マンチェスター・シティと疑惑のEメール(1)

切り札は取っておくものよ

オリンパス事件って覚えてる?2011年に、FACTAっていう雑誌と、オリンパスの社長職を解任されたばかりのマイケル・ウッドワードっていうイギリス人が起こした告発やね。医療機器やカメラみたいな光学機器メーカーとして有名な、あの宮﨑あおいのCMのオリンパス。あれが損失を隠すために粉飾決算を続けていたという事件。以下に引用するけど、当初ウッドワード氏は腐りきった日本のコーポレートガバナンスに鉄槌を下す黒船といった風情で、意気揚々と登場したんやね。

 

chnpk.hatenablog.com

さてオリンパス事件と言えば、バブル期に嵌った財テクによって巨額の損失を被るも、問題の表面化を恐れて適正な会計処理を避け続けること20余年、歴代経営陣のお歴々が代々ひた隠しにしてきたところ、何を思ったのか内輪の論理の通じづらい外国人を社長に大抜擢した途端にすべてを明るみに出さざるを得ない状況に追い込まれ、株価は暴落するわ経営陣は全員退陣に追い込まれるわで大騒ぎになった、あの事件である。

 

同事件は、二代目社長が会社のカネ、それも数百億円規模をあろうことかカジノでスッてしまうという浮世離れした放蕩息子ぶりをみせ付け世間を唖然とさせた大王製紙事件と並び、日本のエクセレントカンパニーにおけるコーポレートガバナンスの何たるかを世に知らしめた好事例であった。

 

しかし、いつの頃からかウッドワード氏は勢いを失い、オリンパス「訝しがる周囲をよそに東証からさっさと上場維持を取り付けるという、いわゆる直ちに健康被害はありませんからの勝手に冷温停止宣言コンボを叩き込み、一瞬で勝負を決めた」。つまりあっちゅう間に最大限の勝ち戦に持っていってしまったんよ。

 

その後もウッドフォード氏は、自身のバックに連合艦隊の存在を匂わせながら、委任状争奪戦を経ての社長復帰を目指す意向を表明するなど、全力右ストレート連発の様相であったが、国内主要株主をはじめ、メインバンクにも相手にされなかったとのことで、弾切れからの撤退を余儀なくされた。

 

最後は妻の体調を気遣って矛を収めるという、これまたまさに典型的としか言いようのない、欧米型エクスキューズを添えての哀しい幕切れとなった。

 

その後の一連のウッドフォード氏による対オリンパスネガティブキャンペーンを見ても、冒頭放たれたあの「過去の決算内容に疑義あり」攻撃は、彼の切り札だったのだ。圧倒的だった初戦以降、次は何が出てくるのかと期待して観戦していたが、結局何も出てこなかった。一瞬海外メディアから、オリンパスの背後に暴力団の存在を匂わせる報道がなされたときはおおっと思ったが、単発のラッキーパンチだったようだ。

 

普通、唯一の切り札をいきなりマスコミにリークするだろうか。

 

長々と何の話をしたいのかって話やけど、Der Spiegelはウッドワード氏ほど世間知らずではなかったようや。Der Spiegelの告発には続きがあった。現時点で出ているものを見る限り、追加の罰則や、それこそタイトル剥奪なんて話になる類のインパクトには見えないけど、正直言ってワシはショックやったね。がっかりしたよ。何にって、自分のナイーブさにね。倫理的にであって、法律的、あるいは会計的ではないかもしれないにせよ。(繰り返すけど、今出てる時点の記事でもってよ)

 

ほんなら、そろそろ記事の方に行こうか。今日の時点で出ている2つの記事で、Der Spiegelが言うてるのはこういうことや。

www.spiegel.de

www.spiegel.de

  • シティは、オーナーであるADUG*1から”不正に“資金を注入することで、FFP抵触を回避しようとした
  • それらは監査によって露呈した
  • しかし、当時のUEFA事務局長インファンティーノの計らいと、シティからの法的圧力によって、シティは”非常に軽い”処罰で済んだ。これは不正や。

 

 

Der Spiegelの記事からわかること

長くなるから、事実だけ書いていこう(これがまた、Der Spiegelの記事からセンセーショナルな記述を除いて事実を拾うのがけっこう大変なんよね。ワシの知り合いもFACTAでごっつ責められたことあるけど、上手なもんよね)。

 

  • シティの首脳陣は、2012/13シーズンの終わりに、FFPのブレークイーブンルールに抵触しそうなことを把握した。
  • 財務部門のホルヘ・チュミジャは、「不足分を埋める唯一の解決策は、アブダビからのスポンサーシップ収入だと思います」と内部のeメールに書いた
  • 幹部のサイモン・ピアースは、「今後の2年間に対して、バックデートした契約を結べばいい」と提案。またCEOのソリアーノも、FAカップに優勝した場合のボーナス収入を契約に盛り込むことを提案した。
  • 結果として(※Der Spiegelは「シーズン終了から10日後」と書いている)、エティハド航空は150万£、アーバル*2は50万£、官公庁は550万£を追加でスポンサーフィーとして支払い。契約の日付は、シーズン開幕時にバックデートされた。
  • チュミジャがアブダビからのスポンサー契約をバックデートすることが可能なのかと聞いたのに対して、サイモン・ピアースは"Of course, we can do what we want."と回答した。
  • 時間は戻って2010年4月、ピアースはアーバルとのスポンサー契約を締結。フィーは年間1,500万£だったが、ピアースは内部のメールで「アーバルからの直接的な支払いは300万£で、残りの1,200万£は陛下*3からの別の資金源から」と書いた
  • また、エティハド航空からの年間6,750万£ののスポンサーフィーについては、「800万£がエティハドからで、5,950万£はADUGから」と、チュミジャがピアースに宛てたメールの中で記載している
  • FFP抵触を回避するために、シティ内部で「プロジェクト・ロングボウ(長弓)」というプロジェクトが立ち上がった
  • 通常、クラブは所属している選手を使った販促品を作る場合、選手の肖像権使用料を選手に支払わなければならない。しかしシティは、①肖像権管理会社(Manchester City Football Club(Image Rights)Limited)を設立、②それを新たに設立した「Fordham Sports Management」というマーケティング会社に売却し、③肖像権使用料はFordhamが支払う、④そしてADUGがFordhamに損失を補填する、というスキームを編み出した。
  • Fordhamの代表として雇われたジョナサン・ロウランドは「ADUGが全面的に支援することが最重要だ」と念押しし、サイモン・ピアースは「営業費用については、毎期先払いで約1,100万(※おそらく£)をキャッシュで支払う」と回答した

 

 

"We will have a shortfall of 9.9m pounds in order to comply with UEFA FFP this season," Man City's Chief Financial Officer Jorge Chumillas wrote in an internal email. "The deficit is due to RM (eds: a reference to Roberto Mancini) termination. I think that the only solution left would be an additional amount of AD (eds: Abu Dhabi) sponsorship revenues that covers this gap."

 

"We could do a backdated deal for the next two years (...) paid up front," suggested club executive Simon Pearce. CEO Ferran Soriano, meanwhile, suggested having sponsors pay the team the contractually obligated bonus for winning the FA cup -- even though Man City hadn't won.  

 

Ten days after the end of the season, Chumillas presented the results of the deliberations and declared that the details of the sponsoring contracts would be adjusted -- for the just finished season! Etihad was to suddenly pay 1.5 million pounds more, Aabar 0.5 million extra and the tourism authority a surplus of fully 5.5 million pounds. And they were all supposed to act as though that had been the deal agreed to at the beginning of the season.

 

The club and its sponsors were manipulating their contracts. When Chumillas asked his colleague Simon Pearce if they could change the date of payment for the sponsors from Abu Dhabi, Pearce answered in the spirit of Manchester City's executives: "Of course, we can do what we want."

 

 

hese activities in spring 2013 raise doubts as to whether the Abu Dhabi-based companies are really the independent sponsors Man City representatives have consistently claimed them to be. As early as April 2010, when Pearce negotiated the sponsorship deal with Aabar, he wrote a telltale email to the firm's leadership. According to the contract, the investment company was to pay the club 15 million pounds annually. But that apparently isn't the full story. "As we discussed, the annual direct obligation for Aabar is GBP 3 million," Pearce wrote. "The remaining 12 million GBP requirement will come from alternative sources provided by His Highness." With just a single sentence, Pearce confirmed the accusations that his club had repeatedly, indignantly rejected: Namely, that His Highness, Sheikh Mansour, paid a portion of the sponsoring money himself!

 

That is of vital importance when it comes to UEFA's Financial Fair Play rules. If the club goes on a shopping spree with the sheikh's money, those expenditures must be declared, which quickly puts the balance sheet in the red. If, however, that money can be disguised as sponsoring money, it looks like revenues and Man City can afford larger expenditures without fear of UEFA sanctions.

 

How does it work in practice? Apparently, companies like Etihad in Abu Dhabi wait for the Abu Dhabi United Group (ADUG), the holding company that belongs to Sheikh Mansour and which also owns Manchester City, to wire them money. That money is then "routed through the partners and they then forward onto us," wrote Finance Director Andrew Widdowson in an email. That, at least, is how things were done in 2015: At the time, the deal with Etihad was bringing in 67.5 million pounds annually. But Chief Financial Officer Chumillas emphasized in an email to Pearce: "Please note that out of those 67.5m pounds, 8m pounds should be funded directly by Etihad and 59.5 by ADUG."

  

 

Among club employees, Project Longbow would become synonymous over the next several years with the battle against Financial Fair Play. Under Soriano's leadership, Man City established "a central model" that "allows for many of the operational costs to be shifted either fully or partially away from the club."

 

It is a telling window into the team's approach: High costs and losses are fine as long as they can be hidden from UEFA. To help do so, Manchester City established a subsidiary to take care of a share -- and the costs -- of some standard business activities.

 

For example, the club transferred the marketing rights for its players to an external company. Normally, professional teams have to pay their athletes for the right to use them in club marketing material. But City drummed up buyers for those marketing rights -- an ingenious plan. Suddenly, the club no longer had to pay the marketing fees -- the new buyers did, resulting in spending cuts for Man City. Furthermore, the sale of the marketing rights generated additional revenues for the club to present to UEFA investigators: almost 30 million euros in this case. The marketing company adopted the name Fordham Sports Management and it is "very material for our longbow target," City's chief financial officer, Jorge Chumillas, noted internally.

 

Jonathan Rowland wanted additional confirmation of that. "We need to know that AD is fully behind it this is the most important thing," he wrote on April 4, 2013, to Simon Pearce, a club executive and adviser to the Abu Dhabi ruling family. In response, Pearce sought to put Rowland's mind at ease and let him in on the plan: "Regarding the ongoing operating costs, every year we will send in advance the cash of approximately 11 million." The "we" in this case is the holding company that Sheikh Mansour had used to buy Manchester City: Abu Dhabi United Group (ADUG). "I have ended up as the de facto MD (managing director) for ADUG," Pearce joked in one email to colleagues.

