2017/18 マンチェスター・シティ シーズンレビュー個人編(後編)

FW

7 ラヒーム・スターリング Raheem STERLING

 昨年の秋、私はスターリングについてこう書いた。「現状から一皮剥けるには、とにかく点を取ること。そうすれば、ロッベンとは言わずとも、ペドロくらいの評価は得られる」と。今シーズンは全コンペティションで23得点、リーグだけでも18点(本当に取るとは思わなかった)。どうでしょうか。評価。

 これだけ点を取りながら、“決定力不足”の揶揄はむしろひどくなっているきらいすらあるが、昨シーズンまでの煮え切らない状態は確実に脱したと言えるのではないか。ファンとしては贔屓目があったものの、「怪我しないウォルコット」と言われれば、まあ確かにそうだなという感もあった。今や失礼ながらウォルコットレベルの選手ではない。すまんな。

 これだけ点を取りながら、依然として大チャンスを逸している場面がいくつも思い浮かぶのは、チームが機能していたことに加え、スターリング本人のポジショニングが相当に上達したことを示していると言えよう。フリーランのタイミングのとり方なんか、異様にうまくなってるもの。また、中央の相手ライン間でボールを受けて反転してからの急加速、右から中央に入ってきてのワンツー等、組み立てから崩しに入る部分での破壊力が年々高まっているのも素晴らしい。弱点は多いし、イライラさせられる選手なのも確かだが、この先5年は主軸を託したい存在である。

https://media.gettyimages.com/photos/raheem-sterling-of-manchester-city-celebrates-after-scoring-his-sides-picture-id881994650

 

16 リロイ・ザネー Leroy SANÉ

 開幕当初は3-1-4-2に居場所を見つけられず控えスタートだったが、4-3-3への回帰とともにスタメン復帰。12アシスト10得点で、見事PFA最優秀選手賞に輝いた。

 何が良いって、まず見た目が宜しいとは思いませんか。184cmの長身で、背筋が伸びたドリブル姿勢。両手の位置も、刀を抜くタイミングを見計らっている剣豪のようで、サンバ踊ってますみたいな逆サイドの相方とは一味違う。

 そして強いシュートが打てる。これは大事ですよ。ナバスもそうだし、スターリングもそうだったが、シュートが打てないウィングというのは最終的に解決策に行き詰まって面白い挙動を示すことが大半であり、全然美しくないのだ。その点ザネーのシュートは、WBA戦の股抜き一直線も、リヴァプール戦の”ショートケーキの上のいちご”も、同じくリヴァプール戦(アウェイ)の居合抜きも、長躯を存分に使った美しさがある。やはりウィングというのはかっこよくて何ぼなのだ。

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 数年経ったらレアル・マドリーに行きますとか言いそうな気がしてならないが、そこは高給でごまかして、なんとか全盛期のベイル並の怪物まで育ってほしいと思っている。私は。

https://media.gettyimages.com/photos/leroy-sane-of-manchester-city-lifts-the-premier-league-trophy-after-picture-id955335948

 

27 ベルナルド・シルバ BERNARDO SILVA

 右ウィング、ニセ9番、中盤センターを状況によってローテーション。とにかく使い勝手が良かったため、レギュラーじゃないのにチーム最多試合出場。まず良かった点としてはここであろう。1年間怪我もなく、実は枚数が不足気味だった前線を埋める存在として、価値は高かった。悪かった点を挙げるとすれば、あんまり突破力がなかったこと。左のザネーはアイソレーションベース、右のスターリングはウォーカー、デ・ブライネとのコンビネーションベースで崩すのがシティの基本形ではあるが、これでベルナルドが右サイドを1人でズタズタに出来るようだと、もっとバラエティも増えたのだが。ラポルトからの対角線パス経路も出来たことだし。実際にはさしてスピードが無いのとプレー選択がコンサバなので、結局周囲と連携した少々まだるっこしい崩しにならざるを得ないのだった。だからマフレズ獲るの獲らないの言ってるんだと思う。

 とは言え、チェルシー戦やアーセナル戦での決勝点など、中盤戦以降は結果も出しているので、来シーズンの更なる飛躍に期待したい。ちなみに、公式YoutubeInstagramでは異様なほどいじられまくっているというかこれ若干のイジメじゃない?という領域に来ているが、本人は常にヘラヘラ笑っていて、エデルソンとはまた違った怖さがある。また違った部位が切除されている。

https://media.gettyimages.com/photos/bernardo-silva-of-manchester-city-celebrates-scoring-his-sides-first-picture-id927151538

https://media.gettyimages.com/photos/benjamin-mendy-of-manchester-city-and-yaya-toure-of-manchester-city-picture-id955373846

 

55 ブラヒム・ディアス Brahim DÍAZ

 プレシーズンマッチレアル・マドリー戦で衝撃的にかっこいいミドルを決めたマラガ生まれのレフティそっくりな妹が4人いる。www.instagram.com 今シーズンは年間を通してトップチームに帯同。中盤までは、CLシャフタール戦でドリブルが通用するところを見せるなど、一定の出番を得ていた。年明け以降は試合の重要度が高まったこともあってか、ベンチにも入れない日々が続いているが、ウィングは質も量も不足しているポジションなので、来シーズンの飛躍に期待したい。まあ、グアルディオラは誰か新しいのを買う気まんまんのようだが。 

https://media.gettyimages.com/photos/aymeric-laporte-and-brahim-diaz-during-a-training-session-at-city-picture-id945855726

 

10 セルヒオ・アグエロ Sergio KUN” AGÜERO

 ペップ・グアルディオラはきっと日本では無能と評されるに違いなく、というのも彼は「らしさ」とか一切考慮することができないのである。“アグエロらしさ”は丸無視。こんなにスターなのに。アグエロらしさというものの流れが間違いなくある中で日本サッカーとしての可能性を考えていきたいのに。

 そんなグアルディオラスタイルを強要された結果、アグエロはより全般的に試合に貢献できるゴールゲッターに進化。守備もサボらなくなったし、崩しへの参加も上達。もともとアグエロは自分でボールを触らないとリズムが出ないタイプで、トランジションが激しくなればなるほど試合から消えてしまうという弱点があったが、それも克服されつつある。今シーズンは遊びに行ったアムステルダムでタクシーが事故って肋骨を負ったり、A.ヤングのものすごいタックルで足をやられたり、それなりに暇を貰っていたが、それでも元気に20点。全大会まとめてみれば30点。エースの座は揺るがず。

https://media.gettyimages.com/photos/manchester-citys-sergio-aguero-with-trophy-during-carabao-cup-final-picture-id924457424

 

33 ガブリエウ・ジェズス Gabriel JESÚS

 無茶を言うようだが、この人についてはもう、「化物になるのか否か」、「なるなら、いつなのか」という2つくらいしか問うことがない。だって何でも出来るもん。まぐれじゃないもん。

