2016シーズン ニワカと学ぶUCIワールドチーム・プレビュウ vol.3

◆チーム・カチューシャ Team Katusha

ロシアン名物きな臭い噂でおなじみ。旧ソ組がとっ捕まりまくるアスタナに、ティンコフさんが「捕まらん限りは何でもやれ(意訳)」のティンコフ、そしてドーピング&コカインのカチューシャという黒い三連星である。

去年はグランツールホアキン、スプリントのクリストフ、短めステージレースのシュピラクとポイントゲッターがいたおかげでUCIポイントランキングはモビスターに次ぐ2位。内訳を見ると、クリストフはフランドルを含めて春先にアホほど勝ちまくり、ホアキンバスク1周で2勝+総合優勝、TDFで2勝、ブエルタで1勝+総合2位、シュピラクはスイス1周で総合優勝、ロマンディ2位、パリ~ニース3位。

それ以外には、パオリーニおじさんがヘント~ウェヴェルヘムで優勝(そしてコカイン)、チェルネツキーがカタルーニャ1周で1勝、さらに若手のザカーリンがロマンディ総合優勝とジロ1勝と大きく成長した。グランツールの総合で本気で優勝を狙うのはエース的にもアシスト的にも少々苦しいところがあるが、全方位的に満遍なく戦力が揃っている感じ。とくにスプリントチームはハラーとグアルニエーリというそこそこの実力者に加え、トレインを割ときっちり組めるのが強い。

今年は昔のドーピングがバレたG・カルーゾ、コカインのパオリーニをクビにした他、ホアキンの右腕だったモレーノがホアキンと喧嘩してモビスターへ。さらにロシア王者のトロフィモフがティンコフに引っこ抜かれてしまい、戦力的にはいずれも結構痛い。とくにジロ総合10位のトロフィモフにモレーノの離脱はホアキンにとって苦しいところで、新加入のヴァンデンブルックとターラマエでどんだけ埋まるやら。ヴァンデンブルックは過去TDFで4位に入った実力者だが、昨年はさっぱりで年齢的にも苦しいところ。ターラマエも優秀なアシストではあるのだが、そこまで山岳で粘れるかっつーと難しいような・・・

期待できそうなのは中堅から若手の成長で、まずザカーリンは今年のパリ~ニースで総合4位、クイーンステージも制しており、グランツールでトップ10が狙えるんじゃなかろうかというところ。あとお前は誰だのクズネツォフがヘント~ウェヴェルヘムでカンチェに競り勝って3位。元U23世界王者のビストロムもそろそろメジャーなレースで片鱗を見せてほしい。

 

年齢的にもアシスト的にも厳しいホアキン、体調が整わないクリストフということで昨年ほどの成功は難しそうだが、若手がどんだけ支えられるか。それが出来ないと、一気に成績が落ちそうな気もする。

 

アレクサンデル・クリストフ ノルウェー スプリンター 

デーゲンコルプと並ぶクラシック系スプリンターとして才能を開花させた北の偉丈夫。2014年のミラノ~サンレモに始まり、2015年はツアー・オブ・オマーンやらパリ~ニースやら勝ちに勝ちまくり、現時点でUCIワールドツアー最多勝。さらにロンド・ファン・フラーンデレンを制覇してモニュメント2勝目を加えた。

ノルウェー人には多いのだが、こいつも割と上れるスプリンターである。その分平地でのピュアなスプリントはキッテルたちトップクラスにやや劣る。

 

ホアキン・ロドリゲス スペイン クライマー/パンチャー

激坂めちゃめちゃ上りおじさん。小さい。30を過ぎてから坂のスペシャリストとして開花し、グランツールでのステージ優勝14回、ジロ・ディ・ロンバルディア2回、フレーシュ・ワロンヌ1回、UCIワールドツアーのポイントランキングでも1位が3回と勝ちまくっている。グランツールで勝つにはTTがさほど速くなく、長い山への対応力もやや不足している感があるが、毎年確実にポイントは取ってくる。今年のTDFではとあるステージのコースデザインを任されたが、余りにも山岳がきつ過ぎて自分も対応できなかったというお茶目なおじさん。 

 

イルヌール・ザカーリン ロシア オールラウンダー 

え、お前そんなに強かったの!?でおなじみロシア人ライダーの中でも、昨年一気にエース的存在に。ツール・ド・ロマンディでフルームを倒して総合優勝、ジロでもステージ1勝、今年もパリ~ニースのクイーンステージを制した登れる男。まだ26歳、国内TT選手権を制した力もあり、グランツールの総合でも面白い選手になりそう。タタール出身。 

 

シモン・シュピラク スロヴェニア オールラウンダー 

え、UCIランキングこんな上?(2013-15の合計で世界18位)。いや、私がニワカなのが悪いんだが、あんまり日本で名前を聞かないなという印象。ワンデーや短めのステージレースに強く、ツール・ド・ロマンディで優勝1回2位2回、ツール・ド・スイスで優勝1回。今年のツール・ド・スイスではクイーンステージ(一番高い山)で3位に入っており、山もだいぶ対応できるようだ。あとTTも結構いける。グランツールやモニュメントは現状厳しそうだが、このままUCIワールドツアーランクのステージレースで上位に入り続けるというのも、また一つの道ではある。 

 

 

◆チーム・ジャイアント・アルペシン Team Giant-Alpecin

厳しいーッ!!!とっても厳しいーッッッ!!!チーム創設以来の大スター・キッテルが抜け、スプリント3番手のメズゲッツも抜け、今年はスプリントから総合のチームに転身だ、と思っていたらまさかのキャンプ中の交通事故でデゲンコルプ、バルギルを含む主力選手が大量離脱という不運。デゲは指が千切れかかっていたという大事故で、復帰できそうで本当に良かったよ。まさか最大の障壁がイギリス人の婆さんだったとは誰が予想しようか。この写真も「僕たちはまだ気づいていなかったんだ・・・」みたいな感じになってしまった。

そのデゲンコルプは昨シーズンミラノ~サンレモにパリ~ルーベを制し、クラシックの第一人者に躍り出たのだが、今年はカンチェさよなら会に参加できず何とも残念。本当ならボーネン&カンチェ時代に変わるサガン&デゲ時代の到来だと思っていたのに。グランツール頃には復帰できるそうなので、気長に待ちたい。デゲの離脱で春クラシックはデバッケルが一応のエースを担っているが、さっぱり優勝に絡めず、やはりデゲにかかる負担は大きい。

http://media.gettyimages.com/photos/bert-de-backer-of-belgium-and-team-giantalpecin-looks-on-prior-to-the-picture-id468650908

 主な新加入はロットNLユンボのテンダムのみで、それ以外はほぼネオプロ。ドゥムランの総合化(しかもいきなりブエルタ優勝か、みたいな)もあって、グランツール総合を支える人材としての加入だが、それ以外がほとんどいないとは大丈夫なのか。ゲシュケがいるとはいえ、ブエルタで必死にドゥムランを支えていたクラドックもキャノンデールに行ってしまった。事故だから仕方ないが、今年は相当に苦しい。IAMと最下位争いをする展開もあり得そう。

 

ヨン・デゲンコルプ ドイツ スプリンター/クラシック・スペシャリスト

笑顔と口ひげがトレードマークのスプリンター。同じチームのキッテルに比べ、平坦スプリントでは劣るものの、石畳や坂への対応、独走力で大きく優る。

パリ~ツール、ヘント~ウェヴェルヘムといった名のあるワンデーレースに加え、今年はスプリンターの夢ことミラノ~サンレモに、「クラシックの女王」パリ~ルーベも制して、クラシック界の第一人者に上りつめた。また、ブエルタには相性が良く、すでにステージ通算10勝。ブエルタは山ばっかりなので他のスプリンターが嫌がるのだが、そこにある程度対応できるからと思われる。 

 

トム・ドゥムラン オランダ オールラウンダー

TOKIOの長瀬と松山ケンイチを合成して叩き潰した感じのオランダ人。花の90年世代の1人。モササウルスの化石で有名なマーストリヒトの出身である。2014年の世界選手権個人TTで3位に入り、次世代のTT王者に一番近いと思われていたが、去年のブエルタで総合ライダーとして大爆発。実質最終ステージの山岳で崩れるまでは1位をキープし、あわや優勝かという騒ぎになった。

