2017/18 マンチェスター・シティ シーズンレビュー個人編(後編)

FW

7 ラヒーム・スターリング Raheem STERLING

 昨年の秋、私はスターリングについてこう書いた。「現状から一皮剥けるには、とにかく点を取ること。そうすれば、ロッベンとは言わずとも、ペドロくらいの評価は得られる」と。今シーズンは全コンペティションで23得点、リーグだけでも18点(本当に取るとは思わなかった)。どうでしょうか。評価。

 これだけ点を取りながら、“決定力不足”の揶揄はむしろひどくなっているきらいすらあるが、昨シーズンまでの煮え切らない状態は確実に脱したと言えるのではないか。ファンとしては贔屓目があったものの、「怪我しないウォルコット」と言われれば、まあ確かにそうだなという感もあった。今や失礼ながらウォルコットレベルの選手ではない。すまんな。

 これだけ点を取りながら、依然として大チャンスを逸している場面がいくつも思い浮かぶのは、チームが機能していたことに加え、スターリング本人のポジショニングが相当に上達したことを示していると言えよう。フリーランのタイミングのとり方なんか、異様にうまくなってるもの。また、中央の相手ライン間でボールを受けて反転してからの急加速、右から中央に入ってきてのワンツー等、組み立てから崩しに入る部分での破壊力が年々高まっているのも素晴らしい。弱点は多いし、イライラさせられる選手なのも確かだが、この先5年は主軸を託したい存在である。

https://media.gettyimages.com/photos/raheem-sterling-of-manchester-city-celebrates-after-scoring-his-sides-picture-id881994650

 

16 リロイ・ザネー Leroy SANÉ

 開幕当初は3-1-4-2に居場所を見つけられず控えスタートだったが、4-3-3への回帰とともにスタメン復帰。12アシスト10得点で、見事PFA最優秀選手賞に輝いた。

 何が良いって、まず見た目が宜しいとは思いませんか。184cmの長身で、背筋が伸びたドリブル姿勢。両手の位置も、刀を抜くタイミングを見計らっている剣豪のようで、サンバ踊ってますみたいな逆サイドの相方とは一味違う。

 そして強いシュートが打てる。これは大事ですよ。ナバスもそうだし、スターリングもそうだったが、シュートが打てないウィングというのは最終的に解決策に行き詰まって面白い挙動を示すことが大半であり、全然美しくないのだ。その点ザネーのシュートは、WBA戦の股抜き一直線も、リヴァプール戦の”ショートケーキの上のいちご”も、同じくリヴァプール戦(アウェイ)の居合抜きも、長躯を存分に使った美しさがある。やはりウィングというのはかっこよくて何ぼなのだ。

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 数年経ったらレアル・マドリーに行きますとか言いそうな気がしてならないが、そこは高給でごまかして、なんとか全盛期のベイル並の怪物まで育ってほしいと思っている。私は。

https://media.gettyimages.com/photos/leroy-sane-of-manchester-city-lifts-the-premier-league-trophy-after-picture-id955335948

 

27 ベルナルド・シルバ BERNARDO SILVA

 右ウィング、ニセ9番、中盤センターを状況によってローテーション。とにかく使い勝手が良かったため、レギュラーじゃないのにチーム最多試合出場。まず良かった点としてはここであろう。1年間怪我もなく、実は枚数が不足気味だった前線を埋める存在として、価値は高かった。悪かった点を挙げるとすれば、あんまり突破力がなかったこと。左のザネーはアイソレーションベース、右のスターリングはウォーカー、デ・ブライネとのコンビネーションベースで崩すのがシティの基本形ではあるが、これでベルナルドが右サイドを1人でズタズタに出来るようだと、もっとバラエティも増えたのだが。ラポルトからの対角線パス経路も出来たことだし。実際にはさしてスピードが無いのとプレー選択がコンサバなので、結局周囲と連携した少々まだるっこしい崩しにならざるを得ないのだった。だからマフレズ獲るの獲らないの言ってるんだと思う。

