マンチェスター・シティのファンでもよく分からないシティ関係者名鑑

 景気いいですよね、ヴィッセル。職場も、友人も、まあイニエスタイニエスタ。シティも「シティが成功するか否かが、プレミアリーグがこの先やっていけるかの分水嶺」とか言われてみたいラジよね。やってることは似たようなもんなんだけど。

 まあいい。ヴィッセルの話ではなかった。ところで、歴史がない、レジェンドがいないというのが、シティによく投げかけられる揶揄である。まあレジェンドはあんまりいないかもしれないが、シティに関係するおじさんたちは色々といるわけですよ。今日は皆さんに、そんなシティおじさんたちを紹介して回りたいわけだ。

 かの名探偵、シャーロック・ホームズは言いました。

 「僕は、人間の頭脳は、原理的に小さな空の屋根裏部屋のようなものだと見ている。そこに家具を選んで設置していかなければならないが、手当たり次第に、いろんながらくたを詰めこむのは、おろか者だ。最終的に、自分に役立つかもしれない知識が押し出される。(中略)脳の部屋が弾力性のある壁でできていて、ほんのわずかでも拡張できると考えるのは間違っている。知識を詰めこむたびに、知っていた何かを忘れるときが必ずやってくる。」

 読み終わった時、さぞ皆さんの頭の屋根裏部屋はがらくたでいっぱいでしょうな。

 

ノエル・ギャラガー Noel GALLAGHER

 ご存知元oasisのギタリスト。子供の頃からシティの大ファンで、暇だった十代の頃はホームもアウェーも全試合見に行っていたらしい。ジョニー・マーと並んでクラブから特別扱いされており、優勝セレモニーにも普通にいる。長らく弱い時代を見てきたからか、Twitterにいるファンよりも遥かに穏健派。

  • 自分はサッカー上手かったのか:「クロード・マケレレが出てくるまで、MFと言えば『バーニッジのギャラガー兄弟』だったもんよ」
  • ダビ・シルバについて:「うちの嫁と一発ヤラしてやってもいいくらい好き」
  • グアルディオラについて:「ファッキン・メサイアだろ。あとサッカー界で一番オシャレだよな。誇りに思うね」

 

リアム・ギャラガー Liam GALLAGHER

 oasisの弟の方。彼もシティファンではあるが、兄貴と比べるとまともなことを喋っている機会自体が少ないので、コメントも比較的少なめ。2014年に優勝したときは完全にラリったテンションで「ペレグリーニは最高だよ。おお。最高。へへ。養子になりてえ」と言っていた。 

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ジョニー・マー Johnny MARR

 The Smithsのギタリスト。よくノエルと一緒に観戦している。

 

ギャリー・クック Garry COOK

 2008年から2011年までシティのCEO。元はNikeで働いていた。タクシンに雇われ、マーク・ヒューズを監督に据え、マンスールが来て、という激動の時代を巧みに切り抜けたが、「海外で売っていきたいのに、スター選手がリチャード・ダンです、じゃあねえ」とか、現場がわかってないホワイトカラーっぽさもバリバリ出ていた。

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タクシン・チナワット THAKSIN Shinawatra

 タイの元首相。2006年に母国を追われ、翌年シティを買収してオーナーに。そこそこの金持ちで、そこそこに夢は見させてもらったが、タイの若手を3人一気にシティに突っ込んだり、買える“大物”もエラーノペトロフが限界だったり、マンスールと比べると典型的なよくわかってないアジア人オーナーの域は出なかったというしかあるまい。まあ、あのシーズン楽しかったですけどね。現在も亡命中。

https://media.gettyimages.com/photos/of-manchest-city-garry-cook-and-manchester-city-owner-thaksin-look-picture-id82804203

 

ティーラシン・デーンダー TEERASIL Dangda

 サンフレッチェ広島で活躍中らしい、タイ代表の名選手。10代の頃、タクシンに連れられてシティに加入。記者会見での何がなんだか顔が懐かしい。オーナー交代で即放出されたが、本人曰く良い経験ではあったらしい。Wikipedia情報だが。

https://media.gettyimages.com/photos/teerasil-dangda-of-thailand-and-stanislav-lobotka-of-slovakia-compete-picture-id937774162

 

ケヴィン・キーガン Kevin KEEGAN

 リヴァプールが欧州最強だった時代の主力ストライカーで、バロンドールも2回獲ってるスーパースター。監督としては、魅惑の攻めダルマサッカーと誰でも買いたがる欲しい欲しい病で知られた。

2001年にシティの監督に就任し、シーズン108得点の圧倒的な攻撃力で優勝。チームをプレミア昇格に導いたが、フロントと揉めたとか何とかで辞めた。シティに限らず、どこ行っても良いサッカーはするが、フロントと揉めて途中で投げ出すちょっと困った人でもあった。ベンチではおばさんのようにはしゃぐ。

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ロベルト・マンチーニ Roberto MANCINI

 元イタリア代表FW。通称マンチョ。インテルでリーグを3連覇したのち、アラブ人に買われて金が入ったシティに請われて監督就任。シティでは堅い守備とシルバ任せの攻撃で44年ぶりのプレミア制覇を達成。カッコつけ癖があり、「自転車で通勤する爽やかな俺」を演出するために途中まで車で来てからわざわざ自転車に乗り換えていたという噂がある。

 優勝した翌シーズン、2位に終わったことであっけなくクビに。マリノスのあれやこれやでシティが「非情な成金」と叩かれていたことがあったが、個人的にはシティほど契約にぬるいクラブもそうなくて、こんなにあっさりクビを切ったのはマンチョくらいではなかろうか。まあ確かに監督には多少厳しいときもあったかもしれないが、選手には甘い。ぬるぬる。最後の方は選手から総スカンだったらしいが、優勝したので今でもシティファンからの人気は高い。

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デイヴィッド・ジェイムズ David JAMES

 身体能力任せのテキトーなゴールキーピングを武器に、プロ通算826試合に出場した元イングランド代表。2004年から3シーズン在籍。実は30代後半になると身体能力が落ち着いてきて結構良いGKになっていたのだが、それを成し遂げたシティの話は今やほとんどしてくれない。まあ残留争いばっかりだったし、その後ポーツマスでタイトルも獲ったしな。

 父親はジャマイカでギャラリーを経営しているという、イングランドのサッカー選手には珍しい中産階級出身。本人も、人間離れした美しい骨格でちょくちょくアルマーニのモデルをやっていた。2014年に破産。

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リチャード・ダン Richard DUNNE

 「もし各クラブがそれぞれのレジェンドを監督にしたら?マンUギグスチェルシーランパードアーセナルはアンリ、リヴァプールはジェラード、シティは・・・・リチャード・ダンwwww」というTwitterでたまに流れるジョークがあるが、その人。2000年から約10年に渡ってシティのDFラインを支えた元アイルランド代表のCB。

 全盛期には、スペースさえなければロナウドだろうが何だろうがバシバシ止めており、前述の本格的なレジェンドとは比べるべくもないが、シティにとっては2000年代最高のCBであり、不可欠の存在であった。一方で見た目がいかにも鈍くさいというか、農民Aみたいな趣で、その辺も不利だった気がする。OGと退場の退場のプレミアリーグ記録も持ってるし。引退後は解説者に転身。

