2016/17 マンチェスター・シティ 選手名鑑(トップチーム編)

1            Claudio Bravo      クラウディオ・ブラボ            GK          33歳

ハートに関するあれこれで、来る前からファンの間に複雑な感情渦巻いてしまったチリ代表の守護神。まあしかし、シティがバルサの正GKを取る時代よの。こないだのストーク戦で明らかになったように、GKからのビルドアップは攻撃だけでなく守備の策でもあるので、試合中のパフォーマンスを安定させる人材としても期待がかかる。

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13          Willy Caballero    ウィリー・カバジェロ            GK          34

サビオラロマニョーリダレッサンドロマキシ・ロドリゲスコロッチーニ、アルカといった錚々たるメンバーとともにワールドユースを制した際の正GK。シティではいまいち信用が無かったが、昨シーズンのリーグカップ決勝でPKを3本止めてヒーローに。今シーズンはハートのサブ降格に伴いまさかのスタメン抜擢と相成ったが、別にハートと比べてさほどつなげるわけではない。いい人。

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54          Angus Gunn         アンガス・ガン       GK          20

父ブライアンはノリッジの名GK、母スーザンは芸術家。15歳のときにノリッジから移ってきた。ハートの移籍によって第3GKに収まりそうだが、さすがにブラボとカバジェロ相手に出番を得られるとは期待し難く、キャリアを考えればレンタルに出してあげたい感じはある。ハートよりも足技に優れているらしく、ペップはそこら辺を評価しているという噂。

 

 

4            Vincent Kompany               ヴァンサン・コンパニ         CB          30

ハートの移籍によって(自前育成組を除けば)チーム最古参となった主将。DF課の課長。昨シーズンは試合に出ているときは良かったが、とにかく怪我に次ぐ怪我で稼働率低すぎ。課長のくせに有給消化しまくり。数年前はバカみたいな機動力とパワーでとにかく相手を捕まえて叩きのめすスタイルだったが、加齢とともに良くも悪くも落ち着きつつある。

キック力はあるが組み立てが巧いタイプとは決して言えないので、ペップ政権下でどの程度の役割を担えるのかは今後の体調と努力次第だが、コンパニの存在感が低下するというのは、寂しいけどクラブとしては健全ではあると思う。

 

 

11          Aleksandar Kolarov          アレクサンダル・コラロフ      CB/LB    30

ファンからの信頼はないが、キック力と味方の祝福力はべらぼうにあるセルビア人。それなりに古参。昨シーズンは序盤好調、からの使われすぎて勤続疲労、後半は言わばそびえたつ糞。本人には特に自覚は無く、後述する今シーズンの大変身にも「いや、おれはずっとちゃんとしてたし(別にペップが来てめっちゃ良くなったわけじゃないし)」と臆面も無く言い放ち、私を脱力させた。

今シーズンは放出候補筆頭と目され、実際にベシクタシュへの話が進んでいたらしいが、恐らくラポルトビルバオ)の獲得失敗もあって残留。CBにコンバートされ、ここまではまさかまさかの素晴らしいパフォーマンスを披露している。ボールを運びながら味方を探すのが巧く、加えてワンステップで逆サイドまでボールを届けられるということで、ビルドアップへの貢献度は高い。果たしてこの感じがシーズン終了まで続くやら。

 

 

24          John Stones         ジョン・ストーンズ             CB          22

エヴァートンから43百万ポンドとかそこらで加入。世界で2番目に高いDFとなったが、ここまではむしろ安かったな的な反応が大勢を占めている。守備も安定しているが、とにかくビルドアップが本当にお上手。直近の試合では恐らく意識的にアンカーと入れ替わって中盤でボールを捌くシーンも見られ、目新しい動きなのでちょっと注目している。

 

 

30          Nicolás Otamendi               ニコラス・オタメンディ      CB          28

加入1年目の昨シーズンは、寝ても覚めてもスライディング。ディスカバリーチャンネルのシャチ特集と見まがうばかりにのた打ち回っていたが、今年はペップの「CBがあんまりスライディングに頼るのどうかと思う」という至極真っ当な指摘によって自重中。ビルドアップはおっかなびっくりだが、力任せにぶっ叩くしかなかった昨シーズンと比べると、相当に進歩はしている。前へのボールには地上でも空中でも滅法強いので、カウンター封じには役に立つ。強面の割に、目はつぶら。南アフリカW杯のときはマラドーナが右バックで使って大失敗した。

 

 

53          Tosin Adarabioyo            トーシン・アダラバイヨ         CB          18

5歳からシティに所属している、190cm超えのイングランドU19代表。自分の名前が読みづらいことを自覚してか、Twitterの公式アカウントにわざわざ「あだ・ら・ばい・よ」と読み方を書いている、かわいいやつ。最初に見たときはあからさまにパス出しがヘッタクソだったが、その後のプレーを見る限りボールを持つのは嫌いではなさそうなので、期待したいところ。現状守備は相当に危ういが、ペップには割と期待されているらしく、CBの4~5番手としてそこそこ出番はありそう。

 

 

3            Bacary Sagna      バカリ・サニャ       RB(/CB)              33

フランス代表でレギュラーを張る右サイドバックのおじさん。安定した守備と高さ、そこそこの攻撃への貢献に加え、サバレタの衰えもあって去年はレギュラー。前線が小兵揃いのチームにあって、高さを活かして貴重なゴールキックのExit先として働く。奥さんは向こうが14歳のときからずっと付き合っているらしいが、その割にはモデルとかやってる超セクシーな美人で、見る目すごいなあんた。引退したらスカウトになったらいいと思う。

 

 

5            Pablo Zabaleta    パブロ・サバレタ    RB          31

人呼んで男サバレタコラロフの2万倍くらいファンの信頼を得ている右サイドバック。昨シーズンは相当に低調な出来で移籍が噂されてしまったが、色々あって残留。今シーズンは副キャプテンを務めつつ、昨年より元気な姿を見せているが、ドリブル対応がめっきり弱くなってしまったのは寂しい限り。インサイドでアラバロールをこなすのはそこそこ上手そう。

 

 

50          Pablo Maffeo       パブロ・マフェオ    RB          19

今年トップチームにデビューした若いスペイン人。もともとはエスパニョールの下部組織にいた。守備がとにかくキビキビとしていて、滅多なミスは犯さない雰囲気。コラロフよりよっぽど規律があった。ボールを持ったときはびびりまくっており、攻撃時の貢献はさっぱりだったが、守備が安定していそうなので使う側からすると気が楽なのではないか。

 

 

22          Gaël Clichy           ガエル・クリシ       LB          31

アーセナル時代の約10年前に1回ベストイレブンに選出。目立たないし、プレミアで最高のサイドバックかと言われるとそうでもないが、大体いつも安定したパフォーマンスを提供してくれるベテラン。アーセナル育ちの杵柄か、今年はいわゆるアラバロールに一試合目から順応しており、やったぜアーセンさすがあんたは最高だな。弱点を強いて言えば、空中戦に弱くパワーで押し込まれやすいところか。あと、ロングフィードはさほど上手くない。

 

 

69          José Ángel Tasende "Angeliño" ホセ・アンヘル・タセンデ(アンヘリーニョ) LB/LWG         19

またの名をアンジェリーノ。ガリシア人で、デポルティボのアカデミーから引き抜いた。スペイン人の若手左サイドバックと言うのはウィング崩れで攻撃大好きでなければならない、というのはEU法に定められているところであるが、彼も当然ウィング崩れで攻撃大好き。爆走兄弟パス&ゴー。まだトップでは途中出場に留まるが、ボール捌きもそれなりに自信がありそうだし、キックの精度も悪くない。アルバやベルナトのようになってくれると良いのだが。

 

6            Fernando             フェルナンド          DMF       29

ラッパーのT.I.にどことなく似ている守備型ボランチ。食いついたボールに触る能力は高く、相手がメッシでもなければある程度の対応は期待できる。反面足元は大したことが無く、大分マシにはなったものの、相手にどストライクのパスをかましてカウンターの火種になることも多々ある。ジーニョがアンカーで使われる以上、守備要員以上の起用は難しいかもしれない。

性格はいたって真面目。ひどい試合のあとでも「僕たちがんばります!」みたいなTweetを即座に上げてくれるが、空気は読めない。

 

 

25          Fernandinho        フェルナンジーニョ DMF/CMF             31

就任後のペップが真っ先に名前を挙げて褒めちぎったブラジル代表。本来はいわゆる8番的な、Box-to-Boxの動きを得意とするが、ペップ政権下ではアンカーとして登場。広いカバー範囲、攻守に役立つ近接戦闘スキルを備え、ブスケッツアロンソとはまた違ったアンカー像を見せてくれている。大体いつもニヤケ顔。こういう顔は珍しい。

 

 

75          Aleix García         アレーシュ・ガルシア            DMF       19

ビジャレアル育ちのカタルーニャ人。昨シーズンのFAカップチェルシー戦でデビュー。シンプルなプレーで組み立てに貢献するレジスタ。ペップの好みにいかにも合致しているのではないか、ということで期待は大きく、実際に今シーズンはトップチームに帯同しているようだ。出てきたときのブスケッツほど衝撃的に上手かったらいい・・・のだが、何試合か見る限り、現実はそんなに甘くないので今後の成長に期待。

 

 

8            İlkay Gündoğan   イルカイ・ギュンドアン         CMF        25

香川の元同僚としてお馴染みのトルコ系ドイツ人。年を追うごとに、トルコのオッサン丸出しの顔になっている。今シーズンから加入。長引く怪我でまだシティではプレーできていないが、まあさぞかし上手いんだろうよ。シルバへの依存がこれ以上高まらないよう、崩しに組み立てに、求められるハードルは高い。

 

 

17          Kevin De Bruyne  ケヴィン・デブライネ            CMF/AMF/WG      25

払って良かった100億円。あっという間にファンの心を掴み、Seven Nation Armyの替え歌チャントも人気が高いベルギー人。「五分のボールをとにかく自分のものにする」「トップスピードでボールを扱う」ことにかけてはシティ1。ペップ政権下では右のCMFで起用されているが、ボールをもぎ取ってからの急加速で一気に大チャンスを作ってくれるうえ、セットピースでは精度の高いボールを入れてくれるという。払って良かった100億円(大事なことなので2回言いました)

一方でエリア内に入っての得点は苦手にしており、CMFにチャンスが訪れる設計の現政権下では役割に苦しんでいる感もある。まあ贅沢な悩みではあるが。私服はダサい。

 