本格的にグランツールで総合が争えるか、今年以降に期待。ただし最近のグランツールはスプリントを狙うチームと総合を狙うチームで思いっきりメンバー構成が異なるので、キッテル、デゲンコルプという2大スプリンターを抱えるジャイアントでやっていくのはちと難しい気もする。クライマーが揃う母国のロットNLに移籍した方が良いんではないだろうか。→上記の通り、チーム自体が総合向けに転換。大丈夫かな。 

 

2016シーズン ニワカと学ぶUCIワールドチーム・プレビュウ vol.2

◆ディメンション・データ Team Dimension Data

 

関係無いけど、レイナールト・ヤンセファンレンスブルフとジャック・ヤンセファンレンスブルフが赤の他人だということに衝撃を受けています。

 

MTNクベカがワールドチームに昇格し、名前もディメンション・データに。MTNがスポンサー撤退したら、NTTデータの子会社が釣れたという。データの取締役会にも上げたんだろうかこの話。いくら出してるんだこれ。

 

 

チームとしてはアフリカ発としても、プロコンとしても大成功だったはず。テクレハイマノットがドーフィネとTDF(数日間)で山岳賞ジャージを着用、カミングスがステージ勝利を挙げ、ブエルタでも伏兵スバラーリがスプリントで1勝した。

そして今年はスプリント方面を中心に一大補強を敢行。経験のあるベテランといえば聞こえはいいが、昔の名前で出ています感があるのは新興チームとしては仕方ないところかもしれない。

 

まずカヴェンディッシュに姉のレンショウ、母アイゼルとカヴ一家を総出で獲得。ツィオレック、ゴスは放出したものの、元からいたボアッソンハーゲン、ファラー、ボス、レギギと合わせて、スプリントチームは相当に強化が進んだ。奇しくも昨日のシェルデプライスでキッテルに競り負け「昔は俺もあーいう加速できたけどもう無理」と漏らしたように、カヴにかつての力は無く、さらに今年はリオ五輪のトラックに相当注力する予定のようだが、それでも以前業界屈指のスプリンターではある。今年も早速カタールで総合優勝。オマーンではボアッソンハーゲンが2勝し、ランカウィでもレイナールトの方のヤンセファンレンスブルフが総合優勝。順調な滑り出しのようだ。

 

 

総合/山岳系ではエースのマインティースを手放したが、ブエルタ山岳賞のフライレ、昔ブエルタで総合優勝もあるで!と騒がれた(そして全然そんなこと無かった)アントン、ジャパンカップでおなじみのハース、頼れる万能アシスト・シウツォウの4人を補強。総合狙いというよりは、みんなしてスプリンター勢を守るための構成と思われる。

 

多分、目標はカヴを中心としたスプリントチームでのステージ勝利量産。あとはカミングスもそこそこ勝ってくれそうだ。カミングスはすでにティレーノとバスク1週でそれぞれ1勝。頼れるおっさんである。

 

 

マーク・カヴェンディッシュ イギリス スプリンター 

人呼んでマンクス・ミサイル。オートレースで有名なマン島出身だからマンクス。2005~2012年頃までは文句なしに世界最強のスプリンターであり、ミラノ~サンレモ、グランツール全てのポイント賞、平坦基調の世界選手権と、スプリンターが取るべきタイトルは全部取っている。TDFでは合計26勝、ジロとブエルタを合わせるとグランツールで合計44勝しているという怪物である。あるが、最近は少々衰え気味で、キッテルやグライペルと比べると存在感が薄く、来年はどこかに移籍するという噂も。ピュアッピュアなスプリンターなので、坂は全然登れない。

スプリンターの割にはとても小さい。そしてよく拗ねる。最近も「ブエルタは年々アホらしくなってきてる(訳:山ばっかじゃねーか勘弁しろよ平地増やして下さいお願いします)」と発言してちょっとした話題になった。

 

エドヴァルト・ボアッソンハーゲン ノルウェー スプリンター 

神童の誉れ高くロードレース界に現れた、らしい山が登れるスプリンター。22歳にしてエネコ・ツアー、ツアー・オブ・ブリテン、ヘント~ウェヴェルヘムと名のあるレースを制しており、そのときの衝撃は凄かったとか何とか。でもその後スカイで便利屋扱いされて伸び悩んだ。ディメンション・データでは輝きを取り戻し気味

 

マーク・レンショウ オーストラリア スプリンター 

カヴェンディッシュの姉、兼最終発射台として数々の勝利を勝ち取ってきた名リードアウト。あくまで「姉」なのが、カヴェンディッシュのキャラを表していると認識頂いて結構です。ジーベルクはどうやってもグライペルの「妻」だろうし。

一時はラボバンク(今のロットNLユンボ)に移籍してエースを任せられたが、全く勝てず。カヴェンディッシュに泣き疲れたこともあって、再度エティックス、今年からはディメンション・データでコンビを再結成している。

 

◆エフデジ FDJ

フランスのエース、ピノーちゃんとデマール王子率いるフランス宝くじ公社。2015年はワールドツアー4勝+ロマンディ1周の若手賞と、まあそこそこの成績。期待されたピノーはTDFで早々に遅れてしまい、途中のステージ優勝もカミングスにかっさらわれと良いところが無かったが、ラルプ・デュエズで何とか根性を見せて上手いことまとめた。

 

一方デマールはベルギー1周で2勝しただけと相当にショボい成績に終わったが、今年は何といきなりミラノ~サンレモを制覇。絶対チームも本人も本気で狙ってなかったと思う。

 

それ以外のメンバーでは、ジロ9位のジェニエス、2013年にブエルタ1勝のエリッソンドがサブエース格か。ぶっちゃけあんまり印象は無いが、良い選手だよね。Ciclissimoによると今年の目標はツールでピノーがトップ10、五輪でピノー、世界選でデマールが総合優勝を狙うとのこと。TTが長いらしい五輪でピノーはきついと思うけど、デマールは調子良さそうなので良いとこ行くかも。デマールを支えるロワ、レザ、ルーのピンポンパントリオにも注目。

 

 

 

ルノー・デマール フランス スプリンター 

フランスのお坊ちゃんスプリンター。いや本当にお坊ちゃんかどうかは知らないが、ライバルのブアニがああいうキャラなので、自然とそういうキャラ付けがなされている。2015年、ブアニを切ったFDJの押しも押されぬ大エースとなったが、全然勝てなかった。それでこそフランス人・・・と思ったら2016年はなんとミラノ~サンレモでまさかの勝利。本人もびっくりし過ぎて「私の年収低すぎ!?」みたいなリアクションをしていた。坂も石畳も行けるので、将来的には石畳系クラシックを狙いたいらしい。

 http://media.gettyimages.com/photos/arnaud-demare-of-france-and-team-fdj-crosses-the-finish-line-during-picture-id481438180

 

ティボー・ピノー フランス クライマー

バルデと並ぶフランス期待の星。2014年のTDFでは3位&新人賞を獲得し、2015年は更なる飛躍が期待されたが、序盤から思いっきり遅れて早々に表彰台への望みが無くなり、口を開けばぐちぐち言っていたので「キャプテン・ネガティブ」とあだ名されてしまったとかしまわないとか。平地対応もちと不安だが、何より下りがごっついヘタクソなのが勿体ない。もう、めっちゃ遅いの。転ぶし。しかし考えてみれば90km/hでアルプスを下れるサガンみたいなのが異常なのであって、普通人類の身体は山をあんな速度で下るようにはできていない。

散々だった去年のTDFだが、最後にラルプ・デュエズ(ごっつい険しい山岳)でど根性の逃げからステージ優勝。なんとか面目を保った。

 

 

 

◆BMCレーシング BMC Racing Team

総合系ではスカイ、モビスター、アスタナ、ティンコフに次ぐ第5勢力。ワンデーはジルベールとGVAことヴァンアーヴェルマート、総合はヴァンガーデレンとエース級は充実しているが、アシスト勢がちょっと弱い気もする。

 

2015年はワンデー組が絶好調で、とくにGVAがティレーノ1勝、ロンデとルーベどちらも3位、アムステル5位、ツールで1勝と大活躍。ジルベールもジロでしっかり2勝した。一方でTJことヴァンガーデレンはTDFもブエルタも体調不良と怪我でリタイアとひたすらついて無かった。90年世代に追い抜かれる中で、今年こそTDFで表彰台に上りたいところ。

