2018/19 マンチェスター・シティ シーズンレビュー個人編(前編)

GK

1 クラウディオ・ブラボ Claudio BRAVO 

 アキレス腱を切ったとかで、シーズン全休。話のしようがなくて申し訳ない。最初のシーズンはその余りにイージーな守りで笑いものになってしまったが、控えとしてはやっぱりチリ代表119キャップの男は頼りになるので、来年は復活を期して頑張ってもらいたいところ。

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31 エデルソン・モライス EDERSON Moraes

 まさかのベストイレブン受賞。完全にアリソンだと思ってたわ。すまんな。

 GKにはサイコを置け、というのは近代サッカーの鉄則であって、ミニョレが微妙なのは良い人っぽいからだとと思う。別にミニョレに恨みはないが。味方(主に、ジンチェンコかベルナルド)がいじめられそうになったら秒でキレ散らかすというサイコムーブを今年も披露。やはりそうでなくては困るというもの。

 今年は自慢のキックが更にパワーアップし、アシストも記録。ペナルティエリアの端に出された無理目のスルーパスに飛び込んでPK、というパターンをやけに繰り返していたのが気になったが、ほぼほぼ文句なしです。

Brighton & Hove Albion v Manchester City - Premier League : ニュース写真

 

32 ダニエル・グリムショウ Daniel GRIMSHAW*

 ブラボの怪我で、すわ第2GKに抜擢か!と思われたが、普通にムリッチが呼び戻されていて切なかった。どこかの新聞が川島をオプションに挙げたことで微妙に注目されたことくらいしか覚えていない。まあしかし、メスゴリラ川島さんとシティをリンクさせた功績は大きいのではないか。こういう2,3日の小ネタを提供した選手は、末永く覚えていてあげたいと思う。(「スティーヴン・フレッチャーにレアル・マドリーが興味」とか。)

Manchester City Training Session : ニュース写真

 

 

49 アリヤネト・ムリッチ Arijanet MURIC

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 どっちやねん!みたいな。

 レンタル協定に則ってNACブレダに貸し出されていたが、ブラボの怪我で急遽出戻り。ようやくまともなGKが来たということでブレダでは喜ばれていたらしく、ほんとすいません。

 流石に決勝は任せてもらえなかったが、リーグカップでは準決勝までの4試合をスタメンとして1点に抑える活躍。結構良いGKなのではないか、これは。しかも数年前に本人「足元苦手っす」と言っていたのに、今年は「アウトサイドで数十メートルのロングパスをサイドバックに通す」という荒業も披露。好調コソボ代表でもデンマーク戦ブルガリア戦とスタメンを張っており、今後に期待が持てるところである。でもこの歳で第2GKはちょっと困るよなあ。アレックス・マニンガーのように第2GK人生を頑張った結果、アーセナル、ユーヴェ、リヴァプールに在籍するという道もあるにはあるが、マニンガーにしたってちょこちょこ試合には出てたからな。新しいアメリカ人も来るし、難しいところだ。

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DF

4 ヴァンサン・コンパニ Vincent KOMPANY

 我らがキャプテン・マーヴェルは今年も終盤戦でレギュラーに復帰し、抜群の安定感を発揮。シティの10年で多分2回目くらいのミドルシュートがスーパーゴールになるという偉業も達成し、全体的に「居てほしいときにいる」というかつての正反対の地位を獲得した。ただまあ、今でこそチームの中では下手な方だが、もともとコンパニって「攻撃面でも破格なCB/DMF」という位置付けの選手だったしね。昔取った杵柄というか、マインドとしては“俺は全然攻めも行けるぜ”的な人なわけよね。身体はついてってないけど。 

 あとは、チケットの値段が高すぎる、という声に賛意を示していたのもコンパニらしい振る舞いだった。サッカー市場が拡大してピッチ外の人材供給も充実してきた結果、欧州中のビッグクラブがそれぞれの集金方法を洗練させつつある。チケットのプライシングもその一つで、要は可能な限り高くファンから分捕ってやろうとしているのだ。そうなれば当然、ローカルなファンは不利になる。一生に一度の経験だと思ってやってくるグローバルファン(例えば、あなたや私)の方が概して大きな財布を持っているからだ。