18          Fabian Delph       ファビアン・デルフ             CMF      26

20でリーズからヴィラに移籍。当初は使い物にならないとか何とか言われながら、辛抱強く育ててもらい、ついにキャプテン・・・になったところで思いっきり移籍した。ほんと、ごめんなさいね。

スピードと持久力があってカバーできる範囲が広く、しっかりキープできる足技と左足のミドルもあるが、如何せん稼働率が低いのが惜しいところ。CMFでレギュラーが張れるほど上手かと言われると、そこも苦しかったり。多分、ポジショニングによって相手を動かすということに慣れてないんだと思う。今シーズンはCMFの控えが中心かと思われるが、何かしら使い道が無いものだろうか。

去年、相当に天然であることが露呈。恐らく下の写真も何も考えていない。

 

 

21          David Silva          ビド・シルバ       CMF/AMF             30

日本でのシティ人気に関して確実に一端を担っているであろうチームの重鎮。現地フォーラム等でも折に触れて「シティ史上最高の選手なのでは」という話が出る。私が決めて良いんなら、まあ銅像は建てるわな。8回は建ててる。

今シーズンはAMFからCMFにコンバートされ、相手の視野のコントロールとか、相手の担当範囲を迷わせるポジショニングとか、シルバの得意範囲が存分に発揮されており、楽しいシーズンの予感。サイズこそないが、守備でも勘が良くきっちり走るので、プレッシングが整備された今シーズンは守備でも効いている。弱点はシュートが上手くないということで、体格的に強いシュートも打ちづらいし、よくフカす。まあ「北川景子は食べ方に難がある」とか、そういうレベルの難癖かもしれんが。

 

42          Yaya Touré           ヤヤ・トゥレ          CMF        33

毎年恒例「トゥレちゃん絶対やめへんで!」シリーズの収録を終え、無事残留。近年のシティのタイトルは全てヤヤトゥレ加入後であり、コンパニやシルバにも劣らない功績の持ち主なのだが、近年の怪しい態度によって自分の立場をどんどん怪しくしている。ここ2年で本当に走れなくなり、ついにはボールキープ力も失ってしまった。勘所で通すパスはトゥレにしか提供出来ない価値だが、そのために払う費用を考えると、ついに起用の収支がマイナスになってしまったように思われる。また、足元に貰ってなんぼなので、自分のポジショニングで攻撃を動かす意識が薄いところもなあ。すぐ下がって受けたがるし。恐らくはCMFの控えだが、果たしてペップはどう使うのか。

 

 

7            Raheem Sterling  ラヒーム・スターリング         WG         21

快足ウイング。リヴァプールファンのアイドル・・・という冗談を言う気にも中々なれないところがある。リヴァプール時代からどうでもいいことでめちゃくちゃなことを言われている選手だったが、シティへの移籍以降、その傾向はより顕著に。いくら代表での出来が悪かったからといって、SUN紙のヘイトキャンペーンは常軌を逸している。はあ。

nofrills.seesaa.net

その中で、本人はペップ就任以来生まれ変わったように活躍。ドリブル突破だけでなく、速い切り替え、運動量、クロスの精度などあらゆる面で向上。これであとは点が取れれば申し分ない。

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15          Jesús Navas        ヘスス・ナバス       WG         30

セビージャ時代、この人は本当にリーガの右サイドを切り裂いていたのだろうか。常に全力の清涼感溢れるプレースタイルながら、結果としては恐ろしく右サイドが膠着するという不思議な男。とにかくバタバタしてるし、相手も対応でバタバタするんだけど、遠めで見ると「ああ、やってんな」くらいの静寂さ。

まあ真面目に言えばスピードもまだ残っているし、守備にも戻るし、ドリブルの実効性やクロスの質も今年は多少マシに見える。1つのことしか出来ないが、その分パフォーマンスにムラは小さい。相手DFに対して有利に立つことは少ないが、不利になることもあまりない。ダイレクトのパスが下手なのが、ペップ政権下では惜しいところ。

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9            Nolito    ノリート  WG         29

ハリウッドのザコ悪役っぽい顔をした左ウィング。スカーレットヨハンソンにボッコボコにされてそう。黒服で。見た目はいかついが、点が入ると真っ先に若手を祝福してくれたり、根はいい人のようだ。怪物的とはとても言えないが、ペップの希望で獲った(と言われる)だけあり、攻守に休み無く働いてくれる。得点力もそこそこありそう。

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19          Leroy Sané           リロイ・ザネー       WG         20

父親は元セネガル代表、母親は新体操のロス五輪銅メダリスト。19歳でドイツ代表にデビューし、今年はEUROにも出場。スターリングに似たスピードのあるウィングだが、サイズがある(184cm)のもあり、スターリングよりは強いシュートが打てそう。ひたすら2列目を集めまくっている最近のシティだが、その中でもペップが好きそうな強くてデカくて速いアスリートなので、楽しみにしている。ヒップホップ好きそう。

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10          Sergio “Kun” Agüero         セルヒオ・アグエロ  CF       28

プレミアリーグの過去10年間で唯一、年間平均得点が25点を超える男。でもベストイレブン(Team of the Year)には選ばれたこと無し。純粋な能力としてはそれこそスアレスと並べても恥ずかしくない、と言いたいところだが、シティが世界的にはあんまり人気がないからか、ハムストリングがちょっとシャイだからか、今一つ「世界最高のFW」とは言い難い空気があるように思われる。

ワントップへの要求事項が多く厳しい今シーズン、やや動きすぎてチャンスを逸している感があるが、押しも押されぬ世界屈指のFWに向けて、更なる覚醒のシーズンを期待したい。何も、メッシになれとは言わんから。

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72          Kelechi Iheanacho             ケレチ・イアナチョ  CF       19

人を呪わばイヘ穴チョ。17,8歳のときにナイジェリアから連れてきた若手FW。もともとは下がり目のフォワードだったが、シティでは徐々にワントップとして固まりつつある。

トップチームにデビューした昨シーズンは全大会通じて36試合14得点とブレイク。判断は遅いし、ボールは割と失うし、スピードはあるんだけどちょっと鈍いし、パスも出せるしドリブルもできるけどめちゃめちゃ上手いというわけでもないし、何が良いのかは今一つよくわからんが、とにかく点は取る。エリア内でフリーになるポジショニングと落ち着きは素晴らしい。まあスピードもボール扱いも身体の強さも、19歳としては十分すぎるくらいにあるけど。

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ジョー・ハートに関する個人的なメモ

ジョー・ハートはシティを去るらしい。

 

開幕からハートは起用されず、カバジェロがスタメンを張った。クラウディオ・ブラボは既にバルセロナのチームメイトに別れを告げ、マンチェスターで学校と家を探しているという。グアルディオラはシンプルに、その瞬間の戦力として、ベストな選考をしたと言った。幸せでないなら、移籍してもよい。残りたければ、残ってもよい。

 

 

私はハートが好きだし、出来ることなら残って欲しい。個人的に年も近いし、ハートがシティに来た頃も覚えている。ジョーが来てからの10年間(厳密には、彼がまともにシティでプレーし始めてからの9年間)、シティはずっと上り調子でやって来た。タクシン・チナワットが来て、投資が為され、夢を見た。タクシンに逮捕状が出て、はるかに金持ちの王子たちが来た。カカーの噂、引きつった笑顔のロビーニョトッテナム戦の敗北、ストークに勝ったFAカップ、「あぐえろおおおおおおおおおおお」、ベン・ワトソン、クビになったマンチョ、This Charming man、バッティングセンター、苦笑するメッシ。ハートがいた10年間は楽しいことばかりだった。シティは、全く新しいチームになり、その中心にいつもハートはいた。しかし、10年後の今、どうやらお別れのときが来たようだ。

 

ハートがシティのトップチームに本格的にデビューしたのは、2007年の秋だった。シティに加入したのはその前年の夏だったが、1年間はほとんどローンで過ごしていた。何を思ってシュルーズベリーからシティに来たのかは定かではない。もしかしたら、正GKだったジェイムズは既に30台半ばだったし、控えもパッとしなかったから、チャンスが大きいと踏んだのかもしれない。

ともかく2007/08シーズン、シティはタクシンの投資を得て、エラーノペトロフ、ジオヴァンニといったスター選手を迎え、生え抜きの若手選手がレギュラーに定着し、素晴らしいスタートを切った。前の年のシティは最低最悪のクソだったから、ことさら希望が持てた。最初の数試合はカスパー・シュマイケルがレギュラーだったが、何試合かしたあと(たしか、アーセナルとまんゆとの試合のあとだった。ニューカッスル戦だったと思う。)ハートがスタメンを任されるようになった。それ以来、1年半だけのギヴンと、わずかな期間のパンティリモンを除いて、シティのGKは常にハートのものだった。

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控え降格の話に戻る。

これは個人的な推測だが、グアルディオラはDistributionだけを理由に、ハートを入れ替えようと決意したのではないと思う。2年前、「選手名鑑」と題してブログを書いたとき、私は彼の項目に「パワーと勇気だけが友達」と冗談めかして書いた。その次の年は、「止めるしか能が無いタイプ」と書いた。彼の名誉のために言えば、ハートはそれまでのイングランドのぼんくらGKたちーロブ・グリーンとか、ポール・ロビンソンとか、クリス・カークランドとか、スコット・カーソンとかーとは違っていた。シティがそれまでに雇ったGK、ニッキー・ウィーヴァーとか、ゲールト・デヴリーガーとか、アンドレアス・イサクソンとか、その辺とも違った。そんなレベルのGKではなかった。

一方で、ハートはブッフォンでもないし、ノイアーでもなかった。ファンデルサールでもなかった。8割の名守護神と、2割の英国的間抜け野郎。ロビンソンとブッフォンの永遠の合いの子。それがハートだった。正直に言えば、この話が出て以来、ハートを「Distribution以外は世界で五指に入る」とまで評価する人間の多さに驚いた。クロスへの対応はショットストップには含めないとか、そういうことなのだろうか。

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実のところ、ジョーを本気で他の誰かに入れ替えようと決心したのはペップが初めてではない。マーク・ヒューズはシェイ・ギヴンを連れてきたし、マンチョはクビにさえならなければ、アスミル・ベゴヴィッチを獲りに行きたがっていた。ジョーはその都度、努力と幸運によってレギュラーの座を守ってきたが、グアルディオラには不十分だったようだ。

 