 今シーズンは開幕から順調に得点を重ねるも、11月から3月までゴール欠乏症に陥り、最終的にはリーグ12得点。まあ後2試合あるにせよ。この間、膝の怪我で2ヶ月離脱していたのも確かなのだが、少々数字としては寂しい結果となった。じゃあ具体的に“化物”って何なのよ?英語圏では「ごっつぁん乞食(”Tap-in Merchant”)」という批判もあるが、確かに自分で持ち込むとか、局面を打開するという面では多少不満が無くもない。ミドルもないし。あれだけダイレクトやツータッチで勝負を決められるのはジェズスの動きが恐ろしいほど洗練されている証左だが、いつまでもサッカーコーチの夢に留まっていられても困るというもの。早く契約の話を一段落させて、来シーズンに集中してほしいところである。

https://media.gettyimages.com/photos/gabriel-jesus-of-manchester-city-celebrates-in-the-tunnel-after-the-picture-id955373816

 

43 ルーカス・ヌメチャ Lucas NMECHA     

 先日のウェストハム戦でプレミアデビュー。風貌から勝手に下がり目のドリブラーを想像していたが、どっちかというとボニーとかジェコに近いファーストトップであった。まああの15分間で何が分かるかという話だけど。

 U19代表ではEURO優勝の立役者となった彼だが、ここから先が長いんだこの世界。ロフタス=チークなんて何年下積みやらされてんだというか、下積みのうちに代表デビューまでしてしまったからな。ボーンマス辺りに2年間くらいまとめて貸し出したいところだが、果たしてこの先どう育てるのか。

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2017/18 マンチェスター・シティ シーズンレビュー個人編(中編)

MF

18 フェイビアン・デルフ Fabian DELPH***

 うちのアラバです。

 というスターリンアネクドートの一つも飛ばしたくなるくらいの華麗なコンバート成功。開幕前はストークに移籍寸前だった忘れられし男が、左サイドバックで復活し、メンディの穴を埋めて余りある活躍を見せた。まあしかし、ストークに行かなくて本当に良かったですね。アストン・ヴィラといい、泥舟を見捨てることにかけてのデルフの才能というのは、なかなか馬鹿にできないものがある。

 ボールを持っていないときのポジショニングに怪しい部分は多々あれど、タックルもできるし、楔も打てるし、サイドバックとしては相当に高い水準にある。特に狭いスペースでのキープ力は高く、ハイプレスを選んだ対戦相手の気力を密かに削り続けていた。スパーズとか。強いて言えば、インにせよアウトにせよもう少し攻め上がりの威力が増すと嬉しいくらいか。

 あともう一つ言えば、怪我の多さは依然として問題ではある。レギュラーに定着したような印象が強い今シーズンでも、結局リーグ戦は20試合しか出ていないのだ。来シーズンは面白フランス人が帰ってくるとはいえ、徐々にチームに慣らす余裕を持たせるためにも、ヨークシャーのアラバには健康体を維持してもらいたいところである。

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25 フェルナンジーニョ FERNANDINHO

 我々の監督がときに理解しがたいほどの原理主義者であり、その宗教じみた”あるべきサッカー”への執着ゆえに失敗と無縁ではないということを、我々はよく知っている。チグリンスキーとか。ブラボでも良いけど。御大層な言い方で私が何を言いたいのかというと、アンカーのポジション、いわゆるピボーテについて、来シーズンのグアルディオラはもう一度それをやらかすかもしれんなと疑っているのだ。

 思い出してほしい。2014年のW杯、(相対的には)貧弱な戦力で優勝を義務付けられ、確信犯で一人一殺のファウルゲームに持ち込もうとしたフェリポン・ブラジルで、訳わからないプロレス技を繰り出しまくっていたのは誰だったか?ネイマールの大怪我で終わったロシアンルーレットの最初の引き金を引いたのは誰だったか?そうです。フェルナンジーニョです。1-7で負けたから目立っていないようなもので、もし決勝まで行っていたらデ・ヨング・マークツーがまたしてもシティから誕生していた可能性は相当に高い。もともとは運動量ベースの8番的ボランチであって、やれと言われれば10億人が見守る前でおぞましいファウルも出来てしまう男なのだ。ジーニョは。

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 そういうジーニョだからこそ、プレミアリーグで“ペップ道”を貫く上でのバランスを絶妙に保っていたのではあるまいか。ジーニョ自体も相当に技量を高めてはいたが、やはりそもそも困ったときに無理が利く身体をしているというのは重要だ。今シーズンのジーニョは、組み立ての貢献―DFラインやGKからの引き出しや、ウィングへのクォーターバックパスーでも素晴らしかったが、同じくらい守備でも輝いていた。それをジョルジーニョとか、ユリアン・ヴァイグルに換えると言われると、まあそりゃあよりブスケツっぽいのはそっちでしょうけどねえ、みたいな。そういう不安がある。

 とは言え、その組み立てについてジーニョの限界が見えていたのもまた事実である。具体的には、後方からボールを受けたときに、前が向けない。というか、この人は多分”前を向いたプレイ”しか基本出来ないんだと思うのね。ここで前を向いてウィングに付けられると大分違うんだが、というシークエンスが多くなかったといえば嘘になる。その点では、前述の二人はシティの可能性を更に広げてくれるのかもしれない。

 長々と書いたが、第3キャプテンとして、そして“委員会”*1の一員として、素晴らしい活躍であった。ハリー・ケインよりはこっちがPFA TotYでしょう。

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42 ヤヤ・トゥレ Yaya TOURÉ

 ついに退団が決定した、シティ3大守護聖人の一人。今シーズンは完全におじいちゃん化しており、割とどうでもいい試合でたまに出場する以外は、もっぱら練習場でいじられていた。

 この記事は歴史の教科書ではないが、ご存じない方に近代シティの7大聖人を紹介しておきたい。まず最上位の3大守護聖人がコンパニ、トゥレ、シルバで、その次が2大準聖ハート、サバレタ。そして残り二人が2大偉人テベスアグエロとなっておりまして、7大聖人の姿を模したクッキーがエティハド・スタジアム2Fのお土産品コーナーで好評販売中ですので、ぜひお買い求めくださいませ。

