2017/18 マンチェスター・シティ 中間レビュー個人編(前編)
GK
1 クラウディオ・ブラボ Claudio BRAVO
君は一人じゃない。一人じゃないぞ。どこかのクラブのモットーのようだが、まあこのモットーも一人のものじゃないのだ。昨シーズン、ゴール前の自動ドアとしてありとあらゆる批判に晒されていたチリ代表の守護神が、リーグカップで復活。スーパーセーブ連発で下部のチームに負けるという恥を回避し、PK戦で3発止めてヒーローに。エデルソンに替えて使っても安心かと言われると未だに不安ではあるが、少なくとも「近年のシティで最悪の買い物GK部門」、文句なしの1位では無くなったように思われる。イサクソンとかさ。
つい最近のリーグカップ・レスター戦でまたもやPKを止めてヒーローに。ただし、グアルディオラとの折り合いがあまり宜しくないらしいということも判明。たしかに、後ろから抱きつかれたときビタイチ笑ってなかったもんな。
まあ子供の教育とか何とかでイングランドを離れる気はないらしいので、これからも頑張って頂きたい。
31 エデルソン・モライス EDERSON Moraes ブラジル代表
ある朝、マンチェスター・シティが不安な夢からふと覚めてみると、ベッドのなかで自分の姿が一匹の、とてつもなく大きな金持ちに変わってしまっているのに気がついた。
ということがたった1年で2回もあったクラブを応援していると、こういうことが起きる。すなわち、クラブで何年も活躍してきた選手がいて、ちょっとしたバンディエラである。ベストイレブンになった選手もいれば、クラブ最優秀選手賞を5年連続で取ったやつも居る。あるいは、アカデミー育ちかも知れない。そして、プレミアリーグ全体を見回しても、彼は結構良い選手だ。決してベストではないが、そう悪くないのだ。そんな愛すべき選手が、新しくやってきた何処の馬の骨とも知らない男にポジションを奪われ、放出される。いやいや待てと。ちょっと待てと。替えるべきところはあるのではないかと。
だが替わりに来た選手の確実なクオリティを見ると、やはりプロは素人が及ばない見識を持っているものだと気付かされるのだ。レスコットもそうだったし、ダビド・シルバもそうだった。そしてエデルソンもそうである。すごすぎ。守備範囲広すぎ。組み立て上手すぎ。最高かお前は。ハイプレスの回避策は、背の高い選手を入れるだけではない。どうするかって?60m先まで正確に蹴っ飛ばせるGKがいればいいのさ!うわーすごいや!明日はホームランだね!!再現性ゼロ!!!
32 ダニエル・グリムショウ Daniel GRIMSHAW*
4番手の若手GK。殆どないが、エデルソンが帯同しないときは遠征メンバーに入る。集合写真であれ?これ誰だっけ?と思ったらグリムショウ。
49 アリヤネト”アロ”・ムリッチ Arijanet “Aro” MURIC*
いつもトップチームで練習はしているが、試合では出番のない第3GK。髪はつやつや。
DF
4 ヴァンサン・コンパニ Vincent KOMPANY
「故障離脱を繰り返してきた負のサイクルにピリオドが打てそうだ。」とは、おなじみヨーロッパサッカー・トゥデイ開幕号の言。打てませんでしたね。巨人にいた頃の広澤くらい打てませんでした。あっという間に戦線離脱。勘弁してくれよという気持ちになるが、本人はもっと思っているだろう。
プレーの存在感は減ったが、依然としてチームのモラルとしてはいないと困る。このランディングは中々ハードになりそうである。ストーンズも結構ちゃらんぽらんなんだよな。突撃野郎サメチームでのポジションは”King Shark”。かっこいい。
5 ジョン・ストーンズ John STONES***
ドリブルで仕掛けられるとやや弱い事以外、ほぼ文句なし。あらゆる面で信じられないくらい成長しているCBの要。強いて言えばロングフィードを入れてくれるともっと効果的な気もするが、あれだけやらないのはよっぽど自信がないか、指示なのかもしれない。ハムストリングを傷めて離脱中。
15 エリアキム・マンガラ Eliaquim MANGALA
第4のCBと言いつつ、コンパニのコンディション不安とストーンズの怪我で最近出番が増えている巨人。きちんと距離と角度を取るポジショニング、右足を使えるようになったことで読まれづらくなったパス出しと、ビルドアップには進歩が伺える。
一方でガタイの割には空中戦できれいに勝てることはほとんどなく、スピードも言うほどないので未だ不安は拭い難いが、じゃあ3,000万出してエヴァンズかイニゴ・マルティネスに入れ替えるほどかと言われると、まあどっちでもいいんじゃないかな。
24 トーシン・アダラバイヨ Tosin ADARABIOYO*
リーグカップで1試合出場。リーグカップは決勝まで放送が無いので、分からんのよね。まあ落ち着いてはいたらしい。デビューしたときからそればっかり言われている。
30 ニコラス・オタメンディ Nicolás OTAMENDI