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ソン・チーハイ SUN Jihai孙继

 日本語だと孫継海。2000年代前半の弱かった中国が生んだ、数少ない国際的サッカー選手。攻撃に長けた右SBで、ショーン・ライト=フィリップスと組んだ右サイドの破壊力は中堅クラブとしては相当にありがたいものであった。後年はレギュラーから外れるが、求めに応じて左サイドバックやアンカーもこなした。

 引退後はBeijing Haiqiu Technologyという「スポーツ・ソーシャルメディア・プラットフォーム」なるものを設立。イギリスのフェンウェイ・ゲームズというスタートアップと組んで、SnapPlayというデータ分析やベッティングができる携帯アプリをリリースしている。らしい。あのテンセントからも出資を受けているとか。ホワイトカラー顔だよなとは、選手のときから思っていた。

 

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マイカ・リチャーズ Micah RICHARDS

 oasisの隠れた名曲、「Where did it all go wrong」を聴きながら思い出を振り返りたい、アカデミー育ちの右SB兼CB。デビュー後、あっという間にイングランド代表にも選ばれ、18歳にしてロッベンと渡り合った逸材。2007/08シーズンはダンとCBでコンビを組んで序盤だけ大活躍。リーグの月間MVPにも選ばれていた。

 その後は右サイドバックに再コンバートされ、一時期はサバレタを抑えてレギュラーも張っていた。しかし2012年頃からみるみる筋肉が肥大し始め、比例するように怪我も増加。ほぼ常にリハビリしている選手になってしまった。再起をかけたアストン・ヴィラでは、レスコットとの元シティCBコンビで無事名門ヴィラを降格させ、その後の2年間で試合出場はわずか3回。もはや職業も定かではない状態である。

 人格としては底抜けに明るく、すんごいバカ。

 

ディートマー・ハマン Dietmar HAMANN

 リヴァプールでCLを制したドイツ人の名ボランチ。日韓W杯にもレギュラーで出ていたので覚えている人も多いかもしれない。すっかりジジイになってからシティに来たが、熟練のコスいファールで中盤の守備を安定させた。実はボルトンに行くはずだったのだが、シャツ持って撮影までしてからシティに乗り換えたらしい。この故事はプレミアリーグファンに「移籍は試合に出るまで眉唾」ということわざとなって深く刻まれている。

 基本的にはリヴァプールOBとしてのコメントが多いが、たまに喋ったと思ったら「スターリングが移籍するのも仕方ないっしょ」とか、「カリウスへの同情も限度があるっしょ」とか、空気を読まない直球ばかり投げてくる。

 

ナイジェル・デ・ヨング Nigel DE JONG

 人呼んでビッグ・ナイジェ。マンチーニ政権下のシティで、ヤヤ・トゥレギャレス・バリーとともに中盤を支配していたギャングスタ。汚れ仕事は全部やる。彼を手放したのが、マンチーニの運の尽きだったかもしれない。

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マルク=ヴィヴィアン・フォエ Marc-Vivien FOÉ

 不屈のライオンことカメルーン代表の主力だった長身のボランチ。シティでも中盤からの攻め上がりで得点をそこそこ量産し、チームに欠かせない主力だった。が、2003年夏のコンフェデ杯準決勝の試合中、心臓発作に倒れ夭折。ライオンは死なず、ただ眠るのみである。

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ショーン・ライト=フィリップス Shaun WRIGHT-PHILLIPS

 アーセナルの名選手、イアン・ライトの息子。と言っても再婚相手の連れ子なので血はつながっていないが。天性のバネとスプリント力で、2000年代初頭のシティにおいてほぼ唯一の「イングランド代表がガチで狙える」選手として人気があった。2004/05シーズンの活躍でチェルシーに引き抜かれたが、実はモウリーニョが欲しがったわけではなかったらしく、見事に干されていた。実はドリブル自体は大して上手ではなく、長いスルーパスときれいなミドルの選手だったと思うので、誰か真ん中で使ってほしかったところ。ロビーニョ曰く、すこぶるいい人らしい。

 

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アリ・ベナルビア Ali BENARBIA

 マーレズ以前にもいた、シティのアルジェリア人。元フランスリーグMVP。シティに来たのは32歳にもなってからだったが、熟練のテクニックでファンからの人気はすこぶる高かった。プレミアに昇格した2002/03シーズンはベルコヴィッチ、フォエ、バートンと組んだ魅力の中盤で残留に貢献。しかしプレミアのスピードはもはや老体にはきつかったということで、「ワタシ引退シマース・・・ホントアリガート・・・」という感動のお別れを発表。その数日後にカタールのクラブに行って盛大にずっこけた記憶がある。 

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エヤル・ベルコヴィッチ Eyal BERKOVIC

 イスラエルの鬼才。中盤前目をフラフラと回遊しつつ、少ないタッチでボールを捌き、急所にスルーパスを放つ、という、2010年代ではもう少なくなってしまった古典的パサーだった。今ではシルバとデ・ブライネがシティの2枚看板だが、ベルコヴィッチとベナルビアの中盤もそれはそれは美麗なものだったのじゃよ。

 シティが昇格した2002/03シーズンはクラブのファンマガジンでMVPに選出されるも、翌シーズンに監督のキーガンと揉めて退団。実はまんゆのファンらしい。

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ゲオルギ・キンクラーゼ Georgi KINKLADZE

 未だにプレミアファンのブログなどではたまに回顧される、グルジアが生んだ変態ドリブル男。メッシのようなドリブルで3,4人片付けてくれるが、それ以外には全く興味がなく、スーパーゴールを決める代わりにチームがハチャメチャになるという歩く爆弾。私が見たときはもうシティを出てダービー・カウンティでプレーしていたが、確かにドリブルだけは最高に巧かった。

 元oasisのノエルは彼の大ファンなのだが、ノエル曰く「あいつの最初の試合を見て思ったね。こりゃ俺たち、CLで優勝するか、4部に落ちるかどっちかだなって」という選手だった。まあ後者だったわけだが。

 降格後も、なんとバルサのオファーを断ってシティでプレーした結果、チームは3部にまで落ちたため、泣く泣くアヤックスに移籍。未だカルトヒーローとしてファンの寵愛を受けている。

 

トレヴァー・シンクレア Trevor SINCLAIR

 元イングランド代表のウィング。2000年代前半から中盤に在籍。現役時代は数年に一回世界一すごいアクロバットなゴールを決める選手だった。代表にはあまり縁がなかったが、日韓W杯では棚ぼたでレギュラーを獲って活躍。全盛期がシティではなかった割には、引退後はシティOB枠で結構コメントを出している。多分、「あっ、若手のシティOB枠空いてる!!」と気づいたのではないか。けだし慧眼であった。

 

スティーヴン・アイルランド Stephen IRELAND

 2000年代中盤の数少ない希望だったリトル・ブッダ。本当に、最高だったんですよこの人は。中盤を彷徨いながら少ないタッチで決定機を作るプレースタイルで、より行動範囲が広いベルコヴィッチという風情の攻撃的MF。前線への飛び出しも巧く、シティがアブダビ化した最初のシーズンは合計13得点の大活躍でクラブMVPに選出されていた。リチャーズとともに新シティの旗頭となることを期待されていたが、翌シーズン就任したマンチーニにはさっぱり評価されず、シティを退団。その後はコンディションが整わず、すっかり終わった人となってしまった。