 

もうちょっと山岳系のアシストが充実してたらな~・・・というところで、スカイからフルームの右腕リッチー・ポートが加入。アシストだと頼れるけどエースに回すとしょうもない人だという認識なんですけど、大丈夫だろうか。とりあえずパリ~ニースは頑張っていたが。

 

あとデニス、大怪我から復帰したフィニーの若手陣には未来を感じる。とくにデニスは総合系でもいけるんではなかろかみたいな話が出ていた。ジルベール、GVA、あとサムエル・サンチェスと主軸が高齢化しつつあるので、そこいらの成長が欲しいところ。 

 

リッチー・ポート オーストラリア オールラウンダー 

フルームの右腕として2回のTDF制覇を支えた名アシスト。アシストとしては爆裂に登れる上、TTも強い。今年のTDFではたび重なる攻撃でフルームがついに決壊寸前、という絶妙のタイミングで助けに飛んできており、相手にするとほんとうっとうしい。

しかしグランツールでエースとして走るとなぜかダメダメ。今年はシーズン序盤のステージレースで勝ちまくり、押しも押されぬエースとしてジロに臨んだが大失敗した。エースとして走りたい!ということでBMCに移籍が決まったが、アメリカのチームだし、ヴァンガーデレンいるし、大丈夫だろうか。ちなみにインタビューでもエースのときは塩らしいのに、アシストのときは「強過ぎてすいませんねぇ~」とか言ったり、わりと調子こくタイプ。

 

グレッフ・ヴァンアーヴェルマート ベルギー クラシックスペシャリスト/パンチャー 

20台前半でブエルタのポイント賞を獲ってはいたのだが、脚光を浴び出したのは最近っぽい、世界屈指のパンチャー。ここ2年はパリ~ルーベ、ロンドで表彰台に上り、TDFでも念願の初ステージ制覇を成し遂げた。上り坂でのパンチ力と終盤のアタックに優れるが、多少勇気があり過ぎるというか、静観でよくない?というタイミングでも無理目にアタックを仕掛けて結局2位、という場面が多い2位ハンター。あとなぜかサガン相手にはめっちゃ強い。

現在のベルギー人選手の中ではジルベールと並ぶ有力選手なのだが、ジルベールボーネンの2人に華がありすぎて地味な印象は拭えないのがちと可哀想だなと思う。

 

ローハン・デニス オーストラリア TTスペシャリスト 

ドゥムランと並ぶ、花の90年世代屈指のクロノマン。2015年はTDFのTTステージでカンチェッラーラやマルティンを破って勝利した。2015年にはツアー・ダウンアンダーも制している。背が低い顔のくせに意外と長身(181cm)。総合型の選手への脱皮を目指しているらしい。TTはグランツールでも平気で1分2分の差が付いてしまうので、TTが強いのは相当有利。

http://media.gettyimages.com/photos/rohan-dennis-of-australia-riding-for-bmc-racing-smiles-after-chipping-picture-id485038312

 

ティージェイ・ヴァンガーデレン アメリカ オールラウンダー 

押しも押されぬアメリカ最強のライダーであり、”ファンタスティック4”に最も近い男と称されるBMCの総合系エース。

今年のTDFでは「ファブ4とか言っちゃって、あれ、僕も入って良くない?ん?わかんないけど?わかんないけど?」みたいなことを言っており、実際に優勝を狙えそうな走りを見せていたのだが、発熱であえなくリタイアしてしまって残念無念であった。まだ若いので、今後もグランツールの総合争いには確実に絡んでくるはず。

 

フィリップ・ジルベール ベルギー パンチャー 

「パンチャー」の代名詞みたいな元世界チャンピオン。2011年にはアルデンヌクラシック3つを全て勝ち、翌年にはUCI世界ランキング1位。グランツールでも通算でステージ9勝しており、好調時はマジで鬼のように強い。激坂での登坂力が持ち味だが、スプリントや終盤でのアタックなどレパートリーはさすがに広く、本格的な山岳やド平地でなければ大体優勝が狙えるんではなかろうか。かつての最終局面での失速っぷりから日本では「ジルベール黄金のタレ」と名付けられているが、最近は絶対的なアタック力が落ちた代わりに、判りやすいタレっぷりも無くなっている気がする。

 

◆チーム スカイ Team Sky

悪の軍団スカイ。昨年も嫌らしい強さで、ここ5年で3回目のTDF優勝。その他ではリッチー・ポートがダウンアンダー1勝、パリ~ニース2勝+総合優勝、カタルーニャ総合優勝の荒稼ぎに、トーマスがE3優勝。復活のエナオポーランドでステージ1勝、ケノーがドーフィネで1勝に、キリエンカ、ヴィヴィアーニとロッシュがそれぞれジロとブエルタで計3勝を挙げ、さらには大エース・フルームがドーフィネとTDFを制して最大の目標を達成。これで終わりか・・・と思っていたら何と何とキリエンカちゃんが世界選のTTで優勝のサプライズ。大成功といってよいシーズンと思われる。

今年はついにエースになりたい!と言いだしたポートがBMCへ移籍。ジロはボロッボロだったが、大丈夫か。どうも精神的に弱い感があるよね。

あとはウィギンスがロードを引退、アイゼルとシウツォウがディメンションデータに去った一方で、ランダ、ベニャト・インチャウスティ、クフャトコフスキにファンポッペル弟と超豪華補強を敢行し、プロトン1の戦力をさらに強化してしまった。

 

とかく山から丘からスプリントまで、アシストからエースまで隙が無い。TDFで他のビッグ3を圧倒したフルームに、コンタドールに勝つまで総合系として成長したトーマス、大ブレイクしたクライマーのランダで総合系は3本柱が揃い、さらにエナオ兄も控えている。またアシスト勢が強いのがここのいやらしいところで、前のチームでエース(格)だったケーニック、ロッシュに、山岳はプールスとニエベ。ニエベのおっさんもグランツールで総合トップ10が5回ですからの。どこでも安定して牽いてくれるキリエンカに、平地はロウ、スタナード、ケノーのイギリス組にお任せ的な。強すぎるでしかし。

http://media.gettyimages.com/photos/mikel-nieve-of-spain-and-team-sky-in-action-during-the-eighth-stage-picture-id450658528

さらに弱点だった、というかあんまりやる気が無かった春クラシックにクフャトコフスキが来て、ヴィヴィアーニとスウィフトのスプリント組も結構いけているという。

 

うーむ。怖いのはフルームの負傷癖とランダの謀叛くらいってか。フルーム抜くくらいで一番バランス取れると思うんですけど。

 

クリス・フルーム イギリス オールラウンダー 

今年のTDF王者であり、ファンタスティック4最後の一人。下を見ながらシャカシャカ走る変わったフォームだが、登坂力はとにかく強烈。インターバル的な登りでのスプリントにも強い上、一回引き離してもゾンビのように復活してくる。その上TTにも強く、感情の薄い顔と相まって憎たらしいことこの上ない。

性格的にも負けん気が強く、アシスト時代にエースのウィギンズに「お前おっせえんだよ俺にエース譲れ」とぶち上げたことがある。あまりの強さからフランスでは人気が無く、今年のTDFでは観客から尿をひっかけられたりしていた。さすがにそれは酷過ぎるわ。

 

 

 

ヴァシーリイ・キリエンカ ベラルーシ TTスペシャリスト 

一家に一台、山でも平地でも頼りになる鉄仮面。雨だろうが風だろうが無表情で淡々とエースを牽き続けてくれる。世が世なら社会主義労働英雄を受賞していたのではなかろうか。TTスペシャリストとはいうものの、山も結構登れる。たまに笑うが、笑顔がとても下手。

フルームのTDF制覇に貢献し、グランツールでも計3勝。アシストとしては文句のつけようのないキャリアを歩んでいたが、2015年はジロでのTTステージ優勝に加え、まさかの世界選手権TT部門を制覇してしまった。さすがにここまで大スターになるキリエンカちゃんは想定していなかったというか。そして思ったとおり、表彰式の笑顔は怖かった。 

 