 とは言え、チェルシー戦やアーセナル戦での決勝点など、中盤戦以降は結果も出しているので、来シーズンの更なる飛躍に期待したい。ちなみに、公式YoutubeInstagramでは異様なほどいじられまくっているというかこれ若干のイジメじゃない?という領域に来ているが、本人は常にヘラヘラ笑っていて、エデルソンとはまた違った怖さがある。また違った部位が切除されている。

https://media.gettyimages.com/photos/bernardo-silva-of-manchester-city-celebrates-scoring-his-sides-first-picture-id927151538

https://media.gettyimages.com/photos/benjamin-mendy-of-manchester-city-and-yaya-toure-of-manchester-city-picture-id955373846

 

55 ブラヒム・ディアス Brahim DÍAZ

 プレシーズンマッチレアル・マドリー戦で衝撃的にかっこいいミドルを決めたマラガ生まれのレフティそっくりな妹が4人いる。www.instagram.com 今シーズンは年間を通してトップチームに帯同。中盤までは、CLシャフタール戦でドリブルが通用するところを見せるなど、一定の出番を得ていた。年明け以降は試合の重要度が高まったこともあってか、ベンチにも入れない日々が続いているが、ウィングは質も量も不足しているポジションなので、来シーズンの飛躍に期待したい。まあ、グアルディオラは誰か新しいのを買う気まんまんのようだが。 

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10 セルヒオ・アグエロ Sergio KUN” AGÜERO

 ペップ・グアルディオラはきっと日本では無能と評されるに違いなく、というのも彼は「らしさ」とか一切考慮することができないのである。“アグエロらしさ”は丸無視。こんなにスターなのに。アグエロらしさというものの流れが間違いなくある中で日本サッカーとしての可能性を考えていきたいのに。

 そんなグアルディオラスタイルを強要された結果、アグエロはより全般的に試合に貢献できるゴールゲッターに進化。守備もサボらなくなったし、崩しへの参加も上達。もともとアグエロは自分でボールを触らないとリズムが出ないタイプで、トランジションが激しくなればなるほど試合から消えてしまうという弱点があったが、それも克服されつつある。今シーズンは遊びに行ったアムステルダムでタクシーが事故って肋骨を負ったり、A.ヤングのものすごいタックルで足をやられたり、それなりに暇を貰っていたが、それでも元気に20点。全大会まとめてみれば30点。エースの座は揺るがず。

https://media.gettyimages.com/photos/manchester-citys-sergio-aguero-with-trophy-during-carabao-cup-final-picture-id924457424

 

33 ガブリエウ・ジェズス Gabriel JESÚS

 無茶を言うようだが、この人についてはもう、「化物になるのか否か」、「なるなら、いつなのか」という2つくらいしか問うことがない。だって何でも出来るもん。まぐれじゃないもん。

 今シーズンは開幕から順調に得点を重ねるも、11月から3月までゴール欠乏症に陥り、最終的にはリーグ12得点。まあ後2試合あるにせよ。この間、膝の怪我で2ヶ月離脱していたのも確かなのだが、少々数字としては寂しい結果となった。じゃあ具体的に“化物”って何なのよ?英語圏では「ごっつぁん乞食(”Tap-in Merchant”)」という批判もあるが、確かに自分で持ち込むとか、局面を打開するという面では多少不満が無くもない。ミドルもないし。あれだけダイレクトやツータッチで勝負を決められるのはジェズスの動きが恐ろしいほど洗練されている証左だが、いつまでもサッカーコーチの夢に留まっていられても困るというもの。早く契約の話を一段落させて、来シーズンに集中してほしいところである。

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43 ルーカス・ヌメチャ Lucas NMECHA     

 先日のウェストハム戦でプレミアデビュー。風貌から勝手に下がり目のドリブラーを想像していたが、どっちかというとボニーとかジェコに近いファーストトップであった。まああの15分間で何が分かるかという話だけど。

 U19代表ではEURO優勝の立役者となった彼だが、ここから先が長いんだこの世界。ロフタス=チークなんて何年下積みやらされてんだというか、下積みのうちに代表デビューまでしてしまったからな。ボーンマス辺りに2年間くらいまとめて貸し出したいところだが、果たしてこの先どう育てるのか。

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