 じゃないわ。何だっけ。トゥレ。ヤヤ・トゥレ。ついにこの男も退団のときを迎えたわけだが、コンパニとシルバと比べてもヤヤは唯一無二の、そしてシティの歴史上恐らく初の役割を背負っていた。それは“シティを勝たせる”ということ。ハンブルクにいたコンパニや、バレンシアにいたシルバと違い、ヤヤはシティに来る前にあらゆるタイトルを勝ち取っていた。シティを勝者にすることが、ヤヤの責務であった。素晴らしいROIではないだろうか。FAカップ決勝ストーク戦での決勝点、「アグエロオオオオオオオオ」の1週間前のニューカッスル戦での2得点、リーグカップ決勝サンダランド戦での芸術的カーラー、2年後のリーグカップ決勝での最後のPK。答えを出すということにおいて、コンパニよりも、シルバよりも、テベスよりも、ヤヤ・トゥレは頼れる男であった。さらば偉大なるアイボリアン。あと鬱陶しい代理人

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8 イルカイ・ギュンドアン İlkay GÜNDOĞAN

 ギュンドアンというのは存外ややこしい選手である。いわゆる司令塔型の、判断力と長短のパスで攻撃をオーガナイズするような選手だと思っていたのがシティに来る前。意外とランパード型というか、自分がゴール前に飛び込んでくる動きも得意なのだなと印象が変わったのが昨シーズン。怪我から完全復帰した今シーズンの発見は、なんというか、飛び込むのも得意っていうか、もしかしてこの人、そこにしか興味なくない?

 何がおかしいかっていうと、あんまりプレーの連続性を重視しないんですね。この人は。あるいは、決めに行けそうなタイミングしか興味がないと言った方が良いかも知れない。例えばダビ・シルバは一見無意味そうな顔出しとパスレシーブ/リターンを繰り返しながら、相手と自分たちの陣形を調整し、決定的なスペースを抽出していく、という作業を厭わない。ナスリやヤヤ・トゥレもその手の大家。デ・ブライネはもう少し単刀直入なプレーを好んでいるが、それでもプレーがなんというべきか、一本の線上にある。

 ギュンドアンはない。ぶつ切り。ボケっと突っ立ってるか、急にスイッチが入るか。スイッチが入ったときはシルバですら怖くてなかなか出さないような狭い場所にワンツーで突っ込んでいく。CMFとしてはスピードもあるし、長い距離も走る。一方で、セカンドボールへの反応は鈍め。性能がいちいちピーキーなのだ。世界仕様の稲本、という趣がある。

 今シーズンはシルバの離脱とトゥレの衰えのために、CMFの半レギュラー、およびアンカーの控えとして定期的に出場。CMFとしてはFW並の美麗なゴールを多々決めた一方、前述のように出入りの激しいプレーで数々のピンチを密かに演出していた。とは言っても基本的なレベルはめちゃめちゃ高いので半レギュラーとして居る分にはそんなに文句はないのだが、シルバの代役として本格的に使うと今ひとつなんだよなあ。ついでに言えば、アンカーとしても悪くはないが今ひとつであった。スパーズに3-1で勝っておいて今ひとつ、とかほざいちゃダメかも知れないが。全体的に貢献度は高かったが、来年も頼りたいかと言われると微妙なところである。

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17 ケヴィン・デ・ブライネ Kevin De BRUYNE

 後半戦に多少息切れしたものの、年間を通じて驚異的な質と量を示し、プレミアリーグの顔に。チーム内選挙で第5キャプテン及び選手委員会にも選出され、今後5年のシティを引っ張る存在として名実ともに地位を確立したシーズンであった。

 CMFコンビの片割れであるシルバの特徴が「間違えるけどミスは絶対しない」という点だとすれば、デ・ブライネは「ミスはするけど、絶対に間違えない」。シルバほどの完璧なボールコントロールがあるわけではないが、選択肢は常に正解。正解というか、「それができれば苦労無いですよね」というオプションを選べちゃう。しかもそれが、あのベッカムはだしの右足スルーパスだけでなく、 ゴリ押しのドリブルでも実行できるというのがデ・ブライネの特別さだと言えよう。

 あとはこのパフォーマンスを何年続けられるか。ぶっちゃけ今年は全部のコンペティションで頑張りすぎというか、グアルディオラも頼りすぎだったので、もう一人質の高いCMFを手に入れてローテを回していってもらいたいところ。

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21 ダビ・シルバ David SILVA

 ふざけるなよお前!

 お前だよお前!お前は本当に・・・座れお前は!お前は・・・どういうことよ!?どういうことなのよ?

 Player of the Yearの候補だったっちゅうんはお前、あれだろうお前、MVPの候補っちゅうことだろうが!あ!?

 しかもお前、Team of the Yearには入っとるっちゅうがな・・・こりゃお前、ベストイレブンちゅうことだろうが・・・ああ!?

 お前・・・なんちゅう活躍をしとるんだよお前は・・・本当に・・・。

 しかもお前アシストがいくつ?10超えた!?お前は本当に・・・いい加減にせえよ!!加減ちゅうものをしれよ!!

 いくつなんよお前は・・・毎年進化しとるじゃないの・・・回復力は落ちてるかも知れんけどピッチ上のクオリティは衰え知らずじゃないの・・・全く・・・いい加減にせえよ・・・。

 しかもお前、何?息子が早産で生まれて!?なるべくそばにいてやりたいからって!?スペインとイギリスを頻繁に往復して!?試合の直前に帰ってくるような強行スケジュールを続けたって!?

 お前は本当に・・・お前・・・舐めとんのか!!ええ!?舐めとんのか!!。

 それであのクオリティを出すてお前、どういうことよお前!!どれだけ精神的にタフなんよお前は!!プライベートの事情をピッチに持ち込まないことにかけては欧州1かよ!!

 

 

 お前は本当にもう・・・最高か!

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35 オレクサンドル・ジンチェンコ Oleksandr ZINCHENKO

 本職のAMFではなく左サイドバックの2番手として出場。試合数は多くないながら、印象的な活躍を見せた。

 シティのサイドバックというのは、試合中ほとんどボランチのように振る舞っていることも珍しくないポジションである。スプリントは専ら被カウンター時に行われるものであり、相手のクリアを回収するための読みとか、狭いスペースでボールを回せる技術とか、そういうものが重要になるわけだ。ということで、いきなりコンバートされたジンチェンコも特に問題なくサイドバックをこなしていた。なにせ本職が本職だけに、角度がないところから出すスルーパスなんかはデルフより上だったくらい。昨年はPSVでほとんど試合に出られなかったが、単純にどこそこで控えだったからこっちではダメとか、そういう単純な不等号が現実のサッカーには当てはまらないことを教えてくれる事例でもあった。

 来シーズンはメンディが戻ってくる左サイドバックに残り続けるのか、MFに戻るのか、あるいは改めてローンに出るのか定かではないが、しばらく育ててほしい逸材であることは確かである。顔も面白いし。

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47 フィル・フォーデン Phil FODEN

 昨年夏のアメリカツアーでトップチームデビュー。秋にはU17チームでW杯を制し、自らはMVP受賞。年末にはBBCの「年間最優秀若手アスリート」にも選ばれ、あとはテイラー・スウィフトとシングルを出すだけという若手の星。カップ戦を中心に何かとグアルディオラが使いたがり、全コンペティション合わせて9試合に出場した。