 アイルランド代表でも期待の若手だったが、「婆ちゃんが危篤なので」という理由で2007年の代表戦直前に離脱。「実は死んでない」「いや、母方の婆さんだ」「何年も前に亡くなっとる」と大騒ぎになった後、彼女が流産したので抜け出した、ということが判明。最初からそう言っておけば良かったのではないかという気もするが、その後はトラパットーニにも信用されず、こっちの方でも少々不幸なキャリアを送っている。

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アダム・ジョンソン Adam JOHNSON

 ニューカッスルミドルズブラサンダーランドと北東部の大手クラブを全て経験した左利きのウィンガー。2010年から2012年に在籍。私はこの人のことを本当の天才だと思っておったわけですよ。ドリブル自体にそんなに破壊力があるわけじゃないんだけど、とにかくパスにしてもシュートにしても、ボールの通し方は天下一品だった。が、生活態度が改まらずサンダーランドに放出された後、未成年への淫行で有罪判決。現在収監中。サッカー選手ですらなくなってしまった。

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ポール・ディコフ Paul DICKOV

 シティが3部まで落ちていた90年代後半のカルトヒーロー。 「シティがクソ弱かったときお前らはどこにいたんだよwww」(=強くなってからファンになったんだろニワカ)という相手ファンからのお決まりの野次に対して、「俺プレーしてたwww」という必殺の返しギャグを持つ男。

 1998/99シーズンの2部昇格プレーオフ、ロスタイム5分に起死回生の同点ゴールを決めてシティを救出。後にアグエロが優勝決定ゴールを決めたことで若干印象が薄れた気配もあるが、それ以前には「シティの歴代最重要ゴール」はそれだったという。ちょこまかした鬱陶しいプレースタイルで、相手ファンから「ペスト」と呼ばれるという絶大な人気を誇った。 

 

ショーン・ゴータ― Shaun GOATER

 元バミューダ諸島代表。こちらも同じく90年代後半にカルト的な人気を誇ったストライカー。泥臭さしかないプレーでキャリア通算200点越えの偉人。シティが最後にプレミアに昇格した2002/03シーズン、マンチェスター・ダービーで2点を叩き込んで男を上げた。

https://media.gettyimages.com/photos/shaun-goater-of-manchester-city-acknowledges-the-crowd-after-playing-picture-id2000351 

ニコラ・アネルカ Nicolas ANELKA

 プレミアに昇格して意気上がっていたシティと、レアル・マドリー、PSGで失敗してキャリア立て直しを図っていたアネルカの利害が一致し、2002年に加入。さすがワールドクラスというテクニックと興味なさそうな態度で、残留争いをするチームながら2年でリーグ戦30得点獲った功労者。2004年にキーガンと揉めたため、あっけなくトルコへ旅立った。そのあと流石にあちこち行き過ぎて、もはやシティのOB感は皆無に等しいが、アネルカなくして今の成功はなかったかもしれない。

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クレイグ・ベラミー Craig BELLAMY

 快足で知られた元ウェールズ代表。見た目通りの半グレ男。力は確かだったが、どこに行ってもしょうもない喧嘩と犯罪ばっかり起こすので、ノリッジ、コヴェントリー、ニューカッスルセルティックブラックバーンリヴァプールウェストハム、シティと放浪を続けていた。その割にはシエラレオネの内戦に心を痛めてチャリティとかやるんだよな。結構なことではあるが、もっと心配すべきことがあった気もする。チームメートの頭をゴルフクラブで叩かないとか。

 シティに来たのは30台だったが、左ウィングとして新境地を開拓。意外とセットピースも巧く、アブダビ初期のシティを支えた1人と言えよう。

 引退後、あんまりシティ絡みのコメントは出さないが、たまに独自の情報網で変わった話を持ってくる。

 

マンチェスター・シティがよく分からない人向けの2018/19選手名鑑 (後編)

MF

18 フェイビアン・デルフ Fabian DELPH***

 左利きの守備的MF。シティに加入して2年、去年の夏まではさっぱり存在感がなかったが、メンディ不在で左サイドバックにコンバートされ、一気にレギュラー格まで昇格した。

 もともとキープ力には定評があったが、中央に絞ってきて組み立てに絡むというシティのSB特有の役割が能力にハマっており、大概のプレスは剥がせてしまう。ボケっとした顔の割に、声が低かったり、売られた喧嘩は買うタイプだったりして、意外と怖い。 

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25 フェルナンジーニョ FERNANDINHO

 安心安全、潰しもできればパスも捌ける上、ドリブルで持ち上がったり裏に抜け出したり、更には空中戦も強いという万能ボランチ。表情を変えずに小汚いファウルを犯すところはサイコパス感があってよろしい。

 昨年はアンカーとして不動の地位を築いた。W杯ブラジル大会では1-7の惨殺時に致命的なミスを犯してしまったが、ロシアでもオウンゴールで戦犯扱いと、ブラジル代表では不運なことばっかり起こっている。嫌なことは忘れて、シティライフを楽しんでほしい。

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8 イルカイ・ギュンドアン İlkay GÜNDOĞAN

 ゴール前への突撃大好きドイツ人。基本的にはセントラル・ミッドフィールダー(CMF)。W杯前にはエジルとともにエルドアンに会って物議を醸したが、その話はここでは止めておきたい。今一つ日本のネット上ではシティファンの信頼を得られていない気配があり、それは何故かと1ヶ月ばかり考えていたが、恐らく責任感が無いんですね。この人は。無いように見える。フラフラ前に行く感じとか、中盤の底なのに割と粘りが効かないところとか。まあそれは、今調べたところでは@atosannがずっと前から指摘していたことではあるんですが。

  基本的には6番サードぐらいの立ち位置。上手いんだけどさ。打率は2割5分だが、本塁打は下手すると15,6本打つ。今年はアンカーが獲れなかったということで、フェルナンジーニョの控えとしてそのポジションでも出番が増えそうな気配。それは大丈夫なんだろうか。

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17 ケヴィン・デ・ブライネ Kevin De BRUYNE

 今やシティの看板となったベルギー代表MF。シティでは4-3-3の右CMFを担当。ベルギー代表でもさんざスター扱いされていたが、シティでのデ・ブライネはあの3倍凄いので、W杯で興味を持った方にはぜひご注目いただきたいところ。もはや、カカーとベッカムを足して割らないと言ってもさして過言ではあるまい。強い心に丈夫な身体、ダサい私服で、コンパニ後のキャプテン就任の可能性も高い。

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21 ダビ・シルバ David SILVA

 コンパニ、アグエロと並ぶ、スキンヘッドに髭が目印のシティの重鎮。最強時代のスペインの主力でもあり、W杯が1回にEUROも2回獲っている。割には地味ですよね。日本だと特にね。シティという新興クラブに長らく在籍していることと、極端にメディア露出しない性格ゆえであろう。トータルの貢献度で考えれば、2010年代のプレミアで最高のMFではないだろうか。異論はあるでしょうけど。

 とにかくあらゆることに失敗しないので、私含むシティファンはシルバに盤石の信頼を置いていると思う。どんなに酷い試合でもシルバがいれば試合になる。そんなシティのビッグマザー。

 近年は4-3-3のCMFを担当。キープしてよし、突破してよし、スルーパス出してよし、囮になるのもお手の物。何年かした、ぜひヴィッセルにはシルバを買ってもらいたいものである。唯一の弱点は、まず間違いなく入らない割にはそこそこ打ちたがるミドルシュート

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35 オレクサンドル・ジンチェンコ Oleksandr ZINCHENKO