ただし、何もクラブ全体がハートを不要と看做しているわけではない。オーナーやチェアマンは、ハートが大好きだ。多分。チェアマンのムバラクは昨シーズンの締めのインタビューで、名指しでハートを称えた。彼らは願わくばバルサやレアルのような天下のビッグクラブにシティを育てたいと思っているから、所謂バンディエラが欲しいと思っている。きっと。ガーディアンのイアン・ハーバートが書いたように、「シティほど選手に甘いクラブは滅多にない」。だからこれは純粋にピッチ上の成績を追求する上でペップが下した判断で、かつペップに相当の権力が与えられていることの証左でもある。

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前に言ったように、ハートが去るのはさびしい。さびしいが、それはシティの応援を止める理由にはならないし、同情もしない。ハートは偉大な選手で、もしかしたら“アブダビ以降”のシティの象徴の一人だったかもしれないが、私にとっての、シティのアイデンティティではない。ていうか、アイデンティティって何だ。ハートの前にもシティはあったし、ハートの後にもシティはある。そういうことだ。私の中では。

 

私が少し気にかけているのは、シティがサッカー界のベイビーフェイスを、”オイルマネーの寵児“というイメージからの脱却を目指す上で(いや、笑いたくなるのはわかるが、もう少し我慢頂きたい)、このことがマイナスに働き過ぎないかということだった。功労者を切り捨てる、節操の無いクラブ。これだから成金は。みたいな。そういう話。

確かにそういう言い方もできるだろう。しかし結局のところ、どれほどの功績があり、そしてシティに歴史と伝統とやらが無かったとしても、ピッチ内の起用を歪ませるほどの温情をかけられるに値する選手など、いるべきではないのだ。功労者への決まり文句、”リスペクトを示せ”というのは、要するに、こういうことではないか。ピッチ上の成績を最大化するミッションを負って雇われた監督がいて、彼は自らがよりベターと信じるサッカーのために、よりベターと信じる選手を獲りたがっている。そしてその選択肢は、望めば手に入る。その状況において、ベターではないと評価する選手を、ピッチ外の事象―ファンの人気とか、ロッカールームでの発言力とか―のために、使うことを余儀なくされる。つまり妥協せよと迫る。

あるいは例えば1年間、半年間様子を見てみようと。それだけの貢献をしたはずだと。それもまた同じことだ。過去の貢献は、ベターではないと信じる選択肢をとることに勝る価値なのか。私にはそれは承服し難い。リスペクトを示すというのなら、恐らくそれはあくまでピッチ上のみの基準でもってサブ降格を告げ、そのあとは本人の希望に任せることだ。(だから今一部で報道されているように、クラブがローンを嫌がって、少しでも高く売りつけようとしているのが本当なら、それには反対する)

 

もちろんこれは属人的な問題で、例えばポール・ハートがやってきて、「私のサッカーには合わないから、ハートは使わない」と言ったらどうだろうか。ロイ・ホジソンでもいい。「一昨日きやがれこのハゲ」と私は思う。ペップほどの実績を持つ監督だから、納得しうる。 

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8月の31日以降、ハートがどこで過ごすのかはわからない。エバートンかもしれないし、遠くアンダルシアかもしれない。もしかしたらシティに残るのかもしれないが、それは恐らくベンチかスタンドなのだろう。ハートが正GKであったならどんなに良いことだろう。仮にペップの元でCL制覇を果たせたとして、そのチームのゴールマウスにいるのがハートだったら、どんなに嬉しいだろう。しかし、残念なことだが、私にはどうしようもない。

 

さらばだジョー、愛してるぜ。願わくば、シティを嫌いにならないでくれ。


Hart, Milner & Wright Meet Baseball Legend Bautista

 

 

ニワカと学ぶリオ五輪ロードレース プレビュウ

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A:優勝候補筆頭

B:優勝の可能性は十分あり

C:展開によってはワンチャン

D:どこかで目立てれば

E:それ以外

 

 

オリンピックは国によって出場できる選手数が違う上、最大でも1チーム5人なので、カオスになりやすい。1チーム9人くらいいると、アシストを使い捨てながら展開をコントロールできるのだが。

さらに、今回は石畳あり山ありの相当厳しいコースだということで、普段ならワンデーレースにあまり出場しない、いわゆる総合系(ツールドフランスで総合優勝を狙うような、長期間の負荷に耐えられ、山岳もこなせるが、単発のアタック力には欠ける選手たち)が多数出場。

その辺り、総合系が勝つのか、瞬発力に長けたワンデーレーサー、いわゆるクラシックハンターが勝つのか、予想が付け難い。

 

 

■スペイン:A

バルベルデ、ロドリゲスの2枚看板で優勝候補筆頭。懸念は過去にもガバガバっぷりを見せてきたチーム内の連携。というか序列か。素直にバルベルデさんエースでまとまれば良いが、ロドリゲスも引退レースなので、また静かに揉めてそうな気がする。

 

アレハンドロ・バルベルデ

負けざる男は勝てざる男。どんなレースでも上位に絡むが、大一番では決め手に欠ける愛らしい36歳。世界選手権で表彰台6回ながら優勝は1回もない。まあビッグタイトルいっぱい取ってはいるんですけど。今回の山岳寄りワンデーというコース設定は、「どんなクライマーよりもスプリントが速く、どんなスプリンターより登れる」バルベルデさんにとってはお誂え向きなのだが。

 

ホアキン・ロドリゲス

日本で大人気。カタルーニャ人なのでホントは、と言うか地元ではジョアキンと呼ばれているはずだが、ホアキンで定着してしまった。引退レースだが、調子が良ければ十分狙えるはず。

 

ヨン・イサギーレ

TTも山もそこそこ強い万能型。バルベルデさんの子分1号。

 

ホナタン・カストロビエホ

元スペインのTT王者。平地の風除け担当。

 

イマノル・エルビティ

スペイン人には珍しい、石畳大好きの巨漢。風除け担当その2。

 

 

■イタリア:A

総合系としては相当にワンデーに強いニバリがエース。リオに向けてツールを調整に使っていたとかいないとか言う噂。スプリントでは勝ち目が無いので、登り・下りで仕掛けてくると思われる。

ヴィンチェンツォ・ニバリ

昔柳沢がいたメッシーナ辺りの出身。グランツールを全て制した大物だが、ワンデーも結構強い。下りが世界屈指、と言われていたが最近はちょっと鈍った気もする。

 

ファビオ・アル

ブエルタ王者。先日のツールでは最終日に大ブレーキしてしまったが、イタリアの次代を担う男。ワンデーはあんまり強くないので、多分アシスト。走り方がやたらとうるさい。走り方にうるさいもクソも無いと思われるだろうが、まあ奥さん1回見て御覧なさいよ。

 

ディエゴ・ローザ

ニバリ、アルの忠実なアシスト。山に強い。

 

ダミアーノ・カルーゾ

ジロ、ブエルタでトップ10に入ったことがある万能型。シチリア人。

 

アレッサンドロ・デ・マルキ

逃げのスペシャリスト。多分今回も逃げグループに入ってニバリたちのためにコントロールする役割。

 

 

■コロンビア:B

近頃グランツールを席巻するコロンビア。クライマーばかりなのでワンデーレースは得意とは言い難いが、今回はド本気のメンバーを送り込んできた。全員小さくて軽いので、平地・石畳をクリアできるかが優勝争いに絡む分岐点。

 

エステバン・チャベス

ジロ総合2位、ブエルタ5位のクライマー。顔が幼い。

 

リゴベルト・ウラン

ジロ総合2位が2回。現在の第3次コロンビア旋風の端緒となる活躍で、国では相当の人気らしいが、ここ2年はさっぱり。登山部みたいな今回のメンバーの中では、平地にも強いほう。4.5頭身くらい。

 

セルヒオ・エナオ

日本では通称エナオモントーヤ。フルームの忠実なる護衛。安定して登れるが、決め手には欠ける印象。

 

ミゲル・アンヘル・ロペス

自転車選手としては相当若い22歳だが、ツールドスイスという相当名のあるレースで優勝。例によってクライマー。もうお前らワンダーフォーゲルに出たほうが良いかも知れん。

 

ハルリンソン・パンターノ

今年のツールドフランスで大ブレイク。コロンビア人としては珍しく、下り坂がめっちゃ速い。優勝は難しいだろうが、展開によっては結構目立ちそう。

 

 

■イギリス:B

ツール王者フルームが参戦。スペインと違って結束の固さが売り。あまりワンデーレースで実績のある選手はいないが、今回はコースがコースなので十分チャンスはある。

 

クリス・フルーム

強すぎてツールがつまらんという苦情が出ているかわいそうな王者。登り、下り、平地と満遍なく強いが、険しい山じゃないとアタックできないのは痛いかもしれない。

 

ゲラント・トーマス

ウェールズ人。相当なアーセナルファン。フルームの第一護衛を務めるレベルで登れる上、フルームよりも石畳に強く、ワンデーの実績もあるので、今回はエースの可能性あり。優勝候補の一人。

 

アダム・イェーツ

今年のツール4位の新星。サイモンという双子の兄弟がいる。

 

スティーヴン・カミングス

男一匹35歳、世界屈指の逃げの名手。高出力を長時間維持することに長け、タイミングを見計らったアタックも得意。天地がひっくり返っても優勝はしないが、イギリス優勝のためには欠かせない。

 

イアン・スタナード

ド根性平地鬼引きおじさん。ひたすら風除け。鼻息に注目。

 

 

■オランダ:B

高地が無いくせにクライマーばっかり輩出する変な国。グランツールでトップ10は入るけど、表彰台には上れないくらいの絶妙な「実力者」を排することにかけては右に出るものなし。勝負弱さではサッカーの代表と良い勝負。勝負だけに。

 

トム・ドゥムラン

なすび似。去年のブエルタでギリギリまで1位だったのに、最後の1日で6位まで落ちた悲運の男。タイムトライアルでは優勝候補筆頭だが、ロードも結構いける。

 

ボウケ・モレマ

今年のツールでギリギリまで2位だったのに、最後の2日間で11位まで落ちた悲運の男。調子は良さそうなので、メダル狙えることは狙えると思う。

 

スティーヴン・クライシュヴァイク

今年のジロでギリギリまで1位だったのに、最後の2日で4位まで落ちた悲運の男。肩幅が驚異的に広い。名前の読み方が多種多彩。

 

ワウト・プールス

スカイでフルームのアシストを務めるひょろ長い男。今年リエージュ~バストーニュ~リエージュという名のあるレースを勝っており、一番勝負強いかもしれない。

 

 