 左サイドバックで先発したシャフタール戦は消化試合ということもありうまく行かなかったようだが、CMFとして途中出場した試合では、細かいドリブル突破が普通に通用しまくっており、レスター戦ではアシストも記録。来シーズンに向けて、やれチアゴだのフレッジだのと獲得の噂は耐えないが、フォーデンと1年心中してみたいというファンも結構多そうな気がする。「1年間割り切って外に出す」というシルバやウィルシャーが経験したパターンを踏むのか、あくまで自前で育てるのか、上層部の判断に要注目。

*1:コンパニ、シルバ、フェルナンジーニョアグエロ、デ・ブライネで構成される、キャプテンの会。投票で選ばれるらしい

2017/18 マンチェスター・シティ シーズンレビュー個人編(前編)

GK

1 クラウディオ・ブラボ Claudio BRAVO 

 昨シーズンの惨状はやはりイップス。今シーズンはカップ戦のみの担当ながら、至近距離のシュートもバシバシ止めまくっており、これこそ我々が求めたブラボだったのだという姿を見せてくれた。リーグカップ優勝のMVPと言っても良い。まあ1年遅かったが。ナポリ等、正GKにと誘ってくれるクラブには事欠かないようなので、今年限りで退団かも知れない。

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31 エデルソン・モライス EDERSON Moraes

 地獄のチャニング・テイタム、といった風貌の正GK。デ・ヘアがいなければベストイレブンも堅かったであろう。脳細胞の恐怖を感じる部分が切除されているという噂が絶えない。

 何ていうかもう、言うこと無いんだよな。別に。アンフィールドリヴァプール戦では飛び出した後の処理を誤って失点につながってしまったが、実戦で明確に失点した”ポカ”はあれ1つではないだろうか?夏のプレシーズンに1回と、先日のウェストハム戦で1回(ファール判定で未遂)があったが、それを含めても3回というのは極端に少ない。そもそもあのスタイルなら、年に数回致命的なミスが起きるのは必要経費のようなものなのだ。前任者のハートが苦手にしていた背面へのハイクロスにもミスが少なく、組み立てへの貢献はプレミア1。もう本当、言うことなし。このまま10年くらい頑張ってほしい。

 まあ強いていうとすれば、相手のハイプレスがハマったときには10分から15分ほど落ち着きを取り戻せないケースがあるので、そこを何とかする胆力を身に着けたら鬼に金棒というか、鬼に米軍という感じはある。胆力の問題なのかはわからんが。

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32 ダニエル・グリムショウ Daniel GRIMSHAW*

 出番なし。U21?だっけ?まあとにかくリザーブリーグの方ではスタメンを張っていたような、いなかったような、そんな気がする。とは言えリーグ優勝のセレブレーション会ではエデルソン、ブラボ、ムリッチと4人仲良く写真を撮っており、キャリア上の良い思い出になるだろうとは思われる。

 

49 アリヤネト”アロ”・ムリッチ Arijanet Aro MURIC*

 こちらも出番なし!3番手ということで常にトップチームには帯同していたものの、エデルソンとブラボが健康体を維持したため、試合に出ることは無く終わった。来年ローンに出るか否かは、ローン先のノリッジで大活躍したアンガス・ガンをどう処遇するかに大きく影響を受けそう。

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DF

4 ヴァンサン・コンパニ Vincent KOMPANY

ワカンダフォーエバー!!あ、間違えました。キャプテンフォーエバー!!

しかしすごいですよね。何がすごいって、コンパニも似てるけど、コンパニ嫁もちょっと似ているということな。レティーシャ・ライト

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まあそれはいいわ。昨シーズン終盤、ついに万年故障癖を克服したかと思わせたが、特にそんなことはなかった近代シティ三賢者の一人。それでも、ストーンズが調子を崩した穴を存分に埋める活躍で存在感を示した。相変わらず組み立ては危なっかしいとはいえ、ギャリー・ネヴィルが自らのベストイレブンに選んだように、やはり相手がボールを持っているときに一番頼りになるのはこのキャプテンである。チームとしては何年その状態が続いてんだという気もするが。

そしてもう一つ私が強調したいのは、今シーズンのこのチーム、このクラブのモラルの高さは、コンパニがずっと守ってきたからこそあるものだということだ。贔屓目だと思うだろうが、聞いてくれ。コンパニほど、自分が好きなクラブのキャプテンとして居てほしい男はそういない。冷静で、賢く、揉め事には口を突っ込まないが、必要とあらばクラブの方針にも疑問を呈す。シティが少なくともこの5年間、ヤヤ・トゥレの一件を除いて選手からの表立った反乱無くやってこられたのは、コンパニの人望と規律によるところも大なのだ(多分)。だから私はキャプテンに、ファンとして心から礼を言いたい。この素晴らしい一年をありがとう。あなたのおかげで、私の週末は素晴らしい。アッセンブル!間違えた。ありがとう!

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5 ジョン・ストーンズ John STONES***

マンチェスター・シティのファンブログは概して退屈である(たとえば今あなたが読んでいるものとか)。レアル・マドリーバルセロナのファンブログは、もっとつまらない。なぜか。優れた文学というのは一般的に悲しみや苦しみの中でそこから逃れるために生み出されるものであって、贔屓のチームが先週も勝ってる今週も勝った来週もきっと勝つ、という快適さから出てくる文章など大概退屈なのである。イワン・デニーソヴィチが金曜のコリドーでCAとブイブイ言わせている商社勤務の3年目だったとしたら、誰がそいつの1日を読みたいと思うだろうか。

そういう意味で、アーセナルのファンブログは読ませる。怒りと諦めを自虐で包んだ、乾いた嘆き。年末年始にシティに2連敗したときなど、3日おきに永久保存ものの名コラムが生まれていた。物書き肌のサッカーファンたるもの、低迷期はこうありたいものだ。

話が長くなった。何が言いたかったかというと、そうしたアーセナルファンブログの一節にストーンズに言及したものがあって、それが面白かったという話。曰く、”去年の同じ頃、我々は「ストーンズは50mポンド、ホールディングは2mポンド。どっちが良い選手だと思う?」と揶揄していた。今や、ホールディングはまごうこと無く、ボルトンが2mポンドごときで売る気になった選手そのものだ“と。

ホールディングには同情を禁じ得ないが、ストーンズの1年も、歌ほどは順調には進まなかった。レスター戦で肉離れを起こすまでは完璧なシーズンを送っていたが、復帰後はフォームを失い、控え降格から再度怪我。とはいえ、年末までのプレーには文句のつけようがなかった。来シーズンに期待したい。

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14 エメリック・ラポルト Aymeric LAPORTE

