2016/17 マンチェスター・シティ 選手別レビュウ vol.2

GK

ウィリー・カバジェロ

「物乞いだったこともあれば 王様だったこともある 俺は最高じゃあないが 決して最悪というわけじゃない」とはAviciiの歌にあった気がするが、去年のリーグカップ決勝でPKに目覚めてからのウィリーは、だいたいいつもそんな感じなのだった。上手くはないが、ハートほど無頓着に蹴っ飛ばすわけでもなく、無難に組み立てをこなし、違いをもたらすほどではないが、ブラボよりよっぽど頼れる守備だった。

マラガに帰る(らしい)とのことで、まあもう30代も半ばだから、スタメンで出られるチームに行きたくなるのはしょうがない。シティのファンからも中傷を受ける中、PKを3本叩き落として感涙にむせぶウィリーの勇姿は、全然活躍してないのに一番カメラに映るポジションを確保したボニーとともに、我々の記憶に残り続けるのである。

http://media.gettyimages.com/photos/wilfred-bony-lifts-goalkeeping-hero-willy-caballero-of-manchester-in-picture-id512857492?s=594x594

 

クラウディオ・ブラボ

ボール支配による試合のコントロール、高いDFラインを実現するために獲得されたはずだったが、説得力のあるパフォーマンスを見せられないまま終了。すでにGoal.comではそうだったが、どのメディアが選んでも今期の「ワーストイレブン」には入るだろう活躍を見せてしまった。

私は「シュートどころかタクシーさえ止められない」というセービングの部分よりも、守備範囲がやたらと狭いところが、より深い問題だと思っている。というのも彼はリーガを制したバルセロナの正GKで、チリ代表史上最高のGKの一人であるわけだから、いくらなんでも今シーズンの止められないっぷりはさすがに何かの間違いというか、イップス的なものだと思うんですね。希望的な推測も含めてだが。

一方で守備範囲が狭い、DFラインの裏に放り込まれたボールに対応できないというのは、過去のシティのGKどころかプレミア全体を見てもちょっとまずいレベルにある。都合の悪いことに、おそらくこれは一過性のものではない。となると、守備が破られるケースが減れば必然的に機会も減るはずの「止められない」問題より、守備レベルに関わりなく試合の中で発生し、かつ飛び出せないことでDFの責任範囲をより広げる「守備範囲激セマ」問題の方が深刻ではなかろうか。

ということで、来年もブラボが正GKのようでは苦しいと判断せざるを得ないクオリティだった。組み立てへの貢献度はさすがに高かったので、第2GKとしている分には別に文句もないんだが。

Everton v Manchester City - Premier League : ニュース写真

 

アンガス・ガン

若手GK。プレシーズンマッチドルトムント戦でPKを止めた以外は全く出番なく終了。新しいGKも来るという噂が絶えず、早めにレンタルなりで出してあげた方がクラブにとっても良いと思う。母親がデザイナーなだけあって、カメラ映えしそうな見た目はしている。

http://media.gettyimages.com/photos/angus-gunn-of-manchester-city-warms-up-prior-to-the-premier-league-picture-id679573722?s=594x594

 

 

CB

ヴァンサン・コンパニ

50→42→37→37→33→22→14。

2010/11シーズン以降の、コンパニの出場試合数の推移である。要するに我々のキャプテンは、段々と、しかし着実に、使えない選手になってきているのであった。切ない事実だが、受け入れなくてはならない。

シーズン序盤に出てきたときはあからさまに組み立てに途惑っていたが、いつもの怪我を経て最終盤に復帰してからは、組み立ても含めて安定したパフォーマンスを披露。オタメンディストーンズはやはり軽量級なので、サロモン・ロンドンWBA)のようなでかい選手も弾き飛ばして胸トラップしてしまえるコンパニが使えるというのは、非常に大きい。来シーズンは契約最終年だが、延長目指してがんばってほしいところ。

http://media.gettyimages.com/photos/david-silva-of-manchester-city-and-vincent-kompany-of-manchester-city-picture-id668919078?s=594x594

 