 

 

事実と論点

記事が本当だとして、まずわかるのは以下のことや。

  • 損失補填のために、シティの首脳陣は意識的にスポンサー契約をバックデートさせて締結した
  • アブダビ関連のスポンサーフィーの中には、実際はADUGが支払っているものが含まれていた
  • 肖像権使用料という費用を、クラブのアカウントから除外して会計上の費用を削減するために、クラブではなくADUGが直接支払えるスキームを採用した

 

となると、論点は色々あるね。

  1. 「シーズン終了後」だという契約は、2012/13の会計年度が終了した2013年5月31日から10日後を指しているのか、2012/13の最終公式戦であるFAカップ勝戦の2013年5月11日から10日後を指しているのか。前者なら次の会計年度やし、後者ならDer Spiegelが「もうシーズン終わってるがな!!」と言ったことに反して、同じ会計年度になる
  2. 次の会計年度だったとして、バックデート契約は法律的および会計的にアリなのか
  3. 次の会計年度だったとして、バックデート契約は倫理的にアリなのか
  4. 実際にはADUGが支払っていたというスポンサーフィーの支払形態は、会計的にアリなのか
  5. 実際にはADUGが支払っていたというスポンサーフィーは、フェアバリューなのか?
  6. 4)がナシだったとして、また5)がフェアバリューでなかったとして、UEFAの調査委員会はそれを指摘していたのか?
  7. シティが食らったFFPのブレークイーブンルール違反の罰則は、“インファンティーノが便宜を図った結果の、非常に甘いもの”なのか
  8. 肖像権使用料に関するスキームは会計的にアリなのか
  9. 肖像権使用料に関するスキームは倫理的にアリなのか

4については、契約上エティハド航空やアーバルが支払うことになっていたスポンサーフィーが別の法人から支払われることになっていたとしたら、それは虚偽の契約なんやないか?という話がある。2も含めて、そもそも法律的あるいは会計的にナシで、7)UEFAもあえて見逃していたというのなら、これは「Cheating」の誹りを受けてもしゃあないよね。

ていうのは、オーナーが自分の会社からクラブにスポンサーフィーとして金を出すこと自体はありや*4。ピーター・コーツとBet365とストークマイク・アシュリーとスポーツダイレクトとニューカッスル、デイヴ・ウィーランとDWとウィガンなんて、オーナーの会社が胸やスタジアム名に入ってるしね。

ただ問題なのは5)の「フェアバリューなのか?」ということよ。Der Spiegelは「彼が直接払ってるんです!」と言ってるけど、UEFAおよびプレミアリーグFFPの規定に書いてある通り、関係会社が問題になるのは「フェアバリューと異なる」ときやからね。そのときは額が修正される(と、ワシは理解してる。間違ってたらごめんね)。

FFPにおけるRelated Parties(関係会社)とフェアバリューについて)

Financial Fair Play: How clubs justify spending & related party transactions

 

8・9)の肖像権使用料に関するスキームは会計的および倫理的にアリなのか、については、別にいいんちゃう、とワシは思ってる。むしろ2013/14の年次会計報告で費用効率がごっつ改善されたのは何でやろ?と思ってたから、解説してくれてちょっと嬉しかったくらいや。ルールの抜け道を全力で見つけにいったんやろうね。

 

 

嵐が来たりて 

法律的及び会計的にアリなんか、については、ワシは会計士でも弁護士でもないからわからへん。それらが全部(法律的及び会計的に)アリだったとしてもなお、これからの政治的成り行きでどうとでもなりそうな7)、および倫理的にはアリなんか、そしてこれらがシティのイメージに及ぼす影響はどうなんかってことについては、ワシは頭が痛いわ。

法律的に、あるいは会計的にアリだったとしたら、Der Spiegelが書きまくってる「Cheating」という訴えは、この両面では棄却される。そこらのファンがTwitterで言う「Cheatingや」というのと、レベルとしては変わらんことになる。それでもやっぱり、ADUGは株式・貸付という形でのみ資金を注入しており、スポンサーは(例え受益主体がいち航空会社だけでなく国単位だったとしても)経済的に正当化される額の資金を投下している」と思ってたワシの考えはほぼ間違ってたということがわかった。ちゅうか、エミレーツアーセナルに数千万£入れてるんやから、もうちょっと払ってくれたって十分フェアバリューやろ。

 

仮に(何度も繰り返してすまんね)法律的に、あるいは会計的にアリだったとして、それらを証明するための試みには何ぼほどの時間とイメージの毀損があるやろう?今はもう、ベルルスコーニモラッティやチェッキ・ゴーリが好きなように金を補填して、「でも愛があるからいいやん」とかブッこけた時代じゃない。まあ、ワシはあのモラッティが好きやったけど。広い意味でのイメージ戦略のためにアブダビがシティに投資してるんやったとしたら、この記事が出た時点で負けよね。

 

まあ、ニック・ホーンビィが書いてたように、ファンであること自体は蛇口ひねるみたいに止めたり始めたりできることでもないから、見てるしかないねんけどね。今更キキ・ムサンパの突撃とヴァッセルのまぐれ当たりで勝ち点拾ってたことに戻りたいかって言われても、正直嫌やし。嵐が過ぎ去るのを待つしかないかなという心境よ。長い嵐になりそうやけどね。

  

*1:アブダビ・ユナイテッド・グループ

*2:アブダビの投資会社

*3:明らかにシェイク・マンスールのこと

*4:ごめん、これ前回間違った事書いてた。スポンサーフィー=売上に計上してもいいねん

UEFA、シティ、FFPーDer Spiegelの暴露記事は何の話をしているのか

飛行機から降りたら、朝からエラいニュースになってたね。

『マン・シティとパリSGオイルマネーは如何にしてサッカー界を捻じ曲げたのか』という御大層なタイトルを引っさげて登場したのは、ドイツの雑誌Der Spiegel。Football Leaksっていう、WikiLeaksのサッカー版みたいなやつがハッキングしてきた情報をもとにした記事やね。

www.spiegel.de

なぜこれが騒ぎになっているかというと、シティとパリSGに対するFFPの制裁が緩和されるよう、UEFAの事務局長だったジャンニ・インファンティーノ(現FIFA会長)が便宜を図ってやったんや、ということが指摘されているからやね。

Sportintelligence.comを主催しているニック・ハリスいうジャーナリストのオッサンは、以下のように内容をまとめている。

  • シティとパリSGは、何年もの間、“システマティックに”FIFAのフィナンシャル・フェアプレイを破ってきたんや
  • UEFAの事務局長インファンティーノは、アブダビカタールの圧力に負けて、両クラブを実質的には無罪放免にしたるよう、取り計らってやってたんよ
  • こいつらはCLの参加禁止にもなってへんしな
  • インファンティーノは、中立の立場でおらなあかんっちゅうのに、両クラブの首脳陣と何度も交渉をかさねてやがったんや
  • こいつは内部情報を両クラブに流して、「和解」するルートを探っとった。そんな権限ないのにな

 

どう?結構刺激的?個人的には、ここまでについては特に新しい情報は無かったんやけどね。シティがFFPのブレイクイーブンルールが満たせなかったことで2014年に制裁を受けたのはみんな知ってるし、当時からずっと、シティの首脳陣(フェラン・ソリアーノたちやね)がUEFAのトップと交渉を重ねている、という報道も出てた。シティが「そもそもFFPってEU法に反してへん?」って言い出したのもめっちゃ昔やしね。

あと、このハリスおじさんも興奮してついタイピングが滑っちゃったのかなと思うのは、『何年もの間、“システマティックに”破ってきた』というところとかね。2014年って、UEFAの国際大会に出るクラブがFFP充足を求められた最初の年なんやけどね。

 

こういう意見もある。

「FootballLeaksはおもろい読み物をくれたし、みんなが疑ってたことに対する証拠を出してくれたけど、あっと驚く新発見とかではないね」

 

まあ多分、大概の人は長々と読む気力がないやろうから、ワシの結論は先に書いとくよ。

  • 今回出てきた話は、①2012年から2014年までの間で、フェアバリューじゃないと判断されたスポンサー契約があったということ、②交渉スタイルがかなり脅しに近いものだった可能性があるということの2つ
  • 逆に言えば、2015年以降から現在に至るまで関連会社というヴィークルを使って不当に金を注ぎ込み続けていたのだ・・・とかいうおどろおどろしい話では無かった。
  • 今回の件で、シティが何らかの具体的な罰則を受ける可能性は低いんじゃないかな?というのは、上に書いた通り、①はもう罰則受けてるし、②は法律の専門家じゃないからどうこう言われへんけど、法的措置を取るぞという姿勢自体を罰するのは難しいんやないかということよ。もちろん、このあと具体的に袖の下を渡してたとかいう話が出たら別やけどね。
  • ただ、シティのイメージは確実に悪くはなるやろうね。ファンとしてあまり気持ちの良いものじゃないよね。

 

そしたら、周辺のTweetや報道ばっかり見ててもしゃあないから、肝心のDer Spiegelの記事を見てみるで。以下の箇条書きは、「Der Spiegel」が書いてることであって、ワシの考えはまたあとで書く。あと、当たり前やけど、元の記事も読んでね。

 

  1. 2014年5月、シティとパリSGFFP(のブレークイーブンルール)に違反したと判定されそうになっており、そうなればUEFAコンペティション(CL)から閉め出される可能性があった
  2. FFP審査の手続き中、ジャンニ・インファンティーノは数回に渡ってシティとパリSGと非公開の会合を持ち、機密情報を提供もした(even supplying them with confidential materials.)
  3. Der Spiegelが入手した書類によれば、インファンティーノは(FFP遵守のモニタリングと罰則の提案を行うUEFA内の組織である)Club Financial Control Body、通称CFCBが追求を辞めるように取り計らっていたかのように見える。
    (That, though, is exactly the red line that Gianni Infantino crossed in spring 2014. The leaked documents make it look as though he was the willing executioner for two clubs that wanted to get UEFA investigators and auditors off their backs.)

  4. マン・シティの経営陣は、2013年5月の段階で、FFPのブレークイーブンルールに抵触するかもしれないということを察していた
  5. 2014年1月、UEFA監査法人PwCマンチェスターに送って監査をさせた。「その他の商業収入の84%はアブダビ関連のスポンサー」のもので、レポートによれば、3,500万€の費用が、年次報告書から隠蔽されていた
  6. シティは弁護士団を雇い、UEFAに対して徹底抗戦の構えを見せた。3月半ばには、シティのCEO、フェラン・ソリアーノはインファンティーノに対して欧州司法裁判所(European Court)に持ち込むぞ、と”脅した”。
  7. しかし、Octagon(スポーツエージェンシー)の専門家は、シティがアブダビ関連企業と結んでいる4つのスポンサー契約の内、3つは「著しく過大計上されている」と判断した。彼らによれば、クラブに合計5,000万€をもたらしたこの契約群は、ものによっては市場価値よりも最大80%過大に計上されている、とも付け加えた。
  8. また、PwCは再訪問時に、2つのスポンサーが「(オーナーの)関連企業」と判断した。

  9. しかし、4月上旬に、インファンティーノは、双方の弁護士を伴ってソリアーノと会談し、シティ側が有効的な解決策を提案するという方向性で合意した。
  10. ソリアーノはシティの会長、ムバラクに「インファンティーノと電話で話して、シティのビジネスに影響がない範囲で合意できそう」と伝えた
  11. しかし、4月末になっても、結局シティは交渉の進捗に満足していなかった。クラブ弁護士のサイモン・クリフは、とあるメールで「ムバラク会長は、インファンティーノに『3,000万使って世界最高の弁護士50人雇ってこの先UEFAを10年間訴え続ける方がマシ』と伝えた」と書いている。
  12. そして5月2日、シティとパリSGはCFCBのInvestigatory Chamber(調査委員会)から書簡を受け取った。会長のブライアン・クインは処置が寛大すぎると反対して辞任し、署名していなかった。クインのあとを継いだイタリア人、ウンベルト・ラーゴが代わりに署名した。