 ウクライナの天才児。本職は攻撃的MFだが、昨季はメンディの怪我で左サイドバックに抜擢され、デルフの控えとしてちょこちょこと試合に出場。柔らかいパス出しとガバガバな後背地の防御を披露した。ボールタッチが安定しているので、今シーズンの練習試合で起用されたアンカーでも及第点のプレー。ウクライナの大事なお宝をこんな風に便利使いして良いものだろうかという疑念は募るが。

 今シーズンはウォルヴァーハンプトンへの移籍がほぼ決まっていたが、メディカルチェック直前にドタキャンして残留。シティ愛が強いのはファンとしてはまこと結構だが、彼自身の成長にとってメリットがあるのかは疑わしいところ。メンディが復帰し、フォーデンが成長している今となってはどのポジションでも3番手以下なわけだし。本当にうまいんだけどねえ。

 グアルディオラが気にいるだけあって、ドリブルで相手を1人2人剥がすのはお手の物。最近の悩みは、デ・ブライネだと思って寄ってきたファンにがっかりされること。

 

 

38 ドウグラス・ルイス DOUGLAS LUIZ

 ブラジルU20代表のCMF/アンカー。滑らかなドリブルと、パワフルかつ特に正確ではない右足が売り。昨シーズンはジローナに貸し出されるも、スタメンはわずか5試合。それでも今年はトップチームに帯同させる、とグアルディオラの鼻息も荒かったが、労働許可証が降りずあえなく断念。どこかにレンタルで貸し出される見通しだそうです。

 

47 フィル・フォーデン Phil FODEN

 人呼んで“ストックポートイニエスタ”。昨シーズンはU17W杯でMVPを獲得。シティどころか、イングランドの期待も背負う左利きのCMF。しかも、8歳からシティのアカデミーに所属する自前産である。最後にアカデミー育ちがレギュラーに定着してから実に15年近く経っているシティにおいて、フォーデンがその少々残念な伝統を断ち切ってくれるのではないかと期待しているファンは多い。

 しかし好事魔多し、期待が大きいほど失望も大きくなりやすいということで、私は去年から、ジャック・ウィルシャーを見るたびに多少の寒気を覚えることを止められないでいる。華奢で、テクニシャンで、左利き。そっくりなんだよな、本当。ここで言うのも何だが、25,6にもなって「やりたいこと」と「やるべきこと」の区別が一切ついていないあの男のようにはなってほしくない、という気持ちでいっぱいである。

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FW

7 ラヒーム・スターリング Raheem STERLING

 イングランド代表の右ウィング。加速性能はプレミア1。長らく、スピードはあっても最終成果物が出てこない選手だったが、昨シーズンはフィニッシャーとして開眼。全コンペティションを通して23得点を挙げ、リーグ優勝に大いに貢献した。専門職が多いこのチームの前線には珍しく割と器用で、左ウィングやワントップ、CMFもそれなりにこなせるのが便利なところ。今シーズンは、マーレズとのスタメン争いが予想される。

 まだ23歳と若いため、今後も末永くシティの中心となってもらいたいところなのだが、現在契約交渉が難航中。幼少期にジャマイカから渡ってきて苦労したという生い立ちゆえか、異様に癖が強い代理人ゆえか、待遇にはうるさいタイプ。シュートを外したときもうるさい。

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16 リロイ・ザネー Leroy SANÉ

Manchester City’s “True Berry” away kit for 2017/18 season unveiled by Leroy Sane, Danilo and EdersonStay tune in Tokyo Friday night~(テレレッテッテ テレッテ)といった風情のドイツ代表左ウィング。ここ20年弱、男前が慢性的に不足しているシティでは貴重なグッドルッキングガイ。昨シーズンはレギュラーに定着し、得点・アシストともに二桁に乗せて最優秀若手選手賞を受賞した。

 若い頃は100mを10秒台で走ったというセネガル代表FWの父と、ロス五輪新体操銅メダリストの母を持ち、スピードとバランスの良さは天下一品。1人で相手の右サイドを切り裂いてくれる。守備が苦手なので、3-5-2の採用を増やすとグアルディオラが明言している今シーズンは、やや出番が減ってしまう可能性も。

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20 ベルナルド・シルバ BERNARDO SILVA

 昨シーズン加入した、左利きの小柄なポルトガル人。24歳にして、生え際が危ぶまれている。

 本職は右ウィングだが、ワントップやCMFにも対応可能。とにかく相手の逆、逆を取ってくるので、マークする側からすると心底鬱陶しいと思う。純粋なスピードというよりは、重心移動の巧みさで抜くタイプのドリブルが得意なので、右サイドのタッチライン際に張っとけと指示されていた昨季はやや苦戦。今季はダビ・シルバの後釜を見据え、中央での起用が増える見通し。ピッチ外では、ベテランから若手に至るまで満遍なくいじられまくっている。

 

26 リヤド・マーレズ Riyad MAHREZ

 またの名をマフレズ。岡崎とともにプレミアリーグを制覇し、本人はMVPに選ばれてから2年。ダダをこねにこねた末、ようやくシティに加入できたアルジェリア代表のウィング。ラポルトからの対角線フィードが備わったシティにおいて、足りなかったピースは個人で突破できる右のウィングだったので、その左足にかかる期待は大きい。

 しかし、こう思うシティファンもいるのではないか。レスターは何もかもがシティとは違う環境。初めてのいわゆるビッグクラブで、果たしてアルジェリアの魔術師は真価を発揮できるのか―。

 そんな、悩んだシティファンが意見を求むるべきはただ1人。そう、アンチ・アンチ・フットボール教の大司教グアルディオラの盟友、チャビ大司教である。雨ニモマケズ、風ニモマケズ、ハイプレスニモ負ケヌ巧ミナ足技ヲモチ、東ニモウリーニョアレバ口ヲ突ッ込ミ、西ニペップヲ疑ウモノアレバ食イ気味ニ擁護シ。そんなチャビ大司教がマーレズに下した評価はこれ。

 

www.goal.com

 「彼はバルサに値するよ」。はい来た。もらった。活躍間違いなし。チャビ大司教最大級の賛辞である。お前は他人を褒めるのもバルサ基準かい。

https://media.gettyimages.com/photos/riyad-mahrez-of-manchester-city-takes-a-shot-during-the-fa-community-picture-id1011394014

 

27 パトリック・ロバーツ Patrick ROBERTS

 21歳、ロンドン生まれのドリブラー。こいつもまた左利きで、今のシティはどこを探しても左利きだらけである。2015年に、10代としては破格の1,200万ポンドで加入。代表戦で対戦した日本のU17代表の子に、Twitterで「あの7番やばすぎ!!」と騒がれたりと、将来を期待されていたが、以来成長しているんだかいないんだか、3年連続でレンタルしたセルティックへの里心ばっかりがついている状況。今季もスターリング、マーレズ、ベルナルドという厚い壁を破ることは恐らく難しく、レンタル移籍の気配が濃厚。値段がつくなら売ってしまったほうが、お互いのためかもしれない。

https://media.gettyimages.com/photos/manchester-citys-patrick-roberts-in-action-during-training-at-new-picture-id1004832604

 