選手名カタカナ表記委員会フランス語部局の方針に沿って、弊ブログではフランス語に寄せて表記しているバスク人。この左利きのCBがクラブ史上最高額の補強だというのが、シティの意外な渋さを表しているのではあるまいか。シティは金を使いこそすれど、バカ高いスーパースター一点買いというのはあまりやらないのだ。グアルディオラも言っていたけど。

こいつ絶対スペインだとストーンズみたいな扱いされてるんだろうな、と思っていたが、ストーンズほどは迂闊でなく、ストーンズよりも全体的にトロかった。評判通り、縦パスを入れる能力は素晴らしく、相手が張り切ってプレスを掛けても切ったはずのコースにバンバンノールックで通していくので、相手の守備が勝手に溶けていく。用意したはずのプレスを維持しきれず、中盤がトロットロに溶け切ったチームが増えたように見えたのは、ラポルトの加入と無関係ではあるまい。一方で、守備者としては悪くないんだけど騒ぐほどでもないなというか、攻撃面の貢献故に逆に過小評価される程度の守備力。足も遅いし。とはいえまだ若いので、ストーンズとともに期待しておきたい。ちなみに、ストーンズラポルトを並べた恐怖のラインナップはまだ観ていない。

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15 エリアキム・マンガラ Eliaquim MANGALA

光の戦士クイニー・マンゴマン。守備が崩壊していたエヴァートンにレンタル移籍するも、2ヶ月も経たないうちに大怪我を負ってしまったフレンチバイソン。それでも折に触れてシティへの応援コメントをSNSで飛ばすなど、最後まで性格の良さを発揮していた。最後って言ったらいかんけど。

まあしかし何だな。おそらく今年の9月以降もマンガラがシティに残っている確率は相当低いが、マンガラの偉大な功績の一つは、「マンガラ並」という指標を私にくれたことである。この先私は常に、肉体的な強さを誇る黒人CBに対してこう考えることができるのだ。「なんでえ。マンガラと似たようなもんじゃん」と。リュディガーとかさ。いや、これでも、そんなに貶してはないですからね。そんなに悪くは無いですよ。マンガラ。でも別にすごくもない。マンガラ並。薄くて厚い壁である。

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24 トーシン・アダラバイヨ Tosin ADARABIOYO*

 出番なし!ルーカス・ヌメチャですら出場機会を得ている中で、全くプレミアデビューの気配なくスタンド待機を続ける21歳。ラポルトは来るし、もう一人CBを買うとか買わんとかいう話もあるし、キャリアのためにはそろそろ潮時かも知れない。

https://media.gettyimages.com/photos/tosin-adarabioyo-jokes-with-brahim-diaz-and-benjamin-garre-at-city-picture-id903386848

 

30 ニコラス・オタメンディ Nicolás OTAMENDI

 獲りよったでベストイレブン(PFA Team of the Year)。シティに所属しているというのは表彰レースで全く有利に働かないともっぱらの噂だが、サバレタ以来5年ぶりのシティDF陣からの受賞である。

 今シーズンは完全にハーフDFとして一皮むけ、組み立ての基点として1年を通して安定した活躍。ドリブルでの持ち上がりもほとんどミスをしなくなり、来年あたりはミドルシュートの一つや二つも決めてしまうかも知れない。また、オタメンディの見逃せない貢献の一つが、とにかく頑丈ということである。そして、出来ることに波があんまりない。出来ないことは出来ないが、出来ることはつねに出来る。何でもはやれないよ?やれることだけ。そんなニコラスキャットは来シーズンも、DFの要として活躍してくれることだろう。

https://media.gettyimages.com/photos/fabian-frei-of-fc-basel-nicolas-otamendi-of-manchester-city-during-picture-id918147550

https://media.gettyimages.com/photos/nicolas-otamendi-of-manchester-city-celebrates-winning-the-premier-picture-id955368514

 

2 カイル・ウォーカー Kyle WALKER***

サッカーファンはパルチザンである。ポジショントークの生き物である。贔屓のチームかそうでないかで言うことが露骨に変わる、ダブルスタンダードの民である。ということが如実に示されたのが、昨年夏のウォーカー移籍であった。 

2回もベストイレブンに輝いたくらいだから、プレミアリーグでウォーカー以上の右サイドバックというのは理屈上そうはいないはずなのだが、シティ移籍決定直後から「実はそんなにいい選手じゃなかった」「もう下り坂だった」という再評価運動が猛烈な勢いで勃発。曰く、クロスがクソである(たしかにそうだった)。曰く、怪我が多い。曰く、攻撃に多くをもたらしてくれる選手ではない。曰く、結局の所キーラン・トリッピアの方がいい選手だった。云々。とりっぴ~ことトリッピアの株、一夜にして爆上げ。これが後の世に云う、とりっぴ~ハードル上がり過ぎ事件である。

私がなんでこの話が好きかというと、とりっぴ~はもともとシティ育ちで愛着があるからなんですけど、それにしても酷だった。そんな惨状の遠因となったウォーカーは、1年を通して右サイドで活躍。本人も言っているが、よりミスが少なく、より賢くなれば、ラームをサイボーグにしたみたいな化物が生まれるかも知れない。28歳、まだまだ伸びるお年頃である。

https://media.gettyimages.com/photos/gabriel-jesus-of-manchester-city-and-kyle-walker-of-manchester-city-picture-id955368684

 

3 ダニーロ DANILO

 ウォーカーには見劣りするが、優秀な右サイドバックではある。左足は使えないが、左で使っても破綻するほどではない。守備が得意とは言い難いが、サイズがあるのでジンチェンコよりはマシ。あらゆる面で使い勝手が良いと言うか、あっちこっちの穴塞ぎに使い回しても損した気がしないという点で、絶妙のバックアッパーではあった。まあ3,000万ポンドもしたからな。3,000万も払うと、控えの右SBでもアンリみたいなミドルシュートを決めるというのは悲しくも笑える現実であった。

あと、モラルも高い。相手も含めて21人全員が流しモードに入っている4-1の後半でも、相手ゴールキックへの警戒を怠らない真面目さ。ナスリと絶対気が合わなそう。パブロ・マフェオの放出や本人のキャリアもあって移籍の噂がないでもないが、こういう選手を控えに置いておけるというのは強いチームの一つの象徴なので、ぜひ残ってもらいたい。

https://media.gettyimages.com/photos/danilo-of-manchester-city-celebrates-after-scoring-his-sides-fourth-picture-id897643144

 

