2016/17 マンチェスター・シティの振り返り, part2:ほぼ私信編
アトさんの「ペップと"常識"の狭間で ~16/17ペップ・シティの1年」に対するアンサー。
就任当初について
ちなみにペップが一年目のプレミア&シティで華々しい/圧倒的な成功を収めるイメージは最初から持っていなかったんですけど、それでも何か"隠し玉"があるのではないかもっと"奥"があるのではないかという期待は途中までは持っていて、それははっきり言えば、裏切られましたね。・・・むしろ「選手起用」編で言ったように、独特な単純さ、場合によっては"浅さ"が、ペップの(天才の)大きな特徴であったわけで。チーム作りにおいても。
ただその後は・・・特に無いというか、その時点で"マンネリ"を気にさせないくらいの圧倒的な強さがあればいいなという祈るような気持ちと、言ったってなんか色々とあるんでしょ?ペップという、やがて裏切られることになる(笑)幻想的期待があったのみというか。
とにかくそういう意味での"幻想"は、持っていないかと言えば、持っていました(笑)。ある時期までは。
グアルディオラ就任決定の報を聞いたときの最初の反応は下記だったんですが、まあ正直、「もろたでこれは」という気持ちは、ありましたよね。泣く子も黙るグアルディオラだもん。何だかんだ、勝つだろうと。正直なところ、今でもちょっとある。ただ、大分説得力を持ってきたなというか、根拠のない感覚では無くなってはきたというところ。
さあ残りのシーズンに集中しよ!こっから佳境でんがな!!
— szake (@szakekovci) 2016年2月1日
期待しすぎると人生いいことないって
— szake (@szakekovci) 2016年2月1日
余談ですけど、就任当時のシティファン界隈、リアル知り合いにはいないのでTwitterで、私がフォローしている人とそのRTに限定した話なのでサンプル数10程度の話ですが、まあとにかく界隈の反応として男性は歓迎、女性は懐疑的、という傾向が強かったように思います。前者は強いシティ、革新的なシティが見られるぞという反応で、後者は「なぜペップがシティかわからない(納得できない)」という反応が多かった。一般化するのはどうかとも思うけど、興味の違いってありますよね。こういうフォーメーションで、こういう選手を買って・・・というのは、オタク的なサッカーファンの男性なら大体一度はしたことあると思いますけど、私が知る範囲では、そういうものに興味を示す女性ファンというのは、あんまりいない。
実際始まってみると「好奇心」と「消化プロセス」の"脳を開く"効果はペップ自身の想定をも恐らく越えたものがあって、大した内容でも大したメンバーでも(笑)ない中で、あれよあれよキャッキャウフフと、開幕から公式戦10連勝なんぞを達成してしまいました。シティ自体に自惚れることはほぼ無かったですが、プレミアやっぱ大したことないかなと思うところは無くは無くて、ひょっとしてこのままイケるかもと、思った時期が僕にもありました(笑)。キャッキャ。ウフフ。
何だったんでしょうね、あれは。実際守備面は目に見えて改善されていたけど、攻撃はそんなにうまいこと行っていなくて、対応され始めると途端に、最初は仕事ができていたかに見えたクリシやサニャたちにも粗が目立ち始めて。単純に「相手が慣れてなかった」んだと結論づけています。
戦術とか施策とかについて
実際ペップの一つ一つの施策に"納得"していたわけではあまりなくて、色々やっていたけどぶっちゃけどれも特には"ハマ"っていなかったように思うんですよね。・・・シルバとデブライネの二枚をインサイドに並べる形くらいかな?僕がクリアなものを感じたのは。例の開幕当初の連勝を支えた。ただその後ペップがその形に、特別な注意を払っていた気配は無い。
どうでしょうね。アンカー落としとか、3-2ビルドアップとか、基本文法的な動きを除けば、シルバ&デ・ブライネのインサイド起用、SB陣のファルソ化、、ジーニョのアンカーと左右のサイドバック、フェルナンドの右バック、4-4-2ダイヤ、とかそんな辺りでしょうか。確かに、どれも大した効果を産んでない。ジーニョのアンカーはよくやったとは思いますが、消去法ではありましたしね。
ただ、ポジショナルプレイの実践(攻守両面で効くような配置を取るためのプレーの反復)とか、その基礎としての速いパス回しを行う技術とか、そういうものは確実に向上していて、目に見えやすい”施策”よりはそちらを遂行させることの方にペップの手腕は現れていたんじゃないかと思います。わかり易い例で言えば、オタメンディが組み立てで安易に右SBに押し付けなくなったり、GKのほとんど真横という意味の薄い場所でボールを受けなくなったりとか。そうした点については、私は結構納得していました。
まあバイエルン時代の本を読むと、「ファルソラテラル」(所謂“アラバロール”)は、割と大発見的なノリで発明しているんですけどね。
『ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう』p187-188
アスティアルタはこの朝のことを、後に目を細めながらこう語った。「ペップとともに過ごし、感動したトップ10の瞬間の1つだったんだ。忘れられないよ。」
グアルディオラは、誰もがひと目で分かるほど高揚していた。(中略)「ここからが新しい戦術的な変化だ。ラフィーニャとアラバを、サイドバックだけれども中盤に置く。(中略)たとえボールを失っても、全員がセンター近くの高い位置に居るので、ボールの奪還は容易だ。」
そして今後も、”施策”というよりは、原理原則と、それを支える技術(止める蹴るだけでなく、位置取りや判断を含めたもの)の方に、主な変化が現れてくるんじゃないかと思います。我々日本人の素人には、わかりづらいですけどね。幾何学的な配置には興味あるけど、「フォーメーション」には興味ないみたいな笑。日本のサッカーファンには読取りづらい違い。
パーソナリティ、選手の扱いについて
開幕直後に下記のようなツイートをしました。
グアルディオラ嫌いな人って結構いるのね〜っていう最近の発見があって、まあ人それぞれですからねって思うんだけど、「贔屓するから嫌い、メッシとか」というのを見て、メッシに贔屓もクソもあんのかと思ってちょっと笑っちゃった
— szake (@szakekovci) 2016年8月28日
これは「ペップが嫌われているなんて」と言いたいわけじゃなくて、「嫌うほどのキャラクター、ある?」という意味ですね。ペップの人間性、興味あります?機械みたいじゃない?失礼な言い方ですけど。
思い起こすと、シティが弱くてCLに出られなかった頃はチェルシーも好きだったので、ちょうどペップ・バルサ初期はチェルシーとの因縁の決戦をほぼ毎年観戦していたわけですが、その頃は所謂「劇団バルサ」に結構腹を立てていたわけですよ。ピーピーうるせえな、みたいな。アンチフットボール論争を一部で呼んだ2008/09の試合(イニエスタがロスタイムに決めたやつ)にしても、再三のハンドを見逃した審判や、調子に乗って適当なことを言うチャビ大僧正に反感を感じないでもなかったのですが、グアルディオラについてはとくに意識もしていなかった記憶があります。というか、ほとんど何かを喋っていた記憶すら無い。
そういう意味で、彼を嫌っている人については、よくあんなに人間味がない人間を嫌いになれるなあという気持ちにはなる。ヴェンゲルとか、コンテとか、モウリーニョとか、他の監督と比べても本当に人間味はない。悪い意味ではないんだが、本人にはとても言えない。
で、アンリ、ヤヤ、アグエロに見る、選手の扱い。
これについては昨今はすっかり、「代理人が余計なことを言ったからペップがへそを曲げた問題」として説明されるのが通例となりましたが、元はと言えばそもそもヤヤ・トゥレ自身のプレイスタイルなりコンディションなりの理由から、ペップが積極的に使おうとする素振りを見せなかった、それに対する代理人の牽制ないし寝技(笑)があの「ウチのヤヤ使わないで負けたら、それはベンチがアホやからということになるよね?どうですか皆さん!」(意訳)という発言であったわけで、結果的に言うとむしろ"代理人"が悪役として全ての問題を引き付けることによって、ヤヤ自身はチームに入り易くなった、バルサ時代からしっくり行ってなかったらしいペップに頭を下げ易くなった、そういう面が大いにあるような気がします。そこまで計算していたのなら代理人優秀過ぎますが、さすがに違うだろうと思いますが。(笑)
これは言われて気づきましたけど、本当にそうなんですね。本来は純粋にクオリティの問題だった(確証はできませんが、少なくともCLメンバーから漏れるまでは、代理人もとくに何も言ってなかった)はずの問題を、「謝るか謝らないか」にもっていったというのは凄い。
端的に言って、それが嬉しかったか、今年のヤヤ・トゥレを見ていて楽しかったかというと、うーんという感じ。
手前味噌になりますが、例えレギュラーでなくても"スポット"起用で輝いたり、変則起用でもFWで新味を出したりしてくれた方が、サッカー的な"意義"はあったような気が、未だにしています。
