サッカークラブはどの程度なら立ち直れるのか

マンチェスター・シティ、2年間の欧州コンペティション出場停止と罰金。

 

www.theguardian.com

 

 

なぜこういうことになったのか、という点についてはこちらの過去記事を見てほしい。マンチェスター・シティにはCASへの上告余地があるので、来季からすぐに出場停止になるわけではないという説もあるが、今後「チート」「インチキ」との誹りは免れ得ないだろう。CLから締め出しともなれば、収入面でも大きなダメージを受けることは間違いない。

 

さて、サッカークラブはどれくらいレジリエントなのだろうか。つまり、どの程度のダメージなら立ち直ることが可能なのであろうか。

 

例えばリヴァプール。1985年、リヴァプールには「ファンが相手のファン約30人を試合会場で殺す」というかなりストロングスタイルの事件があった。結果は6年間の欧州コンペティション出場禁止である。とはいえその後も3回リーグ優勝をしているし、90年代から00年代を通じてサッカー界におけるリヴァプールの人気は健在だった。

 

ja.wikipedia.org

 

例えばユヴェントス。「ヤオセロナ」や「ペナルティアーノ」など、審判の買収に関するジョークはスポーツをめぐるナラティブに深く浸透しているが、ユーベは実際にそれをやるというイノベーションに打って出た。まあ実際のところ、イタリアではみんなやっていたのだが。最終的にはタイトル剥奪、2部降格処分を食らったものの、2010年代には常勝クラブとしての地位を取り戻している。
カルチョポリの顛末についてはこの記事に詳しい。2011年に「クラブに対しては法的責任を問わない(モッジら当時の首脳陣や審判個人に対して問うているので)」という判決文が出たことが、一部で「ユーベは八百長をやっていなかった」という説が出るようになった原因だろう) 

tifosissimo.jp

 

 

一方でポーツマスのように財政破綻とタイミングを合わせてプレミアから実質3部まで転落し、今もその地位を取り戻せていないクラブもある。

 

シティに対する処分が発表された日にそういうことを言い出すとは、他のクラブを引き合いに出して印象を薄めようとしてるんですか!?許せません!!という声もあろうかとは思うが、まあちょっと落ち着いて頂きたい。実際、この2つはサッカークラブとしてはかなりの危機のはずだ。あなたがこの2つのクラブの社長として雇われているとしよう。ある日報告がある。スタジアムで相手のファンを殺害してしまった。GMが審判に圧力をかけていた。自分なら、頭を抱えて2時間は喫煙室から出てこれない自信がある。そこから立ち直ったというのはいろんな意味でサッカー史に残る出来事だと思うのである。

 

ただしリヴァプールユヴェントスの場合、事件発生時点で既に名門クラブとしての強いブランドがあった。特にリヴァプールの場合は突発的な事故である。謂わば本来的な価値はちゃんとあって、ガバナンス上の問題でそれが一時的に毀損されているだけ、と評価される状態だ。一方で新興クラブのシティの場合、「粉飾会計を行って価値を水増ししていた」と見なされる可能性がある。そうなれば現状の事業規模を保つことは難しくなる。

 

その意味で、過去の危機事例は参考になりづらいと思うのである。