2017/18 マンチェスター・シティ シーズンレビュー個人編(前編)

GK

1 クラウディオ・ブラボ Claudio BRAVO 

 昨シーズンの惨状はやはりイップス。今シーズンはカップ戦のみの担当ながら、至近距離のシュートもバシバシ止めまくっており、これこそ我々が求めたブラボだったのだという姿を見せてくれた。リーグカップ優勝のMVPと言っても良い。まあ1年遅かったが。ナポリ等、正GKにと誘ってくれるクラブには事欠かないようなので、今年限りで退団かも知れない。

https://media.gettyimages.com/photos/claudio-bravo-of-manchester-city-and-ederson-of-manchester-city-the-picture-id955359806

 

31 エデルソン・モライス EDERSON Moraes

 地獄のチャニング・テイタム、といった風貌の正GK。デ・ヘアがいなければベストイレブンも堅かったであろう。脳細胞の恐怖を感じる部分が切除されているという噂が絶えない。

 何ていうかもう、言うこと無いんだよな。別に。アンフィールドリヴァプール戦では飛び出した後の処理を誤って失点につながってしまったが、実戦で明確に失点した”ポカ”はあれ1つではないだろうか?夏のプレシーズンに1回と、先日のウェストハム戦で1回(ファール判定で未遂)があったが、それを含めても3回というのは極端に少ない。そもそもあのスタイルなら、年に数回致命的なミスが起きるのは必要経費のようなものなのだ。前任者のハートが苦手にしていた背面へのハイクロスにもミスが少なく、組み立てへの貢献はプレミア1。もう本当、言うことなし。このまま10年くらい頑張ってほしい。

 まあ強いていうとすれば、相手のハイプレスがハマったときには10分から15分ほど落ち着きを取り戻せないケースがあるので、そこを何とかする胆力を身に着けたら鬼に金棒というか、鬼に米軍という感じはある。胆力の問題なのかはわからんが。

https://media.gettyimages.com/photos/manchester-citys-ederson-during-the-uefa-champions-league-quarter-picture-id944702650

https://media.gettyimages.com/photos/goalkeeper-ederson-moraes-of-manchester-city-puts-his-medal-around-picture-id955359300

 

32 ダニエル・グリムショウ Daniel GRIMSHAW*

 出番なし。U21?だっけ?まあとにかくリザーブリーグの方ではスタメンを張っていたような、いなかったような、そんな気がする。とは言えリーグ優勝のセレブレーション会ではエデルソン、ブラボ、ムリッチと4人仲良く写真を撮っており、キャリア上の良い思い出になるだろうとは思われる。

 

49 アリヤネト”アロ”・ムリッチ Arijanet Aro MURIC*

 こちらも出番なし!3番手ということで常にトップチームには帯同していたものの、エデルソンとブラボが健康体を維持したため、試合に出ることは無く終わった。来年ローンに出るか否かは、ローン先のノリッジで大活躍したアンガス・ガンをどう処遇するかに大きく影響を受けそう。

https://media.gettyimages.com/photos/manchester-citys-aro-muric-during-training-at-manchester-city-on-picture-id921380634

 

DF

4 ヴァンサン・コンパニ Vincent KOMPANY

ワカンダフォーエバー!!あ、間違えました。キャプテンフォーエバー!!

しかしすごいですよね。何がすごいって、コンパニも似てるけど、コンパニ嫁もちょっと似ているということな。レティーシャ・ライト

https://media.gettyimages.com/photos/manchester-city-capital-one-cup-victory-reception-mandarin-oriental-picture-id907035490

まあそれはいいわ。昨シーズン終盤、ついに万年故障癖を克服したかと思わせたが、特にそんなことはなかった近代シティ三賢者の一人。それでも、ストーンズが調子を崩した穴を存分に埋める活躍で存在感を示した。相変わらず組み立ては危なっかしいとはいえ、ギャリー・ネヴィルが自らのベストイレブンに選んだように、やはり相手がボールを持っているときに一番頼りになるのはこのキャプテンである。チームとしては何年その状態が続いてんだという気もするが。

そしてもう一つ私が強調したいのは、今シーズンのこのチーム、このクラブのモラルの高さは、コンパニがずっと守ってきたからこそあるものだということだ。贔屓目だと思うだろうが、聞いてくれ。コンパニほど、自分が好きなクラブのキャプテンとして居てほしい男はそういない。冷静で、賢く、揉め事には口を突っ込まないが、必要とあらばクラブの方針にも疑問を呈す。シティが少なくともこの5年間、ヤヤ・トゥレの一件を除いて選手からの表立った反乱無くやってこられたのは、コンパニの人望と規律によるところも大なのだ(多分)。だから私はキャプテンに、ファンとして心から礼を言いたい。この素晴らしい一年をありがとう。あなたのおかげで、私の週末は素晴らしい。アッセンブル!間違えた。ありがとう!