  13. パリSGは合意したが、シティのはもっと複雑だった。ラーゴは「5月中旬までに友好的合意に達しなければ、CFCBの評決委員会に諮ることになり、そうなればCLへの参加禁止に至る可能性がある」と書いた。
  14. 5月9日、シティの首脳陣はフランスのニヨンで、調査委員会と会合を持った。その前日、シティの首脳陣はロンドンでインファンティーノと密かに会談し、詳細を詰めていた。しかし、UEFAとの会合は合意に達しなかった。
  15. サイモン・クリフはUEFAに「取りうる法的措置」という覚書を送った。またクリフは、プラティニとインファンティーノにスイスの法廷に出てくることを要求した。クリフは(※多分メールで)「この法廷闘争は、UEFA全体を数週間で崩壊させうる。もしPwCも訴えられれば、PwCUEFAを相手取って訴訟に及ぶだろう。もし破談に終われば、UEFAの債権者がこぞってUEFAを訴えることになる」と書いた。
  16. 5月11日、インファンティーノはムバラクに「残念ながら、調査委員会は和解に達するには意見の相違が大きすぎるとの結論に達しました」と伝えた。「しかし、調査委員会は独立した組織であり、私としては彼らの決定を尊重せざるを得ません」とも。
  17. そして、シティは当時のUEFA会長プラティニからのメッセージを、パトリック・ヴィエラを通じて受け取った。「アブダビのオーナーたちに、私を信用してくれと伝えてくれ。我々は彼らがやっていることを理解しているし、好意的に捉えてもいる」と。
  18. そして、インファンティーノは新たな和解策をシティに提案した。
  19. 5月16日、シティのCEO、ソリアーノは和解合意に署名した。罰則は2,000万€で、ソリアーノはクラブ内部に送ったメールで「実質的には我々のビジネスに影響しない」と書いた。

 

どう?贔屓目が入ってることはもちろんやけど、#dirtydeals とかいうタグをつけるほどの話かな?と思った。その理由を以下に書いていくわ。 

 

まずワシが知らんかったことから言えば、一番ショックだったのはスポンサーフィーの一部がフェアバリューだと評価されていなかったことやね。パリSGのスポンサー契約が過大計上されている、というのは報道でも確認されていたことやったけど、シティについては、ワシが知る限り(ファンがあれこれ疑惑を掻き立てることはあったとしても)確認された報道は無かったはずなんよ。だからワシも『ちなみに、つぶやきついでに言うと数年前にシティがFFPに引っかかったのは、直接的には損失を出していたからなんだけど、それは「オーナーが関連する企業からのスポンサーシップが認められなかったから」ではなくて、費用の計算方法が途中で変わったからなのね。今更何にもならないが。』とか呟いてた。言い切るべきではなかったね。ごめんなさい。

 

まあ「その他商業収入の84%がアブダビ関連企業」というのは別にそれ自体が悪いことじゃないし、エティハド航空が胸スポンサーだったり、エティサラート(通信会社)も早い段階からスポンサーについてた時点で自明のことやからね。それに膨らまし具合も最大1.8倍やから、「10.4倍の過大計上」と評価されたパリSGとはレベルが違うということもできる。それでもやっぱり、「オーナーが関連企業を使って不正に売上高を膨らましている」っていう批判には、胸を張って違うでと言いたかったところやけど、そうもいかんようやね。

 

なんでこれがいかんことなのかというと、売上高が膨らむと当然損失が減るわけで、そうなるとFFPのブレークイーブンルールに引っかからない可能性が高まるからよね。キャッシュの形でオーナーが金を入れることには問題はないわけよ。ていうか、それがオーナーの仕事やからね。でも売上計上さしたらダメ。

(11/6追記:ごめん、自分で書いてて赤っ恥なんやけど、不正確やったわ。売上(=スポンサーディール)で入れてもいいのよ。関連会社の場合、フェアバリューじゃないとダメFinancial Fair Play: How clubs justify spending & related party transactions

 

もう一つ知らんかったのは、シティが思いの外ストロングスタイルで交渉に臨んでいたことやね。訴えるつもり満々だったという話自体は、前からシティファン界隈では出てはいたんよ。

www.mcfcwatch.com

www.mcfcwatch.com

 

もうアカウントないけど、ワシの昔のTweetから引用すると、こういう話やった。

  • FFPの評価対象第1期は2013/14シーズン。評価対象となる数値は2011/12、2012/13の合計(翌期からは3年間の合計)
  • 第1期の損失限度額は€45m
  • シティの同期間の損失額合計は控除分を戻しても約€138m。超過だが、当初はOKの見込みだった。というのも、FFP規則の附則第11条というのがあって、これはFFP導入、ないしは導入が準備される以前に契約していた選手の給与が計算に含まれるのはおかしいのでは?というクラブ側の訴えを汲んだもの。
  • 従って、「対象期間に損失が発生したことは、FY2012の損失のみが原因であること」「損益のトレンドが改善傾向にあり、今後はFFPを遵守できると見込まれること」という条件がクリアできれば、シティの場合£80mが控除でき、損失額は£35mに縮小。FFPはクリア、制裁なし。のはずであった。
  • が、シティは急転直下、2014年5月FFPの制裁を受け入れたことを発表。内容は以下。
    • FY2014の損失限度額は€20m、FY2015は€10m
    • グループ内での資産売却益は計算から除外
    • 2年間は給与総額の増加禁止 
    • UEFA-Aリストを21人に制限
    • 移籍金のネット総額制限(£49m)(続
  • なぜか?FFPの報告用に、UEFAは2011年に"toolkit"と名付けられたテンプレートを発表。他のクラブ同様、シティもこのシートに従って計算を行い、附則第11条の適用条件を満たしていた。が、2013年4月、UEFAがtoolkitの更新版を発表。
  • 更新版は附則第11条に関する部分の計算方法が変わっており、更新版に沿って計算すると、シティは附則第11条を適用できない、すなわちFFPをパスしないことになってしまった。
  • どうする?どうもできません。だって、FY2012はもう終わってるんやもん。
  • 当然、最初のクラブ側は怒ったらしい。UEFAの擁護をすると改訂版の方が計算はより適切なのだが、問題はルールを後から変えんなという話である。UEFAを訴える手もあったが、結局制裁は受け入れた。理由を考えると、おそらくクラブのイメージ的戦略に宜しくなかろうということが一つ
  • 他には、制裁の内容を考えると実はさほど痛手では無かったのだろうということ。売上は伸びていたし、そのときの費用にはマンチョ一味の解任違約金とか、そういう一時的費用が大きかったからね。だからCLメンバーから外されたヨベティッチ一人が割りを食って終わった。

 

今回の報道で、その「怒った」内容が思いの外ストロングスタイルだったということがわかった。まあイメージは悪いよね。

まとめると、フェアバリューじゃないと判断された契約があったということ、交渉スタイルがかなり脅しに近いものだった可能性があるということが今回わかったことで、「破ってたのに破ってなかったかのように装っていた」という話ではなかった。まあ、1回破ってたのはみんな知ってたからね。一つも褒められる話じゃないけど。

 

 

それで結局どうするんやろうね?

成り行きを見てみなわからんけど、シティのイメージが悪くなることは間違いないやろね。すでにTwitterでは「28億€もの資金を違法にクラブに注ぎ込んでいた」という煽りもそこかしこに出てるみたいやし(その数字はDer Spiegelの記事の中になかったから、どれのことを言うてるんかわからへんけど)。結局イメージが悪くなるなら、ムバラクソリアーノが取った方法は失敗だったと言えるのかもしれん。

 

1ファンとして見ると、自分が決めたことでもないし、自分の金でもないから、本来はどうでもいいはずなんやけどね。けどやっぱり、自分が好きなクラブには、適法性だけじゃなくて、正統性の面でも評価されていてほしい、ピッチの中での成績を、正統なものとして認めてもらいたい。という人情がある。他のチームのファンからやいのやいの言われたくはないやんか。

 

そういう意味で、今回の報道はやっぱり残念よね。またDer Spiegelがこれでもかというくらい刺激的な書き方をしてるからね。しばらく、シティファンは多方面からの煽りに耐えなあかんやろうし、ないやろうとは思うけど、ひょっとすると追加調査・追加制裁みたいな話になるのかもわからへん。一方で、サッカービジネスウォッチャーにとっては面白い報道が続きそうではあるね。

 

にしても、ヨベティッチはかわいそうよね、というところで、今日の話を締めようか。

国際政治に影響されるサッカー界

※「タイトル、地政学じゃなくて国際関係じゃね」ってコメントがついていて、確かにと思いました。タイトルおかしいね。私、Political ScienceのBAのはずなのに・・・→情けなかったのでタイトル変えました。

 

サウジ、孫正義、クラブW杯、マンチェスター・ユナイテッド

マンチェスター・ユナイテッドに40億£もの買収案を持ちかけていると噂されるのは、誰あろうムハンマド・ビン・サルマーン、自国のジャーナリスト、ジャマル・カショギをイスタンブルの領事館で生きながらにして惨殺させたとの噂喧しき男である。

  

ムハンマド皇子の関心はどうやら本当らしい。

www.independent.co.uk

 

Saudi Telecom are already United’s longest-standing commercial partner, while last year they agreed a separate “strategic partnership” with the General Sports Authority of Saudi Arabia. Different names, same pot of money.

サウジ・テレコムはまんゆの長期的なスポンサーで、更に昨年、サウジの総合スポーツ局と”戦略的パートナーシップ”を結んでいる。カネの出所は同じだ。

 

All of these deals – as well as the proposed $25bn deal with Fifa for the Club World Cup and potential new Nations League – are part of the regime’s somewhat belated attempts to diversify into sport investments and away from oil, while accruing the soft power benefits of such purchases, following the lead of Qatar, most notably with Paris Saint-Germain, and allies UAE with Manchester City.

FIFAクラブワールドカップと新たなネーションズリーグへの25億ドルのスポンサー提案も含めて、これらは全て、石油依存からのシフトとソフトパワーの拡大戦略の一部とされる。カタールパリSGに、UAEマンチェスター・シティに投資しているが、サウジがそれを追撃しようというのだ。

 

グレイザー一家の意向は定かではない。カショギ事件のあととなっては尚更だ。IndependentのMiguel Delaneyは、「まんゆの株式の過半数は、公式には売りに出されていない、ということは強調されるべきだ」という。前にも触れたが、グレイザー一家にとってまんゆは非常に良い商売だからだ。

 Why would they be when they continue to be such a highly rewarding investment for the Glazers? The latest reports showed a record income of £590m from selling sponsorships. The six Glazer siblings and their investors have meanwhile been paid around £65m in dividends over the last three years.

一方、グレイザー一家は一定のExitを見据えているという説もある。40億£は(いかにまんゆがサッカークラブとしては巨大でも)覚悟を揺るがすには十分な額である一方で、サウジにとっては十分払える額でもあるからだ。

 

サウジの資金力をもっと明確に当てにしている人物がいる。孫正義だ。

business.nikkeibp.co.jp

孫会長はムハンマド皇太子を口説き、17年にサウジの資金力を基盤とした10兆円規模のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)を立ち上げた。1号ファンドはサウジ系の公共投資ファンド(PIF)から450億ドル(約5兆円)の出資を受け、破竹の勢いで米ウーバーテクノロジーズや米ウィーワークなどに巨額投資をしている。

 

 孫会長はムハンマド皇太子と「運命共同体」と呼べるほど密接な関係を築いている。孫会長は諮問委員会の委員を務めるなどFIIについては主催者に近い。ムハンマド皇太子に近いPIF取締役のヤシル・アルルマヤン氏はソフトバンクグループの取締役を務めるなど深い関係を築いており、孫会長は難しい判断を迫られている。

 

ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が、10月23日からサウジアラビアの首都リヤドで開催される未来投資イニシアチブ(FII)に出席するか否かに関心が集まっている。FIIはサウジで強大な権力を持つムハンマド・ビン・サルマン皇太子が世界の投資家などに呼びかける会議で、今回で2回目となる。

 

今回は世界屈指のリスクテーカーである孫会長の腕の見せ所との分析もある。ある金融関係者は「欧米のビジネス界の腰が引けている時にFIIに出席し、しっかりとサウジに関与できれば、ムハンマド皇太子の信頼は絶大なものとなる。世間の声は移ろいやすい」と指摘する。カショギ氏の殺害については、サウジの権力闘争の一環との見方もある。

 