■フランス:B

数年前まで暗黒期だった大国。若くてキラキラした登れるアタッカーを揃えて、今回は割とチャンスありそう。

 

ジュリアン・アラフィリップ

実力的には多分世界屈指のパンチャーなのだが、そろそろ大きなタイトルがほしい24歳。顎が細い。

 

ロメン・バルデ

今年のツール2位。フランスの期待を一身に背負う。他にも背負っているやつはいたが、なかったことにされた。山岳では鋭いアタックを見せるので、平地や下りで遅れなければチャンスあり。顎が細い。

 

 

■ベルギー:C

ワンデーレースに血脈を上げる自転車狂いの国。おかげで本格的に山が登れる選手が少ないが、今回は山がちなコースになってしまった。誇りをかけて賑やかしには来るだろうが、ちょっと苦しいかも。そういえば自転車はフランドルとワロンの争いは無いのだろうか。ジルベール以外はフランドル人だが・・・。

 

グレフ・ヴァンアーヴェルマート

通称GVA。去年の世界ランキング(ポイント)で8位。パワーがあって石畳に強く、スプリントも出来てそこそこ登れるので、最終盤まで残れば優勝候補。残れるかどうかが怪しいが。

 

フィリップ・ジルベール

かつて世界を席巻したパンチャー。GVAよりはパワーに欠ける分、激坂対応では勝る。最近はさすがにちょっと衰えたので、今回は難しそう。

 

ティム・ウェレンス

坊ちゃん顔。近年成長著しく、今回のメンバーの中では山にもそこそこ対応する方。アタックの力もあるので、ワンチャンあるかも。

 

セルジュ・パウエルス

ベルギーには珍しいクライマー。実はエースかもしれない。

 

 

ポーランド:C

元世界王者クフャトコフスキと、ツール山岳賞のマイカを揃える強力布陣。クフャトコフスキには少々登りがつらく、マイカは平地で置いていかれそうな気がするが、優勝もありえなくはないくらいの実力はある。

 

 

アイルランド:C

パンチャー/クライマーとしては世界屈指のダン・マーティンと、グランツールのトップ10経験者のロッシュの従兄弟コンビで参戦。2人以外に世界的な実力者がいないのがもったいないが、展開によってはチャンスあり。

 

 

■オーストラリア:D

今年のツールで5位、総合系の実力者リッチー・ポートがエースだが、他に登れる選手がいないので、優勝争いは恐らくチャンスなし。

 

 

ポルトガル:D

2013年の世界王者、ルイコスタ別人がエース。まあ他、1人しかいないが。ルイコスタはそこそこ登れてアタックも出来るが、さすがに2人では厳しいか。

 

 

南アフリカ:D

ツールトップ10のクライマー、マインティーズを、頼れるベテラン、インピーが支えるコンビ。インピーは平地型だが、山でも結構持つ。マインティーズも最終盤まで保たせるタイプなので、メダル争いに絡む可能性もある。

 

■それ以外:E 

ツールドフランス2016 第10日まで  

http://images.cyclingtips.com/content/uploads/2016/07/CORVOS_00026811-131.jpg

http://cyclingtips.com/2016/07/photo-gallery-2016-tour-de-france-stage-9/

 

 

■SKY

今年もスカイ登山鉄道は安定の定時運行。ピレネーに入ってからこっち、我々はキリエンカと延々睨めっこを余儀なくされていて、あの顔は好きだが少々飽きた。ポートというスーパーアシストが抜けても、隅から隅まで弱点が無い盤石のアシスト陣がいて、フルームは下り形態への進化を身につけさらにキモくなり、これで来年はクライシュヴァイクも買うとか、お前たちはもう本当にもう。山岳でのキンタナにビビっているのは確かだろうが、それでも山岳終盤はスカイ+その他チームのエース勢、という状態ではその刃もフルームまで届くや否や。

 

■Movistar

昨年は「1に落ち着くこと、2に落ち着くこと」を戦術に掲げていたら、気づけば時間切れだったバルベルデと愉快な仲間たち。昨年の反省を踏まえて今年の戦術は「さらに落ち着くこと」。

キンタナ村長はひたすらフルームのケツにロックオン。ついにはVeloNewsに「なんでキンタナはアタックせえへんかってん」という記事が出てしまった。第3週の追い上げでなんとかなると見込んでいるのか。TTを踏まえれば今の差が1分程度まで広がるのはほぼ確実だと思われるが、果たして村長に足は残っているのか。とりあえずバルベルデさんは楽しそうではある。

 

■Astana

「あの、ちょっといいですか、大佐。ちょっと相談が。え?あ、はい、同志。同志大佐。同志大佐であります。すんません。え?ああそう、ツールのことですけど。ツール。いや、何の話じゃないですよ。僕がエースだって言ったじゃないですか。去年のご褒美だって。あの眉毛もいなくなったし。なのになんであの人出るんですか。え?ジロ?いや、だからジロ勝ったから終わりでいいじゃないですか!オリンピックも出るんでしょあの人!?え?アシストに専念?いや絶対嘘ですよ!!あの人そんな人じゃないじゃないですか!わかってるでしょ!!絶対狙ってますって!こないだからみんな口きいてくんないんですもん!ディエゴだけじゃないですか僕の味方!!あ、ちょっと待ってまだ終わってないですって!ちょっと!」

 

・・・・・・

 

「ええ、はい。言いましたよ。はい。アシストに専念してくださいねって。僕エースですからねって。言いました。言いましたけど。だからって山の初日で、ねえ。8分遅れるって、嘘でしょ。あ、ちょっと!まだですって!まだ!!だって8分ですよ!え?なに?疲れてた?いや、そうかも知れませんけど、それにしたって8分はないでしょ。絶対やる気なかったでしょ。アシストもクソも、もう圏外じゃないですか。仕掛けたって相手にしてもらえないでしょ。スカイの列車も通常運行でしょ。定刻通り到着しておりますっつって。白線の内側までお下がりくださーいフルーム参りまーすって。一生一緒にキリエンカじゃないですか。も~・・・」

 

 

という。

 

■Tinkoff

コンタドール無念のリタイヤ。それにしてもアクシデントは不運ではあったが、キシェロヴスキは思った通りほとんど役に立たず、マイカはよくわからない動き、頼りのクロイツィゲルも裏切り疑惑という中では、万全だったとしても厳しかったかも知れない。一応サガンは1回勝ったし、マイヨヴェールは問題なく獲れそうだし、ジャージが2つ取れれば一定の満足ではある。トザットとか、サガンのアシストに徹する方がむしろ向いている。 

しかしサガンという男は、ピュアスプリントでは勝ち目が薄いということをしっかり自覚していて、常にチャンスを窺っている男ですな。

 

AG2R

ピノよりよっぽど頼りになったバルデは44秒遅れの7位。アシスト力は大したことないが、TTが乗り越えられれば総合トップ5が見えてくる。

 

■LottNL-Jumbo

ケルデルマンは総合で5分遅れの20位台、フルーネヴェーヘンは積極的に勝負に絡むも巨星たちの壁は厚く。若手の育成と位置付けたツールなので予定通りといえば予定通りだが。ヴァンマルクはどっかで仕掛けてほしいところ。

 

Trek-Segafredo

モレマはこっそり44秒遅れの6位。シュレックスベルディア、ステティナと山岳アシストがそれなりに揃っていて、かつ平地組もカンチェがシュタイヴェン、テューンスを率いる充実布陣なので、今年もトップ10には食い込めそうな気がする。テューンスは何かのラッキーがあれば1回スプリントで勝てそう。

 

■IAM

マティアス・フランクは12分遅れの25位と苦戦中。ハワードが逃げたり、ナーセンが敢闘賞をもらったり、ホルストエンゲルが踊ったり、パンターノが傘さしたり、最後なので色々と頑張っているのは好感が持てる。もう何でもアリみたいになってきてはいるが。

 

■Cannondale-Drapac

開幕直前にドラパックがスポンサーに参加。ドラえもん感があってよろしい。「あ~・・・ローランが遅れていきます・・・」という実況以外は全く記憶にないが。そのローランは4分遅れの17位。何とかトップ10戦線に踏みとどまりたい。進化したという噂だけが聞こえるTTはいかに。たぶん、だめ。

 

■BMC Racing

リッチーには何か疫病神でもついているのだろうか。勝負では全然遅れてないのに、パンクで2分10秒のビハインド。たぶんTJはほくそ笑んでいた。しかしTJも山岳で若干遅れ気味で、どうやらエースはリッチーということで片付いた模様。ヴァンアーヴェルマートがマイヨジョーヌを着れたのは1つの成功だが、来年以降も見据えて、フルームを何とか脅かしたい。というか、お前らがやらなかったら今年もスカイおめでとうモードの後半になってしまうが。

 

■Dimension Data

やったぜ愉快なカヴ一家。復活のスプリント3勝に、カミングス叔父さん熟練の逃げですでに4勝。もう帰ってもいいでしょ。ぶっちゃけ。その他、今年のテクレハイマノットは山岳賞を放棄した代わりに集団コントロールの術を身につけた模様。ボアッソンハーゲンも安定して勝負に絡んでおり、レンショウの離脱は痛いが、もう1つか2つ勝てるかもしれない。ちなみに山岳ではアイゼル母さんが必死にカヴのお世話をしていた。たぶん割烹着も来てた。

 

■Giant-Alpecin

バルギルが総合2分50秒遅れの15位。イェーツには勝ちたいよね。デゲンコルプは相当厳しいようで今回スプリント勝利は期待できなさそうだが、ドゥムランがクイーンステージを勝ったことで恰好はついた。

 

■FDJ

レースとは難しいものでございますな。ピノやん、山岳初日にて総合の夢、終了。もう、なんかいつ見ても遅れている。とりあえず山岳賞に切り替えはしたが、マイカも狙ってくるし。

 

■Bora-Argon 18

初日にフォスが山岳賞を着たことで、とりあえずひと目立ち。期待のベネットは未だ勝負に絡めていない。あと、逃げ屋のバルタさんは、残念でしたね。新城のやつね。

 

■Katusha

ホアキン、今年は37秒遅れの5位と奮闘。クリストフは全く勝てそうな感じがしないが。

 

■Lampre-Merida

乏しいアシストの中、マインティーズは55秒遅れと奮闘。ルイ・コスタもステージ勝利に向けて惜しいところまでは戦っているということで、まあ上々。

 