55 ブラヒム・ディアス Brahim DÍAZ

 モロッコの血を引くスペイン人。父親がアフリカにあるスペインの飛地領出身だったり、“ブラヒム・アブデルカデル”というそれっぽい名前だったりするので、ムスリムなのかもしれない。両足をほぼ同じように使え、強気のドリブルが売り。今年が契約最終年ということで、クラブは契約延長した上でどこかにレンタルしたいようだが、本人は残留を希望。とはいえなかなか出番があるようには思えないし、一方で機嫌を損ねてタダで出ていかれても困るし・・・ということで少々扱いに困っているようだ。ルックスもいいし、ぜひ将来の主力になってほしいところなのだが。

https://media.gettyimages.com/photos/manchester-citys-brahim-diaz-in-action-at-metlife-stadium-on-july-25-picture-id1005424548

 

10 セルヒオ・アグエロ Sergio KUN” AGÜERO

 チームの大エースであり、恐らく非シティファンへの知名度もクラブ1。の割には、今ひとつ日本でスーパースターかと言われると案外知られてない気がするのは私だけだろうか。名前は聞いたことあるけど、という反応が多いように思われてならない。

 毎シーズン、リーグ戦20点は確実に獲ってくれる、頼れるスコアラー。重心の低いドリブルと強烈なシュートが得意技。身長は低いが、ヘディングも巧い。持ち過ぎだったり、守備が気まぐれだったりとアルゼンチン人っぽい弱点も多かったが、グアルディオラ就任以来、着実に短所を克服してきている。でも性格的には合わないのか、1年に1回くらい「もうグアルディオラやだ~」というニュースが出るお嬢様体質。グアルディオラが来るまでは、蝶よ花よという扱いだったからな。

https://media.gettyimages.com/photos/sergio-aguero-of-manchester-city-celebrates-scoring-his-sides-first-picture-id1011392678

 

33 ガブリエウ・ジェズス Gabriel JESÚS

 そのお嬢様扱いを一瞬で普通のレギュラー争いに変えてしまった、ブラジルの神童。先日のW杯にも、1トップのレギュラーで出場。まああんまり活躍はしなかったらしいが。

 単体でアグエロほどスーパーではないが、中盤へのヘルプが抜群に器用だったり、守備も手を抜かなかったりと、グアルディオラのFW観を煮詰めたようなプレーが得意。シティに加入して以来、39試合20点ということで普通に点は取りまくっているのだが、今シーズンこそは20点越えの大爆発が見たいところ。めっちゃマザコンで、実家から御母堂と友達を連れてきて一緒に住んでいる。この、友達も連れてくるというところが、ブラジルっぽい。

https://media.gettyimages.com/photos/manchester-citys-gabriel-jesus-during-training-at-manchester-city-picture-id1012036838

 

43 ルーカス・ヌメチャ Lucas NMECHA     

 ハンブルク生まれのイングランドU21代表。9歳からシティにいるアカデミー育ち。そこそこのサイズと強さ、そこそこのスピードが売り。今夏のプレシーズンマッチでは何度も裏抜けからGKとの1vs1を迎えて期待を持たせたが、全部外していた。裏抜けが巧いということはわかったので、ローン先のプレストンで一皮剥けてもらいたいもの。まあ成長したところで、相手が悪すぎるだろという気がしなくもないが。

 

https://media.gettyimages.com/photos/lucas-nmecha-reacts-during-training-at-manchester-city-football-on-picture-id880151124

 

74 ルーク・ボルトン Luke BOLTON

 今夏のプレシーズンマッチで右サイドバックが1人もいなかったため、数合わせで呼ばれたイングランドU20代表。本職は右のWGらしいが、右のWBもできる。

 数合わせと言ったものの、自慢のスピードと活力でなかなかに活躍しており、鍛えればプレミアでもそこそこやれるかもしれない。見たところ、プレースタイルはいかにも古風な縦一本槍。大体、FW/WBっていうポジション適正が、90年代後半感満載なんだよな。酒井直樹か。

マンチェスター・シティがよく分からない人向けの2018/19選手名鑑 (前編)

 W杯どうでしたか。楽しかったですか。私は全く見れませんでしたが。とは言え、会社に海外サッカーファンが思いの外多いこともわかったし、その殆どがマンチェスター・シティについてよく知らないということもよくわかった。強いとか何とか言うことは聞いているが、というくらい。

 そういったわけで、今回のプレビューは”シティをよく知らない人”向けに書いてみたいと思う。年に3回も選手名鑑(プレビュー、中間レビュー、シーズンレビュー)を書いていると少々飽きが来るものだし、ポジション、年齢、経歴、チームでの立ち位置を改めて確認してみるというのも悪くないではないか。

 

本社

マンスール・ビン・ザイード・アル・ナヒヤーン MANSOUR bin Zayed Al Nahyan

 オーナー。シティを買収したアブダビ・ユナイテッド・グループのオーナーで、現UAE大統領の異母弟。金は出すけど口は出さない。弱点は最近指摘されている、本国の奴隷労働。

https://media.gettyimages.com/photos/pep-guardiola-meets-hh-sheikh-mansour-bin-zayed-al-nahyan-at-the-picture-id931893446

 

ハルドゥーン・アル・ムバラク KHALDOON Al Mubarak

 チェアマン。米タフツ大で学位を取ったあと、若干26歳でとあるソヴリンウェルスファンドのCEOに就任。29歳でアブダビの国家顧問になり、31歳でシティのチェアマンになったアラブのエリート。父は元在仏UAE大使で、駐在中にテロリストに暗殺されたという壮絶な過去がある。とにかくデカくて分厚いので、コンパニ辺りと並んでも全く遜色がなくて怖い。https://media.gettyimages.com/photos/khaldoon-almubarak-manchester-city-chairman-and-josep-guardiola-of-picture-id955349562

 

 

フェラン・ソリアーノ Ferran SORRIANO

 CEO。元バルサ副会長で、バルサ時代は後述のベギリスタイン、グアルディオラとともに現在の隆盛を形作ったが、派閥争いに負けてクラブを去った。スパンエアーのチェアマンを挟んで、2012年にシティのCEOに就任。(NYや、メルボルンもひっくるめた)シティ・フットボール・グループの基本的な権力構造は、オーナーとチェアマンのアラブ人の下で、ソリアーノが各姉妹クラブのCEOを兼任するというもの。

 ”サッカークラブのディズニー化”という、捉えようによっては結構リスキーなビジョンを持っており、小言を言う人間がいないシティでやりたい放題やっている。

https://media.gettyimages.com/photos/champions-league-group-e-bayern-munich-v-manchester-city-manchester-picture-id907065512

 

チキ・ベギリスタイン Txiki BEGIRISTAIN

 サッカー部門のディレクター。バルサでの選手時代にリーグ優勝4回、CL優勝1回。晩年は浦和レッズでもプレーした、クライフの教え子。シティでは移籍の交渉と最終決定の権限はチキにある(と、少なくともファンは思っている)ので、選手が獲れたり獲れなかったりするたびにTwitterで「はよ辞めろ」「チキを信じろ」「チキが信じたグアルディオラを信じろ」という毀誉褒貶が激しい。

https://media.gettyimages.com/photos/manchester-citys-newest-signing-riyad-mahrez-has-his-photo-taken-with-picture-id995597782

 

ペップ・グアルディオラ Pep GUARDIOLA

 良くも悪くも、現代サッカー界の大正義的存在になってしまった、トップチームの監督。念願のCL制覇に向けたソリアーノの切り札。就任した2016/17シーズンは誤算続きだったが、ガッツリと補強した昨シーズンは圧倒的な強さでリーグを制覇し、評価を回復した。浮気現場に踏み込んだみたいなテンションで相手の選手をひっ捕まえて褒め倒すなど、寝ても醒めても奇行が目立つおじさん。

https://media.gettyimages.com/photos/josep-guardiola-manager-of-manchester-city-talks-with-pablo-zabaleta-picture-id684237460