直近のトヨタとの戦略的提携でも明らかなように、ソフトバンクはキャリアから投資ファンドに変わろうとしている。

https://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2018/20181004_01/ 

 

kabumatome.doorblog.jp

サウジの幕引きシナリオに対しては、選挙対策からトランプ大統領が支持を示しそうだったが、ちょうど今日、風向きが変わりそうなニュースが出てきた。(で、結局出席はしないらしい)

www.nikkei.com

 

 

 

 

話はもう一度サッカーに戻ってくる。サウジ、ソフトバンク、そしてソフトバンクが3割弱のシェアを持つAlibabaは、世界で最もクラブワールドカップへの投資に前向きな団体の1つだ。当然、UEFAは面白くない。チャンピオンズリーグの地位が脅かされることになるからだ。

www.soccerex.com

 

日本も無関係ではない。ソフトバンク、というか孫正義を後押しする要因の一つが、現政権とサウジの強い関係だ。成長戦略を探し求めて20年の日本と、石油依存からの脱却を目指すサウジの利害の一致は、「日・サウジ・ビジョン2030」という形で結実した。

「日・サウジ・ビジョン2030」を策定しました(METI/経済産業省)

 

という話を、Simon Chadwick教授がまとめたのがこれ。

 

 

 

 スーパーパワーと無関係ではいられなくなったサッカー界

それで?世界のサッカーはますます、地政学に影響されるようになってきているということだ。アブダビの人権問題の前には、カタルーニャ独立の最も著名な応援者の1人、グアルディオラも口をつぐむ。

www.independent.co.uk

It was quite a notable shift, and maybe in more ways than one. After sounding so impressively impassioned as he discussed Catalonia’s jailed politicians, Pep Guardiola was suddenly much less sure of himself when asked how he could reconcile these universalist “human” principles with Manchester City’s Abu Dhabi owners and the abuses of human rights in the United Arab Emirates.

 

“Every country decides the way they want to live for themselves,” Guardiola began. “If he decides to live in that [country], it is what it is. I am in a country with democracy installed since years ago, and try to protect that situation.”

  

今や北朝鮮を除き、サッカー界の頂点に対して直接的な関係を持っていない重要国家はない。直接のクラブ保有やスポンサーシップを含めて、そうした権力と関係を持たないメジャークラブを見つけるのも難しい。プレミアリーグに群生するアメリカのオーナーたち、チェルシーアブラモヴィッチ(ロシア)、パリSGとシティ(中東と中国)、ACミラン

 

まんゆのカンファレンスコールでは、クラブがドナルド・トランプの税制改革を「長期的にはクラブにとって有益と想定される」と発表した。始まったぞ~。

 

こうした動きは、(これもMiguel Delaneyによれば)一時的なものではない。サポーターが所有するクラブも、売上拡大のためにスポンサー獲得を急いでいる。レアル・マドリーバルセロナはどちらも湾岸諸国からの投資受け入れに積極的だし、バイエルン・ミュンヘンはドーハのハマド国際空港を「プラチナパートナー」と考えている。

 

リヴァプールのことを考えてみよう。リヴァプールの胸スポンサー、スタンダード・チャータードがイランとのマネーロンダリング取引に関する内部統制不備のために3億ドルを支払う羽目になってから3年が過ぎた。NY州金融サービス局のBenjamin Lawskyによれば、スタンダード・チャータードは「アメリカの金融システムもテロリストや、武器商人、麻薬王や腐敗政権に対して危機に晒した」という。

In terms of the kind of questions that come up here, consider Liverpool’s main sponsors. It is just over three years since Standard Chartered had to pay $300m for lapses in its anti-money laundering procedures. Benjamin Lawsky, superintendent of the New York State Department of Financial Services, accused a unit of the bank of leaving “the US financial system vulnerable to terrorists, weapons dealers, drug kingpins and corrupt regimes”.

 

 

サッカーはどこまでクリーンなのか?どこで一線を引くべきなのか?

事実として、サッカーはますます政治の影響を受けるようになっている。シルヴィオ・ベルルスコーニが持ち込んだ放映権モデルはサッカー業界のビジネスを変えた。業界が成長し、投資家がようやく利益を得られるようになってきて(サッカー、というかスポーツは確かに儲からない領域だが、グレイザー一家の意見は違うだろう)、ロマン・アブラモヴィッチチェルシー買収で、政治とサッカーの関わりは更に洗練されたものになってきた。豊かな政権やキャッシュリッチの個人が自らの汚れたイメージを和らげるためにスポーツを利用する。アムネスティ・インターナショナルが「スポーツ洗浄」と呼ぶそれだ。サッカーは長期投資のヴィークルであると同時に、オーナーたちが自らのメッセージを世界中に届けるためのプラットフォームにもなった。

What is still different is how the game is used and followed; how it is thereby susceptible to what Amnesty International UK’s director Kate Allen calls ‘sports-washing’ – how “wealthy regimes and cash-rich individuals often see sport as a means to polish up their own tarnished images”.

 

“These are great vehicles for long-term financial investment but what they also do alongside that is provide access to huge international audiences to get your message across.”

 

This is something that human rights researcher Nick McGeehan has written about extensively in regards to Qatar’s ownership of Paris Saint-Germain and Abu Dhabi with Manchester City.

 

 

なぜそうまでしてイメージ改善とブランド確立に躍起になるのだろうか。ダラム大学のChristopher Davidsonによれば、彼らの最悪のシナリオは、国際的な連携を築けなかった結果、1990年の湾岸危機で一時イラクに占領されたクウェートだと言う。(Wikipediaを引くのも少々恥ずかしいが、「クウェートに対するイラクの主権を認めさせようする流れが常にあった」ということだ)。主たる目的は利益ではなく、善意と同情なのだ。

 

例えば、エミレーツ航空は今や、レアル・マドリーアーセナル、ハンブルガー、ACミランオリンピアコスベンフィカパリSGと契約を結び、彼らの本拠地である主要都市とのルートを開いた。これらは全てドバイの投資会社を通してドバイ政府から出た金だということを考えれば、ソフトパワーの好例だ。

 

 

 

どこで一線を引くべきなのかという疑問に戻る。Miguel Delaneyは、ここまでサッカー市場が拡大すれば、ファンや選手、監督が国際政治との関わりを断ち切ることは難しい、という。グレイザー一家がトランプに寄付しているからといって、モウリーニョはまんゆを離れるべきなのだろうか?ただし、ヒューマン・ライツ・ウォッチのニック・マギーハンは、グアルディオラパリSGのことは更に別の水準にあると考えている。

“What Pep said is fine in isolation but the context is that he works for the Abu Dhabi government, whose deputy Prime Minister he thanked in the same speech, and was speaking on a platform provided to him by their money. If he'd said people in Abu Dhabi also deserve these rights, that would have really been something to admire, but he pointedly refused to do that. That's obscene hypocrisy. I do have a problem with these people being involved in the game. In terms of the Glazers or Standard Chartered, there are real and serious issues there, but Qatar and especially Abu Dhabi are at the other end of the scale. The Glazers aren’t bombing Yemen. The involvement of dictators takes things to another level.”

 

曰く、グレイザー一家やスタンダード・チャータードは看過できない問題だが、カタールアブダビはレベルが違う。グレイザー一家はイエメンを爆撃したりはしない。グアルディオラカタルーニャの権利を語ったその口で、アブダビのオーナーに感謝することは偽善だと言う。パリSGネイマールを獲得したのは、移籍マーケットをはちゃめちゃにインフレさせるためで、なぜなら究極的にはシティとまんゆしかついてこれないと知っているからだ、それは業界の健全性を失うと。

 

ではこれほど国際政治に影響されるようになったサッカー界を待つものはなにか?Davidson曰く、トランプはサウジとUAEに「カタールには好きなようにしていい」と言っている。カタールが窮地に陥って、「彼らがこれまでしてきたように」カタールパリSGを放り出せば・・・。移籍市場を占うのに、我々はDaily MailやManchester Evening Newsよりも、WSJを読むべきなのかもしれない。

“Saudi Arabia and the UAE were basically given false promises by Trump,” Davidson says. “That they could do whatever they wanted to Qatar, and then he quickly back-tracked when reality set in. So now we’re left with this phoney war, long-running stalemate, harming them all, especially harming Qatar, because the government has had to bail out the national economy, but it will have repercussions for Qatari international investments… If I were involved in PSG, I would be worried about Qatar having to pull the plug on it at some point in the future. They’ve done it with other interests that did not make headlines.”

 

FFPの改訂でむしろシティの投資は加速する説

www.dailymail.co.uk

 5月、UEFAのエグゼクティブ・コミッティで、Financial Fair Play(通称FFP)の改訂議案が発議された。が、Mailのマーティン・サミュエル曰く、FFP2.0と称されるそれは、「現行案と等しくゴミ」だという。曰く、

  • 既存のエリートが、新たな資金投下を制限しようとして目論んでいるもの
  • それこそが、マンチェスター・シティがまたも移籍市場で派手に振る舞い始めた理由だ
  • シティのプロジェクト全てが、それを止めてやろうというUEFAの目論見によってむしろ加速している

 下記、※以外は翻訳

uk.sports.yahoo.com

 UEFA call it Financial Fair Play 2.0. Makes it seem like a reboot, an update, a new model. It’s not. It’s the same old garbage: an attempt by the established elite to place restrictions on new money and new challenges.

 Another grab for power by the forces of entitlement. And as UEFA are terrified of the marquee names in their Champions League draw, no doubt they will capitulate and wave it through.

 That is why Manchester City are doing transfer business again. That is why there is a rush to advance the transfers of Aymeric Laporte and Fred. They have to get inside the castle before the drawbridge is raised — and that’s not new, either.

 UEFAはそれをフィナンシャル・フェア・プレイ2.0と呼び、リブート、アップデート、あるいは新たなモデルであるかのように見せている。そのどれでもない。それは今のと同じゴミだ。既存のエリートが、新たな資金投下を制限しようとして目論んでいるものと。

 それこそが、シティが移籍市場で大盤振る舞いを再開した理由だ。エメリック・ラポルトフレッジ獲得に動いている理由。シティは跳ね橋が上る前に、城中に入らねばならない。それもまた、これまでと同じだ。

 

 The whole City project has been accelerated by UEFA’s attempts to shut it down. Other members of the City Football Group are not placed on this free-spending fast track; only the club that must comply with UEFA’s ever-changing moods and the restrictive practices of their rivals.

 If UEFA were truly interested in competition, they would discuss wealth redistribution via Champions League prize money. More for the leagues, less for individual clubs. They don’t. They continue to kill domestic competitions around Europe by delivering huge sums to super clubs, making them untouchable.

  シティグループのクラブの中で、移籍金を湯水のごとく投下し続けているのは、UEFAの変わり続けるルールに対応しなければならない、マンチェスター・シティのみだ。もしUEFAが本当に競争を刺激することに興味があるなら、CLの報奨金の再分配について議論しているだろう。単体のクラブではなく、もっとリーグ全体へ。UEFAはそんな議論はしない。彼らはスーパークラブに凄まじい額の金を分配し、彼らをアンタッチャブルにすることで、欧州中の国内コンペティションを破壊している。

 

 The first incarnation of FFP did nothing to address this. It was merely a device to negate the impact of new money in old leagues.

 The European Clubs Association couldn’t care less that BATE are usurping the traditional dominance of Dinamo Minsk in Belarus. They just don’t want Manchester City sitting where Manchester United should be. FFP is about nothing more than preservation of an elite.

 Before FFP 1.0, there was FFP 0.0, the original vision of Michel Platini that had among its targets leveraged buyouts such as the Glazer takeover at Manchester United. That, however, veered a little too close to home, so Platini was manipulated into taking on owner investment instead.

 The Glazers, who saddled United with enormous debt, were given a free pass; Sheik Mansour, who brought new money into football and greatly benefited the local area, was the enemy.

