キャノンデール Cannondale Pro Cycling

昨シーズンのワールドツアーは結局2勝のみ。カタルーニャのダニエルソンと、ジロのフォルモロ。あとはジロでヘシェダルが意地の5位。終盤の根性はすごかった。そしてナヴァルダウスカスが世界選で3位。

今年はチームの顔だったマーティンとヘシェダルが抜け、代わりにリゴベルト・ウランと新城にアシストされてたピエール・ローラン。だ、大丈夫か。まあ、予算の問題もあるし、前の二人にこれ以上可能性があるかと言うと微妙なところだったが。実績はあってそこそこ若い二人なので、「米国式科学手法」とやらに期待しよう。


その他の新加入は実は結構面白い。NZのTTチャンピオン、べヴィンは今をときめくオリカのユワンにスプリントで勝った逸材とのこと。パリ~ニースのTTでは相当にがんばっていた。ヒンカピーから来たラトヴィア人のスクインシュは去年のカリフォルニアで1勝。しかし、ほんとに「スクインシュ」って発音してるよ。すげーなCiclissimoの名鑑。http://ja.forvo.com/search/Skuji%C5%86%C5%A1/

 そしてダウンアンダー5位のウッズ@元陸上選手、石畳クラシックに強いブレシェル。ジャイアントでデュムランの数少ない山岳アシストを務めていたクラドック。あとリッチーにタイヤ上げてペナルティを誘発してしまったクラーク氏。そろそろエースになりたいタランスキーも含めて、一応グランツール3つでトップ10に入れる素材は揃ったので、そこを目標にしつつナヴァルダウスカスとフォルモロにあれこれ動いてもらう感じだろうか。しかしナヴァは逃げ良し山良しスプリント良し、使い勝手がいいなあ。

  

ピエール・ローラン フランス クライマー キャノンデール

新城幸也がいたユーロップカー(現ディレクトエネルジー)のエースとして、TDFのトップ10が3回、ジロの4位一回。山岳ステージでも2勝。良い選手なんだけど、ちょっとひ弱。顔もそういう感じ。今年はキャノンデールのエースとして期待されている。

 

ラムーナス・ナヴァルダウスカス リトアニア ルーラー

一家に一台、いると役立つ便利屋。TDFとジロでアタックからのステージ勝利が1回ずつに、去年の世界選手権でも銅メダル。スプリントも出来るし、逃げるし、登れるし、そこそこ牽けるしと、ちょこちょこトライさせる分にはめちゃめちゃ便利。あとTTも結構いける。

 

リゴベルト・ウラン コロンビア オールラウンダー 

キンタナに次ぐ、コロンビア旋風第2の男。山にもTTにもそこそこ強く、2013年、14年と連続してジロで準優勝。クラシックに特化してきた名門エティックスがグランツールの総合にも殴り込みをかける上でエースとして期待されていたが、2015年はジロで14位、ツールで42位と大失敗に終わった。ぶっちゃけまともな山岳アシストがいない中では無理じゃねーのという気もするが、GMのルフェーヴルは「まあウランじゃジロの2位が限界かもね」と冷たく、さっさと後任を探し始めていたため、ウラン本人もキャノンデールへの移籍と相成った。

正義感が強いのか、他人に口出ししないではいられない性分なのか、今年のジロでは優勝への賭けよりも確実な表彰台を狙ってきたアスタナのアルーとランダにブチ切れ、走りながら延々と文句を言い続けていた。長い後ろ髪が特徴なので、ヘルメットをかぶっていてもすぐわかる。

 

アンドリュー・タランスキー アメリカ オールラウンダー 

2014年のドーフィネで総合優勝し、グランツールでもトップ10が2回。タメのヴァンガーデレンに次いで、アメリカ人としてはグランツール制覇に最も近い位置にいる。まあ優勝できそうかは置いといて。2日連続で落車し、ボロボロになりながら32分遅れでゴールしてたりして、根性は異様にある。チームメートのヘシェダル譲りなのだろうか。

 

◆チーム ロットNL-ユンボ

ぜんっぜん勝ててなかったが、そもそもあれなんですね。ラボバンクがドーピング禍でスポンサー撤退したからなんですね。ワールドツアーは僅か2勝。グランツールではリンデマンブエルタで勝ったのみ。まあヘーシンクがTDFで6位、クライシュヴァイクがジロ7位と自慢のクライマー軍団はそこそこ頑張った。

チームの顔は悲運のエース、ヘーシンクと、2014年のジロ7位ケルデルマン、北のクラシック3位ハンター、ヴァンマルケ。ちょっと暗いというか、地味な雰囲気が・・・

さらに、資金不足なのか知らないが、ワールドチームからの加入はゼロ。クライマー四天王のひとり、よだれだらだらテンダムがジャイアントに移籍してしまった。大丈夫なんだろうか。テンダムも一応グランツールトップ10レベルの選手なのだが。

ヴァンマルケの今年の春クラシックは、ヘント~ウェヴェルヘム2位、ロンデ3位。頂点が近くて遠いが、まあ来年はカンチェが減りますからな。もうちょっと坂でも独走でもスプリントでも、何か特別な強さが欲しいとこだけど。あと23歳のマイク・トゥニスンは、U23年代のパリ~ルーベ優勝、ロンデ5位、パリ~ツール優勝、シクロクロス世界選優勝と実績十分。

 

 

ロベルト・ヘーシンク オランダ クライマー 

将来のグランツール覇者に!というオランダの期待を若い頃から背負ってきたが、節目節目で不幸に見舞われ、結局スターになり切れなかった苦労人。2008年頃からブエルタで大活躍し、2010年のTDFでは4位に入ったが、同年に事故で父を亡くす。その後も不整脈で手術を受けたり、奥さんの出産が難儀したりと大変な人生を歩んでおり、その間はグランツールでの成績も低迷を続けていた。

今年のツールでは復活の6位。ファンタスティック4+バルベルデを除けば最上位と考えれば、素晴らしい成績と言えよう。ただし、こっから先に行く気もあんまりしないんだよね。

 

ウィルコ・ケルデルマン オランダ オールラウンダー

ヘーシンクとモレマがいまいちグランツールで勝てそうなところまで成長しないうちに、オランダの新星として台頭。2015年はTTのオランダチャンピオンにもなっている。山にも平地にもそこそこ対応でき、2014年は弱冠23歳でジロ7位に入っている。ぱっと見はヘーシンクと全く見分けがつかないのが難点だが、ヘルメットを脱ぐと顔が四角いのでわかる。

 

スティーヴン・クライシュヴァイク オランダ クライマー 

去年のジロでトップ10入りした、オランダ期待のクライマー。ヘーシンクといい、ケルデルマンといい、テンダムといい、モレマ(2014年までロットNL)といい、ロットはこの手の「トップ10は入れるけど・・・」みたいな選手多すぎ。話をジロに戻せば、山岳賞争いにも絡んでいたので、世界のトップレベルとまでは言わずとも、登坂力は相当にある方と言えよう。ちなみにオランダ人名は日本語表記と最高に相性が悪いため、「クルイシュヴィック」「クライシュワイク」「クルイジヴィック」など媒体によって名前が違いすぎ。

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セップ・ヴァンマルケ ベルギー クラシックスペシャリスト 

190cmの仏頂面。北のクラシックでは毎年上位に入ってきており、ボーネンカンチェラーラ引退後のクラシックキング候補ではある。まあその2人に比べると絶望的に華はないけど。彼に限らず、現代のオランダ人とかベルギー人有力ライダーというのは、ボーネンジルベールを除いて、まあ押し並べて華は無い。実力派ということにしておきたい。