・・・いや、だってどこかの国のJリーガーじゃあるまいし(おい)、別に1ペップに嫌われようが首切られようが、ヤヤ・トゥレは生活に困窮するわけでも前途が閉ざされるわけでもないわけじゃないですか。さっさと別のクラブに行ってまた王様やるか、少なくとも"ヤヤ・トゥレ"として扱ってくれるチームでプレーした方が、見てる方も幸せなはずですよね。そうするだろうと、みんなも思ってたろうし。
こういうアンリやヤヤ・トゥレに向けられたペップの"収拾"力、悪く言えば「陳腐化」力みたいなものは同様にアグエロにも向けられていて、こちらは今のところは、前二人とは違うキャリアピークのアグエロの元気さもあって、そんなにつまらないことにはなっていない。"進化"と言えないことはないというか。
でもそれでも結構、ギリギリのラインだと思います。これ以上、アグエロの「特別」を「一般」の方に寄せて行ったらもたない、特にジェズスとの2トップ構想というのは、出来ないことはないだろうけれど、来季へ向けての"希望"よりは遥かに"不安"ないしは"不満"要素だと思いますね。はっきり言って、別に「見たく」ないし。(笑)
「陳腐化」するのは確かでしょうね。本当に「ニュアンス」に興味なさそうだから。一方で、それがつまんないかと言われると、個人的にはそうは思わないかな。デ・ブライネのようにインサイドMFに配置換えされて、ほとんど怪物になっている例もあるし。
思うに、この「ニュアンス」、あるいは「ストーリー性」に近いんじゃないかと思いますが、基本的には選手のエゴと、見る側の(悪く言えば)妄想なんではないかと。ヤヤで言えば、俺はアンカーじゃない、もっと試合全体に影響を及ぼしたいし、何なら試合も決めてしまいたい。そのために走るべきときと走らざるべきときは自分でちゃんと計算していて、走らざるべきと思ったときは走らなくても全然悪いことをしたとは思っていないと。加えて、シティが強くなった立役者は誰をおいても、まずはシルバ、コンパニ、そして俺だろう、みたいな。前述のように後半はこちらの妄想ですが、そういうストーリーを背負っていて、その文脈の中でもう一花咲かせると盛り上がるというのは確かだと思いますが、まあちょっとそこら辺は期待できない監督でしょうね。
個人的な感覚の話に戻ると、SNSの隆盛で試合がなくとも30分置きに何某かのチームニュースに触れられて、練習風景の公開なんかも進んでいて、余計に「ニュアンス」を持たせやすい環境になっていますけど、それに食傷気味、というところもある。こういう話(下記)もありましたしね。
「情熱は衰えた」ある有名作家の告白。高齢化、中毒化するプレミアリーグ。 https://t.co/9YLFytwMEW #numberweb #海外サッカー via @numberweb
— szake (@szakekovci) 2017年2月13日
" 以前も贔屓のチームが負けたらもちろん落ち込んだ。でも1日24時間サッカーのことを考えているわけではなかったし、1週間をまるまるサッカーに費やしてもいなかった。ウィークデーには別の関心事があった。その間に休息をとって、フレッシュな状態で次の試合を迎えられた。"
— szake (@szakekovci) 2017年2月13日
私たちはフットボール経済学に基づいたホモ・フトボロミクスではないからね。時に衝動的に「あーーーもうやだ、こんなクソクラブ応援してられるか!!!!」とか叫びたくなる時もあれば、自分の怒りを鎮めるためにrationalな批判を欲する時もある。でも、SNSだと立ち位置を要求されるのよ。
— Jüki Ohto Puro (@mateinappa) 2017年2月14日
試合に負ければ家族や地元のパブの顔なじみと一頻り愚痴を言い合って、それでおしまい、また来週というのがインターネット普及前のスポーツファンの生態だったのかもしれないが、今じゃBBSとかSNSで四六時中誰が悪い、試合はあーだこーだと分析が行われているからな。食傷気味で疲れるのは確か。
— Jüki Ohto Puro (@mateinappa) 2017年2月14日
で、今後。
来季は・・・どうなるんでしょう。あんまり変わらない気もするんですけど、それでもまた何か、驚きはあるのか。
いや、まあ、その前に勝ちますか(笑)。とりあえずどっちか下さい、発明か、勝利か。
ひとまず後者の方でなんとかするという感じの今シーズン序盤ですが、末永いお付き合いを頂きたいもんです。
2016/17 マンチェスター・シティの振り返り, part1: 総評編
プレミアリーグの笑えるところは、上位6クラブのファンの大半が、自分が好きなクラブは選手層が薄く、今まさに改革の途上にあるか、今後大きな強化が必要であり、よって優勝の最有力候補ではないと思っていることだ。傷つきたくない私たちの、鉄壁の守り。セリエAよりよっぽどカテナチオである。それでも、ペップ・グアルディオラを呼んでおいてCL出場圏内が目標だったという話が通じるほど世間は甘くない。もう10月になってしまったが、2016/17シーズンのマンチェスター・シティ、とくにピッチ内について、何が悪かったのかを考えてみたい。
グアルディオラが率いるマンチェスター・シティの1年目は、多少は印象的ではあったが、別に革命的ではなく、とくに強くもなかった。リーグ戦は3位で、優勝したチェルシーからは勝ち点で15も離されていた。CLはベスト16、FAカップは準決勝、リーグカップは2回戦かそこらで敗退したので、もちろんタイトルもゼロだった。ときどき、笑える負け方もした。
さらば、優しいペレおじさん
良い点は確実にあった。一言で言って、ロジカルになった。そして、インテンシブなチームになった。まあ「キビキビした」くらいの意味だが。
ロジカルになったというのは、相手によって試合ごとに狙いを変更し、またその狙いを実現するためのメカニズムを変えていたこと、そしてその狙いを試合において実現できていた、ということだ。例えば、Hエヴァートン戦やHサウサンプトン戦など(特に前半)は、シティが過去15年一度も見せたことがないレベルで相手を圧倒していた。
キビキビしたというのは、速いネガティブトランジションと、高い位置からのプレッシングで相手の攻撃を阻害し、カウンターにつなげるという狙いがシーズンを通して徹底されていたことだ。マンチーニやペレグリーニも緻密な戦術を立てて試合に臨んではいたんだろうが、とくに後者は選手がその狙いを全うするための強度に無頓着なところがあり、有り体にいって「こいつらはいつ本気になるんだ?」という試合ばかりであった。それがある種のカタルシスになっていたところは否定しないが、苛立ちを感じることが多かったのも事実である。
一方で、大きく分けて3つの問題を最後まで解決できなかった。
その1、決定力がなかった。シュート成功率は上位6クラブで最低で、チャンスコンバージョンレートもチェルシー、アーセナル、トッテナムに劣っていた*1。Guardianのジェイミー・ジャクソンは、モナコ戦の敗因を決定力不足に求めたグアルディオラを「頑迷」と評したが、それは違うだろうジェイミー。そりゃまあ、守備も問題だけど。ボールは持てる。2列目に良いポジションでボールは渡せる。しかし決まらない。ニアを開ける術がない。1トップを大きく動かし、CMFをゴール前に突入させるという形が多かっただけに、点が取れないシルバとデ・ブライネがCMFから動かせないというのは解決が難しい問題であった。
その2、カウンターを阻止する鍵となるSBとアンカーに戦術的、肉体的な強度を欠いたために、カウンターに弱かった。またそのために、前線を柔軟に動かせなかった。サニャ、サバレタ、コラロフ、クリシはコラロフを除いていずれもTeam of the year受賞経験がある名SBだが、複雑なタスクをこなし続けるには年を取りすぎていた。一方で、1v1に弱いストーンズやショットストップが壊滅的だったブラボを抱えて、普通の4-1-4-1や4-2-3-1を用いてトップレベルで戦える陣員かといえば、それも難しかった。ハートを残していたら?まあそりゃあブラボよりは良かっただろうけど、SB陣も含めて、出来るだろうと見込んでシーズン臨んだわけだからそれを言っても仕方なかろう。その見立てが甘かったとは言えるだろうが。
その3、組み立ての精度が安定しなかった。プロの言を借りる。
シティの不安定さの原因は、ボールポゼッションの精度が安定しないことにある。大敗したエバートン戦(4-0 / 1月15日)の失点場面を思い出すと、グアルディオラの絶望がひしひしと伝わってくる。(中略)ポゼッションが安定しなければ、想定外の場所でボールを奪われる。奪われた時の守備の準備ができていないから、相手のカウンターにさらされる状況になり、GKブラボが失点を重ねてしまう。そんな場面は今季に何度も見られてきた。
(出所:月刊フットボリスタ 2017年3月号 らいかーると氏の文章より)
失点後のマンチェスター・シティは、サニャのアラバロールをするようになる。フェルナンジーニョがボールを受けられたように、サニャもフリーでボールを受けることができていた。マンチェスター・シティの問題は、モナコの1.2列目のライン間を使うことができていたけれど、そのエリアから先にボールが届かなかったことにあった。サニャ、フェルナンジーニョが前線のシルバ、デ・ブライネ、スターリング、サネ、アグエロにボールを供給できなかったことで、バックパスを繰り返すことになる。ストーンズたちからすれば、1.2列目のライン間にボールを届けて仕事は終了なのだが、バックパスがすぐに戻ってくるので、なかなか大変な状況となった