 The elite clubs knew emerging forces such as Manchester City and Paris Saint-Germain did not yet have the revenue streams of the establishment, so attempted to stunt their growth.

 Transfers, wages, amortised agreements, finance costs and dividends would be set against gate receipts, TV revenue, advertising, merchandising, disposal of tangible fixed assets, finance, player sales and prize money. Clubs could only lose £26million, balanced over a three-year period.

 最初のFFP施行は、競争環境の是正に何一つ寄与しなかった。ニューマネーが昔ながらのリーグに与える影響を弱めただけだ。欧州クラブ協会は、BATEボリソフディナモミンスクの長く続いた覇権を奪うことには、全く興味がなかった。彼らは、マンチェスター・シティマンチェスター・ユナイテッドが“居るべき”場所に座ってほしくなかっただけだ。FFPはエリートの温存以外の何物でもなかった。

 FFP1.0の前には、FFP0.0があった。ミシェル・プラティニがグレイザー一家のマンチェスター・ユナイテッド買収をやり玉に上げようとしたアレだ。しかしFFP0.0は急にその方向を変え、代わりにプラティニは、オーナーによる投資をターゲットにさせられた。ユナイテッドに巨額の負債を背負わせたグレイザー一家は、フリーパスだった。サッカー界にニューマネーを持ち込み、ローカルエリアに多大な便益をもたらしたシェイク・マンスールは敵だった。

 エリートクラブは、シティやパリSGのような急進勢力が自分たちのような収入源を持っていないことをわかっていたので、彼らの(※事業規模の)拡大を阻止しにかかった。

 

 That way City’s spending could be tied to income — and the income of a club that last won the league in 1968 could not possibly compete with the likes of Manchester United. The new clubs would be left to wither, unable to invest to grow. Even Chelsea backed this plan, having got where they needed to be under Roman Abramovich.

 Buying in, he was now terrified of the competition if others did the same. Abramovich used to be the owner that Platini railed against. Then they ended up on the same side. That should have been the clue.

 Fortunately, it did not work. Parts of FFP collapsed at the first legal test and Manchester City and Paris Saint-Germain were smarter than UEFA and their rivals had imagined.

 They moved fast, recruited well, achieved success and balanced the books. Revenue increased through sponsorships, TV deals, merchandising, prize money. They could win and also comply.

 This is why FFP 2.0 is on the table in May. It is the latest attempt by Barcelona and Real Madrid, among others, to return to the good old days. If it fails, they will shift criteria again for FFP 3.0.

 So, how will it work this time? Now FFP is going to be purely about transfers. The rest of it, all those revenue streams that were considered so vital to the efficient running of a club, are being as good as abandoned.

 最後のリーグ優勝が1968年だったシティの収入は、マンチェスター・ユナイテッドのそれとは比べるべくもなかった。新興勢力は、成長のための投資もできず、萎むに任せるしかないように思われた。チェルシーですら、このルールを支持した。ロマン・アブラモヴィッチの下、すでに必要な場所まで到達できていたからだ。

 彼は、自分と同じような勢力が競争を激化させることを恐れた。アブラモヴィッチはかつてプラティニが敵対していた相手だったが、最終的には同じ側にいた。良いヒントだ。

 幸運なことに、このルールは機能しなかった。FFPの一部は法律的に無効とされ、シティとパリSGは彼らのライバルやUEFAが想像したよりも賢かった。売上高は順調に増え、タイトルを勝ち取ってなおルールを満たした。

 そういうわけで、この5月にFFP2.0が登場したのだ。バルセロナレアル・マドリー、そして彼らの仲間たちの今回の作戦は、古き良き時代に戻ろうというやつだ。もしこれも失敗したら、FFP3.0に向けてまたルールを変えるだろう。

 それで、今回のはどうだろう?FFP2.0では、移籍だけが対象になっている。クラブを効率的に運営するために不可欠なその他の収入源は無視だ。

 

 If the current proposals are accepted, there will be a simple calculation, outlawing a transfer loss of more than £90million in one season. This won’t just affect Manchester City, but all Premier League clubs, as Europe seeks to limit the impact of the new television deal.

 It terrifies La Liga that Leicester are now within £1m of Atletico Madrid in the 2016-17 revenue tables; Serie A are appalled that their league leaders Napoli are pegged behind Southampton in riches.

 If revenue is no longer factored in, the Premier League television deal can be contained and the established elite will sign up for this, even in England, as a way of reining in Manchester City.

 To hear Antonio Conte complain about the financial power of the Manchester clubs is to hear the conversations that go on behind closed doors. ‘These two big clubs can be seriously dangerous for other teams in the world,’ he said. ‘They are very strong already, and want to invest.’

 Indeed, as Chelsea once did. Just because Conte has spent January looking at players who would simply not be considered in Manchester does not mean the system is wrong. It just means Abramovich has got what he wants from it and now hopes to scale down the arms race. Tough. You started it.

 And, who knows, if Chelsea had not spent in the region of £80m sacking managers since Abramovich’s arrival, maybe they would have been able to join the bidding for Alexis Sanchez?

 今回の案が可決されれば、計算は簡単。1シーズンに9,000万ポンド以上の移籍市場での損失はルール違反になる。(中略)欧州全体が、新たな放映権料契約の影響を弱めようとしているのだ。放映権料は、ラ・リーガセリエAを脅かしている。今やレスターの売上高はアトレティコ・マドリーと100万ポンドの差しかなく、セリエA首位のナポリの売上はサウサンプトン以下だ。

 アントニオ・コンテ(※当時チェルシー監督)の文句は、閉ざされたドアの向こうで交わされているものと同じだ。「あの2つのビッグクラブは他のクラブにとって深刻な脅威になる。彼らはすでに強いのに、もっと投資しようとしている」と。確かに。その通りだ。チェルシーがかつてやったように。

 

 This explains why City are in a hurry again, rushing to complete deals for Laporte and Fred this January. It should not be hard to comply with a net loss of £90m, but at the current rates, significant upgrades are expensive. City spent £220m remodelling Pep Guardiola’s squad in the summer, and even bringing in £90m on transfers they were still £130m down — and £40m outside the new UEFA spending deficit.

 In the current climate, losses are not unimaginable.

 Suppose Liverpool think they need another Virgil van Dijk, because one alone isn’t working. If the going rate is the same, that is £150m on central defenders — and how might Liverpool raise £60m without losing another of their key players?

 

 Yes, selling Philippe Coutinho more than balances the books, but that was a one-off. How often do deals of that nature come around?

 Indeed, while Arsene Wenger is always up for economic sanctions on everybody else, the £90m limit may come as a shock to his employers when he leaves and the grand rebuilding begins. How much do Arsenal need to get competitive again? A lot more than £90m, that’s for certain.

 Chelsea, with their production line academy — Christian Atsu played seven minutes for Newcastle at Stamford Bridge on Sunday, which is seven minutes more than he played there in almost four years as a Chelsea player — will be rubbing their hands together. Abramovich, back in the game.

 Say what you like about the way he handles players and managers, like so many in the favoured elite, he certainly knows how to get the best out of UEFA.

 だからこそ、シティは投資を急いでいる。(中略)このペースで行けば、移籍市場で損失が出る可能性は高い。リヴァプールがもう一人ヴァージル・ヴァン・ダイクを取ろうとしたと考えてみよう。もう一人がアレだから(※ロヴレンに謝ろう)。現在の水準が続けば、CBに1億5,000万ポンドだ。リヴァプールはどうやったら、またしても重要な選手を失うことなく、6,000万ポンドを埋め合わせることができるというのだろうか?コウチーニョの売却は良い商売だったが、一過性のものだ。あんなディールが何回あるのだろうか。

 

https://media.gettyimages.com/photos/dejan-lovren-of-liverpool-arrives-before-the-premier-league-match-picture-id1047104812

 

 アーセン・ヴェンゲルは常に経済制裁を支持してきたが、ヴェンゲルが去り、グランドの再建築が始まったとき、9,000万ポンドの制約は彼の雇い主(※この記事は退団前だった)に衝撃を与えることだろう。アーセナルが再び優勝を狙えるまでにどの程度の投資が必要だろうか?9,000万ポンドを遥かに超えることは間違いない。

 アカデミーで選手を量産するチェルシーは、期待に揉み手をすることだろう。アブラモヴィッチ、出番だぞ。

 彼が選手と監督をどう扱ってきたかについては、好きなように言えば良い。他のエリートクラブと同様、彼はUEFAから最高の見返りを引き出す術を知っているはずだから。

 

www.youtube.com

マンチェスター・シティの決算が好調な件について

https://media.gettyimages.com/photos/sheikh-mansour-speaks-with-chairman-of-manchester-city-football-club-picture-id826101616

 

 リヴァプール戦はどうでしたか。私は緊張で吐きそうだったが。まあ試合の結果というのは日々移ろうもので、一喜一憂はサッカーファンの醍醐味といえど、執着しすぎるとろくなことがない。そんなときに我々の拠り所となるのは何か?そう、決算ですね。良かれ悪しかれ。

 ファイナンスから見るサッカーは面白い。なんたって、売上とキャッシュフローの区別もつかない人間が「自分が応援するクラブがいかにフィナンシャル・フェア・プレイのルールを遵守する上で優れているか」を自慢しているみたいな話を見ることができるのだ。オフサイド知らない人が審判に文句つけてるとこ、中々見れないでしょう。

 ということで、9月にシティの2017-18シーズン決算が発表されたが、これがまた結構調子が良いのである。発表以来、シティのファンサイトのみならず、Financial Timesやthe Guardianでもその好調ぶりが報道されている。実は後述するように、私は今年の決算発表に1つ大きな不満があるのだが、それは置いといて、まずは各報道記事をもとに概観してみよう。太字は翻訳。※は訳注。「今期」とは、FY2017、つまり2017-18シーズンを指す。

 

August marked the ten-year anniversary of the takeover of his highness Sheikh Mansour, on that dramatic day that saw Robinho sign for the club.

 At the time, many pundits and speculators predicted the money would dry up. The narrative was that City would potentially win a trophy or two, but then the Sheikh was to ‘get bored’ and walk away, leaving a trail of next to no business plan behind him.

 Those predictions were false. City now have a sustainable model that has a clear plan, led by Sheikh Mansour who has a dream to build a global corporation that could change the game forever, whilst ripping up and re-writing the record books on the pitch in the process.

 2018年8月で、シェイク・マンスールによるマンチェスター・シティ買収と、ドラマチックなロビーニョ買収から10年が過ぎた。当時、多くの評論家やファンはいずれ金が枯渇すると予測した。つまりこうだ。シティはもしかしたら1つか2つトロフィーを取るかもしれない。だが、いずれ首長はシティに”飽き”て、なんの未来も見えない状態に放り出すだろうと。

              予測は外れた。シティは今や、サッカー業界を永久に変えうるグローバル企業体を構築するという夢を持つシェイク・マンスールに率いられ、明確なプランを伴ったサステナブルなモデルを持つ存在になった。

www.mcfcwatch.com

 大手ファンサイト、シティ・ウォッチによる導入。まあ、そうですね。最後の飛ばしっぷりは背中が痒くなってしまうが。ちなみに以下に引用するCity Watchは、リヴァプール大学の教授、キーラン・マグワイアの解説である。

 

 On Thursday, the club released its annual report for the 2017-2018 football season, revealing that it made £500.5m in revenues — a near 6 per cent uplift from the previous season— thanks to increases in broadcasting, sponsorship and match day income. Pre-tax profit at the club rose to £10m, up from just over £1m a year earlier.

 Sheikh Mansour has invested hundreds of millions of pounds to buy superstar players to help power the team to the top of the sport, while also creating a huge training complex near the club’s stadium in the east of Manchester.

 But so-called Financial Fair Play regulations introduced in 2011, which are designed to make clubs break even, has propelled Manchester City to gain revenues beyond the largesse of its owner, in order to sustain its massive spending.