ニコラス・オタメンディ

やらせてみると伸びるもんだな、というのが、率直な感想。CBが持ち上がって組み立てに参加するというのは、やってみるとわかるが相当怖い。足元に自信がなければ尚更である。それでもシーズンを通して果敢にチャレンジし続けたオタメンディは偉いと思う。厳しいプレッシャーを交わす技術は流石にないが、去年まで自信なさげに隣のサニャに押し付けて仕事は終わりだった男が、プレッシャーさえ弱ければそこそこ立派に、前線へのパス供給源としてプレーしていた。

一方でCLモナコ戦の1stレグのように、本職の守備で簡単に裏を取られたりするシーンも多かったので、総合的に見て監督の信頼を得られたかというと微妙なところかも知れない。CBの補強をするのかは定かではないが、対人の強さというコアコンピタンスは失わずにいてほしいところ。

VfL Borussia Moenchengladbach v Manchester City FC - UEFA Champions League : ニュース写真

 

ジョン・ストーンズ

見るからに足技に自信がありそうで、若くて、上位クラブが大枚はたいて獲得して、軽率なミスが目立つ、といえば私のような茶化し系サッカーファンの大好物だが、不思議なことに、これが応援するチームに来ると色々エクスキューズが見つかるんですね。経験が足りないのだからとか、成長は見せているからとか、パートナーが頼りないからとか。ポジショントークの世界を生きる私たち。(ちなみに、去年取りたかったらしいラポルトも、同じような愛すべきドジっ子だと思う。この手の若いのは大体そうなんだよ。俺にはわかる。見たことないけど)

世間の評価はGoal.comの欧州ワーストイレブン選出が物語っているが、さすがにそんなに悪くはなかった。無論レスター戦やセインツ戦のバックパスとか、モナコ戦のファルカオ一刀両断事件とか、CBとしてどうなのというミスはあったが、FWやCMFへの決定的なパスを連発していたのも事実だし、アンカーと相方のCBと柔軟にポジションを入れ替えつつ組み立てる方式での活躍*1は明るい未来を感じさせた。たとえ、終盤はコンパニにレギュラーを奪われていたとしても。

というわけで、来年も私はストーンズを甘やかすと思う。これが世に言う、若手の魔力。マルコヴィッチの穴ならぬ、ウォルコットの沼。もう腰までずぶずぶさ。

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トーシン・アダラバイヨ

5歳からシティにいる196cmのCB。プレシーズンはグアルディオラが熱心に個人指導しているシーンが目撃されており、その甲斐あってか昨シーズンは辿々しかったボール運びにえらく自信が伴っていた。が、まともな出場は結局CL予選の2ndレグくらいでシーズン終了。プレーよりも、契約延長するだのしないだの、エヴァートンに行くだの行かないだのというニュースの方で目立っていた。久しくイングランドの年代別代表にも選ばれていないから、毎年4,000万£もするシニアな選手が入ってくる状況では移籍を考えても致し方ないところはある。

http://media.gettyimages.com/photos/yaya-sanogo-of-arsenal-challenges-tosin-adarabioyo-of-man-city-during-picture-id653015914?s=594x594

 

 

SB

パブロ・サバレタ

足だけ速いやつもうグッナイ、クロスだけ良い奴もうグッナイ。トップスピードが速いわけでもなく、いわゆるクロスらしいクロスが上手いわけでもなかったが、サバレタ以上に攻撃で威力を発揮したSBは、2012年から15年頃のプレミアにはいなかった。先日U20W杯の日本代表を見て、ボールホルダーの内側を走るとか、斜めに走るとか、預けて走るとか、一回スピード緩めるとか、SBにも色々あるのよ、外を一本調子で走るだけじゃなくて。と思ったが、それもサバレタとシルバという、サイド攻略のバリエーションを我々に教えてくれる生きた教科書がいたからであった。

今シーズンについて言えば、昔やっていた割にはインサイドの役割にもさほど馴染めず、SBでは相手のドリブルに付いていけなくなるケースが増え、誰しも衰えは来るものなのだと感じた1年だった。ウェストハムでも愛されることを祈りたい。真面目でキレやすい孫さん、強くて速くて面白いマイカ、情熱あふれるサバときて、次の右サイドバックに対するハードルは、私の中で上がりまくっている。

http://media.gettyimages.com/photos/pablo-zabaleta-of-manchester-city-is-thrown-into-the-air-by-his-city-picture-id684258890?s=594x594

 