Lotto-Soudal

デヘントが山岳賞争いで頑張るも、エースゴリラはとことん不発。隅っこの方で「ウホ・・・」っていじけてる姿しか見てない。ロットというのは、1人1人のタレントでは劣っても、誰が出ても落ちない、どんな時も安定、という信頼性が売りなわけだが、ゴリラがこのオランウータンっぷりでは画竜点睛。

 

■Direct Energie

社長の社長プレイは相変わらず飯が食える芸だった。コカールはキッテルに勝ちかけ、「俺ももう世界のトップじゃね?」と言い出すも、次のステージは全然絡めず。まあ、まだ若いからね。

 

■Etixx Quick-Step

キッテル、アラフィリップは常に勝利に絡むも、未だキッテルの1勝のみ。今ひとつ消化不良。ヴァコッチ、リチェセ、ヴェルモトら一人一人は強力なシーンを見せているのだが、スプリント前は大体揉めているというか、混乱している。

一方、特に力を入れてないと思われた総合はダン・マーティンが3位と絶好調。これはもしかしてもしかするのか。マルティンが山のアシスト1番手とか、その陣容で何とかなるのか。

 

■Cofidis

ブアニが余りにもブアニらしい理由で欠席。何しに行くのかと思ったが、一応山岳のナバーロ、スプリントのラポルトがそれなりに頑張ってはいる。キャラ立ちのためには、もう少しこう、頭突きとか、サグいところを見せ付けてから帰ってはどうだろうか。スポンサーもほら、消費者金融だし。むしろ回収率上がったりするんではないの。

 

■Orica-BikeExchange

イェーツ驚異の2位に、マシューズちゃんがようやく1勝。山岳アシストの不在は懸念だが、平地はヘイマン、ジェランズ、インピーと頼れるおじさんが揃っており、イェーツはひょっとするとひょっとするかもしれない。

 

■Fortuneo-Vital Concept

ドゥラプラス、フォンセカが序盤の逃げで目立ったが、最大の驚きはスプリンターのマクレイ。スプリントステージでほぼ毎回上位に入っており、まだ若いのでこの後スターになれるかも。フォンセカはしかし、200kmくらい一人で逃げた挙句、社長に敢闘賞を持って行かれたのは余りにもかわいそうだった。

 

ニワカと学ぶツールドフランス2016 vol.3

総合トップ5(+ステージ勝利狙い)

総合上位を狙う中でも、トップ5が射程圏内、もしかしたら表彰台も、という面々。ポートとヴァンガーデレンを擁するBMC、ピノがそろそろ一皮剥けたいFDJ、バルデに賭けるAG2Rホアキンとザカーリンを揃えてきたカチューシャ辺りが当てはまるだろうか。ただし、優勝が現実的な目標かと言われると難しいので、カチューシャのようにスプリントチームも抱えていたり、状況によってはステージ狙いに切り替える可能性もある。

 

■BMC Racing ビーエムシー

ファンタスティック4への挑戦者筆頭。ヴァンガーデレンとポートという勝負弱い2枚看板を揃えて事前の評価も高く、コケる前振りは順調に進んでいる。ステージが狙えるデニスとヴァンアーヴェルマートも入れといて、序盤で遅れてからステージ狙い切り替えが目に見えるよう。

 

リッチー・ポート:オールラウンダー

もともとスカイでフルームのアシストだったが、エースとして勝負したいとのことで今年移籍。アシストとしては業界最強クラスに頼れるが、エースになると絶対どこかで体調を崩す脆さが特徴。

 

ティージェイ・ヴァンガーデレン:オールラウンダー

去年のツールで途中まで3位につけながら、体調不良でリタイア。リベンジを期したブエルタも骨折でリタイア。無事にゴールまで行ければトップ5は十分狙える実力者だが、今年は同じく波がある上に実力的にも大差ないポートが入ってきてしまい、どっちがエースで行くやら、観てる方の心労が絶えない。

 

ローハン・デニス:TTスペシャリスト

去年のツールTTステージで優勝。エース2人の平地アシスト。行く行くは総合系に転身するとも言われているが、2歳上にヴァンガーデレンがいる状況では厳しいかも。オーストラリア人なので、オリカに行った方が良かったりしてね。今年どこまで登れるかが気になる。

 

グレッグ・ヴァンアーヴェルマート:パンチャー

遅咲きながら去年はツールのステージ1勝、パリ~ルーベとフランドルで3位と爆発。今や石畳走る系のレースでは世界屈指のベルギー人。ツールだとステージ優勝狙いである程度自由にやらせてもらえるのではなかろうか。

 

 

■Katusha カチューシャ

旧ソ名物薬物不正でポコポコ人が抜けるロシアの強豪。山でもスプリントでも勝利を稼げるタレントを豊富に抱えるが、ツール総合優勝や3位以内を本気で狙っていくかというと少々厳しい。恐らくステージ狙いに絞るのではなかろうか。山でも平地でも、ステージ後半になるとKのだっさいジャージでぶいぶい言わせてくるはず。 

 

ホアキン・ロドリゲス:パンチャー/クライマー

日本でも人気の激坂登りおじさん。グランツール計14勝に、トップ3が3回、トップ5が8回の名手だが、優勝だけはどうやっても手が届かない切なさ。去年は開き直ってステージ勝利に絞って2勝。今年はオリンピックもあるので多分ステージ狙い。

 

イルヌール・ザカーリン:オールラウンダー

ここ2年で一気にロシア最強の選手に成長。今年のジロでもトップ5が狙えそうな位置に着けていたが、雪山の下りで大クラッシュしてリタイア。死ななくて良かった。総合でもトップ10は狙える選手だと思うが、多分今回はホアキンのアシストをしつつ運が良ければステージ、というツールになりそう。

 

ユルゲン・ヴァンデンブルック:オールラウンダー

国民の99.8%が自転車乗りだがその99.9%は平地か坂専門という国、ベルギーでは相当に希少種のオールラウンダー。かつてツールの4位が2回だが、その後はひたすら低迷している。今年はカチューシャ移籍1年目ということで、たぶん激坂おじさんのアシスト。

 

アレクサンデル・クリストフ:スプリンター

ミラノ~サンレモ、フランドルという世界5大ワンデーの2つを制したノルウェー人。スプリンターとしてはそこそこ登れて、アシストが無くても戦えるタフなタイプ。キッテル、グライペルら純正スプリンターと比べると真っ向勝負では少々分が悪いが、アシストをフル活用してステージを狙うはず。

 

マルコ・ハラー:スプリンター

ミカエル・モルコフ:スプリンター

ヤコポ・グアルニエーリ:スプリンター

クリストフのアシストを務めるスプリンタートリオ。3人ともまあ、そこそこの実力者。エースと同じく、ド平地よりはちょっとトリッキーなコースの方が強い。

 

 

■FDJ エフデジ

フランス国民の期待を背負う男、ピノがエース。チーム全体がピノのアシストに向けて組まれているため、それ以外はあんまりステージが狙えそうな選手がいない。去年は山に到達する前にチャンスを失ったが、今年はチーム全体が謎の最新トレーニングで大幅にTT力アップしたという噂。何そのパワプロみたいなイベント。

 

ティボー・ピノ:オールラウンダー

2014年ツール3位。フルームら優勝候補が揃って負傷リタイアした結果だったとはいえ、フランス待望のツール優勝候補がついに現れたか、と思いきや去年は序盤から思いっきり遅れてしまった悩める男。登りの力は確かなのだが、調子の波が激しいのと、下り恐怖症が大きな足かせ。

去年までは登れるだけのクライマーだったが、今年は年初からTTがバカ強くなっており、この力がツールでも維持できるなら本当に表彰台が見えてくるかも。勝負弱さを克服できるか。

 

スティーヴ・モラビト:クライマー

BMC時代、カデル・エヴァンズのツール制覇に貢献した(らしい)スイス人のおっさん。スカイ等々ビッグ4のアシストと比べると心もとないが、山でピノを支える。

 

バスティアン・ライヒェンバッハ:クライマー

こちらもスイス人。割と登れる。去年は弱小IAMでエースを張ったりしていたので、まあそこそこの実力。

 

アルチュール・ヴィショ:パンチャー

現フランスチャンピオン。過去にドーフィネで1勝、パリ~ニースで1勝&総合3位に入っており、割と力はある。状況によっては逃げたりアタックしたりでステージを狙いに行きそう。

 

 

AG2R La Mondiale アージェードゥーゼル

伝統的にグランツールや起伏系レースに力を入れる、フランスの保険・年金共済組合。エースのバルデの成長とともに、いつかはグランツール制覇の夢を抱くが、今年も夢は遠そう。総合トップ5を目指すバルデをポッツォヴィーヴォが支えつつ、ヴュイエルモーズ、グジャール、ゴチエ辺りでステージ狙いか。ジャージがチョコミントっぽくてかわいい。 

http://media.gettyimages.com/photos/cycling-103th-tour-de-france-2016-stage-3-romain-bardet-alexis-team-picture-id544861094

ロマン・バルデ:クライマー

ツールでは2014年に6位、昨年9位。体重が軽いので、長時間高出力が要求される長い山脈よりは、どっちかというと激坂登りの方が得意そう。見るからに優男の見かけどおり、割と良いところで遅れるのがかわいいところ。AG2Rは全体的にかわいい。

 

ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ:クライマー

トッポジージョっぽい名前が特徴の小さいおっさん。これまでグランツールでトップ10が5回と結構大物。ちっちゃいのに大物。かわいい。今年はジロで不調に終わり、ツールはバルデのアシストに回る。

 

アレクシー・ヴュイエルモーズ:パンチャー

昨年ツールで1勝。もう28だが、近年注目されているパンチャー。激坂に強い。今回はちょいちょいステージ勝利を狙っていくものと思われる。あだ名はピカチュウ。いやほんとに。

 

アレクシー・グジャール:ルーラー       

TTが強くて独走力があるということで、こちらも注目されている、フランス人の若手。注目されているフランス人の若手と言うことはすなわち、ひ弱な印象ということである。多分ステージ狙いでいろいろ仕掛ける役。

 

 

Trek-Segafredo レックセガフレード

自転車メーカーのトレックと、カフェチェーンでおなじみのセガフレードがスポンサー。今年は全体的にカンチェさよなら祭りの1年だが、カンチェ以外も年寄りばかりというか、お前らこそ来年引退じゃねえのかという面子。良く言えば経験豊富ではあるが。経験ばっかりあってもなあ。

エース、モレマの総合5位と、シュタイヴェンの逃げ、あと運が良ければカンチェでTT狙いといったところか。 

ボウケ・モレマ:クライマー

グランツールのトップ10が4回、去年は7位に入っているのに、どうにも影が薄いオランダ人。途中までめっちゃ強かったけど崩れた、とかじゃなくて、大体ぼやっとした順位で終始しているせいかもしれない。今年くらいはステージ優勝したいところだが、アシストのオッサンどもが頼りになるやらならんやら。

 

ファビアン・カンチェッラーラ:TTスペシャリスト/ルーラー

稀代のカリスマ、ついに引退。春のクラシックシーズンは本当に引退かという強さを見せていた。昔ほどTTは強くなくなったのでステージは厳しそうだが、まあ、もうカンチェレベルになると、存在感が大事なのだ。

 

フランク・シュレック:クライマー

かつて弟アンディとともに一世を風靡したルクセンブルクの優男。ツールで3位が1回、4位が2回だが、それももはや過去の栄光。近年はドーピング違反とか怪我とか色々と右肩下がっていたが、去年ブエルタで復活の一勝。モレマをアシスト・・・できるんですよね?