 The club has some way to go to match the profit achieved by local rival and the world’s wealthiest club Manchester United. In September 2017, it said revenues for the year to June 30 2017 had risen 12.8 per cent year on year to £581.2m. Earnings before interest, tax, depreciation and amortisation increased more than 17 per cent to £199.8m. Pre-tax profit rose 7.7 per cent to £39.2m.

 シティのFY2017決算における売上高は、5億50万ポンドに達した。前期からは6%の増加だ。税前利益は、前年の100万ポンドから、1,000万ポンドまで増加した。

 シェイク・マンスールは競技面での競争力強化のため、スーパースター獲得に数億ポンドを投資してきたと同時に、東マンチェスターのスタジアムの隣に巨大なトレーニング複合施設も建設した。だが、2011年のフィナンシャル・フェアプレイの導入で、シティはオーナーからの援助に頼らずとも巨額の(スポーツ面での)投資を続けられるよう、売上の拡大に勤しむことになった。とは言え、利益面ではまだ地元のライバル、マンチェスター・ユナイテッド(世界で最も豊かなクラブだ)に差を空けられている。FY2016(2017年6月期決算)のユナイテッドの売上は5億8,120万ポンド。税前・償却前利益は1億9,980ポンドだ。

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 2017年期決算を簡潔にまとめると、こうなる。税前利益には大した意味はないのだが(というのも、選手獲得費用を除いたあとだから。選手獲得費用はクラブのさじ加減次第だし、クラブの強化には不可欠である。製薬企業が営業利益にR&D費を加えて利益水準を比較するのと同じことだ)。

 

 

売上高

The key figure that will take the eye of fans is the simplest one: income. City sit second in the ‘table’ for income, with Manchester United’s 2017 accounts showing United as leading the way.

 It should be noted that the results from the other ‘big six’ clubs are taken from their 2017 results, and also that Arsenal and Liverpool’s figures should change due to the Champions League, be it not making the competition for the former or progressing to the final for the latter.

 Maguire explained to City Watch: “City have the fifth highest match-day income in the Premier League. A combination of not being in London, fewer tickets available to football tourists and relatively low ticket prices have the club a way behind its rivals. City fans will welcome the ticket prices of course.

 Where City have excelled is in relation to commercial income. The club is far less reliant on links with Abu Dhabi companies than a few years ago, and it is essential this area is used as much as possible. It’s common knowledge that United’s commercial department are ruthlessly efficient but City have done well to take the number two position.”

  ファンの興味はいつだって最も単純な指標、売上高(収入)に向かう。シティはマンチェスター・ユナイテッドに次ぐ2位だ(他のクラブの数値は2017年決算、つまり1年前のものであることには留意)。マグワイア教授曰く「シティのマッチデイ収入はプレミアリーグ中5位。首都ロンドンのクラブではないこと、観光客への割当が少ないこと、比較的チケット価格が安いことが組み合わさって、ライバルたちからやや低い水準にある。もちろんファンは安いのは歓迎だろうが。」「シティが強いのはコマーシャル収入(※スポンサー料やグッズ販売等)だ。シティは数年前と比較して遥かにアブダビ企業への依存度を下げており、この領域を最大限活用することは非常に重要だ。ユナイテッドのコマーシャル部門が圧倒的に効率的なのは周知のことだが、シティもこの分野で2位につけている」。

 私の上司(バルサファン)がぼやいていたが、ソリアーノは収入増の機会に目ざとい男である。上司いわく、昔は両親の分のチケットだけで幼児を連れてカンプ・ノウに入れたのに、今や乳飲み児の分までチケットを買わねばならなくなったとか。本当かどうか知らんが。そういうわけで、シティのチケット価格が安いのは、ファンへの還元という麗しい理由の他に、アーセナルリヴァプールと比べて価格を上げるとファンが入りづらいという面もあるのかもしれない。

 

 

コスト

 Being a big club obviously comes with drawbacks. City have a plethora of costs. The main costs for a club of City’s size are players, in terms of both wages and amortization, which is the cost of a transfer fee spread over a contract.

 Maguire notes: “It’s a bit difficult comparing wages to the previous season, as City in 2017 produced accounts for 13 instead of 12 months, but they rose by about 6%. Partly due to bonuses paid for winning trophies, and partly due to increasing staff numbers by about a quarter.

 Expect United’s wage bill to be close to £300m when the results are published next week. What is good from City’s point of view is that the club does have control over this area, and is paying only £52 in wages for every £100 of income, a vast improvement from a few years ago.”

 ビッグクラブであるということには欠点もついてくる。シティは巨額のコストを抱えている。シティくらいの規模のクラブにとって最も大きいコストは選手の人件費、つまり給与と、移籍金が契約期間に沿って分割して計上される無形固定資産の減価償却費だ。マグワイア曰く「シティの2017年期決算は13ヶ月分なので、単純に前期と比較することは難しいのだが、給与は前期から6%増加している。これはタイトル獲得によるボーナス支払いと、約4分の1増加したスタッフが寄与しているだろう」。「ユナイテッドの給与支払額は年間3億ポンドに近い額と予想される。シティの目線から見て良かったことは、クラブがこの分野をきちんとコントロール出来ていること、給与の割合を収入に対してたった52%に抑えているということだ。数年前から比べると大きな進歩だ。」

 

 One big insult thrown in the face of City’s fans is along the lines of: “well, City have bought the league”, implying that Pep Guardiola’s men only won because the club had an open chequebook to throw around and sign whoever they want, regardless of the price.

 Maguire says: “This is one in the eye for anyone who claims that City have bought success, as in the last five years in particular wages have been under close control.”

 ティファンが晒されるひどい侮辱の1つが「まあ、シティはリーグタイトルを金で買ってるからな」、すなわちペップ・グアルディオラのチームが優勝できたのは、価格を気にせず好きな選手を好きなだけ買える小切手を持っているからだ、というものだ。マグワイアの言を借りれば「シティがリーグタイトルを金で買ったと主張する人間に対する明らかな事実は、過去5年間において特に給与は注意深くコントロールされているということ」だ。

 

From a City perspective, one thing is particularly striking from the above graph. Around 2013, the figure suddenly drops, and remains consistent to this day.

 Perhaps coincidentally, director of football Txiki Begiristain joined the club in late 2012. The ex-Barcelona winger and director of football has ran City’s transfer business excellently and is an expert negotiator, albeit sometimes has been criticized for missing out on big targets such as Alexis Sanchez and Jorginho due to his stubborn nature.

 シティ目線で言えば、とくに素晴らしい結果が上のグラフにあらわれている。2013年以降、収入に占める給与の比率は劇的に低下し、ここ数年は落ち着いている。興味深いことに、フットボール・ダイレクターのチキ・ベギリスタインは、2012年終盤にクラブに加わった。ときにアレクシス・サンチェスジョルジーニョといった主要ターゲットを逃してきた頑固さが批判されているが、かつてバルサのウィンガーとして鳴らしたこのフットボール・ダイレクターは、シティの移籍に関する商売を非常に上手く回してきた熟練のネゴシエーターだ。

 

利益

 Maguire told City Watch: “Profit is income less costs. There are more types of profit than there are bizarre excuses from Mourinho when United lose a match. The one we’ve used here is called EBITDA and is commonly used by analysts to work out how much cash profit a business makes from day to day trading.

 City’s EBITDA profit was £125 million last season and further evidence that the club is on a solid footing. The investment in the early days of Mansour ownership saw heavy losses, but as City became established at the top table of the Premier League and regularly qualified for the Champions League these turned into profits.”

 マグワイアは語る。「利益は収入からコストを引いたものだ。利益の種類は、モウリーニョが負けたときの奇妙な言い訳より多い。ここで見ているのはEBITDA(※税引前利益に、特別損益、支払利息、および減価償却費を加算した値)で、通常の事業活動から実際にキャッシュとして生み出される利益を見るための指標として、アナリストの間では広く使われているものだ」。

 

 通常の事業活動からというのは、サッカークラブで言えば選手獲得費用と売却益を加味していない、というのが最も大きい話だ。この2つはいずれも、シーズンごとに大きく異なるし、前にも触れたが、クラブのさじ加減によるところが大きいからである。

 

 In the first five years following the takeover, City recorded a loss. Sheikh Mansour’s strategy seemed rash, as he invested heavily at the start of his reign, but with successes on the pitch, many factors contributed to the fact that City are now a profitable organization.

Today’s results are definitely pleasing from a Manchester City perspective, with the future looking bright.

Maguire concluded: “The future looks good, despite broadcast deals starting to show signs of evening out, as other revenue sources can make up for them, and effect all clubs, not just City.” 

 マンスールによる買収後の最初の5年間、シティは損失を記録していた。マンスールは政権初期に多額の投資を続けており、彼の戦略は無謀に見えたが、ピッチ上の成功など様々なファクターによって、シティは今や利益を生む企業体となった。マンチェスター・シティの目線で言えば現在の(※財務的な)成績は間違いなく好ましいものだし、未来は明るい。マグワイアはこう結論付ける。「放映権料は下がる徴候を示しているが、(シティの)将来は明るい。その他の収入源が放映権料の低下を埋め合わせることができるし、放映権料の低下はシティに限った話ではないからだ」と。

 

 

 さて、P/L、いわゆる損益計算書の話は以上だが、こうは思わなんだろうか。つまんね。と。そう、セリエAのクラブでもない限り、P/Lは退屈なのだ(ユヴェントス以外のセリエAのP/Lは非常にエキサイティングだ。B/Sはもっとだが)。サッカークラブの妙技は、どう金を調達し、どう使うかという点にある。ということで、貸借対照表(B/S)とキャッシュフロー計算書(C/S)に移ろう。

             

B/SC/S

 基本的なことは、こちらの記事と、それでも足りなければThe Swiss Rambleを参考にして頂きたい。更新が止まってしまったのは極めて残念だ。 

wegottadigitupsomehow.hatenablog.com

 安全性、すなわち事業を安定的に行っていく上での余裕度は、シティが最も強力な分野である。自己資本比率はEPL上位クラブの中で最も高く、有利子負債(ここでは下表のBank Loans and Over Drafts)はない。といっても、めっちゃ金出してくれる上に、貸付でなく株式で入れてくれる素晴らしいオーナーがいるというだけの話だが。オーナーのおかげでシティは金融機関からの借入を行う必要がなく、そのため利息支払も小さい。

  と書いた通り、シティはオーナーからの出資で資金を調達できるため、外部への有利子負債はない。まあ色々と言いたい向きはあろうが、スポーツクラブとして競争力を求めるなら、極めて有利な立場にあると言っても差し支えはあるまい。テクニカルに言えばね。

 ちなみに前期は買収以降初めてオーナーからの資金注入がなかったのだが、今期はしっかり5,800万ポンドの追加出資を敢行。隣のマンチェスター・ユナイテッドはグレイザー一家に毎期約2,000万ポンド強配当(役員報酬を除いて)で吸い取られていることを思えば、贅沢な環境だ。参考までに、元ファジアーノ岡山の代表、木村正明氏のこの記事は、地域スポーツクラブのあり方として示唆的なものであった。

www.theguardian.com

news.yahoo.co.jp

 

 B/SとC/Sを見たかった理由の1つは、去年「どこぞの国の防衛費より使ってるんですけど」と突っ込まれたほどの選手獲得を行いながら、人件費はむしろ抑えられているという事実である。が、今年はないのだ。C/Sの発表。あなたね全く、いい加減になさいよ。ファンが何を楽しみに決算を待っていると思っているのか。売上高が5億ポンドを超えた?どうでもいいぜ。ったく。まあどうでもよかないが。