22 バンジャマン・メンディ Benjamin MENDY

 サッカーも出来るクラブ専属Youtuber。通称メンキン。来年こそはサッカーが本職になるらしい。戻ってきたのがつい最近なので、存在よりも不在のことを語らねばならないのだが、どうなんでしょうね。思いの外デルフが良かったと言うか、デルフについて不満なことがあんまりなくて、正直なところメンディに変わったらちょっとマイナスの方が大きいんじゃないの?と思っている節すらある。私は。言い換えれば、メンディのメンディたる所以―単騎で状況が解決できる突破力と、人体の構造的にそれは可能なのかみたいな無理目のクロスーが今のシティにめちゃめちゃプラスになるところがあんまり想像できないんですね。まあ、なるにはなるんだろうけどさ。

 とはいえ、怪我前の肉体に戻れるならほとんど戦術兵器と言えるだけの逸材なのも確か。ハゲがこのポップスターをどうチームに組み込むか、注目したい。

 

ヴェンゲル、あるいは移籍の舞台裏

「やあ」

「やあ。君は誰だ?」

「誰でもいいさ。少し話があるんだよ」

「私には無いね。悪戯なら切るぞ」

「今から練習かい?」

「そうだ。もう切るぞ。今日は怪我人が帰ってくるんでね」

「こないよ」

「何だって?」






「あんたの大事なディアビのことを言ってるんなら、彼は来ないよ」

「どういうことだ。もしや彼を―」

「落ちつけよ。ただ彼を昨夜の食事に招いただけさ。彼はそのまま泊ったから、今も向こうの部屋でテレビを見ているよ」

「一体何が言いたいんだ?」

「あんたに一つお願いがあるんだ」

「見ず知らずの男のお願いを聞く筋合いは無いね」

「あるさ。俺がちょっと部屋の向こうに声を掛ければ、ディアビマーマレードの瓶に手を伸ばしてくれるんだぜ」

「待て!そんなことをすれば―」

アキレス腱が音を立てて切れるだろうな」

「何と卑劣な。君には恥というものがないのか」

「おっと、口を慎めよ、ムシュー。彼にチャンネルを変えてほしいのかい?彼の左ひざがリモコンの重さに耐えられるか、見ものだな」





(数十秒の沈黙。やがて重いため息)





「わかった。要求を聞こう」

「物わかりが良いじゃないか。」

「望みはなんだ?」

「簡単なことだよ。マーケットが閉まる前に、キム・シェルストロムを獲得してくれ」

「彼はセントラル・ミッドフィールドの選手だぞ。私が同じ場所に何人の選手を抱えていると思ってるんだ」

「だからこそさ」

「しかも彼はもう31歳なんだぞ」

「だろうね」

「おまけに背中に古傷があると来ている。メディカルチェックで引っ掛かったら良い面の皮だ」

「その通りさ」

「私を笑い物にしたいのか?」

「まあ、モウリーニョはまた一つからかいの種ができたと思うだろうね」

「卑怯なやつめ。仕方が無い。要求を聞こう。イヴァンは私が説得する。それで、ディアビは確かに開放してくれるんだろうね?」

「するとも。今日はベル・レーンの交差点まで送ってやるさ。だがムシュー、忘れるなよ、俺はいつでもディアビや、ロシツキや、アルテータに、物置の電球を替えてきてくれと頼むことができるんだぜ」

Kim Kallstrom of Arsenal with Arsene Wenger the Arsenal Manager during the match between Arsenal and Swansea City in the Barclays Premier League at...

 

 

 

 

(数年前に書いたものを退任記念に再録)

Moneyの先に

ぇ、優勝した(ワラ

 

 高校の同級生の女っぽく始めてみましたが、いかがでしょうか。なんだか、我慢してたのに漏らしちゃいましたみたいなまんゆの敗戦で、4年ぶりの優勝。宜しいことだ。クリスマスの時点で決まってた、とライバルチームのファンが漏らすほど()、少なくとも数値的には圧倒的な勝利であったことは確かである。おそらく数週間前から用意してあったのだろう、優勝決定後即座にBBCやGuardianで「なぜ強いのか」「何が変わったのか」という記事が溢れ始めた。The Timesに至ってはファンクラブの会報かと見紛うばかりの論調である。こっちが心配になるくらいだ。

www.theguardian.com

www.theguardian.com

www.thetimes.co.uk

 

 こうした記事にどのような反応がつくのか。

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 はい。Money Talks. They have money. Money, Money, Moneyである。金にものを言わせただけだ、あれだけ金を使えば勝って当然だ。すごいのになると、「どんな監督だって、あれだけの戦力があればこの成績は収められる」というのもある。まあ、普通に褒めてるコメントも多々あるけども。ていうか、今あらためて探したら結構そうだったわ。ごめん。まあ気を取り直して続けると、インターネットで口論しない主義の私とは言え、自分が好きなクラブの偉業がこの扱いでは、いい気持ちがしないのも確かだ。ただ私が気になるのは、「最終的に何が言いたいのか?」ということである。

 

 

 

 

 まずもって、こうしたコメントを書き込む諸兄は、本当に「これだけ金を使えば誰だって勝てる」と思っているのだろうか。まあ本当に思っているかどうかは結局判らないが、我々は知っている。

 

そんなわけないじゃん。

 

 いや、ほんとに。例えばポール・ハートとか、ナイジェル・ブラウンとか、なんだったらマーク・ヒューズだって良いが、彼らに同じ額の資金を与えたとして、同じ成績が、等しく圧倒的な-いくつかの例外たる試合は除いて-内容で成し遂げられるだろうか。いやー、無理でしょう。クロップとかならいざ知らずよ。大体、ペレグリーニだってそれなりの金をかけてもらっていたけど、1試合だって今年のこんな感じはなかったですからね。相手がめちゃめちゃやる気ないニューカッスルでない限り。

https://media.gettyimages.com/photos/manager-manuel-pellegrini-of-manchester-city-watches-from-the-during-picture-id494200868

 また、「グアルディオラはもともと強いチームでしか成功できない」という話も、同様に気にしないでおける話だ。”ただ出来るということを示すためだけに風呂掃除をする”義理はグアルディオラにはないし、そもそも私とて、グアルディオラ個人のファンならまだしも、マンチェスター・シティのファンなのだから、もうどうしようもない。グアルディオラが来ようが来るまいが、シティは金を使ってしまうのだから。「弱いチームで実力を試すべきだ」という話は、シティを辞めたあとでなんぼでもやってくれたら良いと思う。ジェフとか。