オポルト・ケーニック チェコ オールラウンダー 

またの名をケーニッヒ。3年連続グランツールでトップ10入りの有力選手。このクラスの選手がアシスト、しかも第2、第3ランクのアシストに回っているのが悪の軍団スカイの嫌らしいところだよな。山で判りやすいアタックをするわけではないが、気が付くと上位にいるという、名前は銀河英雄伝みたいなのにスタイルはコソ泥っぽい男。

 

エリア・ヴィヴィアーニ イタリア スプリンター

イタリア屈指のスプリンター。まだ26歳と自転車選手としては若い方。トラックレースとの兼用なこともあってこれまでメジャータイトルは少なかったが、2015年はグランツールでの初ステージ勝利に加え、ツアー・オブ・ブリテングライペルカヴェンディッシュの2大巨頭を下して勝利。最高速度や加速力は彼らに劣るが、コース取りが上手い感じがする。そんな気がする。

 

ニコラス・ロッシュ アイルランド オールラウンダー 

父のスティーヴンはTDF、ジロ、世界選手権の三冠を達成した伝説的ライダー。自転車界の長嶋一茂的ポジション。と言ってもニコラス自体も名選手で、ブエルタではステージ通算2勝しており、トップ10フィニッシュも2回。グランツールのエースを任せるにはちと物足りないが、アシストとしては相当に有能。

 

ミケル・ランダ スペイン クライマー 

2015年に大ブレイクしたバスク人。ジロではステージ2勝に総合3位、ブエルタでもステージ1勝。エースのアルーよりも登れていたのだが、アスタナがとにかくアルー優先の作戦をとったため露骨にふてくされていた。今年は悪の軍団スカイに移籍で、ジロではエースを任せてもらえるらしい。まあリッチー・ポートの穴埋めだわな。TTが遅いのが少し気になるが、登坂力は相当なもの。眉毛の太さも相当なもの。

 

セルヒオ・エナオ コロンビア クライマー

よくエナオモントーヤと呼ばれるコロンビア人。ロードレース界はスペインおよび南米系の名前をどう呼称するかについて未だにもてあましている節があり、第二(もしくは母方の)苗字も併せて呼ぶので、ウランウランとかアナコナゴメスとか、多少変なことになっている。素直にエナオウラン、アナコナでええんや。コンタドールベラスコとか、バルベルデベルモンテとかって呼ぶわけじゃないでしょうに。

コロンビア人ライダーには割と多いのだが、高地出身のため素の状態で血液が(常人が)ドーピングした状態に近くなっているらしく、2014年にはそのせいでレースに出られない時期を過ごした不幸な人。登坂力は折り紙つきで、アルデンヌ系クラシックでは上位を伺う一人。まあスカイにいる限りは山岳アシストだろうが。見た目は何というか、「エナオどん」と呼びたくなる感じ。

 

ベニャト・インチャウスティ スペイン オールラウンダー 

モビスターにてアレハンドロ・バルベルデ師匠の子分を務めるバスク人コンタドールバルベルデホアキンの3巨頭に続く存在がいないと囁かれるスペインの中では、そこそこ若くて有能。

ジロ、ブエルタではトップ10入りの経験もあり、今年のジロでもバルベルデ、キンタナの2大エース不在の中、山岳賞争いに絡んでいた。キンタナが今後TDF制覇を狙う中で鍵になる存在・・・と思っていたら、スカイに移籍しよった。

Benat Intxausti of Spain and Team Movistar in action during Stage Six of Vuelta al Pais Vasco on April 12, 2014 in Markina, Spain.

 

ゲラント・トーマス イギリス(ウェールズ) オールラウンダー 

トラックとロードの兼用選手。トラックではチーム追い抜きで北京、ロンドンと五輪を2度制覇。ロードではフルームの忠実なアシストとして、横風にブッ飛ばされて畑に落ちたり、下り坂で突き飛ばされて鉄柱に頭ぶつけたりしながら頑張っている。

パリ~ルーベのジュニア部門を制したり、E3ハーレルベーケで優勝したり、ヘント

ウェヴェルヘムで表彰台に上がったり、クラシックには元々強かったのだが、今年のTDFでは誰もが驚く脅威の山岳対応力を披露。そのうちグランツールの総合が狙えるかもしれない。

ちなみに鉄柱に頭ぶつけたときは、医者の「あなたの名前は?」という確認に「クリス・フルーム」と答えたりする、ジョーク精神のある男。

 

ミハウ・クフャトコフスキ ポーランド オールラウンダー 

日本では「クビアトコウスキー」と呼ばれることが多い、現世界チャンピオン。

まだ25歳だがストラーデ・ビアンケ、アムステル・ゴールドレース、世界選手権を制しており、パンチャー寄りのオールラウンダーとして90年世代のトップランナーの1人。坂でのパンチ力はあのバルベルデさんとも張り合えるレベルである。

何でもこなせるという意味ではオールラウンダーではあるのだが、現状本格的な山はちょっと厳しいんじゃね?という感じ。エティックスGMのルフェーヴルは「ミハウがツール?あー無理無理!」とここでもそっけなかったが、まだ若いので将来的にはグランツールの表彰台も狙えるかもしれない。

2016シーズン ニワカと学ぶUCIワールドチーム・プレビュウ vol.1

◆オリカ・グリーンエッジ Orica GreenEDGE

 

若くて明るい、スプリントとTTTのチームという印象。2015年の主な勝利は、インピーがダウンアンダーのポイント賞、パリ~ニース第3でマシューズ。
あとジロ、スイスでも1勝ずつ、アルバジーニがロマンディで2勝、チャべスがブエルタで2勝。途中までリーダー。

イェーツ兄弟がドーフィネの新人賞とサンセバスチャン1勝。どっちがどっちかはよくわからない。そしてユワンがブエルタ1勝にアジアで勝ちまくり。

まあまあの成績だったのではないでしょうか。とくにチャべスとユワン、イェーツ兄弟が成長。ゲランスが怪我ばっかしてたのは残念。

  

 

今年は上れるおっさん、チュルカとプラサを補強。プラサは去年カムバック賞的な活躍。あとジャイアントでトレイン要因をしていたメズゲッツ。
今年の目標はイェーツ兄弟とチャべスの総合順位を上げつつ、スプリント系でステージ勝利を重ねていく感じかな・・・と思ったところで、早々にダウンアンダーで大爆発。
ゲランスがステージ2つと総合優勝、ユワンも2勝。ぶりぶりマシューズくんもパリ~ニースで2勝にポイント賞もゲットで幸先は宜しい。 

http://media.gettyimages.com/photos/australian-cyclist-caleb-ewan-of-orica-greenedge-celebrates-on-stage-picture-id505590850

マシューズは登れるので、サガンがいなけりゃグランツールのポイント賞も狙えるかも。いなけりゃだが。ユワンにはかつてのカヴェンディッシュのように爆発してほしいところ。

 

マイケル・マシューズ オーストラリア パンチャー 

若手のポップシンガーっぽい(バカっぽい)笑顔が特徴。いつ見ても歯が輝いている。あだ名は「Bling(キラ☆キラ)」。親父に付けられたらしい。親父、毒あるな。

スプリントのあるパンチャーといった風情で、アルデンヌ系クラシックでは優勝候補の一人。グランツールでも結構ステージを勝っている。

 

サイモン・ゲランス オーストラリア パンチャー 

ジルベールらと並ぶパンチャー界の第一人者。リエージュ~バストーニュ~リエージュ、ミラノ~サンレモという二つのモニュメント制覇に加え、2014年には世界選手権でも2位に入った。坂にも強いしスプリントもできる。謎の落車癖が惜しいところ。ジャガイモみたいな頭をしている。

 

サイモン・イェーツ イギリス オールラウンダー 

双子のイェーツ兄弟の片っぽ。もう一人のアダムとともにイギリスの次代を担う選手として期待されているが、どっちがどっちなのかは全く判らない。トラック競技ではすでに世界チャンピオンになっているが、今年はロードでもバスク1周で5位、ツール・ド・ロマンディで6位、クリテリウム・ド・ドーフィネで5位と、ステージレースでの才能を開花させている。双子なのでどうしてもスカイラブハリケーン的な技を期待してしまうのだが、来年は何か編み出してくれないだろうか。

 

  

◆イアム IAM

http://media.gettyimages.com/photos/cycling-cross-the-finish-line-during-stage-nine-of-the-2015-tour-de-picture-id480509108