 仕方ないので、TransfermarktとTransportekをもとに、ラフな計算をしてみた。トップチームでプレーした選手のみを対象にすると、今期の獲得選手はラポルト、メンディ、ウォーカー、ベルナルド、エデルソン、ダニーロの6人。放出したのは、イヘアナチョ、ボニー、ノリート、ナバス、フェルナンド、サバレタ、サニャ、クリシ、ナスリ、カバジェロ、それにコラロフ兄やんの、売りに売ったり11人である。TransportekとSports Mirchiの記事を信じ、かつ年間を50週として簡易試算すると、増えた給与は約2,800万ポンド、減った給与は約4,500万ポンド。契約更新による既存選手の昇給を除けば、むしろ給与は減ったのだ。また、選手獲得に投じた3億2,800万ポンドも、P/L上にコストとして計上されるのは契約期間按分された部分のみだから、選手売却益(Transfermarktによれば、約8,600万ポンド)を差し引けば、実質年間4,200万ポンドに収まっている。

 

f:id:sakekovic_14:20181012014345p:plain

(出所;Manchester City - Transfers 18/19 | Transfermarkt

Manchester City Players Salaries, Weekly Wages 2016-17 | Sports Mirchi

 

 スタッフの増加に対する給与総額の変化のなさは奇妙だが、データが不足しているため今回は割愛。いずれにせよ、「人件費をコントロールできている」とはこういう意味のようだ。2018/19シーズンの大きな獲得は(今の所)マーレズのみで、彼は5年契約なので単年計上される費用は約1,200万ポンド。思いの外高く売れたアンガス・ガンやデナイエルのおかげで、単年分は少なくともカバー。チェルシーやシティのようにハナから全員育てきる気がない若手育成とエンドレスなローン移籍ゲームは批判も浴びているが、現時点では効果的な策と言えよう。

 去年売り払ったベテランたちは、売り時を逃したせいで二束三文で引き取ってもらわざるを得なかったという指摘を受けていた。指摘自体は至極まっとうだが、一方で給与が高いベテランをしっかり出荷するだけでも効果はあるということだ。

 懸念としては、ローン移籍させられる選手の数に制限が課せられそうな気配があること。そうなれば、現在のように貸せるだけ貸して多少なりともスカウトからのエクスポージャーを稼ぐという手段は使いづらくなる。近年のシティの移籍戦略の転換は、そうした事情も視野に入れてのことかもしれない。

www.foxsports.com.au

 

 もう一つ私が気になっていたのは、偶発債務の存在。シティは成績や出場試合数で決まるタイプのボーナス支払額が大きいのだ。果たして結果は、昨期の1億1,100万ポンドから、1億5,892万ポンドまで約4,900ポンドの大幅増。今の所コストに大きく跳ねてはいないが、この数字を見る限り、去年加入したウォーカーやメンディたちにも同様の条件がついていた可能性は高い。グアルディオラの下で優勝するのは結構なことだが、ソリアーノやオマール・ベラダ(COO)、アンディ・ヤング(CFO)たちにとっては、世に頭痛の種は尽きまじということである。

 

 まとめると、現在のところ、スポーツクラブとしてのシティの財務面は前途洋々だ。ただし、放映権料の低下、Financial Fair Play 2.0の導入、ローン移籍ルールの改訂など懸念事項も多い。冬と来年の夏にどう動くかが見ものだろう。

 

 

(シティの決算発表は、下記URLによる)

https://annualreport2018.mancity.com/downloads/ManCity_AR17-18_Financials.pdf

https://annualreport2017.mancity.com/assets/download/Financials.pdf

マンチェスター・シティのファンでもよく分からないシティ関係者名鑑

 景気いいですよね、ヴィッセル。職場も、友人も、まあイニエスタイニエスタ。シティも「シティが成功するか否かが、プレミアリーグがこの先やっていけるかの分水嶺」とか言われてみたいラジよね。やってることは似たようなもんなんだけど。

 まあいい。ヴィッセルの話ではなかった。ところで、歴史がない、レジェンドがいないというのが、シティによく投げかけられる揶揄である。まあレジェンドはあんまりいないかもしれないが、シティに関係するおじさんたちは色々といるわけですよ。今日は皆さんに、そんなシティおじさんたちを紹介して回りたいわけだ。

 かの名探偵、シャーロック・ホームズは言いました。

 「僕は、人間の頭脳は、原理的に小さな空の屋根裏部屋のようなものだと見ている。そこに家具を選んで設置していかなければならないが、手当たり次第に、いろんながらくたを詰めこむのは、おろか者だ。最終的に、自分に役立つかもしれない知識が押し出される。(中略)脳の部屋が弾力性のある壁でできていて、ほんのわずかでも拡張できると考えるのは間違っている。知識を詰めこむたびに、知っていた何かを忘れるときが必ずやってくる。」

 読み終わった時、さぞ皆さんの頭の屋根裏部屋はがらくたでいっぱいでしょうな。

 

ノエル・ギャラガー Noel GALLAGHER

 ご存知元oasisのギタリスト。子供の頃からシティの大ファンで、暇だった十代の頃はホームもアウェーも全試合見に行っていたらしい。ジョニー・マーと並んでクラブから特別扱いされており、優勝セレモニーにも普通にいる。長らく弱い時代を見てきたからか、Twitterにいるファンよりも遥かに穏健派。

  • 自分はサッカー上手かったのか:「クロード・マケレレが出てくるまで、MFと言えば『バーニッジのギャラガー兄弟』だったもんよ」
  • ダビ・シルバについて:「うちの嫁と一発ヤラしてやってもいいくらい好き」
  • グアルディオラについて:「ファッキン・メサイアだろ。あとサッカー界で一番オシャレだよな。誇りに思うね」

 

リアム・ギャラガー Liam GALLAGHER

 oasisの弟の方。彼もシティファンではあるが、兄貴と比べるとまともなことを喋っている機会自体が少ないので、コメントも比較的少なめ。2014年に優勝したときは完全にラリったテンションで「ペレグリーニは最高だよ。おお。最高。へへ。養子になりてえ」と言っていた。 

https://media.gettyimages.com/photos/manchester-city-v-everton-premier-league-etihad-stadium-liam-is-by-picture-id907214622

 

ジョニー・マー Johnny MARR

 The Smithsのギタリスト。よくノエルと一緒に観戦している。

 

ギャリー・クック Garry COOK

 2008年から2011年までシティのCEO。元はNikeで働いていた。タクシンに雇われ、マーク・ヒューズを監督に据え、マンスールが来て、という激動の時代を巧みに切り抜けたが、「海外で売っていきたいのに、スター選手がリチャード・ダンです、じゃあねえ」とか、現場がわかってないホワイトカラーっぽさもバリバリ出ていた。

https://media.gettyimages.com/photos/chairman-designate-of-manchester-city-khaldoon-al-mubarak-chats-with-picture-id82931722

 

タクシン・チナワット THAKSIN Shinawatra

 タイの元首相。2006年に母国を追われ、翌年シティを買収してオーナーに。そこそこの金持ちで、そこそこに夢は見させてもらったが、タイの若手を3人一気にシティに突っ込んだり、買える“大物”もエラーノペトロフが限界だったり、マンスールと比べると典型的なよくわかってないアジア人オーナーの域は出なかったというしかあるまい。まあ、あのシーズン楽しかったですけどね。現在も亡命中。

https://media.gettyimages.com/photos/of-manchest-city-garry-cook-and-manchester-city-owner-thaksin-look-picture-id82804203

 

ティーラシン・デーンダー TEERASIL Dangda

 サンフレッチェ広島で活躍中らしい、タイ代表の名選手。10代の頃、タクシンに連れられてシティに加入。記者会見での何がなんだか顔が懐かしい。オーナー交代で即放出されたが、本人曰く良い経験ではあったらしい。Wikipedia情報だが。

https://media.gettyimages.com/photos/teerasil-dangda-of-thailand-and-stanislav-lobotka-of-slovakia-compete-picture-id937774162

 

ケヴィン・キーガン Kevin KEEGAN

 リヴァプールが欧州最強だった時代の主力ストライカーで、バロンドールも2回獲ってるスーパースター。監督としては、魅惑の攻めダルマサッカーと誰でも買いたがる欲しい欲しい病で知られた。

2001年にシティの監督に就任し、シーズン108得点の圧倒的な攻撃力で優勝。チームをプレミア昇格に導いたが、フロントと揉めたとか何とかで辞めた。シティに限らず、どこ行っても良いサッカーはするが、フロントと揉めて途中で投げ出すちょっと困った人でもあった。ベンチではおばさんのようにはしゃぐ。

https://media.gettyimages.com/photos/apr-2002-kevin-keegan-of-manchester-city-celebrates-darren-huckerbys-picture-id1002419

 

ロベルト・マンチーニ Roberto MANCINI

 元イタリア代表FW。通称マンチョ。インテルでリーグを3連覇したのち、アラブ人に買われて金が入ったシティに請われて監督就任。シティでは堅い守備とシルバ任せの攻撃で44年ぶりのプレミア制覇を達成。カッコつけ癖があり、「自転車で通勤する爽やかな俺」を演出するために途中まで車で来てからわざわざ自転車に乗り換えていたという噂がある。

 優勝した翌シーズン、2位に終わったことであっけなくクビに。マリノスのあれやこれやでシティが「非情な成金」と叩かれていたことがあったが、個人的にはシティほど契約にぬるいクラブもそうなくて、こんなにあっさりクビを切ったのはマンチョくらいではなかろうか。まあ確かに監督には多少厳しいときもあったかもしれないが、選手には甘い。ぬるぬる。最後の方は選手から総スカンだったらしいが、優勝したので今でもシティファンからの人気は高い。

https://media.gettyimages.com/photos/trainer-roberto-mancini-einzelbild-aktion-gestik-04082012-manchester-picture-id549517861

 

デイヴィッド・ジェイムズ David JAMES

 身体能力任せのテキトーなゴールキーピングを武器に、プロ通算826試合に出場した元イングランド代表。2004年から3シーズン在籍。実は30代後半になると身体能力が落ち着いてきて結構良いGKになっていたのだが、それを成し遂げたシティの話は今やほとんどしてくれない。まあ残留争いばっかりだったし、その後ポーツマスでタイトルも獲ったしな。

 父親はジャマイカでギャラリーを経営しているという、イングランドのサッカー選手には珍しい中産階級出身。本人も、人間離れした美しい骨格でちょくちょくアルマーニのモデルをやっていた。2014年に破産。

https://media.gettyimages.com/photos/barclays-premier-league-manchester-city-v-west-bromwich-albion-etihad-picture-id907122342

 

リチャード・ダン Richard DUNNE

 「もし各クラブがそれぞれのレジェンドを監督にしたら?マンUギグスチェルシーランパードアーセナルはアンリ、リヴァプールはジェラード、シティは・・・・リチャード・ダンwwww」というTwitterでたまに流れるジョークがあるが、その人。2000年から約10年に渡ってシティのDFラインを支えた元アイルランド代表のCB。

 全盛期には、スペースさえなければロナウドだろうが何だろうがバシバシ止めており、前述の本格的なレジェンドとは比べるべくもないが、シティにとっては2000年代最高のCBであり、不可欠の存在であった。一方で見た目がいかにも鈍くさいというか、農民Aみたいな趣で、その辺も不利だった気がする。OGと退場の退場のプレミアリーグ記録も持ってるし。引退後は解説者に転身。

https://media.gettyimages.com/photos/manchester-city-v-manchester-united-premier-league-etihad-stadium-picture-id907259750

 

ソン・チーハイ SUN Jihai孙继

 日本語だと孫継海。2000年代前半の弱かった中国が生んだ、数少ない国際的サッカー選手。攻撃に長けた右SBで、ショーン・ライト=フィリップスと組んだ右サイドの破壊力は中堅クラブとしては相当にありがたいものであった。後年はレギュラーから外れるが、求めに応じて左サイドバックやアンカーもこなした。