 一方で、グローバルなファンは、ローカルファンで満たされた、”現地ならではの雰囲気”を味わいたくて渡欧する。自分の周りが全部アジア人の観光客だったら、興ざめを感じるかもしれない。もしかすると、ローカルのファンは今後、ファンと言うよりも一種のキャストとして扱われていくのかもしれない。グロテスクなことだが。

 

 話が逸れた。ピッチの上でのコンパニは、決して常に信頼感抜群というわけではなかった。マイケル・コックスが言うように、しょうもないミスを取り返そうとしてイエローカード、というシーンも多かった。だがピッチ外の振る舞いも含めて考えれば、コンパニは常に素晴らしい、自分が好きなクラブにいることを誇りたくなるキャプテンだった。さらばキャプテン、またどこかで。

Manchester City v Watford - FA Cup Final : ニュース写真

 

5 ジョン・ストーンズ John STONES***

 書くに当たって確かめてびっくりしたんですけど、「前半戦はレギュラーだったが、年末の連敗から風向きが怪しくなり、後半戦は控え降格」という感じでは、実はなかった。前半戦のスタメンは65%、後半戦は50%ということで、別に前半も不動のレギュラーという感じではなかったんですね。そういうイメージがあったが。

 何れにせよ、そこそこやっていたものの去年のスーパーストーンズモードには戻らず。このままレスコット的立ち位置にいるのも勿体無い選手だと思うので、引き続き期待して待ちたい。まあリオ・ファーディナンドも、24のときには結構微妙だったからな。こうやって私は少しずつウォルコットの沼に嵌っていくのだ。

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14 エメリック・ラポルト Aymeric LAPORTE

 裏取られなくなりましたね。何が変わったかは知らんが。それなりに安定した守備と、ほとんどMF的な組み立て貢献で、めでたくベストイレブンを受賞。

 シティの左利きのCBといえば、「一人だけ間に合った男」ルシアン・メットモ、コンパニの初代相方レスコット辺りが思い出されるが、偶然利き足が左だっただけの2人に比べて、ラポルトはもう、黄金の左。去年あたりからシティは、1トップを敷いてくる相手に変則3バックで1トップ脇からパスを出しまくるという形を取っているが、そのポジションでエグい楔を連発していた。相変わらずフランス代表には全く呼ばれずブーブー言いまくっているが、まあデシャンが飽きてやめるのを待ってほしい。「うちの彼氏を呼ばないのはバカ」とか言い出すアレな彼女もいないみたいだし。

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15 エリアキム・マンガラ Eliaquim MANGALA

 1年まるごとリハビリ。もともとは今シーズン末に契約切れだったが、回復のために1年延長した。

 考えてみると、2014年に4,400万ポンドで加入してからシティの選手としてフルに戦えたのは最初の2シーズンだけなわけで、実に2,640万ポンド分はバリューを生み出せずに無駄金というわけだ(まあ実際P/L上は費用計上してるとは思うけど)。しかもこの先、可能な限りリクープしようと思えば試合に出して、やれるぞというところを他のクラブに見せなければならない。つまり、フリーで放出して給料分を浮かすのが関の山という結果になる可能性はすこぶる高い。そう考えると、いい試合もあったし、素晴らしい人格の選手ではあったが、投資としては失敗だったと言わざるを得まい。次の場所では、欧州を震撼させたと言われている、と言われているそのパワフルなディフェンスを見せて頑張ってほしい。

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30 ニコラス・オタメンディ Nicolás OTAMENDI

 将軍閣下はご機嫌斜め。ベストイレブンから一転、完全に控え化。好調時の可能性ではストーンズに、厳しい場面での耐久力ではコンパニに劣るという押しの弱さが悪かったのかもしれない。ただご機嫌斜めと書いたが、最後まで不満を漏らさず役割を完遂したところはプロフェッショナルだと思う。イカルディとは違うってことよ。