 

アイマル・スベルディア:クライマー

今は亡きバスクチーム、エウスカルテル出身。ツールのトップ10に入ること5回、最高4位の大物クライマーだが、さすがに39歳もう苦しい。さすがに実力者ではあるので、なんとかモレマをアシストしたいのだが。後半はステージ狙ったりするかも。

 

ピーター・ステティナ:クライマー

今年加入したコロラド生まれの若手。といってももう28だが。モレマに次ぐエース格・・・っぽい扱いなので、期待はされているようだ。

 

ヤスパー・シュタイヴェン:スプリンター/パンチャー

またの名をストゥイフェンとかストゥイヴェンとか。今(ツール3日目)でまさに山岳賞着てます。まだ24歳、去年のブエルタでステージ1勝、今年はE3で5位だったりクールネで優勝したり、そこそこのワンデーレースなら十分勝てる力を既に持つ。多分この後も逃げて頑張る担当。

 

エドワード・テューンス:パンチャー

シュタイヴェンがスプリントエースかと思ったが、どうやらテューンスでいくのね。パンチャーと言いながらも、石畳系ワンデーにも対応でき、スプリントもそこそこいけるタフなタイプ。器用貧乏とも言うが。今年はベルギー1周で1勝、スヘルデプライス4位、ドワールス3位と、シュタイヴェンと同じくそれなりのワンデーで結果を残している。

ニワカと学ぶツールドフランス2016 vol.2

ステージ勝利狙い(スプリント中心)

主に平地ステージのスプリント合戦で勝利を狙う人たち。エースを大事に大事にゴール前まで運ぶ大量のアシスト陣と、ラスト10秒に全てを掛けるエーススプリンターで構成される。ド平坦の実力ならキッテルとグライペルを擁するベルギーの2チームが抜けているが、そう平坦ばっかりでも無いので、駆け引き次第では他のチームにも十分チャンスあり。逆に山の日は、ほとんどやることがない。

ここでは省いたが、多分カチューシャやオリカもスプリント争いには加わってくるはず。

 

■Etixx-Quick Step エティックス・クイックステップ

自転車大好きベルギー1の名門チーム。スカイにも負けないスター集団だが、こちらは春先のワンデーレースに重きを置いているため、選手のタイプ構成は全く異なる。今年も総合にはほとんど興味なく、スプリントやら抜け出しやらでステージ勝利量産だけが目的。

スプリント、長距離逃げ、ゴール前数kmでのアタック、激坂登りと、本格的な山以外ならどのコースでも対応できるメンバーを揃え、しかもほぼ全員がその分野では世界トップクラス。山が無くてつまんなそうな日は、とりあえず彼らに注目していれば、何がしか動きがあるはず。 

 

マルセル・キッテル:スプリンター

平地なら世界最強のスプリンター。とにかくゴール前まで無事に運びさえすればトップクラスのスプリンターを子供扱いするが、重くてデカイので運ぶのが一苦労という、明治の大砲みたいな選手。山どころか坂すら登れない。

2014年までツールで勝利を量産していたが、昨年は体調不良で出場できず。今年はチームも変わって心機一転、ジロでもいきなり2連勝している。顔の良さでも知られており、イベントで来日したときは埼玉の女子高生のハートを鷲掴みにしていたという噂。

 

マキシミリアーノ“マキシ”・リチェセ:スプリンター

最近ツールドスイスという名のある大会でポイント賞を獲得。アルゼンチン人としては史上最高クラスの成績を収めているらしい。エースとしては若干力不足だが、アシストとしては頼れる存在。今回はキッテルのリードアウトマン(最終発射台)を担う。

 

ファビオ・サバティーニ:スプリンター

リチェセと同じくキッテルのリードアウトを担うイタリア人。本人に目立った戦績は無いが、割と長い距離を牽けるのでアシストとしては重宝する。グランツールの経験も豊富。

 

トニー・マルティン:タイムトライアルスペシャリスト

かつて世界選手権TT部門を3連覇した世界屈指のTT専門家。1人で200km逃げて勝ったりすることも。とにかく爆裂に牽けるので、マルティンが牽き出すと相手チームがぽろぽろ脱落していく。マルティンが牽いているということは、エティックスが本気だというサイン。張ったエラと鯉みたいな口が特徴。

 

ジュリアン・アラフィリップ:パンチャー

フランスの期待を背負う若手パンチャー。アルデンヌ系ワンデーレース(アップダウンが激しいやつ)では優勝候補。短めの坂でのパンチ力に平地でのスプリントも兼ね備える。今年はツアーオブカリフォルニアで総合優勝。今回のツールではアップダウン系のコースでステージ勝利を狙うと思われる。

 

ダン・マーティン:パンチャー

アラフィリップとともに、アップダウン系コースでの勝利を狙うアイルランド人。パンチャー寄りのオールラウンダーというか、オールラウンダー寄りのパンチャーというか。アラフィリップにスプリントでは劣る一方、そこそこの山でもこなせてしまう登坂力が売り。顔は常に眠そう。2013年にリエージュバストーニュリエージュという世界5大ワンデーレースを勝っている。そのときパンダの着ぐるみを着たおっさんに追いかけられて以来、自転車にパンダペイントをしている。

 

イリヨ・ケイス:ルーラー

ジュリアン・ヴェルモト:ルーラー

ペトル・ヴァコッチ:ルーラー

3人とも、平地を高速巡航できるタイプ。スプリントのゴール前約20km~5km地点で、エースのためにポジションをとりつつ敵チームを疲弊させる役割を担う。いずれにしても、チームでは一番の脇役だが、それなりの実力者。

 

 

Lotto-Soudal ロット・スーダル

またの名をロット・ソウダル。1980年代から続く古参チーム。同じベルギーのエティックスに予算では及ばないが、エースのゴリラの脇を仕事人集団が固める渋いチーム。スプリントも出来て、平地を長く引けるタイプが多い。ジロでも安定の4勝。ゴリラが大会通して健在なら、なんだかんだで一番ステージ勝つのはこいつらかも。

 

アンドレ・グライペル:スプリンター

通称ゴリラ。ムキムキだからゴリラ。去年はツールで4勝、今年もジロで3勝と、調子を含めて考えると現世界最強のスプリンターと言ってもいいかも。ド平地で真っ向勝負するとキッテルには劣るが、キッテルと比べると100倍くらい登れるので、多少タフなコースも耐えられる。おっさん仕事人集団を率いて結束は固い。

 

トニー・ギャロパン:パンチャー

アップダウン系に強いが、スプリントもそこそこいける器用貧乏。世界選手権で2年連続トップ10入りしており、力は相当ある方なんだが、今一つ殻を破れない日々。嫁さんがかわいい。

 

アダム・ハンセン:ルーラー

グレッグ・ヘンダーソン:ルーラー/スプリンター

マルセル・ジーベルク:スプリンター/ルーラー

ボスゴリラの側近ゴリラ。3人ともデカくて重くて猛烈に牽ける。ハンセンはグランツール14回連続完走の鉄人。

 

ユルゲン・ルーランツ:ルーラー/スプリンター

歳食ったパンクロッカー的渋い表情が特徴のハードボイルド男。石畳系が専門だが、長距離を逃げさせても良いし、状況によってはスプリント勝負も出来なくは無い。

 

トーマス・デヘント:パンチャー

逃げの名手。山系のステージでよくかき回している。

 

ラースユティン・バク:ルーラー

かつて最強スプリント集団として知られたHTCの生き残り。TTがそこそこ速い。逃げに乗ったり終盤でアタックを掛けたりしては、偉そうに集団を仕切っている姿をよく見る。もうおっさんだからね。

 

 

■Giant-Alpecin ジャイアント・アルペシン

もともとはスプリント主体のチームだったが、今年から総合狙いに方針転換。が、総合エースのドゥムランが今年はリオ五輪に注力したいということで、一周回って今回のツールはスプリント狙いになる予定。と、あとはドゥムランがTTステージで、バルギルが山岳系ステージで勝利を狙っていく感じか。エースのデゲンコルプが怪我明けなので若干厳しいが、まあチャンスがあれば。良い選手はいる。

 

ジョン・デゲンコルプ:スプリンター

ミラノ~サンレモ、パリ~ルーベという世界5大ワンデーの2つを制した名スプリンター。キッテルやグライペルに比べて純粋なスピード勝負では劣る一方、坂や石畳への対応力、一人で何とかする体力は段違い。今年は年明けのキャンプ中に逆走してきた婆さんの車に轢かれて指が千切れかける大怪我。最近ようやく復帰したばかりなので、まだちょっと厳しいかも。笑顔と口ひげがトレードマーク。

http://media.gettyimages.com/photos/cycling-team-giant-alpecin-press-conference-degenkolb-john-pc-paris-picture-id531335196

 

トム・ドゥムラン:オールラウンダー

次世代のTT王者として期待される存在だったが、去年いきなり山が登れるようになり、一気にグランツール制覇が見えてきたなすび似の男。山岳ではひたすら差を広げられないようついていき、TTで一気にまくるスタイル。ただし今年はリオ五輪のTTがどうしても取りたいらしく、ツールはその準備だとか。

 

ワレン・バルギル:オールラウンダー

2013年のブエルタで若干21歳にしてステージ2勝。将来を嘱望されるフランス人だが、「将来」「嘱望」「フランス人」の時点でもうほとんど「伸び悩み」と同義なので、どうなるやら。今年も無理に上位は狙わないらしい。一応、チームのエースではあると思われるが、多分ステージ狙い。

 