 引退後はBeijing Haiqiu Technologyという「スポーツ・ソーシャルメディア・プラットフォーム」なるものを設立。イギリスのフェンウェイ・ゲームズというスタートアップと組んで、SnapPlayというデータ分析やベッティングができる携帯アプリをリリースしている。らしい。あのテンセントからも出資を受けているとか。ホワイトカラー顔だよなとは、選手のときから思っていた。

 

https://media.gettyimages.com/photos/chinas-president-xi-jinping-and-britains-prime-minister-david-cameron-picture-id493896838

 

マイカ・リチャーズ Micah RICHARDS

 oasisの隠れた名曲、「Where did it all go wrong」を聴きながら思い出を振り返りたい、アカデミー育ちの右SB兼CB。デビュー後、あっという間にイングランド代表にも選ばれ、18歳にしてロッベンと渡り合った逸材。2007/08シーズンはダンとCBでコンビを組んで序盤だけ大活躍。リーグの月間MVPにも選ばれていた。

 その後は右サイドバックに再コンバートされ、一時期はサバレタを抑えてレギュラーも張っていた。しかし2012年頃からみるみる筋肉が肥大し始め、比例するように怪我も増加。ほぼ常にリハビリしている選手になってしまった。再起をかけたアストン・ヴィラでは、レスコットとの元シティCBコンビで無事名門ヴィラを降格させ、その後の2年間で試合出場はわずか3回。もはや職業も定かではない状態である。

 人格としては底抜けに明るく、すんごいバカ。

 

ディートマー・ハマン Dietmar HAMANN

 リヴァプールでCLを制したドイツ人の名ボランチ。日韓W杯にもレギュラーで出ていたので覚えている人も多いかもしれない。すっかりジジイになってからシティに来たが、熟練のコスいファールで中盤の守備を安定させた。実はボルトンに行くはずだったのだが、シャツ持って撮影までしてからシティに乗り換えたらしい。この故事はプレミアリーグファンに「移籍は試合に出るまで眉唾」ということわざとなって深く刻まれている。

 基本的にはリヴァプールOBとしてのコメントが多いが、たまに喋ったと思ったら「スターリングが移籍するのも仕方ないっしょ」とか、「カリウスへの同情も限度があるっしょ」とか、空気を読まない直球ばかり投げてくる。

 

ナイジェル・デ・ヨング Nigel DE JONG

 人呼んでビッグ・ナイジェ。マンチーニ政権下のシティで、ヤヤ・トゥレギャレス・バリーとともに中盤を支配していたギャングスタ。汚れ仕事は全部やる。彼を手放したのが、マンチーニの運の尽きだったかもしれない。

https://media.gettyimages.com/photos/nigel-de-jong-of-manchester-city-celebrates-victory-after-the-fa-picture-id150227485

 

マルク=ヴィヴィアン・フォエ Marc-Vivien FOÉ

 不屈のライオンことカメルーン代表の主力だった長身のボランチ。シティでも中盤からの攻め上がりで得点をそこそこ量産し、チームに欠かせない主力だった。が、2003年夏のコンフェデ杯準決勝の試合中、心臓発作に倒れ夭折。ライオンは死なず、ただ眠るのみである。

https://media.gettyimages.com/photos/marcvivien-foe-of-manchester-city-celebrates-his-second-goal-during-picture-id1701519

 

ショーン・ライト=フィリップス Shaun WRIGHT-PHILLIPS

 アーセナルの名選手、イアン・ライトの息子。と言っても再婚相手の連れ子なので血はつながっていないが。天性のバネとスプリント力で、2000年代初頭のシティにおいてほぼ唯一の「イングランド代表がガチで狙える」選手として人気があった。2004/05シーズンの活躍でチェルシーに引き抜かれたが、実はモウリーニョが欲しがったわけではなかったらしく、見事に干されていた。実はドリブル自体は大して上手ではなく、長いスルーパスときれいなミドルの選手だったと思うので、誰か真ん中で使ってほしかったところ。ロビーニョ曰く、すこぶるいい人らしい。

 

https://media.gettyimages.com/photos/barclays-premier-league-manchester-city-training-carrington-training-picture-id906894414

 

アリ・ベナルビア Ali BENARBIA

 マーレズ以前にもいた、シティのアルジェリア人。元フランスリーグMVP。シティに来たのは32歳にもなってからだったが、熟練のテクニックでファンからの人気はすこぶる高かった。プレミアに昇格した2002/03シーズンはベルコヴィッチ、フォエ、バートンと組んだ魅力の中盤で残留に貢献。しかしプレミアのスピードはもはや老体にはきつかったということで、「ワタシ引退シマース・・・ホントアリガート・・・」という感動のお別れを発表。その数日後にカタールのクラブに行って盛大にずっこけた記憶がある。 

https://media.gettyimages.com/photos/ali-benarbia-of-manchester-city-in-action-during-the-fa-barclaycard-picture-id935184558

            

エヤル・ベルコヴィッチ Eyal BERKOVIC

 イスラエルの鬼才。中盤前目をフラフラと回遊しつつ、少ないタッチでボールを捌き、急所にスルーパスを放つ、という、2010年代ではもう少なくなってしまった古典的パサーだった。今ではシルバとデ・ブライネがシティの2枚看板だが、ベルコヴィッチとベナルビアの中盤もそれはそれは美麗なものだったのじゃよ。

 シティが昇格した2002/03シーズンはクラブのファンマガジンでMVPに選出されるも、翌シーズンに監督のキーガンと揉めて退団。実はまんゆのファンらしい。

https://media.gettyimages.com/photos/eyal-berkovic-of-man-city-celebrates-shaun-goaters-goalduring-the-v-picture-id1679272

 

ゲオルギ・キンクラーゼ Georgi KINKLADZE

 未だにプレミアファンのブログなどではたまに回顧される、グルジアが生んだ変態ドリブル男。メッシのようなドリブルで3,4人片付けてくれるが、それ以外には全く興味がなく、スーパーゴールを決める代わりにチームがハチャメチャになるという歩く爆弾。私が見たときはもうシティを出てダービー・カウンティでプレーしていたが、確かにドリブルだけは最高に巧かった。

 元oasisのノエルは彼の大ファンなのだが、ノエル曰く「あいつの最初の試合を見て思ったね。こりゃ俺たち、CLで優勝するか、4部に落ちるかどっちかだなって」という選手だった。まあ後者だったわけだが。

 降格後も、なんとバルサのオファーを断ってシティでプレーした結果、チームは3部にまで落ちたため、泣く泣くアヤックスに移籍。未だカルトヒーローとしてファンの寵愛を受けている。

 

トレヴァー・シンクレア Trevor SINCLAIR

 元イングランド代表のウィング。2000年代前半から中盤に在籍。現役時代は数年に一回世界一すごいアクロバットなゴールを決める選手だった。代表にはあまり縁がなかったが、日韓W杯では棚ぼたでレギュラーを獲って活躍。全盛期がシティではなかった割には、引退後はシティOB枠で結構コメントを出している。多分、「あっ、若手のシティOB枠空いてる!!」と気づいたのではないか。けだし慧眼であった。

 

スティーヴン・アイルランド Stephen IRELAND

 2000年代中盤の数少ない希望だったリトル・ブッダ。本当に、最高だったんですよこの人は。中盤を彷徨いながら少ないタッチで決定機を作るプレースタイルで、より行動範囲が広いベルコヴィッチという風情の攻撃的MF。前線への飛び出しも巧く、シティがアブダビ化した最初のシーズンは合計13得点の大活躍でクラブMVPに選出されていた。リチャーズとともに新シティの旗頭となることを期待されていたが、翌シーズン就任したマンチーニにはさっぱり評価されず、シティを退団。その後はコンディションが整わず、すっかり終わった人となってしまった。

 アイルランド代表でも期待の若手だったが、「婆ちゃんが危篤なので」という理由で2007年の代表戦直前に離脱。「実は死んでない」「いや、母方の婆さんだ」「何年も前に亡くなっとる」と大騒ぎになった後、彼女が流産したので抜け出した、ということが判明。最初からそう言っておけば良かったのではないかという気もするが、その後はトラパットーニにも信用されず、こっちの方でも少々不幸なキャリアを送っている。

https://media.gettyimages.com/photos/stephen-ireland-of-manchester-city-plays-the-ball-against-sporting-picture-id103065344

 

アダム・ジョンソン Adam JOHNSON

 ニューカッスルミドルズブラサンダーランドと北東部の大手クラブを全て経験した左利きのウィンガー。2010年から2012年に在籍。私はこの人のことを本当の天才だと思っておったわけですよ。ドリブル自体にそんなに破壊力があるわけじゃないんだけど、とにかくパスにしてもシュートにしても、ボールの通し方は天下一品だった。が、生活態度が改まらずサンダーランドに放出された後、未成年への淫行で有罪判決。現在収監中。サッカー選手ですらなくなってしまった。

https://media.gettyimages.com/photos/marc-albrighton-of-aston-villa-and-adam-johnson-of-manchester-city-picture-id138807071

 

ポール・ディコフ Paul DICKOV

 シティが3部まで落ちていた90年代後半のカルトヒーロー。 「シティがクソ弱かったときお前らはどこにいたんだよwww」(=強くなってからファンになったんだろニワカ)という相手ファンからのお決まりの野次に対して、「俺プレーしてたwww」という必殺の返しギャグを持つ男。

 1998/99シーズンの2部昇格プレーオフ、ロスタイム5分に起死回生の同点ゴールを決めてシティを救出。後にアグエロが優勝決定ゴールを決めたことで若干印象が薄れた気配もあるが、それ以前には「シティの歴代最重要ゴール」はそれだったという。ちょこまかした鬱陶しいプレースタイルで、相手ファンから「ペスト」と呼ばれるという絶大な人気を誇った。 

 

ショーン・ゴータ― Shaun GOATER

 元バミューダ諸島代表。こちらも同じく90年代後半にカルト的な人気を誇ったストライカー。泥臭さしかないプレーでキャリア通算200点越えの偉人。シティが最後にプレミアに昇格した2002/03シーズン、マンチェスター・ダービーで2点を叩き込んで男を上げた。

https://media.gettyimages.com/photos/shaun-goater-of-manchester-city-acknowledges-the-crowd-after-playing-picture-id2000351 

ニコラ・アネルカ Nicolas ANELKA

 プレミアに昇格して意気上がっていたシティと、レアル・マドリー、PSGで失敗してキャリア立て直しを図っていたアネルカの利害が一致し、2002年に加入。さすがワールドクラスというテクニックと興味なさそうな態度で、残留争いをするチームながら2年でリーグ戦30得点獲った功労者。2004年にキーガンと揉めたため、あっけなくトルコへ旅立った。そのあと流石にあちこち行き過ぎて、もはやシティのOB感は皆無に等しいが、アネルカなくして今の成功はなかったかもしれない。

https://media.gettyimages.com/photos/nicolas-anelka-of-manchester-city-celebrates-his-2nd-goal-during-the-picture-id51231179

 

クレイグ・ベラミー Craig BELLAMY

 快足で知られた元ウェールズ代表。見た目通りの半グレ男。力は確かだったが、どこに行ってもしょうもない喧嘩と犯罪ばっかり起こすので、ノリッジ、コヴェントリー、ニューカッスルセルティックブラックバーンリヴァプールウェストハム、シティと放浪を続けていた。その割にはシエラレオネの内戦に心を痛めてチャリティとかやるんだよな。結構なことではあるが、もっと心配すべきことがあった気もする。チームメートの頭をゴルフクラブで叩かないとか。

 シティに来たのは30台だったが、左ウィングとして新境地を開拓。意外とセットピースも巧く、アブダビ初期のシティを支えた1人と言えよう。

 引退後、あんまりシティ絡みのコメントは出さないが、たまに独自の情報網で変わった話を持ってくる。