 

ミケル・アルテタ Mikel ARTETA

 若干36歳、バルサ育ちのアシスタントコーチ。ツヤッツヤの黒髪が目印。現役時代はエヴァートンアーセナルで活躍し、何とかイングランド代表にできないか?という話があった。長らくグアルディオラの右腕を努めたドゥメネク・トゥランが今年からNYシティの監督になったので、今年からはアシスタントコーチの筆頭格。

https://media.gettyimages.com/photos/mikel-arteta-of-manchester-city-looks-on-during-the-premier-league-picture-id949962490

 

GK

1 クラウディオ・ブラボ Claudio BRAVO 

 チリ代表キャップ119、リーガ優勝2回、リーガのベストイレブン1回、コパ・アメリカベストイレブン2回。輝かしい経歴の割には英国に渡ってから始終バタバタしているおじさんGK。“自動ドア”という非常なあだ名すらつけられてしまっている。しかし、ミスしても堂々としているのは大したものだと思う。そんなとこだけは元バルサ

 足技に長け、組み立てへの貢献度も高いが、守備範囲は狭い。正直、今年もリーグやCLでそんなに目にしたくはないが、リーグカップFAカップは頑張ってもらいたいもの。

https://media.gettyimages.com/photos/claudio-bravo-of-manchester-city-celebrates-his-sides-second-goal-picture-id1011429486

 

31 エデルソン・モライス EDERSON Moraes

 昨シーズンから加入し、一瞬で正GKの座を掴んだクレイジーサイコGKボンバー。ブラジル代表。恐怖の感情が欠落しているようにしか見えず、前頭葉かどこかが切り取られているのではないかというもっぱらの噂。

 守備範囲が広い上、相手に寄せられても余裕でボールを捌いてしまう冷静さと技術が売り。また、左足のフィードが飛ぶ飛ぶ。相手エリア前までライナーでかっ飛ばしてアグエロが即裏抜け、という手も使える。もちろん本職の守備面もリーグトップレベルで、もうほんと言うことないな。

https://media.gettyimages.com/photos/9th-may-2018-etihad-stadium-manchester-england-epl-premier-league-picture-id956650300

 

32 ダニエル・グリムショウ Daniel GRIMSHAW*

 自前アカデミー育ちの若手。昨シーズンまではユースチームにいたが、昨シーズンの第3GKだったムリッチがレンタル移籍したことで、トップに昇格。

https://media.gettyimages.com/photos/manchester-citys-daniel-grimshaw-in-action-during-training-at-new-picture-id1004849244

 

DF

4 ヴァンサン・コンパニ Vincent KOMPANY

 勤続11年の主将。アブダビ資本による買収1日前にクラブに加入した、近年のシティの象徴的存在。圧倒的な体格とパワー、瞬発力を武器に、2010年代前半はプレミア最強のCBとしてリーグに君臨した。体調が万全なら今でも守備では頼りになる存在だが、2014年辺りから怪我が目立ち始め、今やシーズンの半分出場できれば御の字というレベルになってしまった。両親の顔よりも「渋い顔でふくらはぎを押さえてピッチをあとにするコンパニ」を見る回数の方が多い、というシティファンは私だけではあるまい。

 ピッチ内でもピッチ外でも、常に模範的な言動を絶やさない外交官。昨年はついにMBAを取得。クラブのフロント入りが噂されている。

https://media.gettyimages.com/photos/vincent-kompany-and-fernandinho-prepare-to-lift-the-community-shield-picture-id1011472210

 

5 ジョン・ストーンズ John STONES***

 自陣ペナルティエリアで平気でドリブルしたり、センターサークル付近のボールキープでファンをハラハラさせたりと、イングランド1チャラいCB。チャラいCB大好きなグアルディオラたっての希望で獲得したらしい。

 昨シーズン前半は攻守に文句の付け所が殆ど無い大活躍だったが、ハムストリングを痛めて離脱。復帰以降はミスが目立つようになり、控えでシーズンを終えてしまった。今シーズンこそワールドクラスになってくれるはず。こうした無謀な期待を繰り返してしまうことを、医学用語では「ウォルコットの沼症候群」と言います。

https://media.gettyimages.com/photos/john-stones-of-manchester-city-celebrates-with-the-community-shield-picture-id1011470332

 

14 エメリック・ラポルト Aymeric LAPORTE

 スペイン1チャラいCB。2018年1月、当時のクラブ記録の移籍金で加入。左足からの正確なフィード、組み立ての上手さには、さすが100億という風格が漂う。全体的にトロくさいのが弱点。今シーズンはラポルテ、ストーンズオタメンディが並ぶ3バックも見られると予想され、色んな意味で胸がドキドキしちゃうラインナップである。

 ちなみに、曽祖父の血筋を辿ってビルバオでプレーしてこそいたが、本人はモロにフランス生まれのフランス育ちだし、本名も“エメリック・ジャン・ルイ・ジェラール・アルフォンス“というおフランス感丸出しのものなので、「ラポルテ」ではなく「ラポルト」と表記していきたい。

https://media.gettyimages.com/photos/aymeric-laporte-of-man-city-during-the-fa-community-shield-match-picture-id1011544454

 

15 エリアキム・マンガラ Eliaquim MANGALA

 2014年夏、約4,000万ポンドという大金で加入した、フランス代表の巨漢。しかし安定感に欠け、組み立ても苦手ということで、その後オタメンディストーンズラポルトと次々に加入する新たなCBにポジションを奪われっぱなし。チェルシーとの争奪戦の末に加入したという事実も、もはや忘れ去られた気配がある。どうでもいいが、そのときマンガラと並んで獲る獲ると言っていたのがベナティア。

 昨シーズン後半エヴァートンにレンタルされるが、大怪我でほとんどプレーできず、リハビリのために今季も残留。ピッチ外では、SNSでファンへの感謝を度々口にしたり、新加入選手に真っ先に声をかけたりと、穏やかな人格者。

https://media.gettyimages.com/photos/eliaquim-mangala-of-everton-warms-up-ahead-of-the-premier-league-picture-id916558936

 

24 トーシン・アダラバイヨ Tosin ADARABIOYO*

 シティ1読みづらい名前の長身CB。ほぼ2mある。そこそこ早い段階でトップチームに上がったが、リーグでは全然出番が無いまま、契約最終年。今年はWBAにローンだが、もう2年ほど前にやっておくべきではなかっただろうか。Twitterのプロフィールに「アダ・ラ・バイ・ヨ」と読み方をわざわざ書いてくれている親切な男。 

 

28 ジェイソン・デナイエル Jason DENAYER

 「少しずつだけど 俺たちはお前が夢見たものを叶えてきた でも少しずつ お前の人生の歯車は外れていった」とはoasisの隠れた名曲Little by littleの一節だが、このドレッドヘアのベルギー人CBに対して、私はそういった感情を抱かざるを得ない。2014/15シーズン、若干20歳にしてレンタル先のセルティックで最優秀若手選手賞とベストイレブンを受賞したところまでは、間違いなく輝く前途が待っていたはずなのだが。