【カウンターの再現性】モナコ対マンチェスター・シティ【重要なことは、誰が時間と空間を得るか】 - サッカーの面白い戦術分析を心がけます
シティのホラーストーリー: 聖なる三位一体の崩壊
とまあ色々言ったが、この辺りは全部、多分解決可能な問題なのだ。「10年に1度のバブル」「過去最高にバブル」「破裂寸前」と言われながら、AmazonやFacebookのようなテック系企業も放映権料獲得の姿勢を示したり、TVと比べてコストが低いネット配信が普及したりとサッカー放映市場の拡大はまだ続くことが予想される。
オーナーのおかげもあって、財務面の安全性も保たれている。良い選手をきっちり買えれば何とかなる問題だろう。もっと問題なのは、グアルディオラ自体が競争力を失うことだ。
今のシティは、サッカー部門のスタッフがほぼグアルディオラ仕様で固められている。どこでもいっしょにやっているトレント(助監督)、プランチャール(アナリスト)、ブエナベントゥーラ(フィットネスコーチ)辺りは別としても、ドクターも元バルサと元エスパニョールのコンビだし、移籍の決定権はすでにグアルディオラにあるという噂もある(無理もない)。シティのオーナーが他の大富豪オーナーと違って成功できた要因の1つが、チキとソリアーノというトップレベルで成功していたプロの登用だが、この二人からしてバルセロナ時代のグアルディオラの同僚なのだ。グアルディオラが失敗に終わった場合、この聖なる三位一体の残り2人まで一緒にシティを去ってしまうのではあるまいか。サッカー部門とCEOを丸ごと総入れ替えするというのは極めて難しく、時間がかかる。
確固たる根拠があるわけではないが、不安要素はある。サイモン・クーパーは実証的な文章を書く人間ではないが、革新的な監督のピークは40歳前後で、その後は”どこにでもいる監督のひとりになり、選手の調子がよければ勝ち、悪ければ負けるようになる”というのは、よくできたホラーストーリーだ。
年をとっても、グアルディオラは(少なくとも素人目には)斬新なプレーを開発するだろう。それが、本人にとっては温故知新であるかどうかにかかわらず。ただし、今のようにタイトルを獲り続けられるかはわからない。ビエルサやゼーマンのように、世界中にフォロワーはいるが、トップレベルではほとんど何も勝ち取らない、おもしろ戦術おじさんになる可能性もある。
根拠は無いと言ったが、萌芽はある。モナコ戦ではグアルディオラの扇形のカウンター防御に対して、インナーラップとドリブラー起用で崩す、というある程度模倣が可能な対応策を、実用的な水準で仕上げてきていた。言葉にすると複雑だが、絵にすると意外と単純。
モナコのカウンターの特徴は、2トップがひらく。マンチェスター・シティは3バックで相手のカウンターを迎え撃つパターンが多いので、両脇のセンターバックをピン留めする。そして、アンカーのいる選手(フェルナンジーニョやアラバロールのサニャ)にドリブルでつっかける。そして、突破するか、2トップにボールを預ける。2トップの選手がサイドに流れた場合は、後方の選手のインナーラップ。サイドに流れなかった場合は、図のようにオーバーラップする。
カウンター状態は、守備が整理されていない状況といえる。マンチェスター・シティは、正しい位置(例えば、サニャがサイドバックの位置)に戻るのに時間がかかる。可変システムの罠。また、前線に攻め上がった味方(特にウイング)が戻ってくるのに時間がかかる。よって、モナコの狙いは相手を正しい位置に戻りくいポジショニングや攻撃方法と相手が下ってこないことを考慮したカウンターを設計していた。また、それらの流れをすっ飛ばして、ムバッペがストーンズにただただ仕掛ける形も何度か見られた。
【カウンターの再現性】モナコ対マンチェスター・シティ【重要なことは、誰が時間と空間を得るか】 - サッカーの面白い戦術分析を心がけます
モナコのやり方見てるとグアルディオラのマンC攻略法が随分確立したのかという感があるものの最近の試合見てないから文脈掴みづらくはある ただ、レーンを変えて攻撃するグアルディオラのやり方自体に潜んでいるリスクを、モナコが意図的に使っている気味が強し
— 五百蔵 容 (@500zoo) 2017年2月23日
レーン変更アタックの仕組み自体を使われているので、ようするにグアルディオラのポジショナルプレーの骨格を叩かれている。前プレ受けた時ビルドアップ時のスムーズさが欠けるのもそうだが、SBとアンカーにもうひとこえ良い人材を得ないと戦術的な手当て自体が難しいかもしれない。
— 五百蔵 容 (@500zoo) 2017年2月23日
その状態でインナーラップに対応すると、レーン間で形成するディフェンシブなトライアングルのバランスが崩れ(金床役の選手が前に出てもボールの出所を潰せないか突破されるため)、カバーリングを失う状態で危険な突破を許す。SBポジション移動のピン止めと合わせ技でグアルディオラ殺しに近づく
— 五百蔵 容 (@500zoo) 2017年2月23日
アラバロール用いたグアルディオラの攻防一体だったシステム(過去形なりかけ)。CBSBアンカーがピッチ中央〜ハーフスペースに配されているので、ポジション優位により攻撃時に相手の急所を突けるだけでなく、ボールを奪われた際に“自陣の急所を効率よく防護する事ができる”画期的なものだった pic.twitter.com/CGnjPbzVj3
— 羊 (@GP_02A) 2017年2月23日
別にグアルディオラの戦術完全攻略!とか、そういう話ではない。接触のあるスポーツなので、選手の入れ替えで補填できる部分もある(例えば今シーズンは、ウォーカー、メンディ、デルフといったSB陣のスピードとパワーでボールを奪えるシーンが増えている。例えば、ワトフォード戦の3点目、ジェズスの得点シーン)。そういう白か黒か、「完全崩壊wwwww」みたいなまとめサイト的な過剰な形容詞の世界ではない。原理的に対応が難しい対策は常に編み出されるもので、グアルディオラがさらにそれに対応し続けられるかはわからないということだ。そして、そうなってしまうと中々苦しいのが今のシティである。
アブダビ買収後の第一歩は、まずピッチ内での競争力向上であった。スポーツクラブだから。その後、人材と組織の強化、収支の黒字化、海外の兄弟クラブ展開、クラブブランドの刷新と進んできたが、一周回って、ピッチ内の成績をもう一つ上の水準に高めることが必要だろう。マーケティングの模範として取り上げられるドルトムントでも、90年代にCLを制した名門という実績があった。シティにはない(あるけど古すぎて、マーケティングとしては無いに等しい)。果たしておもしろ戦術おじさんがそのミッションを果たせるのか。ファルソ・ヌエベ、ファルソ・ラテラルに続く秘策はあるのか。次回、全てが嘘になる。乞うご期待。
*1:Squawka.comより
モーリス・ロス: 2人の孤独なイズミット
ロスという選手について
2000年代初頭、まだレンジャーズが強かった頃、モーリス・ロスという選手がいた。ロスは細身のDFで、CBと右サイドバックをやっていた。もうはっきりとは覚えていないが、身軽で、知的で、細身だがタックルも強く、それなりにスピードがある、良い選手だった。ボール扱いも悪くなかったと思う(その頃はまだ誰もDFのボール扱いを真面目に考えていなかったのだ)。
レンジャーズにはスター選手が揃っていた。少なくともスコットランドの基準では。
GKにドイツ人のシュテファン・クロス。DFラインにはフェルナンド・リクセン、ロレンツォ・アモルーゾ、アルトゥル・ヌマン。MFにはバリー・ファーガソン、ロナルド・デ・ブール、ヨルク・アルベルツ、ニール・マッキャン、あと若き日のアルテタ。FWにはミハエル・モルツ、ショタ・アルヴェラーゼ、カニージャにロヴェンクランツ。強豪国の代表クラスが勢揃いである。その中で、ロスは20台そこそこにして、レンジャーズの半レギュラーに収まっていた。2002年には代表にも選ばれた。チャンピオンズリーグにも出た。ロスには、それなりに輝かしい未来が待っているように見えた。
"I thought when I was 21 and at Rangers winning trophies that it was going to be like that forever," he admits. "I don't have a Champions League jersey in the house. I gave them all away to family and friends at the time because I would just think to myself, 'Ach, there's always the ones from next season to keep'. I didn't appreciate enough what I had."