 退団する気満々とのことだが、まあキャリアの絶頂期に控えなわけだし、仕方あるまい。さらば、我らがサメ将軍。将来に幸多からんことを祈りたい。

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34 フィリップ・サンドラー Philippe SANDLER

 チャラいエズラ・ミラーみたいな風貌のオランダ人CB。今年は通年トップチームに帯同したようだが、カップ戦での顔見せ出場に終わった。アンカーとして途中から投入され、さっそくチャラすぎるボールロストで大ピンチになっていたところはキャラが立っていて良かった。

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50 エリック・ガルシア Eric GARCÍA

 リーグカップで3試合フル出場。18歳にしては異様なほど落ち着いており、前線に鋭いパスを供給しまくっていた。コンパニとオタメンディが両方離脱ということを考えると、これは4番手として出場機会増!若手大好きファン大喜び!!と思うけど、こういうタイミングで普通にシニアな選手2人くらい買ってきて平気でレンタルに出すのが近年のシティなんすよね。そのこと自体が悪いとは言わんが。

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2 カイル・ウォーカー Kyle WALKER***

年末に不安定な出来が続き、ダニーロに交代。しかしダニーロもどっちもどっちだったので、すぐスタメンに復帰した。WSD等のベストイレブン議論でもカスリもせず、やや残念な1年。それでも、全体的なクオリティは高かったと思う。ベースが高いからな。

ウォーカーというのは、基本的にあらゆる局面に間に合う、力加減が下手、かつ顔がおもしろい(ちょっと田中邦衛っぽい)という特徴がある選手で、これが合わさってどうなるかと言うと、ミスが全部ナメてたかウッカリしてたかにしか見えないんですよね。ちょっと可哀想だとは思う。

もう30歳なのに来年もあの芸風でいけるのかという懸念の裏で、ダニーロは出て行く気満々。1、2年以内に、右サイドバックには大手術がありそうだ。

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3 ダニーロ DANILO

 ウォーカーの不調にもかかわらず、リーグ出場はわずか11。スタメン出場時も悪くはなかったが、リヴァプール戦のヘディング被りとか、スピード不足でラインが押し上げられなかったりとか、やはり筋肉の壁は厚かった。インテル移籍の噂が盛り上がっており、どうやら今年限りの模様。両サイドバック / アンカーの控えという所謂守備のユーティリティポジションとしては、出色のクオリティだったと思う。まあ2,650万ポンドもしたしな。イタリアで夢を叶えてほしい。ジェフでも良い。

Manchester City v Liverpool FC - Premier League : ニュース写真

 

22 バンジャマン・メンディ Benjamin MENDY

 10月に復帰して数試合出て、また大怪我。たまに戻っては来たが、すぐ後遺症が起きて休み、と残りはほぼ全休していた。最初の頃は「まじでこいつおもしれーなwwww」と言っていたファンの反応も流石に雲行きが怪しくなってきている。SNSはするけどリハビリは真面目にやってます、というならまだ良いにせよ、普通にナイトクラブ行ってるしな…

 一方、わずか10試合で5アシストを記録したように、決定機を作る能力が破格すぎて、「もし万全の状態でプレーできたら・・・」という、かつての永井雄一郎みたいな選手になりつつある。サイドバックでそのスタイルは新しすぎるだろ。

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 不良債権化が着実に進行しているが、(マンガラと同じで)苦しいことに、売っ払おうにも最低半シーズンは使えるところを見せないとどうしようもない。もはやこの二進も三進も行かない状況を打破できるのは、人呼んで西の最終兵器、あらゆる靭帯をつなぐ男、ドクター・クガしかあるまい。クガてんてー!がんばえー!!がんばえー!!!という、そういう心持ち。

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あらゆる靭帯をつなぐ男、ドクター・クガ*1