 そのあとトルコをレンタル先に選んでしまったのが悪かったのか、以降3年間、特に成長することもなくトルコ周辺をウロウロしている。スピードはあるけどボールウォッチャーになりがちだったり、ボール扱いがこなれてる割に組み立てがうまいわけではなかったり、サンダーランドを降格させた挙げ句「街もクソつまらんし、こんな守備的なサッカーで俺の力は出ない(笑)」と豪語したり、喧嘩相手を道端でボコボコに叩きのめすところをガッツリ撮影されてしまったり、各方面で満遍なく残念。才能はあるんですけど。

https://media.gettyimages.com/photos/jason-denayer-of-manchester-city-during-the-international-champions-picture-id1005539328

 

30 ニコラス・オタメンディ Nicolás OTAMENDI

 「身軽だけど足は速くない」「対人戦はめっぽう強いけど背は低い」という、アルゼンチンの正統派ストッパー。山男的な外見とつぶらな瞳が特徴。決断力だけは世界一あるため、他の選手ならまず様子を見るシチュエーションでも全く意に介さずスライディングタックルを繰り出す。

 2年前まではタックルの結果がどうなろうと知らんみたいな感じだったが、グアルディオラの指導で急激に成長。守備が安定したばかりか、今や組み立てでもプレミア屈指のCBになっており、昨季はベストイレブンに選出されるに至った。今シーズンも、守備の要として期待は大きい。惜しむらくは、他人に影響力があるタイプではないので、周りがダメなときはダメですね。アルゼンチン代表とか。

https://media.gettyimages.com/photos/manchester-citys-nicolas-otamendi-during-training-at-manchester-city-picture-id1008333142

 

34 フィリップ・サンドラー Philippe SANDLER

 オランダのズウォレから引き抜いた21歳のCB。(恐らく)グアルディオラが見込んだだけあって、プレーは相当チャラい。ルシオダヴィド・ルイスを足したようなというか、正直CBとしては相当にキワモノ。得意なプレーはドリブル突破。ストーンズどころのチャラさではない。大丈夫かこれ。 

 

50 エリック・ガルシア Eric GARCIA

 代理人になったプジョルデ・ラ・ペーニャに唆されて、バルサの至宝がシティに移籍。すいませんね、なんか、本当。今夏のプレシーズンマッチでは3バックの真ん中で堂々たるプレーを披露。身体も強いし、組み立ても落ち着いているし、末恐ろしい17歳である。惜しむらくは180cmそこそこの身長で、そのうち中盤にコンバートされるのかもしれない。今年は運が良ければ、国内カップ戦で何試合か出番があるかも。

https://media.gettyimages.com/photos/manchester-city-defender-eric-garcia-chases-the-ball-during-an-cup-picture-id1004143348

 

77 キャメロン・ハンフリーズ Cameron HUMPHREYS-Grant

 アカデミー育ちのCB。2015年夏、若干16歳にしてプレシーズンマッチに抜擢され、ロナウドにボコボコにされていた。そこから3年ほど音沙汰がなかったが、今夏のプレシーズンではそれなりに成長した姿を披露。契約は今季までだが、延長のチャンスがないでもないかもしれない。

https://media.gettyimages.com/photos/sandro-wagner-of-fc-bayern-muenchen-and-cameron-humphreysgrant-of-picture-id1006906766

 

2 カイル・ウォーカー Kyle WALKER***

 ムキムキでめちゃめちゃ足が速い右サイドバックサイドバックが弱点だったシティに昨年加入し、パワーとスピードを遺憾なく発揮。ベストイレブンを受賞する活躍で、シティの右サイドを安定させた。もともとは攻撃に特徴があるタイプだが、シティではもっぱら守備にその筋肉を使用中。なにせ圧倒的に速いので、大概のFWは追いつかれてひどい目に合わされている。SNS大好き。

https://media.gettyimages.com/photos/kyle-walker-of-manchester-city-in-action-with-willian-of-chelsea-the-picture-id1011472570

 

3 ダニーロ DANILO

 レアル・マドリーで窓際社員をやっていたところを払い下げてもらったブラジル代表。レアルではどっちかというとネタ扱いだったようだが、どこでどう出しても大体そこそこのプレーを見せてくれるので、シティでは重宝されている。ブラジル人らしく、本気で攻めればかなりの攻撃力。チーム屈指の真面目君でもあり、4-1でボロ勝ちしている試合の後半終了間際でも警戒心を絶やさない。誰も要求してないが。

https://media.gettyimages.com/photos/danilo-of-manchester-city-catches-the-ball-during-the-carabao-cup-picture-id903066876

 

22 バンジャマン・メンディ Benjamin MENDY

 クラブ公式Twitterアカウントだろうが、自分の国の大統領だろうが、滑ることを一切恐れない鋼のメンタルでウザ絡みを止めないパリピな左サイドバック。昨年は開幕早々に靭帯損傷の大怪我を追ってしまい、ほぼ1年を棒に振ったが、試合のたびにTwitterで実況するのでそこらの控え選手よりよっぽど存在感があった。

 立派な体格、単独で突破できるパワーとスピード、常人に真似できない深さから上げてくるクロス、敵どころか味方まで混乱に陥れる運動量等、プレーには怪物感が漂うが、守備はてへぺろでござんす。

https://media.gettyimages.com/photos/benjamin-mendy-of-man-city-celebrates-with-the-trophy-during-the-fa-picture-id1011478296

 

石油王の憂鬱

 マンチェスター・シティが苦しんでいる。2017年夏のダニ・アウベス、2018年1月のアレクシス・サンチェス、フレッヂに続き、2018年夏の移籍市場では、口頭合意に達したジョルジーニョを取り逃した。いずれのケースも、相対的には信憑性が高い複数のメディアが“合意した”と報道した後に、より高い移籍金と給与を提示した他クラブによって掻っ攫われるという失態である。

https://media.gettyimages.com/photos/chelsea-unveil-new-signing-jorginho-with-chelsea-head-coach-maurizio-picture-id998491530

 なぜ失態か。ダニ・アウベスはダニーロという代役が見つかったし、サンチェスは高い移籍金と給料の割にさして成功だったという評価を受けているとは言い難い。結果オーライなのではないか。

 否。まずもって、種々の報道に鑑みて彼らは本気で獲得を目指したターゲットであることにはほぼ疑いの余地がなく、相当の費用と時間が投じられているだ。泣こうが喚こうが、彼らの獲得に失敗した以上、それらはサンクコスト。今後何かの役に立つわけでもない、ただ溝に捨てた時間と金である。また、ダニーロはあくまで結果オーライでしかない。2012年夏の「誰がハビガル連れてこい言うた!ハビマルやハビマル!!」事件は有名であるが、1つのターゲットを追う際にプロフィールや提供価値がよく似た選手を代役候補としてリストアップしておくことが当たり前だとしても、急遽代役に切り替えるのはリスクが高い選択肢と言わざるを得まい。次もダニーロであるとは限らないのである。いや、まあ、ハビガルは良かったんですけどね。

https://media.gettyimages.com/photos/manager-roberto-mancini-of-manchester-city-and-vincent-kompany-look-picture-id168559196

 

 より深刻な問題は、マンチェスター・シティの移籍市場における路線変更が、失敗に終わりそうな気配を見せていることだ。そもそも、サンチェス、フレッヂ、ジョルジーニョは、いずれも「ほぼ決まった」「週末には決まる」「ここ10年で最大の決まり方」とか言われながら、細かい条件を詰めている最中、という報道が散発的に流れつつ何時になっても決まらず、電撃的に(より高い条件を提示した)他クラブへの移籍が決定する、という同じパターンをなぞっている。早い話が、シティが金を出し渋っているのだ。これは由々しき事態である。