出所:A lifetime of regrets for Maurice Ross, Motherwell's travelling minstrel - The Scotsman
そこから、ロスのサッカー人生は暗転した。シェフィールド・ウェンズデイ、ウォルヴァーハンプトン、ミルウォールとイングランドの下部を転々として、それからノルウェーに行き、中国に行き、遥かトルコはコジャエリにも行った。
2011年にスコットランドに戻ったときには、ロスはレンジャーズで「期待の若手」と言われていた頃の自分に、恐ろしくシニカルになっていた。曰く、最初からそんなレベルの選手ではなかった。周りのスター選手が、下駄を履かせてくれていただけだったのだ。
"I was treading water there. I just couldn't fathom how I was knocking my pan in just to be on a level playing field with the quality of the team-mates around me. The other guys in that Rangers side then could just stroll about and still be better than me. I was lucky to get the number of games I did for Rangers. I was probably only capped because I was at Rangers. I never watch any of my old games back on tape, it would just frustrate and annoy me."
出所:A lifetime of regrets for Maurice Ross, Motherwell's travelling minstrel - The Scotsman
Despite winning 12 caps for Scotland he felt playing alongside the likes of Barry Ferguson, Arthur Numan, Gio van Bronckhorst and Ronald de Boer every week gave people a false impression of his talents.
Ross added: “At Rangers, Numan would get the ball. It would be popped back to Amoruso. I am already going knowing Barry Ferguson will half turn and play it first time.
“At Millwall it went into Marvin Elliott and he lost it because he is not as good as Barry Ferguson, and suddenly I was 30-yards out of position.
“People think because I was a Rangers player that shouldn’t happen. I wasn’t the type of player who could beat five men. I needed support and I didn’t have it anymore.
“I was a link in the chain at Rangers. I would show up well as the links around me were so strong.
“When I went down south I didn’t have the ability to show I was brilliant.”
出所: Maurice Ross: Leaving Rangers finished me – The Scottish Sun
擁護をすると、彼は自分を卑下しすぎている。後にレンジャーズやセルティックで活躍したスコットランド人DF、例えばウィテカーとか、ブロードフットとか、ウェブスターとか、コルドウェル兄弟とか、その辺りと比べて格段に見劣りするなんて選手ではなかった。同い年のスコットランド人で、セルティックにいたスティーヴン・クレイニー(後にブラックプールで活躍し、イングランドのプレミアリーグでもレギュラーを張った)との比較には「あいつは元から良かったから。ただチャンスが中々来なかっただけで」と言うが、クレイニーとロスがレギュラーに収まるスコットランド代表は、決してあり得ない未来ではなかったと思う。
Could there yet be a way back? Stephen Crainey, then of Celtic, was an international team-mate of Ross during the same period and has returned to the Scotland fold with Blackpool. Ross is making no such predictions for himself, though. He refuses to believe he has it in him. He claims Crainey was always good enough, he just missed the exposure until Blackpool's surprise promotion to the Premier League. The closest he has got himself to repeating anything like the good old days came in China.
出所:A lifetime of regrets for Maurice Ross, Motherwell's travelling minstrel - The Scotsman
しかし、一度味わった栄光は、それがどんなサイズでも忘れがたいものだ。まず、ちょっとした不運が重なって、キャリアアップの道が撚れ始めた。その頃は2部に落ちていたとは言え、人気があったウェストハムへの移籍が決まっていたが、レンジャーズの都合とパーデューの心変わりで無くなった。
The story of how Ross ended up in Norway is one of what he calls catastrophic events. During his last year at Rangers he was very close to signing for Alan Pardew’s West Ham. He was in in London with a contract agreed when Rangers called him back up to Glasgow because of an injury to another player. By the time Rangers were willing to let him go, Pardew had ripped up the offer.
出所:90 Minute Cynic / Across the North Sea Interview: Maurice Ross
昇格するウォルヴァーハンプトンに移籍できそうだったが、セルティックのジャッキー・マクナマラと天秤にかけられて、取りやめになった。マクナマラは移籍してすぐに怪我をしたので、ロスは完全移籍するはずだったクラブにレンタルで派遣され、マクナマラが復帰すると切られた。
Then when his contract with Rangers was up, Wolverhampton were willing to offer him a three-year deal if their first choice, Jackie McNamara, would not leave Celtic when his contact came to an end at the same time. As everyone expected McNamara to get a new offer at Celtic, Ross looked set to sign for the championship club, who would gain promotion to the Premier League the following season.
Instead, McNamara ended up leaving Celtic in controversial circumstances and Ross was left without a club. When McNamara then incurred a serious injury shortly afterwards, Ross was loaned out to Wolves after not settling at his new club Sheffield Wednesday, eventually signing a six-month permanent contract with the club. With McNamara back to fitness, Ross was released again, this time ending up at Millwall and what he calls the worst experience of his career.
出所:90 Minute Cynic / Across the North Sea Interview: Maurice Ross
レベルについて侮られがちなスコットランドリーグだが、レンジャーズとセルティックは毎試合3万人から4万人、下手をすると5万人近くの観客が入り、営業収入は世界のトップ20に入るようなビッグクラブだった。ミルウォールはそうではなかった。
‘It was a total culture shock in every sense. The football was completely different, kick and run. Players were eating baked potatoes and beans. The whole set-up was less professional than what I had been used to and it was a really bad time’.
出所:90 Minute Cynic / Across the North Sea Interview: Maurice Ross
ロスは彼曰く“大したことない監督の下で、大したことない選手とプレーする”ことに適応できず、クラブにも馴染めず、試合に出たり、出なかったりしながら20台の中頃を過ごした。
"I kick myself every day," claims the Motherwell defender. "There's not a day that goes by where I don't think 'what if, what if'. If I'd just done things differently."
出所:A lifetime of regrets for Maurice Ross, Motherwell's travelling minstrel - The Scotsman
“I had everything quick. I had the best of everything at Rangers. I worked with the best coaches and the best players.
“Before you know it you are at Millwall with not so good coaches and not so good players. But my head was still telling me I was dealing with Jan Wouters and Ronald de Boer.
“I wasn’t very good at adjusting and that becomes a problem. I had been used to a certain standard, but people were not interested.
“It didn’t help that I was so outspoken. There was also bitterness and resentment there, and that all came from my own mind set.
出所: Maurice Ross: Leaving Rangers finished me – The Scottish Sun
その後、2008年にノルウェーに渡って、ウーヴェ・レスラー(マンチェスター・シティの名FWだ)が指揮するヴィーキングで、ちょっとキャリアを取り戻した。30試合近く試合に出たし、リーグで3位に入った。その頃のヴィーキングにはトーマス・ミーレ(元エヴァートン、サンダランドのGK)や、ラグンヴァル・ソマ(元ウェストハムのDF)といった英国のリーグ経験者がいたから、馴染みやすかったかもしれない。
Rosler and Viking offered him a way out.
‘I had a good feeling as soon as I arrived there. There was more money in the Norwegian league back then, Viking had just moved into a new stadium and had some very good players. Fit, hungry boys that tried to play proper football. It was a nice, fresh break from what had gone on at Millwall’
出所:90 Minute Cynic / Across the North Sea Interview: Maurice Ross
我らが愛しのイズミット
そして2009年の2月、ロスはイズミットにいた。イズミットはイスタンブールからアジア側に渡って1時間か2時間ほどのところにある人口約30万人ほどの港湾都市で、海軍の基地がある。その他には?まあ、色々あるわな。トルコ人に言わせればだが。10年前の大地震で崩壊したまま放っておかれた家がそこかしこにあったが、きれいな街だった。
ロスはそのシーズンにトップリーグに昇格したコジャエリスポルに移籍したのだ。コジャエリスポルは昔UEFAカップにも出たことがあるクラブだが、その頃は全然強くなく、残留を目指して戦っていた。タナル・ギュレリという名ストライカーがいて、彼が1人頑張っているようなチームだった。
で、かつてモーリス・ロスに薄っすらと愛着を持っていたサッカー少年だった私も、まさに2009年の2月、イズミットにいた。私はその頃、イズミットで英会話教室のアシスタントをしたり、幼稚園で子供の面倒を見たり、中学生のガキにタバコをくれてやったり、クレー射撃の選手とつるんだり、まあプラプラしていた。正確にはどうだか知らないが、私が知る限り、その頃イズミットにいる日本人は私を含めて3人だけだった。ちょうど総選挙の時期で、県知事のイブラヒム・カラオスマノールが選挙対策の一環で我々と握手したのが新聞に載ったくらいだったから、珍しい生き物だったことには間違い無いと思う。
私はイズミットでちょっとしたトラブルを抱えていた。というか、トラブルがないことがトラブルだった。私はどこかの学校か職場で数ヶ月腰を据えてインターンをする予定だったのだが、私をイズミットに連れてきてくれた団体は適当な受け入れ先を見つけるのに苦労していて、だからこそ市立の幼稚園のようなところでも行かざるを得なかったのだ。幼稚園児というのは、万国共通で半分動物みたいなもんだから、英語が喋れようが喋れまいが、どっちでも良かった。会社や大学で日々トラブルに直面し、それを乗り越えていく自分を夢想していた私は、自分で受け入れ先を見つけようとするわけでもなく、団体を手伝うわけでもなく、ただ自分の不幸を嘆きながら、プラプラとしていた。こんなことをしていて良いんだろうか、と思っていた。
冬のイズミットは寒かった。私は同じようにイズミットにおける珍獣であり、同じ寒さに震えており、そして同じような場違い感を感じているかもしれないロスに、親近感を覚えていた。まあスコットランド人だから、寒くなかったかも知れないが。
結局コジャエリスポルは降格し、財政難に陥り、2017年の今では4部にいる。ロスには給与が支払われず、今でも未払いのままらしい。
ロスは2013年に引退し、次の人生を選んだ。1年間、コスタ・コーヒーに朝から居座って、工学の勉強をし、次に監督になった。
He spent the next 12 months studying engineering while sitting in Costa Coffee then headed to Norway and a new life.