ジモン・ゲシュケ:オールラウンダー

オールラウンダーというほど全体的に凄いわけでもないが、まあそこそこ登れて平地もイケるヒゲ。アップダウンに強い。去年のツールでは涙の初ステージ勝利。山でバルギルをアシストしつつ、逃げにも入ってチャンスがありそうならステージ狙い、というポジションだと想定される。

 

ローレンス・テンダム:クライマー

もともとオランダのロットNL・ユンボにいたベテラン。一度ツールで総合10位に入ったことがある。よだれをだらだら流しながらTTを走ることで有名。今回はバルギルのサポート。

 

ゲオルク・プライドラー:クライマー

オーストリア人の優男。大学で鉱山工学を勉強しているとか何とか。全体的に、自転車選手はサッカーよりもインテリな傾向がある。今年のジロではドロミテ山塊ステージで3位に入っており、割と登れる。バルギルのアシストもしつつ、逃げに入ったりしちゃう感じなのであろう。

 

 

■Dimension Data ディメンション・データ

今年ワールドツアー(いわゆる一部)に昇格した南アフリカ籍のチーム。アフリカの恵まれない子供たちに自転車を配る活動もやっている、慈善組織でもある。昨年はツール初挑戦ながら、テクレハイマノットがアフリカ人初の山岳賞(途中まで)獲得、カミングスがステージ勝利と大成功を収めた。

今年はスプリントチームに豪華補強を加えてさらに勝利数増を狙うが、まだまだ新興チームな上、アフリカへのアピールもあるので、山岳賞やポイント賞、逃げでのTV映りも狙ってきそう。スポンサーはNTTデータの子会社。

http://media.gettyimages.com/photos/daniel-teklehaimanot-of-eritrea-and-team-dimension-data-during-the-picture-id543954384

 

マーク・カヴェンディッシュ:スプリンター

かつて世界最強の名を欲しいままにした駄々っ子ミサイル。通称カヴ。世界選手権にグランツール全てのポイント賞、ミラノ~サンレモと、スプリンターが獲れる主要タイトルは全部持っている。全盛期の力はもはやないが、有力スプリンターであることには変わらず。すぐ拗ねるので、レンショウとアイゼルの保育が不可欠。

 

 

マーク・レンショウ:スプリンター

カヴェンディッシュの姉。一時期カヴと離れてエースを担ったが、カヴはレンショウがいないと拗ねるし、レンショウはレンショウで全然勝てないしで、結局再合流した共依存関係。カヴの発射台役を担う。

 

ベルンハルト・アイゼル:スプリンター

カヴェンディッシュの母。最終発射台の3つか4つ手前で、スプリントトレインを指揮するベテラン。業界全体でも顔が利く。さすがに35歳なので近年は目立った成績が無いが、貫禄と存在感を買われてメンバー入り。

 

エドヴァルト・ボアッソンハーゲン:スプリンター

スプリントは強いわTTは速いわ登れるわで、神童の誉れ高かったらしいノルウェー人。しかし強豪スカイで便利屋的に使いまわされ、伸び悩み。新興ディメンション・データでようやく第2の春を謳歌しつつある。スプリンターとしては相当に登れるので、ある程度勾配があるゴール前や逃げ集団でのスプリントを担当すると思われる。

 

スティーヴ・カミングス:ルーラー

男一匹35歳、長距離を逃げさせたら天下一品。1人でも高速をキープし続けられる上、逃げのタイミングを図るのが上手いいぶし銀。去年のツール1勝から今年も好調をキープしており、ティレーノ~アドレアティコ、バスク1周、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネと名のあるレースですでに3勝を飾っている。余裕があったら逃げさせて、レースのかき回し担当。

 

ダニエル・テクレハイマノット:オールラウンダー

昨年のツールで数日間山岳賞首位に立ち、アフリカの・・・かどうかは知らんが、少なくとも母国エリトリアの英雄に。大統領から直接表彰もされていた。決して山岳が得意なわけではないが、早めに逃げ集団に乗ってはコツコツ山岳ポイントを貯金する。多分今年も途中までの100円貯金で山岳賞ジャージを着るのが目標。手足が長い。

 

 

■Cofidis コフィディス

プロコン(いわゆる2部)ながら、平地ステージでは常に優勝候補に数えられる有力チーム。それというのもエースのブアニが凄いから。ブアニを筆頭に、頭突きも脅しもなんでもありなチンピラトレインが唯一最大の武器。去年のツールはブアニが早々に怪我でリタイアしたため、まじでやることが無さそうだった。

と思ったら、案の定ブアニが怪我で離脱。本当に、何しにいくんだお前ら。

http://media.gettyimages.com/photos/cycling-103rd-tour-de-france-2016-team-presentation-team-cofidis-picture-id543934786

 

ナセル・ブアニ:スプリンター

フランス国内王者1回、ジロで3勝にポイント賞1回、ブエルタで2勝のスプリンター。体重が軽いため、スプリンターが苦しむアップダウンにもそこそこ対応できる。もともとボクシングをやっていたらしく、今でもオフはボクシングでトレーニングとか、引退後はボクサーになるとか、ちょっと揉めた相手には「オウ拳で決着つけようやコラ」と脅すとか、その手のサグい男。すぐ頭突きとかする。

⇒宿舎で酔っぱらってうるさかったオッサンをぶん殴って手を怪我したとのことで、やる前からリタイア。サグい。サグすぎる。

 

ジョフレ・スープ:ルーラー/スプリンター

幼いころからブアニとマブダチ。悪そなヤツは大体友達。ヒゲとリベリーっぽい顔が特徴の、チンピラトレイン2号車。ブアニの発射台を務めるが、ブアニと同じく相当の武闘派。

 

ボルト・ボジッチ:スプリンター

チンピラトレイン3号車。これまでブエルタでステージ1勝の経験があるスロベニア人。今年からコフィディスに加入したが、サグい面子に囲まれて精神を病んでいないかが心配。

ニワカと学ぶツールドフランス2016 vol.1

ロードレースである。意外と楽しいのよこれが。見てみると。しかし、初めて見る人には取っ付きづらいというのも確かであろう。まずもって何を競っているのかよく判らない。一番最初にゴールした人が勝ちだというのは良いとして、どうもチームでレースをしているようにも見える。アシストだとか何だとか。

それが故に、海外サッカーを日常的に見る人間は往々にして自転車ロードレースも見ることができる環境にも拘らず、両方見ている人間はあまり多くない気がする。感覚だから文句言われても困るが。

 

ということでここはひとつ、ニワカを脱しつつあるロードレース観戦者であるところの私が次のニワカのために、ツールドフランスの観戦用豆知識を一説ぶってしんぜよう。

 

ド基本のところはこの辺を見てもらうとして、レースを楽しむポイントとして重要なのが、「各チームのキャラクターと目的」である。ロードレースのコースはめちゃめちゃざっくり言えば「平地か、山か、アップダウンか」の3種類なのだが、山が得意な選手と平地が得意な選手でまるっきり体形から何から違うので、「どんなコースでも勝てる選手」というのは基本的には存在しない。さらに、ロードレースで勝つにはエースのために風除けや水のボトルを運ぶアシストの存在が不可欠だが、エースをサポートするためには、アシスト達も必然的にエースと似た体形体格能力(脚質という)であることが求められる。

 

かくして何が起こるか。各チームは目標に従って、限られた選手の枠(1チーム9人)をどんな脚質の選手に配分するか、決める必要があるのだ。総合優勝を狙うチームはスプリントで何ぼ勝てても何もメリットが無いため、スプリンターやそのアシストに人材を割く訳にはいかないし、逆にスプリントで出来るだけ多くのステージ優勝を狙うチームは、平地でさほど役に立たないクライマーを多数抱え込む余裕は無い。

また、エースの能力によって狙える目標は制限されざるを得ないから、各チームが抱く目標はそれぞれ異なる。平たく言えば弱いチームが総合優勝を狙うのは無謀で、どっかで1回勝てればいいな!という構成になるわけよ。

 

 

総合優勝狙い

21日間の総合タイムで優勝したい人たち。優勝するとマイヨ・ジョーヌという黄色いジャージがもらえる。ロードレース界では一番の名誉。“ファンタスティック4”と呼ばれる業界最強の4人がいるのだが、平たく言えばその4人がいる4チームがそのままこの枠。去年はスカイが勝ちました。

 

■Sky スカイ

「巨人」とか「ペイトリオッツ」とか、その辺りのチームと大体同じ立ち位置と考えて頂いて差支えない。高額予算、スター軍団、科学的なアプローチ。フィクションならどう転んでも悪役なのだが、これが2012,2013,2015と近年最強を誇るから現実は世知辛いところだ。今回もエースのフルーム以下、どっから見ても隙が無い嫌らしいロースター。アシスト陣も名があるレースの優勝者か、グランツールのトップ10経験者ばっかりで、今回も狙うは優勝。スポンサーは放送局のSKYで、イギリスのチーム。

http://media.gettyimages.com/photos/chris-froome-of-team-sky-alongside-sergio-henao-montoya-vasil-and-picture-id543941042

 

クリス・フルーム:オールラウンダー

昨年のツールドフランス総合優勝。総合系の選手としては驚異的に速いタイムトライアル、ライバルを一瞬でぶっ壊す山岳でのアタック力、何度引き離しても復活してくるリカバリーの速さと、どこをとっても弱点なしの嫌らしい男。強いて言えばよく転んで怪我するくらいか。今年も優勝候補筆頭。

 

ゲラント・トーマス:オールラウンダー

フルームのアシスト一番手。元々は平地系の選手だったが、近年急激に登れるようになり、今年はパリ~ニースで総合優勝。昨年までフルームの右腕だったリッチー・ポートが移籍してしまったため、重責を担う。つぶらな瞳が特徴。

 

ミケル・ランダ:クライマー

今年アスタナから移籍してきたバスク人。眉毛がすごい。アスタナではアシスト一番手としてジロ・ディタリアに出場したが、1歳下のファビオ・アルをエースとして扱うチーム方針にキレて移籍した。キレるだけあって、ジロ総合3位、ブエルタ1勝と実力は折り紙つき。とくに、山の登坂力は世界屈指。腹黒いのと平地が遅いのが欠点。

 

セルヒオ・エナオ:クライマー

高地育ちのコロンビア人。高地育ち過ぎて血液が常人のドーピング状態のため、何度か検査に引っ掛かって一時出場停止をくらっているめちゃめちゃ可哀想な人。カリフォルニア一周総合3位、ツール・ダウンアンダー総合3位など、有名レースでも上位の実力者。