https://media.gettyimages.com/photos/vincent-kompany-of-manchester-city-lifts-the-premier-league-trophy-picture-id955529398

 

5 ジョン・ストーンズ John STONES***

マンチェスター・シティのファンブログは概して退屈である(たとえば今あなたが読んでいるものとか)。レアル・マドリーバルセロナのファンブログは、もっとつまらない。なぜか。優れた文学というのは一般的に悲しみや苦しみの中でそこから逃れるために生み出されるものであって、贔屓のチームが先週も勝ってる今週も勝った来週もきっと勝つ、という快適さから出てくる文章など大概退屈なのである。イワン・デニーソヴィチが金曜のコリドーでCAとブイブイ言わせている商社勤務の3年目だったとしたら、誰がそいつの1日を読みたいと思うだろうか。

そういう意味で、アーセナルのファンブログは読ませる。怒りと諦めを自虐で包んだ、乾いた嘆き。年末年始にシティに2連敗したときなど、3日おきに永久保存ものの名コラムが生まれていた。物書き肌のサッカーファンたるもの、低迷期はこうありたいものだ。

話が長くなった。何が言いたかったかというと、そうしたアーセナルファンブログの一節にストーンズに言及したものがあって、それが面白かったという話。曰く、”去年の同じ頃、我々は「ストーンズは50mポンド、ホールディングは2mポンド。どっちが良い選手だと思う?」と揶揄していた。今や、ホールディングはまごうこと無く、ボルトンが2mポンドごときで売る気になった選手そのものだ“と。

ホールディングには同情を禁じ得ないが、ストーンズの1年も、歌ほどは順調には進まなかった。レスター戦で肉離れを起こすまでは完璧なシーズンを送っていたが、復帰後はフォームを失い、控え降格から再度怪我。とはいえ、年末までのプレーには文句のつけようがなかった。来シーズンに期待したい。

https://media.gettyimages.com/photos/john-stones-of-manchester-city-and-raheem-sterling-of-manchester-city-picture-id955335704

 

14 エメリック・ラポルト Aymeric LAPORTE

選手名カタカナ表記委員会フランス語部局の方針に沿って、弊ブログではフランス語に寄せて表記しているバスク人。この左利きのCBがクラブ史上最高額の補強だというのが、シティの意外な渋さを表しているのではあるまいか。シティは金を使いこそすれど、バカ高いスーパースター一点買いというのはあまりやらないのだ。グアルディオラも言っていたけど。

こいつ絶対スペインだとストーンズみたいな扱いされてるんだろうな、と思っていたが、ストーンズほどは迂闊でなく、ストーンズよりも全体的にトロかった。評判通り、縦パスを入れる能力は素晴らしく、相手が張り切ってプレスを掛けても切ったはずのコースにバンバンノールックで通していくので、相手の守備が勝手に溶けていく。用意したはずのプレスを維持しきれず、中盤がトロットロに溶け切ったチームが増えたように見えたのは、ラポルトの加入と無関係ではあるまい。一方で、守備者としては悪くないんだけど騒ぐほどでもないなというか、攻撃面の貢献故に逆に過小評価される程度の守備力。足も遅いし。とはいえまだ若いので、ストーンズとともに期待しておきたい。ちなみに、ストーンズラポルトを並べた恐怖のラインナップはまだ観ていない。

https://media.gettyimages.com/photos/7th-march-2018-etihad-stadium-manchester-england-uefa-champions-of-picture-id928754016

 

15 エリアキム・マンガラ Eliaquim MANGALA

光の戦士クイニー・マンゴマン。守備が崩壊していたエヴァートンにレンタル移籍するも、2ヶ月も経たないうちに大怪我を負ってしまったフレンチバイソン。それでも折に触れてシティへの応援コメントをSNSで飛ばすなど、最後まで性格の良さを発揮していた。最後って言ったらいかんけど。

まあしかし何だな。おそらく今年の9月以降もマンガラがシティに残っている確率は相当低いが、マンガラの偉大な功績の一つは、「マンガラ並」という指標を私にくれたことである。この先私は常に、肉体的な強さを誇る黒人CBに対してこう考えることができるのだ。「なんでえ。マンガラと似たようなもんじゃん」と。リュディガーとかさ。いや、これでも、そんなに貶してはないですからね。そんなに悪くは無いですよ。マンガラ。でも別にすごくもない。マンガラ並。薄くて厚い壁である。

https://media.gettyimages.com/photos/eliaquim-mangala-of-manchester-city-aymeric-laporte-of-manchester-picture-id955336164

 

24 トーシン・アダラバイヨ Tosin ADARABIOYO*

 出番なし!ルーカス・ヌメチャですら出場機会を得ている中で、全くプレミアデビューの気配なくスタンド待機を続ける21歳。ラポルトは来るし、もう一人CBを買うとか買わんとかいう話もあるし、キャリアのためにはそろそろ潮時かも知れない。

https://media.gettyimages.com/photos/tosin-adarabioyo-jokes-with-brahim-diaz-and-benjamin-garre-at-city-picture-id903386848