Ross said: “I told myself I would get over football.
“So I got up 7am every morning and went to the coffee shop and studied engineering.
“I stayed there for seven hours a day. I sat in Costa in Broughty Ferry five days a week. It really helped me and gave me focus again.
“I now work 12 hours every day, but it is not a stress. I finish work as an account manager and head to training. We train five days a week.
“I love it. This is like an investment for me. I have got the bug. I was thinking when was the last time I submerged myself in something?
“I have a good feeling about myself again and I have got that passion back.”
出所: Maurice Ross: Leaving Rangers finished me – The Scottish Sun
ロスは今、フェロー諸島の首都トースハウンから船で2時間かかる島で、監督をしている。店が数軒と、ピザ・レストランとパブが1つずつある。コーチ養成課程で会ったオランダ人のマーク・デ・ヴリース(元ハーツ、レスターのFW)が助監督になり、2人でルームシェアをしている。黒かった髪は灰色になった。成績は対して良くないが、情熱は消えていないようだ。
“We get about 600 at games, but that’s more than ten per cent of the island’s population.
“I view this as a major part of my development as a coach. I believe coaching is in my DNA.
“The road I’m on may be a bit windier than the one others take, but that doesn’t bother me.
参考記事
90 Minute Cynic / Across the North Sea Interview: Maurice Ross
プレミアリーグ チェルシー戦@スタンフォード・ブリッジに関するメモ -全てが嘘になる-
Stats
(埋め込み画像にできない!)
- 前半はボールを支配しつつ、モラタ、アザールから危険な場面も発生する、緊迫感のある試合
- モラタの負傷交代前辺りから、ボールを支配し、失っても速いネガトラで封鎖、高い位置からのプレスで回収、と、試合をコントロールできるようになる
- とはいえ、決定機はさして作れず。チェルシーの堅牢さが際立つ。
空くWBから流れるアザール、カンテ、モラタに縦スルー以外は、攻め手がないチェルシー。
— szake (@szakekovci) 2017年10月3日
まあシティも大して崩せてはいないんだけど、コントロール出来ていることが大事だということにしようじゃないか
戦術分析
- 指摘されているように、ボール保持時のシティは3-2-4-1にシフト。
- ザネー、スターリングが高く張って相手を押し込み、ウォーカー、デルフはジーニョが数的不利に陥らないよう、中央に絞ってサポート。(場合によって変わるが、主にデルフが前にいた)
- デ・ブライネとシルバは空いたサイドでボールを持つ。シルバはあからさまに右サイドに寄って、数的優位を形成しようとしていた。
いつものWのスタート(左からデルフ、オタメンディ、フェルナンジーニョ、ストーンズ、ウォーカー)からMのスタート(ウォーカーか3DFの様な配置)右サイドはデブルイネの配置によりスターリングやウォーカーの配置が決まり、右はシルヴァもしくはデルフか。攻撃もM型ではなく3-3-1-3配置
— FootballTUBE (@soccertaroooo1) 2017年9月30日
おそらくペップはポチェッティーノのコンテ532崩しを参考に今回の戦術を組んでる
— るか (@yankee_hcts) 2017年10月4日
ベースになる3-2から2-3可変はスパーズもやってて、これで2トップを無効化 ポチェがやられたWBとIHの押し上げはWGがWBピン留めして封じると
ウォーカーがRB、RCB、右ボランチを状況によってやり分けている
— szake (@szakekovci) 2017年10月3日
ウォーカーがずーっと、ボールの位置によってアザールにくっつく、離れる、くっつく、離れるを繰り返して、KDB(とシルバ)へのレーンを調整している
— szake (@szakekovci) 2017年10月3日
上手いなあと思った場面
— カツオサイクロン🌪 (@GATE12JPN) 2017年9月30日
532で閉じるチェルシー、入り込めないシティ
最後はアザール、ウィリアンの線に3人目が出てきたところでオタメンディが見逃さずに通す
それとカイル・ウォーカーの位置取り修正が、やがてDシルバかKdBのどちらかをフリーになれるよう派生させていく流れも面白い pic.twitter.com/rQtU3jeVUD
How @PepTeam idea of fullbacks in the center breaks 5 defenders of @ChelseaFC #cfcvcity @ManCity
— Mindfootballness (@Mindfootballnes) 2017年10月3日
video for educational purposes only pic.twitter.com/LvPr7AcX9h
- 逆サイドの学び続ける男は、2試合連続で左サイドバック兼実質ボランチとして出場
- 最初、左奥を突破されても全く左に戻らず、オタメンディが釣り出されてそりゃまずいだろと思ったが、随所に無理の効く身体、それなりのキープ力を披露し攻守に活躍
- 関係ないが、私はデルフを結構足が速い選手だと思っていて、それが私だけでないのはPES STATS DB(海外のウイイレEDITサイト)でも然りなんだが、左に入ると、後ろ向きで追いかけるときだけ妙にドタバタして遅いのだった
デルフのフィールド2ファルソラテラル時の攻→守に関しては中央に出てってサイドガラ空きもあるが、そこも含めプレッシングを選択。
— FootballTUBE (@soccertaroooo1) 2017年9月30日
サネが戻ったりオタメンディもカバーしたり、デルフも慌てて戻っているので全て適応するのは難しいというのと、思っている以上にやられはしない。ウォーカーのおかげ
- 後半、コンテは5-3-2から5-4-1にシフト。同時に、DFがよりこちらに食いつくようになる
- ただし、これでよりスペースができやすくなってしまったように思われる。シルバのチャンス(アロンソにブロックされた)は、スターリングにケイヒルか誰かが食いつき、DFラインからのパス一発で裏を取られたところから。
- モラタの代わりに入ったウィリアンはコンディション最悪で、突破はできないわ、ボールは失いまくるわ、FKは壁に当てるわと苦しい状況だった
- そして、デ・ブライネのミドルで先制
マンCはオタメンディとストーンズが慌てるシーン、皆無に近く。ワントップのアザールは浮遊し続けている。
— とてなむ♡伏魔殿撤収〜⚽️🌈 (@calciowasoccer) 2017年10月1日
72分
アザール➡︎ペドロ
バカヨコ➡︎バチュアイ
うーん、アザールかあ。
俺ならクリステンセンを下げて明確な4バックにチェンジでアザールを左の矢に置くがね…
相手の目線から
- 私の限界で、相手側はなかなか集中して見れないのだが、チェルシーは非常に堅固だった。
- 決定的なチャンスはほとんど作れず、デ・ブライネのスーパーゴールがなければ引き分けだった可能性は十分ある。
- モラタとアザールは、前者はストーンズを交わしたシーン、後者はジーニョとウォーカーの前目の潰しをすり抜けるシーンなど、数は少ないとは言え一点あり得る状況を作っていた
- 戦術的に劣勢を強いられても、最小失点差、運によっては勝ち点も、という状況まで持ち込める耐久力はさすがチャンピオンというところ
- ペレグリーニになったくらいから、チェルシー戦が1年で一番楽しく緊迫した試合に思えるんですが、どうでしょう。
シティ戦の感想は「これがチェルシーのやり方。せめて引き分けにしたかった。モラタの退場は痛かった。」って感じかな。プラン通りに進んだうえでの結果だと思うし、これより手堅いプランも思いつかない。
— Blue is the colour!! (@CFC838) 2017年10月4日
