ある議事録;選手名カタカナ表記審議会アイスランド語部会 露W杯対策会議

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―はい、では皆様お揃いになられましたので、始めたいと思います。ご案内の通り、来月にはロシアワールドカップが始まるわけですけれども、それに際しまして、カタカナ表記についての統一方針を固めるということで、本日の会議で決定致しました案を、来週頭に約会にかけまして、正式決定となります。

 

 お手持ちの資料の2ページ目に前提となるルールを記載しております。ご案内かとは思いますが、改めて確認させて頂きます。えー、まず1つ目が、「現地語の発音をなるべく尊重したもの」です。本日アイスランド語部会になりますので、デンマーク語、あるいはノルウェー語、スウェーデン語等とも相当の違いがございますので、そちらにご留意頂きたいと思います。

 2つ目が、「通俗的な日本語表記に一定の配慮を払ったもの」でございます。こちらは1つ目とやや矛盾するように思われるところですが、例を挙げますと、「マイケル」としてほとんど日本語的に定着している英語の「Michael」についてですね、「マイコゥ」と表記するのは些か度を越しているのではないか、と、まあそういうことです。元より日本語にない音も相当数ございまして、特に今回のようなアイスランド語になりますとほぼ全ての選手名にそうした音が含まれてまいります。当審議会のミッションとして「日本語として無理のない範囲での漸進的表記方法の改善」という一文がございますので、多少基準はファジーにならざるを得ないところではございますが、一般的表記に鑑みつつ、審議を進めていきたいと思います。

 3つ目が、「日本語としての社会的風俗に配慮したもの」です。2つ目と似たもののように聞こえますが、1,2の結果として、日本ごとにして全く別物のように聞こえてしまうとかですね、思わず失笑をかってしまうような響きになるものは極力回避する、ということです。わかり易い例ですと、ペルーの「Reimond Manco」選手。はあ。はい。そういうことです。今皆様ちょっとお笑いでしたけども、そういうものを回避するためには、例えば「マヌコ」ですとか、多少無理があろう、という部分も避けられないという判断があり得るということです。はい。今回のワールドカップには選ばれていないということでですね、まあNHKさんとしては助かったのではないかなと、いやいやサトミキの反応が見たかったぞと、あ、すいません。進めます。

 

 

 ご案内の通り、アイスランド語は綴りによって読み方がほぼ一義的に定まる言語ですので、選手一人一人に入る前に原則を確認することも可能なのですが、それをやっておりますと長くなりますので、原則については選手名表記を具体的に確認しつつ進めていく、という形にしたいと思います。

えー、では1人目、「Hannes Þór Halldórsson」。GKですね。参考までに、NHKでは「ハンネス・ハルドソン」、『エル・ゴラッソ』の選手名鑑では「ハンネス・ハルドールソン」となっておりますが、当部会の初期案としては、「ハンネス・ソール・ハルドーション」を考えております。―はい。そうですね、最初から中々議論を呼ぶ名前ですね。まず「Ó」、Oにアキュート・アクセントを付したものですが、これについては「オウ」あるいは「オー」と。まあこちらは宜しいかと思います。次に「rsso」の「ショ」表記ですが、アイスランド語の「sson」は通常「ソン」ですね。ただ、「r」が無声音になりまして、ほぼ「ルシュ」、あるいは「シュ」に聞こえますので、スウェーデン側で「ラーション」の表記がほぼ定着しているということから考えまして、こちらも「ショ」で宜しかろうと、はい。