サメ将軍ことGeneral Shark。相手がひたすら自陣に退く機会が多いため、シティのCBは必然的にドライブと楔、サイドチェンジを担当する機会が増える。その結果、ビルドアップが気持ち悪いほど巧くなり、アーセナル戦ではほとんどピルロ状態。最近では「DFラインを比較的高めに保つ+中盤ラインをDFに限りなく近づける」ことでスペースを限りなくパッキングしてしまおうとする相手も増えており、これでDFの裏が取れないと一気に苦しくなってしまうのだが、裏にふんわり落とすロバーまで習得したオタメンディがいれば安心。
きっと選ばれはしないだろうが、時代が違えばベストイレブンでもおかしくないと思う。DF陣随一の得点力で、セットプレーでは頼りになる。
2 カイル・ウォーカー Kyle WALKER***
今年の新戦力でレギュラーに定着しているのはエデルソンとウォーカーの2人だけなのだが、純然たる属人的な変化は余りにも大きかった。足速すぎ。裏取られても間に合いすぎ。そこそこの身長とマッチョな身体で3バックの右としてもプレーでき、かつボールロスト時には中盤に出ての潰しが間に合うという点で、今年の可変フォーメーションにもぴったり。右足から繰り出す圧倒的クソクロスも可愛いものだ。
3 ダニーロ DANILO
開幕時はウォーカーの怪我で右ウィングバックに、メンディ離脱後の最初の試合では左バックに起用されたが、前者ではウォーカーに勝つほどの機能性はなく、後者では左足でボール扱えないので幅が取れない、ということですっかりベンチが定位置に。中央からのパス出しはそれなりにできそうだったので、今のデルフの役割ならこなせないこともないとは思うが。守備のバイプレーヤーという唯一のポジションなだけに、冬越えの奮闘に期待したい。良い人そうではある。
22 バンジャマン・メンディ Benjamin MENDY
90年代のJリーグにいたら絶対コロコロで「やったぜ!メンディくん!!」が始まっていたに違いないFunky Shark。
- しつこく「Shark Team」「俺たちサメチーム」とつぶやき続け、ついに公式グッズ化。公式Twitterにも採用。
- 「メンディは半年離脱」と呟いたジャーナリストに「いや俺も検査してねーのに分かる訳無いだろ」とTwitterで直接突っ込む
- 「監督は手薄な左サイドバックに補強を考えています」と呟いた公式アカウントに「俺がデルフに教えるから大丈夫っすよwwww」と絡む
- 毎試合Twitterで実況する
- 「うわー一般人が興奮して入ってきちゃった」と思ったらメンディ
- デ・ブライネの試合後インタビューに乱入してキス
と、挙げているとキリがない。そろそろ周囲も引いているような気がしなくもないが、チームの雰囲気を変えたという点では来てくれてよかったと言えよう。脅威のクロス性能を見せていたが、怪我で4月まで離脱。
MF
8 イルカイ・ギュンドアン İlkay GÜNDOĞAN
ゴール前への進出、ポジショニング、タイミングはデ・ブライネやシルバより上だと思われるが、それ以外のプレーで今この2人に勝つのは相当難しく、完全に控え。とはいえ、開幕後まで長引いた怪我の影響か、ここまでのプレー自体もやや低調。これ以上依存しないために、奮闘が求められるところ・・・と思っていたら、スパーズ戦ではシルバ不在を問題なく埋める活躍で、頼もしい限り。
18 フェイビアン・デルフ Fabian DELPH***
英語だと普通に、「フェイビアン」でしたね。よく考えたら、「フェビアン協会」だって「Fabian」なのだった。
ストーク移籍寸前まで行っていた戦力外男が、メンディが離脱した左SBでブレイク。もともとのキープ力、左足のサイドチェンジ、縦パスに加えて、守備では多少怪しいとは言え、ポジショニングも改善。すっかりアラバ・ロールのSBとして定着し、何ならメンディよりも良いんじゃないかという声すらある。ドリブル対応も意外と強く、マフレズを普通に抑えていたのには驚かされた。お前そんなのできたのかよ。
弱みは空中戦やクロス対応、とくに目線を一度切られると裏がお留守になること甚だしく、この先狙い目になることが予想される。あと、やってることが特殊なので、多分代表でSBに使ったら大して活躍できないと思う。
25 フェルナンジーニョ FERNANDINHO
もともと、ジーニョは何をやらせても上手い選手ではあった。カバーリングもまあまあ速いし、目も良い。ドリブルで相手を交わすことも出来なくはないし、パスを捌くこともまあ不得意ではない。ボール奪取は言わずもがなである。ドリブルには弱いけど。
しかし我々は今、優れた監督が如何に30歳を超えた選手の技量を上達させることができるかという実例を目の当たりにしている。まあほんとあらゆる面が上手いのだ。ドリブル、というかドライブは効果的だし、1vs1は負けないし、空中戦は競り勝つし。さほど機会は多くないが、浮き球のパスもバシバシ勘所に通すようになってしまった。まさに「グアルディオラがついてるぜ」である(そういうチャントがある)。
昨日なんか、相手GKがロングボールを蹴る、相手のFWの背後にくっついて落下を待つ、相手に身体を預けてヘディングを空振らせ、自分は右足のアウトサイドでボールを前に落とす、自分は反転して相手の逆側から入れ替わる、という新技を披露。それは何カンプなんだ。