 アブダビ化が起きた夏、2008年からずっと、シティのプライシング戦略は「多少のプレミアムを載せても強気でドン」であった。まず2010年までは、シティは (順位表上の問題として) 強いチームではなかった。また、少なくとも2,30年の範囲について言えば、クラブとしての格もなかった。更に、マンチェスターは、相対的に言って、そう魅力的な街ではない。私だって勤務先を選べと言われたらバルセロナか、せめてロンドンに住みたい。だからこそシティは、ウェイン・ブリッジに£12mとか、アデバヨールに£26mとか、コロ・トゥレに£17mとか、そういった法外な移籍金を積んできたわけだし、結果として給与総額がクラブの総収入を超えるような予算編成を、一時的にとは言え、許容してきたのである。

 

 もちろん、シティはまともなビジネスマンが経営しているので、これが許容され続けることはなかった。昔のブログから引用するが、シティの財務状況は毎年飛躍的に改善していった。

 

ここまでの足取りを振り返ると、まずステップ1:戦力補強。2008/09シーズンにロビーニョ(£30.1m)を筆頭に£110.2mの補強を行ったのを皮切りに、2009/10シーズンは£103.1m、2010/11シーズンは£127.7mをつぎ込んだ。当然、実績もブランドも無いシティに有力選手を呼ぶために必要なのは給与だ。売上拡大が給与の増加に追いつかないため、EBITDA(ここでは売上+その他収入-給与およびその他営業費用。すなわち、サッカークラブとして純粋な収支に近い)の段階で赤字の状態に陥るが、成績は改善した。

 

ステップ2:“まとも”なサッカークラブへ。成績の改善に伴う放映権料の拡大とスポンサー獲得で売上を増やすとともに、給与水準を落ち着かせ、スカッド編成の効率性を高める。売上に占める給与の比率は徐々に低下し、2014年には59.2%に達した。これはチェルシーよりも低い。また、ジョーアデバヨール、ブリッジのようにすぐ戦力外になってしまうような高額な買い物が少なくなったため、減損も発生しなくなった。すなわち、獲得すべき選手の査定、獲得交渉、給与設定がより上手になったということだ。これでようやく、2013年にEBITDAがプラスになった。

 

ステップ3:黒字化。これにはあと一歩。2014年はアブダビ化以来初めて給与総額が低下し、売上の拡大と相まって、営業黒字まであと£-17.7m(FFP制裁を除けば£-1.4m)まで到達した。あとは、オーナー頼みのキャッシュフローの改善だ。

d.hatena.ne.jp


  “改善”というのは、もちろんオーナーの直接的資金提供によってではない(というか、それは改善ではない)。一方、移籍市場については、まんゆと並び、少なくとも国内ではトップ水準の額を投じ続けてきたが、それも2017年の夏から方針を変えたようだ。サンチェスらについての、ギリギリまで妥協点を探り、少しでも低い移籍金額に抑えようとする姿勢は、これまで載せていた諸々のプレミアムを落として勝負しようという意志を感じさせるものである。

 

 全く妥当な判断ではある。3年前にブログに書いたが、

ここまで、今回の移籍による費用増が、恐らく多数の人が想像するよりも小さいということを見た。ただし、当然ながら£141.5M(アドオンを含めると£152M)の移籍金は決して小さい額では無い。

Transfer Leagueのデータに従えば、シティが支払った移籍金としては2010/11シーズンの£154.8Mに次ぐ大きさである。この移籍金は今後5年から6年、契約が延長されれば10年近くに渡って減価償却費としてシティのP/Lに計上され続けるので、当然ながら毎年このような移籍を続けていくことは出来ない。

d.hatena.ne.jp

 のだ。

 

 他にも理由はある。まず、グアルディオラ就任後にスカッドの大手術を行った結果、給料が爆発的に増えた。2016-17シーズン決算のWages and salariesは前期の1.3倍。1人当り給与も1.3倍であるから、単純に人を抱えすぎているという問題でもない。しかもこれは、ウォーカー、メンディ、ベルナルド、エデルソンといった選手たちを含めていないのだ。

 また、2019-20シーズン以降のプレミアリーグの放映権料は、少なくとも英国内では実質的な値下がりとなった。Amazon等のWeb系メディアの参入を理由とした楽観視もあるが、これらがシティの首脳陣にプライシング戦略の再考を迫った可能性は充分ある。選手1人にプレミアムを積めば、残りの10人も間違いなく積まれる。ウォーカーに£45mを払った瞬間「 (メンディも) ウォカにゃんの額でヤってよwww」とか言い出したモナコのようなケースは、今後も間違いなく繰り返される。そうした状況から脱却し、移籍金額の抑制を図ったシティの首脳陣の判断は至極まともではあった。問題は、全くうまく行っていないということだが。

www.theguardian.com

(もう一つ、FTの記事を挟みたかったんだが、登録が必要なので割愛。Subscribe to read | Financial Times をご参照ください) 

 

 で、結果としてはこれである。

 引用するBANQUEBLEU氏のツイートに賛同するばかりだが、結局ピャニッチに1億払うなら、ジョルジーニョに£65m払ったほうが何ぼかマシだったのは、言うまで無い。仮にこの後ピャニッチがシティにやってきて、大活躍したとしてもだ。戦略ぶち壊しである。「適正価格」とやらに拘っても自己満足以外に何も得られないことは、アーセナルが10年もの月日をかけて証明してきたが、シティは今、同じ穴に落ちそうなところで踏みとどまっている状態だ。

 

 そしてこの後には何が起こるか。短期的には、当初の方針を貫くか(つまり、誰も手に入れられず、自前の若手に頼らざるを得なくなる。ジョルジーニョピャニッチの騒ぎを見た後に、プレミアムを載せてやろうと思わない経営者が居るとは考えがたい)、「ハビガル違うわいハビマルじゃ」事件のようにお茶を濁すか、開き直って昨季と同じように大量の移籍金を投じるか。そうするにしても、既に市場の閉幕まで1ヶ月を切り、トレーニングキャンプも始まっているのだが。

 

 長期的には、戦略を貫ききれないか、結果を承知の上で”適正価格“にこだわり、競争力を一定程度失うかのどちらかだろうと思っている。そしてCFGの経営陣は、おそらく前者を選ぶほどには盲目ではない。現状でも損失を生むリスクを抱えている(2016-17シーズンのシティは営業赤字で、かつシティは多額の偶発債務を抱えている。早い話、成績連動ボーナスが大きいということで、それを勘案すれば2017-18シーズンも営業赤字の可能性は十分にある)上に、市場縮小の兆しが見られる状況である。CFAの建設に、フランスや南米、アジアでのクラブ買収といった長期的なコミットを続けているCFGが、更に将来への借金を増やす可能性は低いだろう。

 

 つまり我々は、このあと数年、「怒りの撤退」の茶番を見せられなければならない可能性があるというわけだ。振り返ればアーセナル、人を笑わばイヘ穴チョである。

ロシアW杯はこうすべきだったプラン

結局仲良しジャパンで頑張るなら、いっそ本当にホドルで行ってほしかったよな。

www.nikkei.com

www.theguardian.com

http://news.bbc.co.uk/olmedia/265000/images/_269695_eileen300.jpg

 

ケイスケホンダ vs 霊媒師おばさん、めちゃめちゃ見たかったが。