地味。あんまり書くことが無い・・・。まあワールドツアー1年目だから仕方ないが。ワールドツアー勝利はペルッキの2回のみ。マティアス・フランクは頑張っていた。


今年はティンコフのツァウクが加入。なんとロンバルディアを勝ったことがあるらしい。一方でシャヴァネルライヒェンバッハが離脱。戦力的には後者の方が痛い気がするが、シャヴァネル離脱で露出は減ってしまいそうだ。

 

 

 

あとオリカから来たハワードはスプリンターらしい。Ciclissimoの名鑑によるとペルッキは「今年はグライペルやキッテルにも勝てる」との意気込み。

まじですか。まあハウッスラーはいるが・・・

あとブレンドレ、コッペルの2人は、TT強い。目標はフランクのグランツールトップ10入り・・・を狙いつつ、ペルッキで何回か、と言う感じか。

 

 

 

◆ランプレ・メリダ Lampre Merida

 

予算規模最小、と言いながら、去年はジロでポランツ、ウリッシ、モドロで4勝。プラサおじさんがツールブエルタで逃げて1勝ずつ、オリヴェイラブエルタで1勝。ルイ・コスタUCIポイントトップ10に入っており、大成功だったのでは。

 今年はプラサがオリカ、オリヴェイラがモビスターに去ったが、ルイ・マインティースとモホリッチ、新城が加入。

 

 マインティースは去年ろくなアシストがいないクベカでブエルタ10位、まだ24歳なので将来有望な総合ライダーである。あとベラルーシ人のコシェヴォイはどっかで頑張ってた気がする。カリフォルニアか?ブエルタかもしれない。

 

今年もポランツウリッシのパンチャーコンビに、モドロのスプリントでそこそこ勝利が狙えるのではと思うけど、一応のエースであるルイ・コスタがどうにも煮え切らない。

グランツール狙いは大失敗に終わったので、クラシックなりステージレースなりを狙う方が良いと思うのだが、エースの目標がそこというのは、ちょっとどうなん、みたいな。

マインティースの成長待ちか。グランツールではかき回してくれるだろう。あと新城は可哀想だった。早期回復を祈る。

 

 

◆エティックス・クイックステップ Etixx Quick-Step

豪華タレント揃えて4年連続ワールドチーム最多勝。なのだけど、なのだけど、なんか失敗感。3vs1でスタナードに一蹴されたりとか。テルプストラの2位ハンターぶりとか。存在感激薄なカヴェンディッシュとか。ボーネン何しにジロに来たん事件とか。
要するに、本来のフィールドであるべき北のクラシックで「数的優位いけるやん!」→「あぁ~」を繰り返しているからである。

 

結局大きな勝利はアムステルのクフャトコフスキ、ジロのケイセ、TDFの3勝くらいでしょうか。まあ3勝って凄いことなんだけど。ちなみにシュティバル、マルティン、カヴェンディッシュ
今までボーネンというスーパーパワーがいたからこその精鋭軍団だったのだが、北のクラシックは何ぼ良い選手を揃えても最後はエースの力次第なところが大きいので、ボーネンが衰えてしまうと一気に烏合の衆状態ちゅうことであろう。


今年はカヴェンディッシュ、クフャトコフスキ、ウランと、スプリント、アルデンヌ、総合のエースがそれぞれ抜けた一方で、スプリントは元世界最強キッテルと、神童ガビリアに、ランプレのリケーゼ、アルデンヌはダン・マーティンを補強。あとはルクセンブルクのユンゲルス。

 ということで、総合はやる気なしで思いっきりクラシックとスプリントに振った編成だと思われる。さすがにマーティンで総合はきつかろう。

カヴェンディッシュは明らかに衰えが来ていたので、多分スプリントは戦力アップ。良くも悪くも個人で頑張れのチームなので、誰が列車を組んでくれるのか定かではないが。ガビリア、メールスマン、トレンティンでやるんだろうか。

 

 

また、ミラノ~サンレモは転んでしまったが、ガビリアには期待。すでにカヴ、サガン、ヴィヴィアーニにも勝っている。30近くが全盛期のロードレースで、20代そこそこで勝ちまくるところが観たい。

中東で態度悪すぎ!と怒られたテルプストラと、シュティバルはそれなりに自由にやるんだろう・・・と思っていたら、実は一番組織的に動くのがエティックスだった。シュティバルはそろそろクラシックで大きいタイトルが欲しい。男前だし。マーティンとアラフィリップを揃えたアルデンヌ組も強力。

えー、それであとは、ボーネン大将。衰えに加えて、去年の大怪我もあってさらに苦しくなりそう。本人も辞め時を見失っているような気がするが、やっぱりカッコいいので、最後にもうひと花欲しい。

 

と言ってるそばから、E3ハーレルベーケ、ヘント~ウェヴェルヘムと連続して「数的優位いけるやん」→「ああ~」をやらかした模様。ロンデも勝てず・・・→パリルーベでは失敗し続けていた王道の試合運びがハマり、ボーネン復活の2位。

 

トニー・マルティン ドイツ TTスペシャリスト 

世界選手権のTT部門を3回制している、現代ロードレース界におけるTT第一人者の1人。カンチェラーラがよりクラシック寄りにシフトした後は、実質的に世界最強のクロノマンとして君臨している。元々総合系の選手だったらしくそこそこ登れる上、逃げ切りに加えてアタックも可能。TDFでは殆ど1人TTのような超長距離逃げや、終盤でのアタックなど、TT以外のステージでも勝っている。エラの張った顔とデカイ口が特徴。陸に上がった鯉みたいな顔で爆裂に牽く。 

 

ズデニェク・シュティバル チェコ クラシックスペシャリスト 

シクロクロスの世界チャンピオンに3度輝いた、エティックスの主力の1人。膠着した終盤での鋭いアタックが持ち味で、スプリント力もそこそこある。もう30間近だが、今年はパリ~ルーベで2位、ストラーデ・ビアンケで優勝、ツールでもステージ優勝と勝てるところを見せており、ボーネンカンチェラーラ後の新たなクラシック王になれる存在ではなかろうか・・・と思っていたけど厳しそう。

 

 

ニキ・テルプストラ オランダ クラシック・スペシャリスト 

オランダの逃げ番長。パリ~ルーベで優勝1回、3位1回、ロンド・ファン・フラーンデレンでも2位1回と、北のクラシックにはめっぽう強い、クラシックの第一人者。スプリント力は無いが、とにかく終盤での長めのアタックに強い。一方で逃げたはいいけどその後の判断が煮え切らず、結局優勝を逃すシーンもあったりして、この辺は長年トム・ボーネンという絶対的エースを奉じてきた影響かもしれない。

http://media.gettyimages.com/photos/race-winner-niki-terpstra-of-the-netherlands-and-etixx-quickstep-to-picture-id463348180

 

ダニエル・マーティン アイルランド パンチャー 

すっごい眠たそうな目が特徴。リエージュ~バストーニュ~リエージュジロ・ディ・ロンバルディアという二つのモニュメントを制した名パンチャー。上り坂でのアタックにはめちゃめちゃ強い。グランツールでも1回7位に入ったことはあるのだが、どっちかというとステージ優勝を狙うタイプ。今年はエティックスに移籍ということで、アルデンヌ系クラシックでエースを担うことが期待される。

 

トム・ボーネン ベルギー クラシック・スペシャリスト

世界一自転車好きな国ベルギーのスーパースターであり、北のクラシックの王。それがボーネンである。若い頃から石畳系のクラシックを中心に勝ちまくり、25歳にしてパリ~ルーベ、ロンデ・ファン・フラーンデレン、世界選手権を制覇。その後もTDFのポイント賞、パリ~ルーベ3回、ロンデ2回を筆頭に輝かしい戦績を誇る。一方でコカイン吸ったりスポーツカーで盛大に事故ったり私生活も破天荒なのだが、そこがまたベルギー人の琴線にはビンビン来るらしい。

見た目は192cmの長身に長い手足、ゴツい身体の男前。手袋してても手の皮がずるむけるという石畳を素手で乗りこなす変態でもある。終生のライバル、カンチェッラーラより早く衰えが来てしまい、ここ3年はクラシックでは不発気味、グランツールでは何しに来たかよくわからんまま途中リタイアが続いているので、2016年はもうひと花咲かせてほしいところ・・・だが、2016年も、ロンデまではやはり厳しい戦いが続いている。2015年の秋に頭蓋骨骨折の大怪我を負ってしまったのも響いているのだろうか。男36歳、華やかな死に場所を見つけてほしいところ。