 

ワウト・プールス:クライマー

ひょろっひょろ。昨年のツールでは、山岳で強力にフルームをアシストして評価を高めた。今年はリエージュ~バストーニュ~リエージュという世界5大ワンデーレースの1つを制し、スター選手の仲間入り。今回も山岳でフルームのアシストを担う。

 

ミケル・ニエベ:クライマー

バスク名物、ちっちゃくて登れるおっさん。バスクのおっさん界では多分世界一山が登れる。これまでグランツールでトップ10入りが5回、ジロでのステージ勝利が2回に山岳賞1回のいぶし銀。

 

ワシーリ・キリエンカ:TTスペシャリスト

平地だろうが山だろうが黙々と牽いてくれる、頼れる仕事人。笑うのがめっちゃ下手。アシスト界では相当の大物。タイムトライアルの現世界チャンピオンであり、これまでグランツールで計4勝、世界選手権TT部門で優勝1回と、アシストの枠に留まらないタイトルホルダーである。

 

イアン・スタナード:ルーラー

ルーク・ロウ:ルーラー

平地でのフルーム護衛を担うイギリス人コンビ。どちらも悪路に強く、春先のワンデーレースでは優勝候補に挙げられる水準の選手。ど根性が持ち味でフンガーフンガー言いながら牽くのがスタナード、比較的スマートな感じなのがロウ。

 

 

 

■Astana アスタナ

カザフスタン政府の支援で発足。ドーピングに引っ掛かるやつがちょくちょく出てきたり、出来が悪いとGMアレクサンドル・ヴィノクロフ大佐から怖いお手紙が届いたり、陰鬱な雰囲気を漂わせる正統派の旧ソ連チーム。

戦力的な中心はイタリア人で、ファンタスティック4の一角、ニバリを擁し、過去3年のグランツールで計3回優勝している。今回も目標は総合優勝なのだが、先月のジロでニバリが優勝したので、エースは若手のアル。アシスト陣は相当に強いのだが、アルが他の優勝候補にどの程度着いて行けるかが怪しいところ。

 

 

ファビオ・アル:クライマー

花の90年世代の1人。昨年ジロで総合2位、ブエルタで総合優勝し、大物の仲間入り。今年はエースとしてツールに初挑戦だが、前哨戦では調子最悪。ニバリのご機嫌を伺いつつ、他の優勝候補に対抗していくという複雑なタスクを受け止めきれるか26歳。苦しいときは口がカマボコ型になる。

 

ヴィンチェンツォ・ニバリ:オールラウンダー

グランツール全てを制覇している、ファンタスティック4の一角。2014年のツール王者。割と陰険で、相手のピンチにつけ込むアタックが得意。審判やらチームメイトやらにすぐネチネチと文句をつけるが、プライベートでは静かでいい人らしい。今回はアルのアシストだが、果たしてどこまでその関係が持つやら、アルの強さが試されている。主に胃の。

 

ヤコブ・フールサン:オールラウンダー

またの名をフグルサング。文句を言いつつニバリを支えてきた有力アシスト。エースとして走っても総合10位程度に入る力はあるので、今回も2人を全般的に助ける役目だと思われる。

 

タネル・カンゲルト:クライマー

エストニア人。地味だが相当登れて、本人も本人もグランツールで15位から10位程度に入る力はある。スカイのスター陣に比べるとちょっと見劣りするけど。

 

ルイス・レオン・サンチェス:パンチャー/ルーラー

レアルマドリーモウリーニョに干されていたペドロ・レオン、あのヘタフェとかにいたレオンのお兄ちゃん。山もそこそこ登れるし、スペイン人としてはTTも速いが、最大の特徴は業界屈指のダウンヒル。エースより先行して山頂で待っといて、合流してからの下り坂先導、とか飛び道具的な使い方ができて便利。

 

ディエゴ・ローザ:クライマー

ニバリ班(スカルポーニ、ティラロンゴら)の勢力が強いアスタナで、数少ないアルのお伴。モンテディオにいたブラジル人ではない。本人もミラノ~トリノ優勝とか、イル・ロンバルディア(世界5大ワンデーの1つ)で5位とか、そこそこのレースで実績を残している。アルの胃のために奮闘が期待される。

 

パオロ・ティラロンゴ:クライマー

御年39歳、長年コンタドールやニバリといったチャンピオンに使えてきた名アシスト。めっちゃ小さい。体重50kg台と軽過ぎて平地では役に立たないが、山では頼りになるオッサン。ジロ通算ステージ3勝。

 

 

 

■Movistar モビスター

1980年から続くスペインの名門(自転車界では相当長い方)。キンタナ、バルベルデという2大スターを抱えてUCIチームランキングでは3年連続1位の有力チームだが、ツールでは毎回いいところでポカをこく。

去年最もスカイを苦しめたチームであり、今年こそはキンタナで優勝を狙う、と言いたいところだが、やはりスカイと比べると戦力では劣ると言わざるを得まい。エースのキンタナがフルームを相当圧倒できないと厳しい。関係無いけど、バルサのルイスエンリケがめっちゃファン。

 

ナイロ・キンタナ:クライマー

総合系で世界最強と目される4人、“ファンタスティック4”の一角。もちろんフルームも入ってる。クライマー揃いのコロンビア人の中でも最強の登坂力を誇るが、前述の4人の中ではちょっとTTが苦手なのが惜しいところ。別に遅くは無いのだが。ウルルン滞在記に出てきそうな顔が特徴。

 

アレハンドロ・バルベルデ:オールラウンダー

総合系の格としては、ファンタスティック4から一つ下くらいの選手。ブエルタで総合優勝1回、3つのグランツール全てで3位以内を経験。ワンデーレースにも強く、フレーシュ・ワロンヌ4回、リエージュ何ちゃら3回、世界選手権で2位が2回に3位が4回と、とにかくどんなレースだろうが上位に入り続ける鉄人。スポンサーにとってこれほどありがたい選手はいまい。

大物の割に、姑息な手をこれでもかと使ってくることでも有名。今回はキンタナのアシストに専念するということだが、本当に大丈夫だろうか。世界12億6,000万人のバルベルデさんファンの注目が集まる。

 

ダニエル・モレーノ:パンチャー

長い山もある程度こなせるが、急坂でスプリントする方が得意。2013年にフレーシュ・ワロンヌという格の高いワンデーレースで優勝。長年カチューシャでホアキン・ロドリゲスの右腕として働いていたが、喧嘩して今年移籍。バルベルデさんの子分に。

 

ウィナー・アナコナ:クライマー

仮面ライダー俳優っぽいイケメン。名前は人生の勝者になってほしくてお父さんが付けたらしい。ブエルタでステージ勝利1回の実力者。コロンビア人なのでもちろん山岳アシスト。

 

ヨン・イサギーレ&ゴルカ・イサギーレ:ルーラー

バスク人の兄弟。ゴルカが兄でヨンが弟。ヨンの方がどっちかと言うと大物で、スイス1周、バスク1周、ロマンディなど1週間くらいのレースにめちゃめちゃ強い。そこそこ登れる上、TTも強いので、平地中心に全般的にキンタナをアシストすると思われる。兄は地味。

 

ネウソン・オリヴェイラ:TTスペシャリスト

ポルトガルTT王者。毎年平地で遅れるのがモビスターの悪い癖なので、そこのところをカバーすることが期待される。

 

イマノル・エルビティ:ルーラー

スペイン人と言うのは大体「北のクラシック」(春先にベルギーでやってる、悪天候の中悪路を延々と走る系のワンデー)が嫌いなのだが、スペイン人としてはほとんど唯一、そっち系が大好きな変態。今年は春先の活躍で日本の視聴者に強烈な印象を残した。主に平地の風除け担当。

 

 

 

■Tinkoff ティンコフ

ロシアのザンパリーニこと怒れる男、ティンコフさんがオーナー。ティンコフさんが自転車連盟にキレて今年限りのチーム解散が決まってしまったため、有終の美を飾りたいが、コンタドールサガンという2大スターを抱えながらもアシスト陣は不安。特に山を登れるアシストが少ないのが気になる。去年はキレてTVを壊したティンコフさんが今年は何を壊すのか注目。

http://media.gettyimages.com/photos/alberto-contador-of-spain-alongside-peter-sagan-of-slovakia-and-team-picture-id543941286

 

アルベルト・コンタドール:オールラウンダー

グランツール優勝計7回、自転車界を代表するスーパースター。ランス・アームストロングにいじめられたり、脳血腫で死にそうになったりの苦労人。山もTTも強いが、最近はフルームに押され気味。あんまり頼りにならないアシスト陣を背負って、悲壮な挑戦が始まる。

 

ペテル・サガン:スプリンター/パンチャー

現世界チャンピオン。1人だけ白に5色の線が入ったジャージで、後ろ髪が長い男。

本格的な山以外は何でもできる怪物。余りにも強すぎて面倒事を全て押しつけられ、結局勝利を逃がすパターンが多く、去年のツールはサガンの負けっぷりを楽しむ大会になっていた節もある。誰がどう見ても一番強いのはサガンなのにねえ、みたいな。

ツールでは4年連続ポイント賞。スプリンターとしては異様に山が登れてタフなため、ポイント賞は現行のルールが続く限りサガンの独走だという噂も。最高に強くてイケメンなのに、息子3兄弟を抱えた母親がごとく雑事をこなす姿がかわいい。

 

ロマン・クロイツィゲル

グランツールの総合トップ10が4回。コンタドールの悲哀を傍で支える涙のアシスト。去年までバッソとロジャーズという頼れる大ベテランがいたのだが、2人とも病気で引退。泣ける。

 

ラファウ・マイカ:クライマー

2014年のツール山岳賞、去年はブエルタ3位。相当に格が高いクライマー。クロイツィゲルが過労で倒れるかどうか、マイカの双肩にかかっている感も。

 

ロベルト・キシェルロヴスキ:クライマー

またの名をキセルロウスキー。2010年、2014年とジロ総合10位に入った実力者だが、最近はさっぱり。今年も、頼りになるかと言われれば多分ならない。

 

マッテオ・トザット:ルーラー

マチェイ・ボドナル:TTスペシャリスト

オスカル・ガット:スプリンター

平地担当トリオ。御年42歳の大ベテランというか、ほとんどジジイのトザット、国内TT選手権4回優勝のボドナル、サガンの発射台も兼ねるガット。3人とも経験豊富な実力者だが、他の優勝候補と比べると一歩型落ち感があるような。