で、一番議論があったのが「Hall」の部分でして、こちらは「ハットル」、あるいは「ハットゥル」とすべきではないか、という意見もございました。これはアイスランド語において母音のあとの「ll」の前に「t」の音が入ると。例えば彼らのホームスタジアムである「augardalsvöllur」においても、「völlur」の中に明確に「t」の音が入っておりますし、シガー・ロスの名曲であります「Hoppipolla」を聴いて頂けると分かりますが、ヴォーカルのヨンシー、彼が明確に「ホフピポットラ」と言っているんですね。まあ、正確にはなんといいますか、いわゆる「サ行が言えない人」が発する「キ」に近い音ですが。2010年の噴火で有名な「Eyjafjallajökull」火山、こちらも日本語表記としては「エイヤフィヤラヨークル」と、トの音が入ったものがすでに定着しておりますので、彼も「ハットゥルドーション」とすべきではないか、という意見はございました。ただ、本件に際してForvoを確認しましたところ、やや不正確なソースではありますが、「ト」の音を挟むほどには明確でない、という事情がございましたので、今回は「ハルドーション」としておくべきかと考えております。

 

次に、「Birkir Már Sævarsson」。右サイドバックですね。こちらについては、「ビルキル・マウル・サイヴァション」。はい。まず「á」ですが、こちらは「アウ」ですね。Sigur Rosにも「Ágætis byrjun」、「アウギャイティス・ビルユン」という曲があります。そして「æ」。これは「アイ」です。こちらはあまりご指摘等は、ないですかね。はい。次に参ります。

 

Hörður Björgvin Magnússon」。えー、「ヘルズル・ビェルグヴィン・マグヌソン」。まあこう表記しますと、アイスランド語的な畳み掛ける音が失われるわけですが、母音を明確に発音する我が国の言語との差ということで、致し方ないところかなと思われます。「ö」、こちらは日本語では「エ」の表記が確立されておりますが、一方でトルコ語なんかですと「ウュ」に近いような音に感じられるところでございます。ただ、アイスランド語においては同じ音価のはずではあるんですが、経験則として相当に「エ」に近い音になっておりますので、「」が妥当なところでないかと考えております。

 

 

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はい、では、皆様お戻りですので、再開したいと思います。資料23ページ目、「Arnór Ingvi Traustason」。議論があるところですが、「ルノール・イングヴィ・トルイスタソン」、です。これは「au」ですね。「エイ」あるいは「ウュイ」に近い音ですが、後者に近いという有識者の意見がございましたので、「ウイ」とするのが妥当と考えております。

 

えー、次にですね、「Gylfi Sigurðsson」。エースですね。はい。大エース。こちらは大分「シグルドソン」という表記もなくなってきたということで、成果が出ているのかなというところですが、「ギルヴィ・シグルズソン」。まず「Sigur」に関しては、「シウル」という説もありまして、かつてはSigur Rosもシウール・ロウスと・・・え?ああ、はい、すみません。私が好きでして。馴染みも深いかなと。曲?えーと、そうですね。「Flugufrelsarinn」が一番好きですかね。はい。あ、すいません、脱線しました。まあ、そういう節もあったんですが、「グ」と発音する方も相当数いるという話でしたので、原則の2番めに照らしても「グ」で宜しいかなと。で、「ヴィ」についてですが、これは10年前に比べますと大分理解も進んできたアイスランド語カタカナ表記ですが、まだ手付かずのメディアが多い部分ですね。母音と母音の間に挟まれた「f」は、「v」になります。なるそうです。再登場で恐縮ですが、Sigur Rosの「Starálfur」という曲でも、サビの最後で、「スタラウルヴュル」という歌詞が出てきますね。そういうことで、彼についても「ギルヴィ」とすべきということを、本審議会として明確に打ち出していくべきかと思います。

 

 

 

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えー、はい、では、大分長くなりましたけれども、これにて選手名カタカナ表記審議会アイスランド語部会露W杯対策会議を終了したいと思います。皆様大変お疲れ様でした。タフな会議でしたけれども、来月のワールドカップは各国の選手名カタカナ表記に最も注目が集まる期間ということでですね、当審議会も一層のプレゼンス拡大のために、どうしてもこれを間に合わせる必要がございまして、皆様のご尽力のおかげでこうして大会前に・・・え?始まってる?もう?昨日?。え!?1ヶ月経ってる!!??