 知りたいのは、「シティは何がすごいのか」という問いに対し、「金持ってるだけだ」と書き込むとき、その先になにがあるのかである。「金持ってるだけだ」。OK、つまり・・・?。要するに、「金持ってるだけだ(から、この勝利は何らマンチェスター・シティというクラブの関係者、すなわち経営陣、スタッフ、コーチ陣、選手その他の努力に帰するところはないのであって、すなわち何一つとして誇るべきものではないのだから、そんなに褒めたり喜んだりするな。だって、気まぐれでシティを選んだオーナーが金を出しただけなんだから)」という趣旨だと理解して良いのだろうか。あるいは「金持ってるだけだ(、つまり誰がやろうが、これだけの金を出せば勝てるわけで、それはつまりピッチ内外のサッカー的努力と勤勉によって勝ち取られるべき勝利が、単にアブダビの富豪によって選ばれたという多分に運の要素で決まってしまっており、すなわちプロサッカーとして否定されるべき現象であるからして、シティの優勝には価値がない)」ということなのであろうか。いやん、大胆。要するに、結論を言ってほしいわけよ。Moneyの先にあるものを。結論が示されれば、私とてその話はどっちかっつーとリーグに言って下さいとか、そこに無ければ無いですねとか、もう少し生産的な対応が出来るというものだ。

 と、若干茶化してはみたものの、結論としては、多かれ少なかれ上記のような心持ちがあり、とは言え結論まで言い切るほどの大した話でもない、というところではないだろうか。気持ちはわかる。そう。わかるのだ。

 

 

 

 自転車ロードレースの世界に、スカイというチームがある。スカパーにその名が残る、放送局のスカイがスポンサーしているチームである。強いんだまたこれが。ロードレース界最大のイベントといえばなんと言ってもツール・ド・フランスだが、これを目下3連覇中。しかも、その勝ち方がえぐい。

https://media.gettyimages.com/photos/ian-stannard-of-great-britain-riding-for-sky-procycling-drives-the-picture-id173951742

 ロードレースというのは「8人のアシストが風除けとなり、手足となって働いて、1人のエースを勝たせる」という多少分かりづらい競技なのだが、まあ要するに風速50mの向かい風でやってるマラソンだと思ってほしい。1人で走るとゴリゴリと体力が削られるため、残りの8人が風除けとならなければ、いかに強い選手だろうと絶対に勝てないという競技である。すなわち、エースが強いということもさることながら、どれだけ強いチームメイトを集められるかも重要だということだ。それでスカイだが、ここ3年のツール・ド・フランスはいつも同じ風景である。すなわち、勝負の分かれ目になる山岳地帯に差し掛かると、ライバルチームのエースが1人ずつ、あとスカイが5人くらい。スカイが強すぎて、他のチームのアシストが全員限界に達して遅れてもスカイのアシストはまだ4,5人残っているのだ。何ならそこらのチームのエースよりスカイのアシストのほうが強いくらいだ。これだけでも先の展開が読めてしまいそうな状況だが、ここから先は目を覆わんばかりである。耐えかねたあるチームのエースがちょっとペースを上げる。するとスカイのアシストが一人彼を追い、ぴったりと背中に張り付く。先行した彼からすれば、楽勝でついてこられた上に、風除けに使われているという精神的な苦痛に襲われる。山岳では風圧は弱まるとは言え。しかも追ってきたアシストを風除けに使いながら、スカイのエースは悠々と彼に追いつく。以下繰り返しである。そして他チームのエースがあらたか消耗したところで、スカイのエースが満を持してフルアクセル。でまた、3連覇するくらいだから、このスカイのエースが弱いわけがないんだよな。かくしてここ2年のツール・ド・フランスは、正直言って私には退屈なことこの上ない。

 何が問題かと言うと、スカイは自転車チームの中で群を抜いて資金力がある(と思われている)のだ。実は2位のチームとそんなに差はないのだが、年間予算が一番大きいことは確かだし、とにかくスカイには金持ちというイメージがある。シティほどじゃないけど。補強もする。かくして、スカイは私だけでなく、直近の薬物疑惑を置いておいても、世界中で結構な顰蹙を買っている。もう端的に言って、つまらんのである。隙がなさすぎ。そんな単純なことではないのが十分わかっているが、その勝利の裏には血の滲むような努力と勤勉があるのは理解しているが、それでもスカイが他チームを叩き潰すとき、私は「はいはい」という感情を認めざるを得ない。いつだったか、Twitterでスカイファンの一人がこうつぶやいていたのを見た。「昨日は山岳であんなに圧倒的な力で勝ち、今日は下り坂で勇敢にアタックして勝利。スカイを叩く人は一体どうしたら納得するんですかね?」。いや、勝てば勝つほどそうなんだってば。理論的には。

 あるいはもっと身近な、読売巨人軍でも良い。私の友人に巨人ファンがいるが、数年前に「今年はやばい、なにせ杉内とホールトンに、村田も獲ったから」と言ってきたときは、私の人生で最大の「ああそうかい」を返したことを覚えている。

https://media.gettyimages.com/photos/chris-froome-of-great-britain-riding-for-team-sky-is-presented-with-picture-id547307970

 しかるに、シティが叩かれるのも、まあ理解はできる。10年前まで大して強くもなく、多くのサッカーファンにとっては強かった時代も記憶に無いチームが、アラブの大富豪が来たおかげで強くなってるわけだから。いかにこのチームが戦術の遂行力に優れているかとか、エキサイティングな試合をするとか、あるいはアンカーのポジションには替えがいないから補強が必要だとか、専門誌やニュースサイトがこぞって強さの理由は何かとか真面目くさって言えば言うほど頭にくるのも道理であろう。私だってスカイの卓越性を解説する記事ばっかりネットに上がっているように見えたら、どうぞ勝手にやっててくださいという気持ちを持たなくもない。我が内なるポジショナルプレーである。

 

 

 

 

 では私はどうすべきか。いやまあ、別にどうにかすべきことな訳でもないが。ニューカッスルやバーンリーとの共同作業で「サッカーの不気味の谷」を作り出し、「金で買った勝利(なのだからそんなにはしゃぐな)」と叩かれる、我がクラブを巡るナラティブをどう受け止めるべきなのか。

www.theguardian.com

 まずもって、私は無力である。私はシティの勝敗に、あるいはピッチ上のパフォーマンスに、毛虫ほどの影響力も持たない。私が2006年のシティの弱さをどうにも出来なかったのと同じくらい、私は2018年のシティの強さをどうにもしようがない。仮に私がどれほど恥じたところで、このチームは強かったし、多分来年もそこそこ勝つ。そしてまた、他チームの、あるいは特に応援するチームを持たないサッカーファンの感情をどうすることも、同じく私にはできない。する気はないが、いかに理論武装してTwitterやブログで反論しても、洪水に藁を投げるが如しである。