シンプルに強く、硬く、ウザいチェルシーに対して、濃密なサッカーで殴り続けるシティ。お互い2年目で、監督の色がハッキリでた面白い試合だった。特にデブルイネの利己的でありながら利他的な、相手の嫌な事をし続けるマンっぷりが凄い。
— Blue is the colour!! (@CFC838) 2017年10月4日
支配は許しても、極力ゴールからは遠ざけ続けた結果の0-1敗戦だし、アスピリクエタとダビド・ルイス抜きで頑張った3CBには満足。アスピはWBにいたけどね。これからの補強は思ったより前線のブラッシュアップに専念できそう。
— Blue is the colour!! (@CFC838) 2017年10月4日
より広い文脈から
DAZNがあんまりやってくれないのとCL合わせでスカパ欧州セット入り直すの忘れてた等の関係上、今季のマンCの試合をようやくまるっと観れるというところ。さしあたりデブライネの先制点まで観ました。マンCは何かが起きはじめてますなコレ。
— 五百蔵 容 (@500zoo) 2017年10月1日
マンC自体、完璧なプレーをできてますのぅという内容でもないのだけれども、それでもコンテの3バックシステムをほぼ圧殺できている、お互い最低でも3層の縦深を維持しながら戦うトランジション合戦もほぼ自軍有利に進められていて、作戦遂行度70パーで完勝。みたいなゲーム。
— 五百蔵 容 (@500zoo) 2017年10月1日
それくらい、ピッチのほぼ全てのエリアでコンテに戦術的には何もさせてない。チェルシー側が使いたい戦術的・訓練的な優位性をほぼ消し去っている。構想や実装面(兵站面でも)では同レベルにある強度のチームに、相手ホームでこういう事ができるということは、見た目以上の何かが起きてる可能性がある
— 五百蔵 容 (@500zoo) 2017年10月1日
全体として気になっているのはあの試合はほぼ全ての時間帯でオープンな状態(コンパクトフィールドが生成されない状態)にあったように見えること、それがコンテのシステムに打撃を与えていたように見えること、その状態はグアルディオラの何らかの手筋によって導かれていたように見えること。
— 五百蔵 容 (@500zoo) 2017年10月2日
フィールドと戦術の関係、という問題系において、ラグビーはサッカー化しつつあるしサッカーはラグビー化しつつあるという感がどんどんする昨今なのだけれど、先日のチェルシーvsマンCでグアルディオラがやってた(今季基本的にやってることかもしれないが)のってそこに触れてるような気がしている
— 五百蔵 容 (@500zoo) 2017年10月2日
あーそういうことか。最初に観たときの印象は、中央での攻略が思ったより多くて、そっちの印象に引っ張られていたんだ。サネとスターリングの攻撃時のポジショニングは、確かにワイドだ。
— Shizuoka Brain (@gorilla_soccer) 2017年10月2日
ワイドに張ったことで、ハーフスペースが空いて、そこを結構攻略していたんだ。つながってきた。
— Shizuoka Brain (@gorilla_soccer) 2017年10月2日
マリッチが反応したツイート↓
— カツオサイクロン🌪 (@GATE12JPN) 2017年10月2日
Martin Rafelt (Spielvrlagerungライター)
チェルシーvマン・シティの失点シーンを引き合いに出して
「マンマークはスペースのコントロールができず、多くのパスレーンを開き、マーカーのカバーができず悪化する(訳: 要精査)」 pic.twitter.com/TDhjo7wja3
まとめると、あくまでマーク方式の善悪についてではなくて、1on1は本質的に存在しないという前提に立って、開通されるレーンにどう対処するかが主題となってるのかな。
— カツオサイクロン🌪 (@GATE12JPN) 2017年10月2日
その他
CL グループリーグ シャフタール・ドネツク戦に関するメモ
- 4-1-4-1でジェズスとアグエロを併用。
- 基本的なゲームプランは、シャフタールにボールを保持させないこと。そのために、GKまでを射程にした前線からのプレッシングと、高い位置でのネガトラ刈り取り。
- 一方で、こちらがボールを持った際にはスピードを落とさず攻めることを重視し、テンポを落とすことには拘らない。
- そして、シャフタールは後ろから前まで割とボールが持てる。とくにブラジル人を揃えた前線は、1人2人交わしてボールを保持できる力がある。
- 然るに、ボールを奪われた場合に周囲が間に合わず、クロスカウンターを決められる場面が目立つ。
- また、GKまでプレスをかけると当然蹴るので、相手の攻撃のスイッチが入る。GKピャートフは正確に長いボールを蹴ることができ、前線のフェレイラも空中戦やポストである程度は優位を示す。
- となるとDFと中盤の間が空き、相手の2列目が前を向いてボールを受けられる。
- また、シャフタールの中盤はインサイドが堅く、なかなかシルバ、アグエロ、デブライネにボールが入れられない。ザネー、ジェズスはライン際で受けたときに中央に向かってドリブルしながら相手をひきつけるのがスターリングほど巧くないので、外-外循環もWGで閉塞される。
- という形で苦戦した前半。
- 後半は開始3分で相手中盤のミスパスからデ・ブライネのミドルで先制。これでシャフタールはある程度前に出ざるを得なくなったが、シティのビルドアップを大して規制できない。
- とくにSHが前に出るようになったので、こちらのWGへの対応が一枚になったが、そのSHはウォーカー、落ちてきたデ・ブライネ、デルフからの外ー外ラインを止められない。
- スターリングの決定機、得点はその形から。また、サイドチェンジからのザネーのアイソレーションも、そこそこ機能していた。
- 試合を通して素晴らしかったのは、こちらの前プレ。頑なにGKからつなぎに行ったシャフタールだったが、後半はカウンターで数回サイドを走らせた以外はほぼ全て中盤でボールを回収されており、シティは安定して試合を進めることができた。(いくつか緊張するシーンはあったが)
シティの前プレがハマりまくりで、シャフタールはロングボール蹴らされて、それをシティに回収されての繰り返し。
— Shizuoka Brain (@gorilla_soccer) 2017年9月27日
見返してみたら、そんなに前半攻められているわけでもなかった。攻めあぐねてはいた。デブライネのサイド流れも、凄いはすごいが考えもんだった。
— szake (@szakekovci) 2017年9月27日
デブライネが流れてジェズスが中に入ると、結構判断を間違える。絞ってくるデルフがサポートポジションとるの下手なのもあって、大チャンスになるところを二回潰して一回はピンチになった。
— szake (@szakekovci) 2017年9月27日
デブライネとシルバが離れすぎるのも、インサイド取れないからどうなの感、ある。
2017/18 マンチェスター・シティ 選手名鑑(ローン放出組編)
GK
ジョー・ハート Joe HART
ゴールデングラブ賞4回、かつての正GKはウェストハムへ。未だ完全移籍化しないのは、給料に折り合いがつかないからかも知れない。彼ほどシティに貢献した選手でも、理不尽な誹謗中傷を受けたりするというのは、残念の極み。
アンガス・ガン Angus GUNN
父親の縁があり、本人も15歳まで在籍していたノリッジにレンタル。今のところレギュラー。控えではあったものの、U21代表でツーロンに出ている。
ヘロニモ・ルリ Geronimo RULLI
厳密にはシティが買い戻し条項を付けているだけで、本所属はソシエダだが、近年活躍著しいというアルゼンチン人。日本では「スペイン語ではルジと読むからルジ」と信じられているが、スペイン語でもルリ。今年、シティはエデルソンより先にルリを買い戻そうとしていたらしいが、W杯に出たいからとか何とかいう理由で断られた。
DF
ジェイソン・デナイエル Jason DENAYER
セルティックで最優秀若手賞を取ってから丸2年。末はバルサかマドリーか、と沸き上がっていた界隈もすっかり落ち着き、株は下がりっぱなしである。セルティックは良いとして、次に行ったのがガラタサライとサンダランドというのは、申し訳ないけど、間違えたでしょう。どう見ても。サンダランドでは多少才能を見せてはいたが、全体的にはかったるそうな態度で、ローン終了後には街ごと引っ括めて貶めるという暴挙。あれはないわ。さすがに。
とはいえ、毎年毎年ローンでたらい回しにされる難しい状況なのも確かで、そろそろ腰を据えて売るなり使うなりした方が良いと思う。今年は再度ガラタへ。
パブロ・マフェオ Pablo MAFFEO
あんなに大量に押し付けてちゃんと役に立ってるのか不安になるジローナとNACブレダへのローン組で、恐らく最も重宝されているのではないか。レギュラーとして昇格に貢献し、今シーズンもジローナの右サイドでスタメンを張っている。意外とスピードや突破力もあり、これはまじでモノになるかも知れん。直近のバルサ戦ではメッシのマンマークを任され、「ボクいくつ?」「どっから来たん?」と、おばちゃんのような尋問を受けた模様。