バカリ・サニャ

他人の尻拭いをするのは得意なんだが、攻守両面で中心となることには長けていないというのが、このおじさんの特徴。インサイドでのいわゆるアラバロールにも一番苦しんでいたし、被カウンターの局面でちょくちょく捕まえる相手を間違えたり、これまで「そこそこの知性と足技を持った肉体派」として築いてきたポジションが、「要求が厳しくなる中で目立つほど強くも速くもないし、MFとしての役割も難しい」という立場に逆転してしまい、かわいそうなシーズンだったように思われる。今年で退団だが、選手人生の黄昏を楽しんでほしいところ。

Paris Saint-Germain v Olympique de Marseille - Ligue 1 : ニュース写真

 

パブロ・マフェオ

若いスペイン人。CL予選とリーグカップで1試合ずつ出場し、前者の試合ではボール持ったらビビリだけど守備は勤勉で硬そう、という印象を受けた。リーグカップは負けたけど大分良かったらしいというような話を伺っております。シーズン後半は提携先のスペイン2部、ジローナに貸し出され、右WBのレギュラーに定着。5月末現在まで昇格の可能性を残している。来年リーガを経験してから戻ってきてもいいが、サバとサニャがどちらもいなくなったら戻らせるのも選択肢のうち。(→5/26、両方いなくなりました)

http://media.gettyimages.com/photos/emilio-izaguirre-of-celtic-and-pablo-maffeo-of-manchester-city-in-picture-id629598838?s=594x594

 

ガエル・クリシ

左バックの相対的には無難な方として6シーズンに渡ってシティを支えたフランス人も、今季で退団。シーズン当初はインサイドでの役割にもそれなりに対応する素振りを見せていたので、やったぜアーセンさすがあんたは最高だな、ベジェリンもください、と思ったが、時が経つに連れて組み立てでの自信のなさを露呈していった。考えてみればアーセナルのSBって、基本的には外を走ってなんぼなのだった。とくにクリシの時代は。

コラロフと比べて相対的には無難だった守備も、スピードの衰えで劣勢に回るシーンが増えており、攻守両面で、期待される水準には達しなかったというところ。それでも2回のリーグ優勝に貢献してくれた男として、今後も素晴らしいキャリアを送ることを祈りたい。一気に老け込んでしまったブリッジと、不安定なパフォーマンスに終始していたコラロフしかいなかった左バックのポジションに、それなりの安定性をもたらしてくれた人材だった。

http://media.gettyimages.com/photos/gael-clichy-of-manchester-city-celebrates-after-scoring-a-goal-to-it-picture-id630795776?s=594x594

 

アレクサンダル・コラロフ

左バックの無難じゃない方。まあコラロフの場合はそもそも必要な場所にいないか、追い付いてないか、抵抗しないかのどれかだから、とんでもないミスをするシーンはあんまり記憶にないんだが(褒めてはいない)。

走るスピードが急激に衰えたこともあってSBをやるには少々厳しくなってきたが、左利きと背の高さを買われてCBにコンバート。飛距離だけが持ち味のフィードを武器に、そこそこのパフォーマンスを見せた。キック力はあるからそれなりにボールは通るんだが、精度が高いわけではないのと、モーションの途中でキャンセルができないんよね。だから常に軸足の後ろを通した大仰な切り返しでしか方向転換ができない。ちょっともったいないと思う。

まあ今後もレギュラーを任せたいかと言われるとあなたの顔をまっすぐ見れないが、佇まいはかっこよかったと思う。私が知っているシティの選手の中で一番かっこよかった。剣の腕は立つけど生活力がない素浪人という趣だった。何の話かわからないと思うが、かっこよかった。

Manchester City v Southampton - Premier League : ニュース写真

 

アンヘリーニョ

2017年の元旦にジローナに貸し出されたと思ったら、月末にはマジョルカに移っていた。クーリングオフか何かでしょうか。組み立てができて足も速いサイドバックグアルディオラに気に入られるという私の安直な予想は当たらず。まあ内情としては評価されているのかもしれないが。まだ20だが、そろそろブレイクの兆しが見えないと危ないかもしれない。ちなみに今調べたら、マジョルカには元ソシエダのアンソテギがいました。他は全然知らん。

http://media.gettyimages.com/photos/angelino-tasende-of-manchester-city-in-action-during-the-efl-cup-picture-id609580236?s=594x594