 

マッテオ・トレンティン イタリア スプリンター

ロードレース界で最もジブリの脇役キャラっぽい顔の男。マンマユート団にいそう。スプリンターだが、そこそこ坂も登れてアタック上手。エティックスの中では脇役だが、これまでTDFでステージ2勝を挙げている。ボーネン大将の衰えでめっぽう勝負弱くなってしまった最近のエティックスでは、実は一番頼れる気がするというか、気が付くと一番良い順位で入っていたりする。

 

フェルナンド・ガビリア コロンビア スプリンター

まだ21歳だが、トラック競技では既に世界の第一人者。オムニアム(6種競技)では2年連続で世界選手権を制し、 あのカヴェンディッシュを子供扱いするレベルだとか。ロードでも既にサンルイで計4勝、ブリテンで1勝、ティレーノ~アドリアティコで1勝。カヴェンディッシュサガン、ヴィヴィアーニといった一流のスプリンターを降して勝ったということで、すでにモニュメントの優勝候補に名前が挙がるレベルである。ボーネン曰く自転車乗ってないときは無口だしそもそもスペイン語しか喋れないしでショボい若造だけど、自転車に乗るとすごい、とのこと。顔はどことなく恐竜っぽい。

 

 

◆モビスター Movistar Team

バルベルデさんとゆかいな仲間達は年間通してフィーバー。見事チームランキング1位を取りましたとさ。
バルベルデさんはカタルーニャで3勝、ワロンヌとLBL連覇、TDF3位にブエルタ1勝とポイント賞。ロンバルディアと世界選でも上位にいたし、いつ見てもいいところに入っている。ほんとタフだなあ。
そして相変わらずセコかった。ブエルタホアキン激おこ。

 

それ以外もキンタナ村長がTDF2位とティレーノ~アドリアティコ優勝、マローリも1勝、ヴィスコンティがジロ山岳賞に、ベニャトがジロ1勝。
ヴィスコンティはクライマーじゃないので後半めっちゃ遅れていたが、コンタとアスタナの駆け引きの結果、すんごい棚ボタで山岳賞を獲った。ユンボのクライシュヴァイク可哀想。
TTが弱い印象があったんだけど、いつの間にかチームTTがすげー強いチームになっていた。マローリ、カストロビエホ、ダウセットと各国のTTチャンプを揃えた甲斐があったというもの。


今年はホアキンと喧嘩別れしたダニ・モレーノ、AG2Rをクビになったベタンクール、ランプレのオリヴェイラが加入。ベニャトがスカイに行ってしまったのは痛いけど、モレーノとベタンクールがきっちり働いてくれれば埋まるだろう。前者はおっさんだし、後者は気まぐれなので不安はあるけど。

 

マローリが大怪我してしまった部分は、ポルトガルTTチャンピオンだというオリヴェイラに期待したいところ。そして今年こそは村長でTDFを獲りたい。スカイのアシストは激つよぷんぷん丸だが、こっちもアナコナとアマドールが成長、イサギーレ兄弟もいて、山岳では十分戦える。横風で遅れなければ何とかなるはず。ていうか毎年横風で遅れすぎなのでは。

 

 あとバルベルデさんがどの程度五輪に力を入れるか。今年はジロにも出るとのことなので、さすがにこの人と言えど、北のクラシック出て、アルデンヌ出て、ジロ出て五輪出てTDFは無理なのではないかと心配してしまうが。

 

 ということでグランツール3つの総合を最大の目標に、アルデンヌ系も狙っていく形になりそう。スプリントチームはロバトとロハス。キャラが良くわからない。ロバトは結構登れるんだっけか。あとは、バルベルデさんの後継だよなあ。いや、村長はまあいるんだが。スペイン的に1人は育てておかないと、コンタとホアキンもそのうちいなくなるし。イサギーレ弟とかフェルナンデスがもう一段突き抜けてほしいところ。

 

ナイロ・キンタナ コロンビア クライマー

「ファンタスティック4」の中でも山岳での登坂力は最強と目されるコロンビア人。見た目の圧倒的村育ち感から、日本語のネット上では「村長」と呼ばれている。またお母さんも村っぽいんだこれが。全然知らないので失礼なのだが、貧困に耐えてプロとして成功し、お母さんに家を買ってあげた感が半端無い。

とにかく山に強く、他の選手がペースを落とすような急坂でもアタックを繰り返せる。ファン何とか4の中でも、山岳最強はキンタナ、というのが世界的な認識のようだ。すでにジロでは優勝1回、TDFでは2位2回、ブエルタでも4位に入っており、アルーとともに次世代のグランツールをリードしていく存在と思われる。

 

アレハンドロ・バルベルデ スペイン オールラウンダー 

人呼んで「エル・インバティド(打倒不可能)」。またの名を「バルベルデさん」「バルベルデ師匠」「バ何とかさん」。このあだ名だけで大体キャラがわかりそうだが、めちゃめちゃ強くて年俸も貰っている割に、ポカミスが多い愛すべき男。これまでの罪状としては、

「レインジャケットをチームカーまで返しに行っている間に集団に置いていかれる」

「終盤ホアキン&自分vsニーバリ(vsルイ・コスタ)の状況でニーバリを警戒し過ぎ、ルイ・コスタのアタックを放置してみすみす惨敗」

「山で『もう俺は限界だ』と言い続け、散々若手のピノに前を牽かせ続けて最後の30mでフル加速して先着」などセコいエピソードが並ぶ。

とはいえクラシックからグランツールまで1年を通して活躍できる引き出しの多さとタフさは群を抜いており、とくに総合系ライダーとしては圧倒的にスプリント力があるため、アルデンヌ系クラシックでは最強に近い存在。御年35歳だが、去年のTDFでもエースのキンタナをアシストしてるんだかしてないんだかよくわからない自由な動きで大会を盛り上げた。チャームポイントは苦しいときのげっ歯類顔。

http://media.gettyimages.com/photos/alejandro-valverde-of-spain-and-the-movistar-team-attends-the-2015-picture-id479258336

 

ヨン・イサギーレ スペイン オールラウンダー

兄のゴルカや、インチャウスティとともにバルベルデさんを支える子分3号。ジロのステージ優勝、ツール・ド・ポローニュ総合優勝に加え、国内選手権も制しており、次世代のオールラウンダーとして期待がかかる・・・が兄と一緒にスカイに行くという噂も。

ちなみにエナオのところで言ったように、ロードレース界ではスペイン人の名前をよく「ファミリーネーム+母方の苗字」で呼んでしまうので、Jsportsなんかでも「イサギレインサウスティ」と訳のわからない歯切れ良さで呼ばれるシーンが多々ある。口に出して言いたいスペイン人、イサギレインサウスティ。よさよいinアイスティー!みたいな。

http://media.gettyimages.com/photos/jon-izaguirre-insausti-of-spain-and-the-movistar-team-rides-in-the-picture-id452556038

 

ダニエル・モレーノ スペイン パンチャー/クライマー

カチューシャのエースであるホアキン・ロドリゲスを長年支えてきた右腕。まあ今は仲悪いらしいけど。脚質もホアキンぽい感じで、長い山岳はちときついが、激坂にはめっぽう強い感じ。昔は山にも強かったのかもしれないが、最近見てる感じだと”ファンタスティック4”辺りと本格的に山で競うのはちときつそうである。それでもブエルタでステージ3勝、フレーシュ・ワロンヌでも優勝1回、アシストとしてはこれ以上ない成績。

 

 

◆ロット・スーダル Lotto-Soudal

“ソウダル”ではないっぽい。http://ja.forvo.com/search/soudal/

 去年は総合が不発だったものの、ゴリラ氏がスプリントで勝ちまくった。キッテル不在の中、TDFではカヴェンディッシュサガン、クリストフ、デーゲンコルプ、ブアニ(途中で帰ったけど)といった面子を圧倒。それ以外のワールドツアーでは、エネコでウェレンスが総合優勝、ギャロパンとデビュッシェールが春に1勝ずつ、デクレルクもポローニュで勝ってた。