 

30 ニコラス・オタメンディ Nicolás OTAMENDI

 獲りよったでベストイレブン(PFA Team of the Year)。シティに所属しているというのは表彰レースで全く有利に働かないともっぱらの噂だが、サバレタ以来5年ぶりのシティDF陣からの受賞である。

 今シーズンは完全にハーフDFとして一皮むけ、組み立ての基点として1年を通して安定した活躍。ドリブルでの持ち上がりもほとんどミスをしなくなり、来年あたりはミドルシュートの一つや二つも決めてしまうかも知れない。また、オタメンディの見逃せない貢献の一つが、とにかく頑丈ということである。そして、出来ることに波があんまりない。出来ないことは出来ないが、出来ることはつねに出来る。何でもはやれないよ?やれることだけ。そんなニコラスキャットは来シーズンも、DFの要として活躍してくれることだろう。

https://media.gettyimages.com/photos/fabian-frei-of-fc-basel-nicolas-otamendi-of-manchester-city-during-picture-id918147550

https://media.gettyimages.com/photos/nicolas-otamendi-of-manchester-city-celebrates-winning-the-premier-picture-id955368514

 

2 カイル・ウォーカー Kyle WALKER***

サッカーファンはパルチザンである。ポジショントークの生き物である。贔屓のチームかそうでないかで言うことが露骨に変わる、ダブルスタンダードの民である。ということが如実に示されたのが、昨年夏のウォーカー移籍であった。 

2回もベストイレブンに輝いたくらいだから、プレミアリーグでウォーカー以上の右サイドバックというのは理屈上そうはいないはずなのだが、シティ移籍決定直後から「実はそんなにいい選手じゃなかった」「もう下り坂だった」という再評価運動が猛烈な勢いで勃発。曰く、クロスがクソである(たしかにそうだった)。曰く、怪我が多い。曰く、攻撃に多くをもたらしてくれる選手ではない。曰く、結局の所キーラン・トリッピアの方がいい選手だった。云々。とりっぴ~ことトリッピアの株、一夜にして爆上げ。これが後の世に云う、とりっぴ~ハードル上がり過ぎ事件である。

私がなんでこの話が好きかというと、とりっぴ~はもともとシティ育ちで愛着があるからなんですけど、それにしても酷だった。そんな惨状の遠因となったウォーカーは、1年を通して右サイドで活躍。本人も言っているが、よりミスが少なく、より賢くなれば、ラームをサイボーグにしたみたいな化物が生まれるかも知れない。28歳、まだまだ伸びるお年頃である。

https://media.gettyimages.com/photos/gabriel-jesus-of-manchester-city-and-kyle-walker-of-manchester-city-picture-id955368684

 

3 ダニーロ DANILO

 ウォーカーには見劣りするが、優秀な右サイドバックではある。左足は使えないが、左で使っても破綻するほどではない。守備が得意とは言い難いが、サイズがあるのでジンチェンコよりはマシ。あらゆる面で使い勝手が良いと言うか、あっちこっちの穴塞ぎに使い回しても損した気がしないという点で、絶妙のバックアッパーではあった。まあ3,000万ポンドもしたからな。3,000万も払うと、控えの右SBでもアンリみたいなミドルシュートを決めるというのは悲しくも笑える現実であった。

あと、モラルも高い。相手も含めて21人全員が流しモードに入っている4-1の後半でも、相手ゴールキックへの警戒を怠らない真面目さ。ナスリと絶対気が合わなそう。パブロ・マフェオの放出や本人のキャリアもあって移籍の噂がないでもないが、こういう選手を控えに置いておけるというのは強いチームの一つの象徴なので、ぜひ残ってもらいたい。

https://media.gettyimages.com/photos/danilo-of-manchester-city-celebrates-after-scoring-his-sides-fourth-picture-id897643144

 

22 バンジャマン・メンディ Benjamin MENDY

 サッカーも出来るクラブ専属Youtuber。通称メンキン。来年こそはサッカーが本職になるらしい。戻ってきたのがつい最近なので、存在よりも不在のことを語らねばならないのだが、どうなんでしょうね。思いの外デルフが良かったと言うか、デルフについて不満なことがあんまりなくて、正直なところメンディに変わったらちょっとマイナスの方が大きいんじゃないの?と思っている節すらある。私は。言い換えれば、メンディのメンディたる所以―単騎で状況が解決できる突破力と、人体の構造的にそれは可能なのかみたいな無理目のクロスーが今のシティにめちゃめちゃプラスになるところがあんまり想像できないんですね。まあ、なるにはなるんだろうけどさ。

 とはいえ、怪我前の肉体に戻れるならほとんど戦術兵器と言えるだけの逸材なのも確か。ハゲがこのポップスターをどうチームに組み込むか、注目したい。