アンヘリーニョ ANGELIÑO
一方、こっちは大分首が涼しくなってきた。攻撃に持ち味がある左サイドバックといえば聞こえはいいが、守備が相当に怪しいのでウィングで起用されることも多々。左バックがメンディしかいないことが分かりきっていながら、一顧だにされずブレダへローン。
アシュリー・スミス=ブラウン Ashley SMITH-BROWN
昔バルサが欲しがったというサイドバック。多分右利きだが左も使えて、両サイドバックこなせる。昨シーズンはブレダでそこそこ出場機会を得て、今シーズンはハーツにレンタル。シティで未来がある可能性は低そうだが、良いキャリアを築いていけそうな気はする。関係ないけど、ハーツ、アーロン・ヒューズとベラがいるのね。あとラファティーもいる。
MF
アレイシュ・ガルシア ALEIX GARCÍA
ビジャレアル育ちのCMF/DMF。でもカタルーニャ人。昨シーズンじっくり手元に置いていたが、今年は一点ジローナへ。脇役としてなら今の状態でもそこそこトップで使えそうな気がするが、大きく育てたいのかもしれない。
マヌ・ガルシア MANU GARCÍA
2人目のガルシア。こっちはアストゥリアス人。アレイシュより前目のポジションで力を発揮するタイプで、仕掛けて良し出して良し。昨シーズンはアラベスでリーガに挑戦したものの、ほとんど戦力にならず途中でNACブレダにスイッチ。レギュラーとして昇格に貢献し、今期もそのままエールディビジ挑戦。
ドウグラス・ルイス DOUGLAS LUIZ
ヴァスコ・ダ・ガマから£10mの大金で獲得したCMF。さして精度は高くないが、パワーのある右足が武器の8番タイプ、らしい。中盤のセンターなんだけど、ボールの触り方が点じゃなくて線と言うか、ヌメヌメっとしたボール運びと機敏な動きが特徴的。今期はジローナ組の1人としてリーガ挑戦。
ベルサント・ツェリーナ Bersant CELINA
コソボ代表。でもアルバニア語は苦手らしい。昨シーズンはトゥウェンテでエネス、イエボアとシティローントリオを組んでいた。今年はイングランドに慣れる名目なのか、2部のイプスウィッチにレンタルだが、監督ミック・マッカーシーだからな。どうかと思うよ、私は。ツェリーナのような、量より質のアタッカーを使いこなせる人には見えないが。
案の定、ツェリーナは「なんで使われないのか理解できない」と早々に不満を漏らし、監督は監督で「サイドで使おうと思ったけどFWでしか使えねーよ、あれは」との見解。不安が募る。
パトリック・ロバーツ Patrick ROBERTS
セルティックファンの歓待を受けて頑張っていたまでは良かったが、歓待を受けすぎて里心がついてしまったイングリッシュ・メッシ。今年はプレシーズンも帯同し、ギリギリまで残留の可能性があったものの、結局再度グラスゴーへ。
まあセルティックが偉大なクラブなのは間違いない。CL出れるし。一方、近年はファン・デイクとかワニャマとかいるとは言え、過去の実績から考えれば、SPL出身の選手がどこまでEPLにフィットするかというのは怪しいところ。だったら貸すなよという話ではあるが。僕このうちの子になる、と言い出しそうな気もする、そんな20歳のウィンガー。
ブランドン・バーカー Brandon BARKER
Made in Manchesterの左ウィングは、ヒバーニアンへローン。U20代表からも遠ざかり、同年代のW杯優勝メンバーにも加われず、キャリア確立のためには勝負の1年になりそう。
アーロン・ネマネ Aaron NAMANE
右利きの小柄な左ウィング。ユースチームではUEFAユースリーグでも大活躍していたとかしていないとか。とりあえずスピードはあるらしい。1部に復活したレンジャーズへ。
FW
マルロス・モレーノ Marlos MORENO
デポルティボには馴染めなかったコロンビア代表。今年はジローナ大量ローン組の1人。ブレダもそうだが、こんなに押し付けて大丈夫か。
トーマス・アジェポン Thomas AGYEPONG
ミツカンっぽい響きのガーナ代表。実は2015/16シーズンからトゥウェンテに出されていたが、去年からリーグを下げてブレダでプレー。ドリブルが面白いことはわかった。
ティエリ・アンブローズ Thierry AMBROSE
ペレグリーニ時代から才能が注目されてはいたフランス人。大怪我で1年ほど棒に振り、再起をかけて今年はブレダへ。お前もブレダかい!しかし一応エース格に収まっているようだし、当たれば儲けものという気持ちで見守りたい。
エネス・ユナル Enes ÜNAL
昨シーズン、トゥウェンテでリーグ戦18得点とブレイク。ロングショットとエリア内の強さが際立っており、如何にオランダとはいえこれは将来が期待できるかも、と思っていたら労働許可が降りなかったのでビジャレアルに売ってしまいました。まあ買い戻し条項ついてるけど。
ビジャレアルはバッカ、サンソーネ、ソルダード、バカンブとトップリーグで二桁獲ってきた代表クラスが揃っているので、厳しい競争が待っている。ちなみに「ウナル」でも「ユナル」でも良いんだけど、Gündoğanを「ギュンドアン」と読むなら、こっちは「ユナル」じゃないと筋が通らないのではなかろうか。
2017/18 マンチェスター・シティ 選手名鑑(トップチーム+α編その2)
MF
8 イルカイ・ギュンドアン İlkay GÜNDOĞAN
派手にやられたって心は折れないの。例えクラウディオ・ヤコブだって俺から勝利は奪えないの。そんな視野の広さ インテンシティ ボディバランス フットワークばっちりなサッカーグラップラー。昨年12月の大怪我から、心折れずに最近復帰。基本的にはインサイドハーフおよびCMF。ファンの間では、ボールの引き出しに難を残すジーニョや身体がついていかないヤヤに変わってアンカーで起用されるという説も絶えない。ドイツ人らしいバランスの良いMF。
18 ファビアン・デルフ Fabian DELPH***
DELPH ! I need somebody
DELPH ! Home grown preferably
DELPH ! You know I need someone
DEEEELPH !!!!
というビートルズダジャレとともに加入したMFも早3年目。当時は代表のレギュラー格に定着しキャリアの絶頂にあったが、シティで控え生活を送るうちにすっかり招集されなくなってしまった。如何せん怪我が多いのと、決して守備が上手いわけではないのが痛かった。今シーズンはストーク移籍が決まりそうになっていたが、結局残留。早速手薄な左サイドバックをやらされていて、イングランド代表がこういう立場になるからシティは割と叩かれるという典型例である。奇妙なキープ力、体力とスピード、左足のミドルが武器。年1で世界一すごいゴールを決める。
25 フェルナンジーニョ FERNANDINHO
消去法で言えば一番器用そう、と思われたのか知らないが、去年はアンカーどころか左右のSBまでやらされたブラジル代表のMF。本職はもうちょっと前目のボランチ。結果として、アンカーまではよかったがSBはさすがに苦しくパフォーマンスは低下。ファウルトラブルも嵩むという、運のない役回りを引き受けた感があった。今シーズンはウォーカーらの加入でアンカーに固定。表立って賞賛されることは少ないが、プレミアのCMFとしては相当に高い水準でバランスが取れている方。フェルナンジーニョなんかも、やっぱ相当上手いしね、って、川勝良一っつぁんはいつも言ってる。
42 ヤヤ・トゥレ Yaya TOURÉ
近年の「強いシティ」はヤヤ・トゥレとシルバの到来によるところが大きい。34歳、さすがに衰えが激しいが、それでも凡百な相手なら片手で片付ける超人的な肉体。それでいて、無理めなパスコースも余裕で通す技巧派。基本はアンカー。
昨シーズン序盤は純粋に戦力面の問題で干されていたが、代理人がグアルディオラを誹謗中傷するパワープレーで「謝るか謝らないか」の問題に転換。さらに、本来は「代理人が」謝るかどうかの問題だったのに、「ヤヤ・トゥレがビデオで謝る」ことでグアルディオラの関門も突破。有耶無耶のうちにレギュラーまで取り戻してしまった。もうヤヤの我儘で揉めるほど戦力的な重要性が高いわけでもないし、本人もある程度走るようにはなったから、このまま一芸職人的立ち位置で晩年を迎えるというのも悪くないのではないか。
あと、私の記憶が正しければ、ヤヤはシティに来てからの約8か9年間で、去年の1本を除けば、2013/14シーズンしかFKを決めていない。でもそのシーズンは4本決めてる。何なんだそれ。
47 フィル・フォーデン Phil FODEN*
夏のプレシーズンでデビューした左利きのCMF。若いときのウィルシャーをもう少しシンプルにしたような選手で、細身の割にキックが強いのが頼もしい。地元育ちのシティファン、U-17代表の主力、今年のU-17 EUROではTeam of the Tournamentに選出、プレシーズンのまんゆ戦ではエレーラを翻弄、そしてグアルディオラが絶賛。祭りである。まあ最後のは、いつものことだが。