 

グライペルだけのチームに思っていたが、アルデンヌで頑張っていたウェレンスとか、アタック鋭いルーランツとか、逃げて登れるデヘントとか、石畳系の新星らしいベノートとか、元ベルギー王者デブッシェールとか、このチームの中堅~若手ベルギー人には実力派がいっぱいいる。ヴェルヴァークもか。ルーランツはサンレモも惜しかったし、この辺が一皮むけてビッグタイトルが獲れると万々歳ですな。 

 

 総合は不発に終わったヴァンデンブルックをカチューシャに放出したので、多分全く狙わないのではないか。さすがにギャロパンで総合は無理。いかに嫁が美人だとはいえ・・・

http://media.gettyimages.com/photos/tony-gallopin-of-france-and-team-lotto-belisol-kissing-his-girlfriend-picture-id452097242

ということで、去年と同じくベルギー連中でアルデンヌ中心にクラシックを戦い、グランツールはゴリラのスプリントと、逃げ・アタックでステージ勝利狙い、でしょうね。ヨーロッパツアーならブックマンスもスプリントで勝てるだろう。ステージ勝利なら相当に強力なメンバーが揃っているので、いくつか期待したいところ。

ゴリラのスプリントは、ヘンダーソン、ハンセン、ジーベルクのおっさん3人がきっちり支えてくれるものと思われる。スプリントのトレインが安定していることがこのチームの強み。デブッシェールやバク、リヒトハートも組めるし。

 

アンドレ・グライペル ドイツ スプリンター

カヴェンディッシュ、キッテルらと並ぶ、世界最強のスプリンターの1人。ひたすらにムッキムキなので、あだ名はゴリラ。フレームにもゴリラの絵。TDFの期間中に連載していたブログのタイトルもラ・ガゼット・デュ・ゴリーユ(ゴリラ新聞)。

どっちかというとゴリラと言うよりサイボーグと言うかロボット感があるのだが、その辺はヨーロッパ人との感性の違いだろうか。実績ではカヴェンディッシュに、近年の勢いではキッテルに劣っていたが、2015年のTDFではステージ4勝と大活躍した。その2人と比べるとまだ上りに適応できる方で、春先のクラシックレースにもちょいちょい出てきては謎のアタックを見せたりする。

 

ティム・ウェレンス ベルギー クライマー/パンチャー

1991年生まれとまだまだ若いが、ここ2年で急速に力を伸ばしている坊ちゃん顔。Wikipediaにはクライマーと書いてあるが、ベルギー人らしく逃げやアタック、坂道での抜けだしが得意な印象。去年のフレーシュ・ワロンヌではラスト数キロで抜け出し、あと600mまで粘っていた。 

 

トニー・ギャロパン フランス パンチャー ロット・ソウダル

フランス期待の若手・・・というには大分年齢もいってしまったが、TDFでマイヨ・ジョーヌを1日着たり、世界選手権で6位に入ったりと力はある。総合はきついが、スプリントのチームなので余り求められてはいないようだ。嫁は元フランスチャンピオンだが、めっちゃ美人。ロードレース界の姫。

 

グレッグ・ヘンダーソン NZ ルーラー/アダム・ハンセン オーストラリア ルーラー/マルセル・ジーベルク ドイツ ルーラー/スプリンター

ゴリラことグライペルを支えるおっさんトリオ。今一番安定してトレインを組めるチームな気がする、ロットの大黒柱。全員30代も半ば、ヘンダーソンに至っては今年でもう40歳だが、ひたすらタフに牽いてくれる。しかもまた3人ともデカい(ヘンダーソン181cm、ハンセン186cm、ジーベルク198cm)のが、風除けとしては素晴らしいよな。

http://media.gettyimages.com/photos/adam-hansen-of-australia-and-lottosoudal-crosses-the-finish-line-picture-id481435510

 

ユルヘン・ルーラン ベルギー クラシック・スペシャリスト

タイトルこそ多くないが、RVV(ロンデ・ファン・フラーンデレン)とミラノ~サンレモで3位が一回ずつ、世界選手権でも5位一回。安定して力を発揮できるアタッカー。独走力もあるし、アタックの足も長いし、スプリントもそこそこある。いかにも頼れそうな顔も含めて、グライペルに次ぐ、名門ロットの顔的存在。

http://media.gettyimages.com/photos/jurgen-roelandts-of-belgium-and-lottobelisol-and-andre-greipel-of-picture-id452847534

 

◆アスタナ Astana Pro team

ドーピングの話はうるさいわ、終始内輪でもめているわ、あんまり良い印象が無かった2015年。ジロ2位3位、TDF4位、ブエルタロンバルディア優勝と、グランツール3つ通してみると一番安定して強かったんですけどね。

 

 奇妙なほどに安定して強いアシスト陣と、ニバリ、アル、ランダのトリプルエース、がこのチームの強さだったが、今年はランダがスカイに引っこ抜かれてしまった。もっとも、本人はめちゃめちゃ出たそうにしていたが。ニバリも来期はトレックに移籍するとか。そうなればティラロンゴ爺とか、カタルドとか、アニョーリとか、スカルポーニおじさんとか、あの辺の家臣団もまとめて移籍だろうなあ。若様アルにはローザくんしかいない。

ランダの他にも、地味に頑張っていたターラマエがカチューシャへ。カンゲルトとセットで覚えていたのに。スカイのキリエンカ&シウツォウも、後者がいなくなったり。そういうの、止めてくれませんか。セットで覚えているんです。獲ったのはカペッキ。カペッキ・・・?

 

ニバリとアルをまとめて出せばTDFも獲れそうな気がするが、そうはいかないのが個人競技の難しいところ。ランダが抜けた部分も踏まえて、今年はグランツールタイトル獲れないと予想。ニバリのクラシックと、グアルディーニのスプリントで稼ぐチームになっているかもしれない。上に挙げたアシスト陣は本当に強いのだが。上の面子に加えてフールサン、LLサンチェス@ペドロ・レオンの兄、ボームもいると来たもんだ。

 

ヴィンチェンツォ・ニーバリ イタリア オールラウンダー

TDF、ジロ、ブエルタの全てを制したイタリアのエースであり、「ファンタスティック4」の一人に数えられる男。2014年のTDFではコンタドール、フルームという最大のライバルがリタイアしたこともあるが、2位以下に圧倒的な差をつけて優勝した。登坂力ではフルーム、キンタナに僅かに劣るが、下り坂は速い。

今年のジロでは落車して遅れたところをチームカーに掴まって戻ろうとし、ばれてあえなく失格。その姿はニーバリワープと名が付いたとか。その後もチームが待ってくれなかっただの、そもそもTDFのときからアシストがダメだの、アルが調子こいてるだの、口を開けばしょうもない愚痴ばかり言っている。しかも第2エースであり、子分格だったアルがブエルタで総合優勝。さぞ気まずかろうと思われる。

 

ミケーレ・スカルポーニ イタリア クライマー 

ジロで総合優勝1回、4位3回の実績を持つおっさんクライマー。まあジロの優勝はコンタドールが失格になったからだが。頭髪が物悲しさを感じさせる。ミラノ~サンレモで6位に入ったこともあり、アタックの力もそこそこ。現在はアスタナでニバリの家臣を務めつつ、若手の育成も期待されているようだ。

 

ヤコブ・フールサン デンマーク オールラウンダー アスタナ

TDFで一回7位に入ったことがある実力派。ドーフィネやパリ~ニースのようなステージレースでも大体上位に入ってくる。TTも結構速い。グランツールは厳しいが、アシストとしてはいてくれると大分嬉しい存在。というか、若い頃は総合リーダーとして期待されていた選手だったらしいのだが、シュレック兄弟のアシストをしたり、ニバリのアシストをしたり、、、としているうちに三十路に入ってしまった。日本では「フグルサング」と呼ばれている。

 

ファビオ・アル イタリア オールラウンダー

今年のブエルタで総合優勝。花の90年世代ではキンタナに次ぐグランツール制覇を成し遂げ、ロードレース界の未来を担うと期待される若手。既にジロでも表彰台に2回上っており、来年以降はツールでも見られるかも。アホみたいに動きがダイナミックなのが特徴で、好調時は飛び跳ねるようなフォームで山岳をクリアしていく。外見上のポイントはかつてのロビー・ファウラーを思い出させる鼻孔拡張テープと、死ぬほどデカい口。苦しい時は口がかまぼこ型になるのですぐばれる。