 そして、「とくに強いキャラクターもないが、どちらかと言えばうっすらヒール」という、世界中、少なくとも英語圏と日本語圏のサッカーファンにおけるシティのイメージについても、短期的に変わることはなさそうである。こういうキャラ付けが消えるというのは、同じ方向でもっとえげつない奴が出てきたときと相場は決まっている。12,3年前に金満といえばチェルシーだったが、今やその方向性でからかいの対象となることがほとんどない原因は、クラブの移籍市場政策の転換もさることながら、何をおいてもシティとパリの台頭であろう。2003年以前のチェルシーも結構強かった、ということを覚えている人間はもう地球上にほとんど居ないし。ところがFFPが導入されて以来、この手の成り上がりが登場する可能性は殆どなくなってしまった。

https://media.gettyimages.com/photos/chelsea-captain-john-terry-and-manager-claudio-ranieri-celebrate-by-picture-id2369926

 よって結論を言えば、私に出来ることはなにもない。単に耐えるしかない。いつかこういう扱いがなくなったら良いなと思わなくもないが、遠い夢の話だろう。いずれにせよ、勝とうが負けようがシティは叩かれるのだ。だったら、まだ勝っていたほうがましというもの。はしゃぎすぎないようにはするとして。Moneyの先にあるのは、単に週末を楽しみに待つこと以上の何ものでもないのだ。

 

 

 

 

 

 前置きが長くなった。本題に入ろう。永井洋一っつぁんがハリル解任に対して存外まともな文章を書くのだから、万が一、万が一として、コージーに聞いてみたら、誰もが納得する素晴らしい日本サッカー界への提言が出てくるのではないかという件についてだが・・・

日本のやり方

4月、日本、東京にて

日本サッカー協会のT会長(60)が9日、都内のJFAハウスで会見を開き、日本代表のV.監督の解任を正式に発表した。今後に目指すべき日本のサッカー像について「しっかりとしたボールをつないでいくこと」と語ったが、具体的な戦術については新監督に選んだN技術委員長(63)に一任するとした。以下、一問一答の要旨その3。

 

 -V.前監督に抗告されることはないと考えているか。

 「そういう可能性は0ではないかもしれませんが、契約に基づき、誠意をもって対応していくつもりです」

 

  -日本サッカーが目指すべき道は。

 「もちろん基本的な戦術、ベースは一緒だと思いますが、監督によってやり方が違うのは事実です。V.監督がやろうとした早い攻撃というのがあったのも事実です。そういうことが必要なのも私たちは分かっているつもりです。ただ、できるかどうか、選手が全うできるかどうか、そういうものを踏まえながら、今までのW杯で通用したもの、しなかったもの、今のサッカーに合うもの、合わないもの、そういうものを分析してわれわれはチームをつくらないといけないと思っています」

 

 -日本らしいサッカーとは。

 「しっかりとしたボールをつないでいくということです。これは私の意見ですから、監督がどう思うかは木曜日に聞いていただきたい。私たちが世界のサッカーにアダプト(適応)していくことで、それが日本のサッカーになっていくと思っています」

 

 -しっかりとしたボールとは。

 「自然を慈しむ、思いやりに富む、全体のために自制心や調和の心を働かせるといった日本古来の良さが表れているボールということ」

 

-海外のボールとは異なるということか。

 「形状は似ているが、皮の粘りに負けないコシの強さがある。海外のボールは合成皮革が中心だが、日本は本皮という伝統がある。舐めるとすこしピリッとした味がするのが特徴。そういったボールをつないでいくということ」

 

 

 

6月、ポーランドワルシャワにて 

「さて、今日はワールドカップのグループリーグ第2戦、日本戦が行われました。会場のサンクトペテルブルクにはプジェミスワフ・グウピスパツェルがいます。プジェミスワフ?」

 

「はい、こちらプジェミスワフです。」

 

「日本の戦術には驚きましたね?」

 

「ええ、私だけではなかったと思いますよ。ボビーも試合後のインタビューでずっとそのことについて触れていましたから」

 

「ちょっと変わったボールを使っていたんですって?」

 

「ちょっとどころではありませんね。まず、普通のボールより大きいんです。3mくらいはあったのかな。直径がですよ。それからとても硬いんです。普通のサッカーボールは指で押したら凹みますが、全くそういったことがないのです。驚きますね。それに何と言っても、刺激を与えると粘り気のある汁が中から出てくるんです。ものすごい粘着力です。くっついたら離れないんですよ」

 

「信じられないわ―ボールは全部そうだったのですか?」

 

「ええ、ええ。そうです。使用されたボールは全部そうでした。さっき粘着力の話をしましたが、ねとねとしたボール同士が触れ合うと、もっと強くくっつくのです―まるで接着剤ですよ!悲惨なのはカミル・グロシツキです。彼はスローインをしようとしたんですが、中途半端な場所だったので、ボールボーイが3人も揃ってボールを彼に投げてしまったんです。まあ、正確に言えば転がしたのですが。ボールはカミルの左右両方からぶつかって、手から離れなくなりました。そうこうしているうちに3つ目のボールが転がってきて、彼はじたばたする巨大な雪だるまのようになってしまいました。ピシュチェクが引き剥がそうとしましたが、無駄でした。我々はグロシツキがゆっくりと動かなくなっていくところを見ていることしかできませんでした。最後にピクリと動いたのが、彼の最後の力だったのか、ボールの重さによるものだったのか、我々には知る由もありません。」

 

「ありがとうプジェミスワフ。サンクトペテルブルクから悲しいニュースをお伝えしました。次は国会です。この一ヶ月争点となってきた第二次補正予算案に関する今日の国会答弁では・・・」

CL リヴァプール戦惨敗について

https://media.gettyimages.com/photos/dejected-pep-guardiola-the-head-coach-manager-of-manchester-city-the-picture-id942021214

しっちゃかめっちゃかに忙しいため、リアルタイムでは観戦しませんでしたけれども。朝起きて、スマホBBC Footballを開いて、薄目で「あー怖い。怖い怖い。怖い~」と思いながら待っていたら最初に飛び込んできたのが「Hammered」という単語でお察し。

結局見てません。この一週間はあれやね。この世に「サッカー」というものが存在しないふりをして生きていた。

 

 

Twitterも止めてしまったが、あの人はどういう感想を持っているのだろう、と思って500zooさんを見に行くと、こういうツイートが

 わかる~。一週間前の、どこ戦でしたっけ。エヴァートン?は観れたんだけど、「アッこれは絶対何か変なところに行ってる。『ちょっと俺持って帰って一晩考えてくるわ』って言ったマネージャーが翌日どう聞いてもそれ考え過ぎですよねみたいな別の次元の提案を引っさげてきたときの空気になってる」と思ったもんね。3+1バックだけでも頓狂なのに、あれでしょう、スターリング下げて、ギュンドアン入れて、デ・ブライネを何ていうか、どことも言い難い場所においたんでしょう?1秒も観てないけど創造つくよ。絶対そう。スターリング出さないことは別にいいんですけども。

 

翌日の夜、職場の後輩(リヴァプールの大ファン)が「んっふ~」と言いながら近寄ってきたときは、耐え切れず二人で大爆笑してしまいましたとさ。