ところでせっかくの門出に演技の悪いことを言いたくはないが、10年やそこら見ていると、悲しいこともあるものだ。00年代のシティには、スティーヴン・アイルランドとマイケル・ジョンソンという輝く2人の才能があった。アイルランドはベルコヴィッチのように軽やかで、ジョンソンはランパード2世になるように見えた。だから若い才能に期待することに、正直言って私はびびっている。
それでも、フォデンには明るい未来が待っていると信じたい。すぐ人を褒めたがる監督のことは置いといても、フォデンは地元生まれで、シティファンで、本物の才能あるMFなのだ。そんな選手が出てくるのは20年に1回もないのだから。
17 ケヴィン・デ・ブライネ Kevin DE BRUYNE
私はシティのファンで、チェルシーも結構(シティが弱い頃は第2のチームとして)好きだったので、どうしても大富豪による買収即是強豪のシュガーダディ・モデルに甘いところがあるが、シティが叩かれるのもそれはそれでわかる。
シティがリーグ優勝やCL出場を狙えるくらい強くなったのは、何と言ってもADUGが買収したからだし、大富豪が買ってくれたので強くなりました、というのは、スポーツとはまた別の話いう気がするのは至極当然だからだ。金だけあっても適切な人材を揃え、組織を構築しないと強くなれないとか、投資対象として魅力的だと思ったという意味ならグレイザーやFSGも同じではないかとか、色々反論もできないことはないが、どうしてもシティの躍進は、結局のところADUGが買収したから、という一点に帰着してしまうのだ。これはどうしようもない。
一方でファンとしては、応援しているクラブが強くなり、タイトルの快感を味わえる喜びを否定し難いのも確かである。そういう意味で、私が「強くなってよかったな」と心底思うのはデ・ブライネのような選手が自分のチームにいて、毎週プレーを観ることができる、そのときである。そのくらい、今のデ・ブライネは凄い。本当に凄い。Worth pay to watchである。ねえ、サヴェージ先生。
www.manchestereveningnews.co.uk
今シーズンもインサイドハーフとして攻守に八面六臂。中央突破、ネガトラでのボール回収、右に張ってのクロス、左に流れてクロス、SBの場所に落ちてロングフィードと、あらゆることに精度が高くて効果的。いつかはバロンドールも夢じゃない。だからあなたも祈りましょう。「レアルに買われませんように」と。
21 ダビド・シルバ David SILVA
みんな大好きダビシルバ。プレミアリーグのファンが身近にいたら、訪ねてみられるとよい。「シルバってどんな選手?」と。賭けてもいいが、100人いたら99人は「上手」と言うはずである。そういう人。
一方で、スペイン代表の主軸としてEURO2回にW杯1回を制した超大物のはずなのに、少々影が薄い人でもある。チャビ先生のようにアンチ・アンチフットボール教の大司教となるわけでもなければ、イニエスタのように容姿とプレーのギャップが激しすぎるわけでもなく、最高に上手いが1人で試合を決める力があるというタイプでもないので、いつもお座なりな賞賛が寄せられているところはちょっとかわいそう。シティ史上最高の選手と言われることも多いのだが。今シーズンもCMFの一角兼第3キャプテンとして、序盤から稼働率は上々。シュートはめっちゃ下手。
35 オレクサンドル・ジンチェンコ Oleksandr ZINCHENKO*
昨シーズンはPSVに貸し出されるも、控えから抜け出せず。なんでリザーブでプレーしなくちゃいけないか分からないよ、と漏らしていた金髪のウクライナ人。シティではまだ公式戦でプレーしていないので良いんだか悪いんだかよくわからないが、PSVもドルトムントもナポリも欲しいというのだから、さぞ良い選手なのだろうよ。今シーズンは労働許可が降り、晴れてシティに残留。CMFやWBの控えでチャンスがあるかもしれない。
55 ブラヒム・ディアス Brahim DÍAZ*
2016年のU-17 EUROで準優勝したスペイン代表の主力。右寄りの攻撃的MFかFWで、今シーズンからトップに昇格。14歳の頃にマラガから引き抜いたのだが、まあそういうことしてればUEFAに怒られるのも無理はない。プレシーズンではレアル・マドリー相手にドリブルからミドルを決めたが、如何せん身体が小さすぎるので、トップレベルで通用するかどうかはまだ微妙なところ。しかし何と言っても「レアル・マドリーが欲しがっているらしい」とのことだから、きっと大物には間違いないよ(断言)。
しかしU-17のEUROって毎年やってるとは知らんかった。まあ育成年代だから理屈は分かるが、有り難み無いな。
FW
7 ラヒーム・スターリング Raheem STERLING***
身贔屓だと思わず聞いてほしいが、私が思うに、シティに来て以降のスターリングをどう評価するかで、その人がどの程度シティの試合を見ているかが判る。「どの程度」というのは、別に試合を見れば見るほど偉いというわけではないが*1。
最初のシーズンは尻すぼみに終わったものの、グアルディオラが来て以降のスターリングは調子の波も少ないし、チャンス創出の質、量ともに高い。アーセナルやスウォンジー、ボーンマスのようにスターリングに痛い目に会わされているチームも多い。はずなのだが、その割には本当に評価されない人である。見ているとイライラする、という意見も多い。まあその気持ちは判らないでもない。多分、チャンスをホイホイ外す(強く、正確にシュートが打てない)、すぐ倒れる(体重が軽いうえにハンドオフが下手)、すぐボールを下げがち(キープすることにあまり自信がない)辺りが原因なのではないかと思われる*2。
一方で、名が売れたのが早かったから、今の水準で完成形ですと言われると期待外れだという感覚も理解は出来る。そんな中で、万が一(どころでは済まない確率だが)私がスターリングにアドバイスを送るとすれば、成長余地は点。得点である。クロスとかアシストとか、もうどうでもいいから。とにかく点を取るしか無い。点が取れるようになれば、MSNやロッベンとは言わなくとも、ペドロくらいの評価は得られること間違い無し。そういうものだ。
19 リロイ・ザネー Leroy SANÉ*
昨シーズン後半、4-3-3の左ウィングでブレイク。1on1の突破力はチーム1。しかし今シーズンはメンディたちの加入で横幅確保業務がSBに移管されてしまい、控え降格。
何試合か試された左WBは見るからにもたついていたが、2トップの一角では点が取れるところを見せているので、今年は主にそちらで売っていくかもしれない。個人的には、カットインお化けにはなってほしくないところ。
20 ベルナルド・シルバ BERNARDO SILVA
服屋って好きですか。私は嫌いです。選択肢が多すぎて、店中見て回った上で他の店とも比較して、何ならZOZOTOWNもチェックしておかねば損をするようで、気疲れする。
なんの話だと思われるかもしれないが、ポルトガルやフランスの若手選手というのは、その「チェックしておかなければならない対象が多すぎて疲れる」という点で服屋に似ている。ああ、また上手い選手が出てきたのね。なにゴメス?ゴメス何号?みたいな。然るに、移籍が発表されるまであえて情報を仕入れなかった2人目のシルバことベルナルドだが、モナコでCLベスト4に入っただけあってさすがにクオリティは高かった。だろうと思った。知ってた知ってた。ライン際に張ってもいいし、ハーフスペースを使ってもいいし、状況に応じて多様な機能が果たせるところが喜ばしい。右のWGとCMFを担当。
10 セルヒオ・アグエロ Sergio AGÜERO
怪我をしようがしまいが、出していればシーズン30点*3は獲ってくれる大エース。その割にグアルディオラから特別扱いされているわけではないため、昨シーズンから移籍の噂が耐えない。
アグエロに注文がつくのも別に変な話ではない。監督の要求は選手のエゴと排他でもないし。肝心のゴール前も、まあ正直なところ、MSNほど凄いとは言い難い訳だし。最近腰の回転が鈍かったり。一方でアグエロがプレミア最高の偉大なゴールゲッターなのも両立する事実なのだから、誰もが3人称でしか語れない不要論なんてほっといて、アグエロがどう成長するかを楽しみに見てたら良いと思うんですね。私はね。
といいつつ、まあこの辺で選手としてはピークかなと思っていたら、今シーズンはプレスを繰り返す体力は付いてるわ、ポストプレーも少しずつ上達しているわ、3,4人まとめて片付けるドリブルも復活しているわ、よりオールアラウンドで怖いストライカーに成長していた。恐れ入りました。体調が良いとドリブルで持ちすぎて深いタックルを呼び込んで大怪我、というのが今までのパターンなので、そこだけ気をつけてほしい。
33 ガブリエウ・ジェズス Gabriel JESUS*
昨シーズン中盤に加入した20歳。どうせ“スピードとドリブルが武器”のハイプに違いないと怯えていたが、モノホンは違った。これはリアルですわ。何をやらしても卒なくどころの話でないレベルでこなしてしまうし、細身の割にほとんど当たり負けしないし、過去10年のブラジルの9番日照りもついに解決なのではあるまいか。ただ、1人で何人も抜き去って点を獲るとか、ものすごいミドルがあるとかいう訳ではないので、アグエロと組ませるのは得策だと思う。