 

タネル・カンゲルト エストニア クライマー 

スカイにはキリエンカ、シウツォウのベラルーシ人アシストコンビがいるが、こちらはエストニア人コンビ。同胞ターラマエとともにニバリ、アルを支える有能アシスト。グランツールで10位近辺に何度か入っており、相当に登れる。コンビで覚えていたのに、もう一人のターラマエはカチューシャへの移籍が決まってしまった。(スカイの方も、シウツォウがディメンションデータへ・・・)

 

キャノンデール Cannondale Pro Cycling

昨シーズンのワールドツアーは結局2勝のみ。カタルーニャのダニエルソンと、ジロのフォルモロ。あとはジロでヘシェダルが意地の5位。終盤の根性はすごかった。そしてナヴァルダウスカスが世界選で3位。

今年はチームの顔だったマーティンとヘシェダルが抜け、代わりにリゴベルト・ウランと新城にアシストされてたピエール・ローラン。だ、大丈夫か。まあ、予算の問題もあるし、前の二人にこれ以上可能性があるかと言うと微妙なところだったが。実績はあってそこそこ若い二人なので、「米国式科学手法」とやらに期待しよう。


その他の新加入は実は結構面白い。NZのTTチャンピオン、べヴィンは今をときめくオリカのユワンにスプリントで勝った逸材とのこと。パリ~ニースのTTでは相当にがんばっていた。ヒンカピーから来たラトヴィア人のスクインシュは去年のカリフォルニアで1勝。しかし、ほんとに「スクインシュ」って発音してるよ。すげーなCiclissimoの名鑑。http://ja.forvo.com/search/Skuji%C5%86%C5%A1/

 そしてダウンアンダー5位のウッズ@元陸上選手、石畳クラシックに強いブレシェル。ジャイアントでデュムランの数少ない山岳アシストを務めていたクラドック。あとリッチーにタイヤ上げてペナルティを誘発してしまったクラーク氏。そろそろエースになりたいタランスキーも含めて、一応グランツール3つでトップ10に入れる素材は揃ったので、そこを目標にしつつナヴァルダウスカスとフォルモロにあれこれ動いてもらう感じだろうか。しかしナヴァは逃げ良し山良しスプリント良し、使い勝手がいいなあ。

  

ピエール・ローラン フランス クライマー キャノンデール

新城幸也がいたユーロップカー(現ディレクトエネルジー)のエースとして、TDFのトップ10が3回、ジロの4位一回。山岳ステージでも2勝。良い選手なんだけど、ちょっとひ弱。顔もそういう感じ。今年はキャノンデールのエースとして期待されている。

 

ラムーナス・ナヴァルダウスカス リトアニア ルーラー

一家に一台、いると役立つ便利屋。TDFとジロでアタックからのステージ勝利が1回ずつに、去年の世界選手権でも銅メダル。スプリントも出来るし、逃げるし、登れるし、そこそこ牽けるしと、ちょこちょこトライさせる分にはめちゃめちゃ便利。あとTTも結構いける。

 

リゴベルト・ウラン コロンビア オールラウンダー 

キンタナに次ぐ、コロンビア旋風第2の男。山にもTTにもそこそこ強く、2013年、14年と連続してジロで準優勝。クラシックに特化してきた名門エティックスがグランツールの総合にも殴り込みをかける上でエースとして期待されていたが、2015年はジロで14位、ツールで42位と大失敗に終わった。ぶっちゃけまともな山岳アシストがいない中では無理じゃねーのという気もするが、GMのルフェーヴルは「まあウランじゃジロの2位が限界かもね」と冷たく、さっさと後任を探し始めていたため、ウラン本人もキャノンデールへの移籍と相成った。

正義感が強いのか、他人に口出ししないではいられない性分なのか、今年のジロでは優勝への賭けよりも確実な表彰台を狙ってきたアスタナのアルーとランダにブチ切れ、走りながら延々と文句を言い続けていた。長い後ろ髪が特徴なので、ヘルメットをかぶっていてもすぐわかる。

 

アンドリュー・タランスキー アメリカ オールラウンダー 

2014年のドーフィネで総合優勝し、グランツールでもトップ10が2回。タメのヴァンガーデレンに次いで、アメリカ人としてはグランツール制覇に最も近い位置にいる。まあ優勝できそうかは置いといて。2日連続で落車し、ボロボロになりながら32分遅れでゴールしてたりして、根性は異様にある。チームメートのヘシェダル譲りなのだろうか。

 

◆チーム ロットNL-ユンボ

ぜんっぜん勝ててなかったが、そもそもあれなんですね。ラボバンクがドーピング禍でスポンサー撤退したからなんですね。ワールドツアーは僅か2勝。グランツールではリンデマンブエルタで勝ったのみ。まあヘーシンクがTDFで6位、クライシュヴァイクがジロ7位と自慢のクライマー軍団はそこそこ頑張った。

チームの顔は悲運のエース、ヘーシンクと、2014年のジロ7位ケルデルマン、北のクラシック3位ハンター、ヴァンマルケ。ちょっと暗いというか、地味な雰囲気が・・・

さらに、資金不足なのか知らないが、ワールドチームからの加入はゼロ。クライマー四天王のひとり、よだれだらだらテンダムがジャイアントに移籍してしまった。大丈夫なんだろうか。テンダムも一応グランツールトップ10レベルの選手なのだが。

ヴァンマルケの今年の春クラシックは、ヘント~ウェヴェルヘム2位、ロンデ3位。頂点が近くて遠いが、まあ来年はカンチェが減りますからな。もうちょっと坂でも独走でもスプリントでも、何か特別な強さが欲しいとこだけど。あと23歳のマイク・トゥニスンは、U23年代のパリ~ルーベ優勝、ロンデ5位、パリ~ツール優勝、シクロクロス世界選優勝と実績十分。

 

 

ロベルト・ヘーシンク オランダ クライマー 

将来のグランツール覇者に!というオランダの期待を若い頃から背負ってきたが、節目節目で不幸に見舞われ、結局スターになり切れなかった苦労人。2008年頃からブエルタで大活躍し、2010年のTDFでは4位に入ったが、同年に事故で父を亡くす。その後も不整脈で手術を受けたり、奥さんの出産が難儀したりと大変な人生を歩んでおり、その間はグランツールでの成績も低迷を続けていた。

今年のツールでは復活の6位。ファンタスティック4+バルベルデを除けば最上位と考えれば、素晴らしい成績と言えよう。ただし、こっから先に行く気もあんまりしないんだよね。

 

ウィルコ・ケルデルマン オランダ オールラウンダー

ヘーシンクとモレマがいまいちグランツールで勝てそうなところまで成長しないうちに、オランダの新星として台頭。2015年はTTのオランダチャンピオンにもなっている。山にも平地にもそこそこ対応でき、2014年は弱冠23歳でジロ7位に入っている。ぱっと見はヘーシンクと全く見分けがつかないのが難点だが、ヘルメットを脱ぐと顔が四角いのでわかる。

 

スティーヴン・クライシュヴァイク オランダ クライマー 

去年のジロでトップ10入りした、オランダ期待のクライマー。ヘーシンクといい、ケルデルマンといい、テンダムといい、モレマ(2014年までロットNL)といい、ロットはこの手の「トップ10は入れるけど・・・」みたいな選手多すぎ。話をジロに戻せば、山岳賞争いにも絡んでいたので、世界のトップレベルとまでは言わずとも、登坂力は相当にある方と言えよう。ちなみにオランダ人名は日本語表記と最高に相性が悪いため、「クルイシュヴィック」「クライシュワイク」「クルイジヴィック」など媒体によって名前が違いすぎ。

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セップ・ヴァンマルケ ベルギー クラシックスペシャリスト 

190cmの仏頂面。北のクラシックでは毎年上位に入ってきており、ボーネンカンチェラーラ引退後のクラシックキング候補ではある。まあその2人に比べると絶望的に華はないけど。彼に限らず、現代のオランダ人とかベルギー人有力ライダーというのは、ボーネンジルベールを除いて、まあ押し並べて華は無い。実力派ということにしておきたい。